
iPhone 5以降のモデルをはじめiOS7.1以上の
iOSデバイスと直接デジタル接続が可能な
Lightning端子仕様。

ハウジング内にアンプ、DAC、Lightningオーディ
オモジュールを搭載する。
Hi-Fi再生に注力したポータブルプレーヤーのラインナップが充実してきた昨今だが、プレーヤーとしてのスマートフォンも侮れない。再生アプリによっては800を超えるヘッドフォン、イヤフォンの補正プロファイルが使用可能で、各モデルの個性を活かしたままフラットな音場が楽しめる。決してゼネラルオーディオとはいえないクオリティを持っている。フィリップスのFidelio M2Lは、良音質を求めるiPhoneユーザーにフォーカスを合わせたオンイヤー型オーバーヘッドだ。
密閉型のハウジング内に40mm径ネオジウムドライバーをビルトイン。さらにDACおよびヘッドフォンアンプを内蔵している。接続はiPhone 5以降のモデルが採用しているLightning。USBではなく、Lightningで直結してデジタル伝送を可能としたヘッドフォンはこのモデルが世界初となる。デコードできるのは48kHz/24bitまでのPCM。96kHz、192kHzのPCM音源などはダウンサンプリングして再生する。ハイビットレートなハイレゾ音源が急増している現在、このスペックでは見劣りすると思うかもしれない。ところがだ。一聴してFidelio M2Lの魅力に気がついてしまった。セパレーションもダイナミックレンジも、分解能も優れている。
ピンク・フロイドの
「葉巻はいかが」から連なる「あなたがここにいてほしい」は、冒頭のラジオチューニングシーンのノイズもしっかりと捉えており、
デイヴ・ギルモアのアコースティック・ギターの響きも豊か。
MUSEの
「デッド・インサイド」はボリューミーな低域をストレートに鳴らしながらマシュー・ベラミーのヴォーカルがトラックの中心を打ち抜くかのように飛び込んでくる。ヘッドフォン内部までデジタル伝送しているのだからその通りなのだが、はじめてバランス接続のヘッドフォンを使ったときのような、鮮烈なトーンに聴き惚れてしまった。そして長時間のリスニングでもハウジングに熱がこもらない。ポータブルプレーヤーでハイビットレートの音源を奏でると、DACが発した熱がボディ全体に伝わってくるが、Fidelio M2Lは内部にDACがあることを忘れるくらいに変化がない。電力はiPhone側から供給されるが、バッテリーが急激に消耗するといったこともなかった。Fidelio M2Lはどこまでもイージーな個性をもったハイクオリティなヘッドフォンだった。プラス・アルファのアイテムを使わずにiPhoneのサウンドを高めたいのであれば、Fidelio M2Lという選択肢はむしろアリだろう。