形だけをなぞった薄っぺらいロックもどきがあふれる昨今、
LOVES.が放つ11曲のロックンロール・チューンから伝わってくるフレッシュなヴァイブレーションは一体!? 昨年11月に発表された
日暮愛葉のソロ・アルバム
『Perfect Days』をはさみ、2年ぶりにリリースされるLOVES.のニューアルバム
『JM』は腕の立つメンバーが形にとらわれないフリーなセッションからひらめきを頼りに作り上げたからこそ、リスナーにもそのひらめきを伝えることができる最高のアルバムだ。THE BWOYの井口弘史がデザインしたアートワークに花咲く5本のチューリップと『JM』という抽象的なアルバム・タイトルはその象徴。意味より先に音楽の凄みが耳に飛び込んでくる、そんなアルバムを前に、ギター&ヴォーカルの日暮愛葉とベースの中尾憲太郎、ドラムの秋山隆彦が語る言葉は果たして?
愛葉「今回の曲はポップ・ソングもあり、ニューウェイヴ的な曲、ノーウェイヴ的な曲もあり、ハード・ロックだったり、オルタナティヴだったり、枠付けすれば細かく、いろいろあるんですけど、経験してきたことがあまりに多すぎて、“そんな細かいこと言ってないで、ひとくくりのロックでいいじゃん”っていう思いはあって。もっともロック・バンドはいろいろいるし、それぞれ形があると思うんですけど、秋山くんが叩くドラムの音であったり、(中尾)憲太郎がベースで弾くフレーズ、それに反応する私の動きであるとか、音楽をちゃんと鳴らすことで成り立つエンタテインメントってことですよね」
秋山隆彦(以下、秋山)「言い換えるなら、みんなで拍手とか振り付けっていうことではなく、ハプニングを含めて、生で起こること。
レッド・ツェッペリンとか
ザ・フーのライヴ映像を観ると、今の若い子がやってるような爆発的にキレたテンションではないと思うんですけど、腕を回してギターを弾く
ピート・タウンゼントに象徴されるように、彼らの自然な動きは一つ一つ残るんですよ。そういう意味での大きいロック、その延長線上から外れていないロック・バンドとしてのLOVES.っていうことなんだと思います」
中尾憲太郎(以下、中尾)「最初の作品『LUCKY ME』は、出来てる曲に対してベースを入れてくださいっていうところから始まって、その後、一緒にスタジオに入って、セッションを繰り返しながら曲を作るようになっていったんですけど、バンドに何かを提供するつもりもなくサウンド・チェックのつもりで無意識のうちに弾いたベースが“そのフレーズ、採用!”って言われて、こっちは“え、どのフレーズ?”みたいな(笑)。そういう瞬間がどんどん増えていってるんですよね。中村くん(浩:サックス)の入る隙も今回は多いですもんね」
秋山「しかも、彼は採用されて音源になったフレーズをライヴではそのまま吹かないですから。彼はジャズマンですから、レコーディングもライヴも空気を感じながらプレイしているんですよ」
愛葉「私たちの場合、ライヴをやったり、作品作ったりする回数が増えていったことによって、関係が密になっていってるんです。そうなると、怖がらずに自分のやりたいことを言ったり、演奏することができるようになるし、そういうフリーフォームなアイディアやプレイが作品に反映されるようになってきたのが今回のアルバムなんですよ」
中尾「その一方で、“このバンドではこういうことをやっちゃいけないんだな”っていうポイントが分かってきたことも今回のアルバムでは大きいと思うんですけどね」
愛葉「へえー。そんなこと考えるんだね。そういう話はメンバー間で一切しないから、憲太郎の今の発言は新鮮だわ(笑)」
中尾「そりゃ、考えますよ。メンバーそれぞれが思い描くLOVES.のYES/NOの基準はあると思うんですけどね」
秋山「でも、それはあくまで個人の判断であって、スタジオは何をやってもいい空気なんですよ。そこで演奏しながら、“あれ、何か違うな”って思ったら、出したものを引っ込める、みたいな」
愛葉「で、引っ込めたら、“あれ、なんでやめちゃうの?”って話にもなるし、みんなが何も言わなければ、“やっぱり引っ込めた方がよかったんだ”ってことにもなるし。だから、無制限の異種格闘技戦ですよ(笑)。そうやって、ずっとセッションしながら、それぞれの個性をワーッと出して曲を作って、練習っていう練習はライヴ前に1回通して演奏してみるくらい。私たちにとっては、そのスタイルがしっくりくるんです」