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「ホラーズは常にサイケデリックなサウンドを求めている」―進化/深化した3rd『スカイング』を携えて来日!
2011/08/30掲載
 ポーティスヘッドのジェフ・バーロウと、映像作家クリス・カニンガムによる共同プロデュースで話題となった2ndアルバム『プライマリー・カラーズ』(2010年)で、デビュー時のゴシック・パンク的なイメージから一気にシューゲイザー・サウンドへとシフトした、英国出身の5人組ザ・ホラーズ。最新作『スカイング』では、さらにシンセサイザーや打ち込みを導入し、80〜90年代のUKインディ・ロックを彷彿させるような多幸感あふれるサイケデリック・サウンドを作り上げている。アルバムごとに進化/深化を繰り返す彼ら。しかしその根底にあるものは変わらない。今年の〈サマーソニック〉でも圧倒的な存在感を見せつけた長身のヴォーカリスト、ファリス・バドワンに話を聞いた。
――新作で、ここまで変化した理由は?
 ファリス・バドワン(vo、以下同)「ひとつは、僕らのソングライティング能力が上がったということだと思う。それによって、自分たちが表現したかったエモーショナルな部分のレンジが広がり、微妙なニュアンスも表現できるようになってきたんだ。それともうひとつは、機材周りが充実してきたこと。出したいサウンドが以前よりも出しやすくなったのは大きい。特にジョシュア(・サード/g)のエフェクターやシンセサイザーが増えて、僕らにしか出せない音作りを可能にしたからね。特にエフェクターに関しては、ジョシュは自分で作ってしまうんだ。バカでかいフェイザー(音を揺らすサイケデリックなエフェクター)とかさ。そうした機材が本作に一番インパクトを与えていると思うよ」
――アルバムタイトルの“Skying(スカイする)”も、エフェクター用語から来ているそうですね。
 「うん。フェイザーが開発された当初は、“フェイズする”じゃなくて“スカイする”って言われていたらしい。なんていうか、ジェット機が空に向かって飛んで行くような、パワフルでいて高揚感のあるサウンドを表す言葉として、今回のアルバムにもピッタリだと思ったんだ」
――今作のレコーディングに入る前に、バンドだけのプライベート・スタジオを作ったとか。ジャケットのインナースリーヴに映っている写真には、ヴィンテージのシンセサイザーがものすごくたくさん並んでいます。実際アルバムにはたくさんのシンセの音が入っていますね。
 「あの写真はスタジオの中の、ほんの一部の空間を写したものだよ(笑)。うん、たしかにシンセも使ったけど、シンセのようで実はギターで出していたりもする。そういうサウンドは最初から意図して出したわけではなくて、いろいろ実験しているうちに発展していく場合が多いんだよね」
――実験というのは、具体的には?
 「たとえばドラムをレコーディングするときも、さまざまなエフェクターを通してサウンドを変えてみたり、アンプに立てるマイクの距離を、思いきり近づけてみたり遠ざけてみたり。なにより、そういう実験をしているときの僕らはすごくエキサイトしていたから、そんな楽しい雰囲気がアルバムの中にも詰め込まれたんじゃないかな」


(C)Neil Krug
――これまでアルバムを出すごとにサウンドを大きく変化させてきたホラーズですが、どのアルバムにも共通しているのは“サイケデリック”であることだと思います。
 「うん、君の言う通りだよ。ホラーズは常にサイケデリックなサウンドを求めている。僕らが大好きな、たとえばシド・バレットがいた頃のピンク・フロイドや、ニック・ドレイクキャバレー・ヴォルテールヒューマン・リーグといったバンドやアーティストは、ポップなんだけど実験性があって、常にサイケデリックな匂いを醸し出していると思う。サイケデリックの定義を説明するのは難しいのだけど……」
――聴いた人が、ここではないどこか別の時空へと連れ去られてしまうような音楽を“サイケデリック”と呼ぶのかな、と個人的には思うのですが。
 「同感だね。ここではない、どこか別の世界を音楽で作りたいといつも思っているし、聴き手がその世界にいつまでも浸っていたくなるようにしたい。これからも僕らはそういう作品を目指すつもりだよ」
取材・文/黒田隆憲(2011年8月)
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