GRADO(グラド)は、創業から60年を超え、レコードステレオカートリッジ開発で著名となった米国オーディオメーカーの老舗である。ヘッドフォンについては90年代から発売しており、独特の木製開放型ヘッドフォンは屈指の低音量を持つ開放型ヘッドフォンとして世界中に多くの愛好家が存在する。2009年に「GR」シリーズと呼ばれるイヤフォンもリリース。ヘッドフォンとはまた別の魅力を持ったカナル型イヤフォンで高い評価を誇っていた。
今回リリースされた「GR8e」は、2009年に発売された「GR8」に改良が加えられたモデル。カラーリング等いくつか変わった点はあるが、ほぼ前世代の姿、音質的な性格を踏襲しており、スペック上の数値自体に変更点はない。前世代モデル所有者が買い替える必要まではなさそうだが、それは6年前にリリースしたこのモデルが、色あせることのない高い完成度を誇っていることを示している。

こちらは上位モデルのGR10e(オープン価格
35,000円前後)。基本設計は同じだが、
すべての面においてファインチューニングを
施しているという。
濃密さをもつグラドヘッドフォンとは異なり、GR8eは正統派・清純派と表現すべきだろうか。高音域の美しさが最大の特徴にして個性であり、GR8eの評価はここにすべて収束するだろう。非常に抜けがよく、自然で、それでいて耳に刺さることのない聴き心地の良さ。艶めいた高音域が、体感的な解像度の高さにも結び付き、大抵のジャンルの音楽で価格以上の満足感が得られる。最高音域でも歪みない再生が可能なので、生楽器はもちろん、シンセサイザーから発せられる超高音域も上手に鳴らしきる。
スペック的にハイレゾ対応モデルではないが、鳴らし方が非常に上手ということもありスペック以上の実力を体感できる。また、ヴォーカルについては、ぐっと前面に出てきて非常に聴き取りやすい。合唱曲だと駆動力に若干甘さがあるが、肉厚感が十分で非常に楽しめる。
装着感は比較的良好で、小型かつ外耳にぴったりフィットする形状なので装着しているという感触はあまりない。じつはドライバー部底面に孔が開いた開放型モデルであり、一定の音量を超えると音漏れが強くなるので利用シーンに注意しよう。
なお、上位モデル「GR10e」も同時に発売される。こちらはGR8eをベースに、さらに全音域がブラッシュアップされたハイエンドモデル。優れた高音域は一層透明度を増し、繊細さに磨きがかかっている。基本的な性格は両者同じなので、プラス約1 万円の予算が確保できる方は是非GR10eに挑戦していただきたい。