
ハウジング部のジョグダイヤルで
低音のレベルをコントロールできる。
ケーブルは着脱式。
重低音を重視したヘッドフォン、イヤフォンは、ドライバーユニットの背圧をコントロールすることで低域の量感をブーストするタイプと、大口径なドライバーユニットを使うことで低音再生能力を確保している2つのタイプの製品がある。前者は響きと深みの表現力に長けているが、スピーディな演奏のグルーヴ感が再現しにくい。後者はリズミカルなベースをストレートに再生してくれるものの、中高域が低域にマスクされることがある。ハウジングやマウント部分にコストをかけることで、これらのマイナスな個性を解消できるが、Pioneer(パイオニア)は別の手法で、普及価格帯の重低音ヘッドフォンを作り出した。それが「SE-MJ751」だ。
低音再生用の大口径40mmユニットと中高域再生用の口径30mmユニットを同軸上に配置するコアキシャル2ウェイユニットを用いており、低域成分が多くとも中高域の鮮やかさをスポイルしない。力強い低音再生とクリアな中高音再生を両立している。2ウェイではあるが振動板の中心部が重なっているために、ピアノのグリッサンドでも定位がブレない。全帯域において一体感のあるトーンでもある。ホームオーディオ用ヘッドフォンではあまり使われない方式だが、カーオーディオ業界においては一般的。そしてパイオニアはこの分野においても名高いメーカーであり、毎年カーサウンドコンテストを開くほど企業として注力している。近接リスニング環境においてのコアキシャルユニットの開発・運用にもっとも長けたメーカーといえる。

低域用ユニットと高域用ユニットを
組み合わせた2ウェイ構造を採用。
ハウジングの構造をみると、“BASS LEVEL”というジョグダイヤルがあることに気がつく。これはウーファー専用のボリュームで、音楽を再生しながら低域の量感を10dBの範囲で微調整できる。ボリュームを30%くらいまで回すと、ウーファー部の震動がスコーカーに与える影響が減るためか、中高域の解像感が高まり、ソロのア・カペラなどを聴きたくなる。60〜70%くらいまでならば、タイトでスピーディな低音と、厚みのある中域、粒立ちのいい高域がミックスされ、ジャンルを選ばない低音重視機となる。回しすぎるといわゆる重低音機の音となり低域のスピード感が下がり、音が曇り出してしまう。しかしアブストラクトやインスト・ヒップホップのようなダウンテンポのダンスミュージックとの相性がむしろ良くなるのが面白い。まさに大箱と呼ばれるクラブの音なのだ。またケーブルの脱着機能にも注目。ハウジング側のコネクターもステレオミニプラグのため、汎用ケーブルでカスタマイズができる。予算10,000円でダンスミュージック向きのヘッドフォンを……と考えたとき、SE-MJ751は価格帯を遙かに超えるクオリティをたたき出す逸品といえる。