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クラシック音楽と人々、作曲家と現代人を“つなげる”清塚信也の最新アルバム『connect』
2018/12/12掲載
 クラシックのピアニストとして、また映画の吹き替え演奏から俳優、テレビのバラエティ番組出演まで多岐にわたる活動を展開している清塚信也が、新譜をリリース。ひさしぶりのクラシック・アルバムで、J.S.バッハの『イギリス組曲』第3番、モーツァルトのピアノ・ソナタ第14番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」に加え、ボーナス・トラックとして自作の「Etude No.1“Dessin”」(オリジナル曲)、「『シラノ・ド・ベルジュラック』〜愛のテーマ」(楽士として出演した舞台より)、「春よ、来い」(松任谷由実/フィギュアスケートのアイスショー「Fantasy on Ice 2018」でも話題)も収録している。
 アルバム・タイトルは『connect』。これは“つなげる”ことを意味し、クラシック音楽をもっとメジャーに、もっとポップに、世の中のより多くの人々に発信するべく、クラシック音楽と人々をつなげる、またバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンと現代人をつなげるという意味合いが込められている。
――今回のタイトル『connect』は、幅広い意味が含まれているようですが、どのようなきっかけで生まれたものですか。
 「じつは、このタイトルは締め切りギリギリに生まれたものなんです。僕はタイトルを考えるのがすごく苦手で、ことばと音楽のリンクができないというか、音楽を形容することばが出てこない。だからこそ音楽があると思うのですが、大好きなシンセサイザーの配線を見ていたときに急に浮かんだんです。そうだ、コネクトだ、すべてをつなげることができると思い、決めちゃったのです(笑)。アルバムのコンセプトにもつながりますし……」
――バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンという王道をいく選曲により、作曲家と現代の聴き手をつなげるという意味ですか。
 「ふたつの意味があり、もちろんそうした作曲家と現代の僕たちをつなげるという意味と、より大きな視野で考えると、クラシック音楽と人々をつなげるという意味を含みます。まずバッハの『イギリス組曲』第3番は、中学生のころからバッハが大好きだった僕にとってもっとも好きな曲で、“こんなすばらしい曲があるんだよ、興味ない?”って呼びかけたい曲です。メランコリックでバランスが取れていて、6曲の舞曲ともキャラクターが際立ち、すごくカッコいい。僕は小学校6年生のときに学生コンクールで第3位入賞をいただいたのですが、そのときの入賞者演奏会でバッハのパルティータ第2番を演奏しました。中学時代はもうバッハが大好きで、さまざまな作品を弾いていました」
――モーツァルトの数あるピアノ・ソナタから第14番を選んだのには、特別な理由が?
清塚信也
 「モーツァルトは父親の教育により、幼いころから馬車で各地を回り、演奏活動を行なっていました。もちろん作曲も。当時は宮廷や教会で演奏し、貴族からの依頼で作曲を行ない、過酷な生活を強いられていました。でも、音楽は天上の美しさに彩られています。ただし、僕はその奥に深い闇や悲しみを感じる。ソナタ第14番は繊細で奥深い作品ですが、“怒り”が込められていると思う。これは僕個人の考えですが、ベートーヴェンはこのソナタを研究していたと思うのです。いうならば、“バイブル”にしていたくらいじゃないかなと。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番〈悲愴〉は同調のハ短調で書かれていますし、モーツァルトはフォルテピアノを使っていた。第14番のソナタはfとpがこまかく書かれています。それらをベートーヴェンは研究し、〈悲愴〉の第2楽章に盛り込んでいる。モーツァルトの作品とのコネクトです。フレーズ、音域、伴奏形態などすごく似ていますから。僕は学生時代からベートーヴェンが大好きで、その後モーツァルトを弾くようになった。ですから、両者の作品の構造、内容の酷似している面、ベートーヴェンが影響を受けているところがすごくよくわかるんです。ベートーヴェン好きの僕としては、今回はピアノ・ソナタ第14番〈月光〉で、聴いてくださる人たちをベートーヴェンのもとへといざなうというか、コネクトしたいと思っています」
――自作に関してはいかがですか? 「Etude No.1“Dessin”」は〈ムンク展―共鳴する魂の叫び〉の公式テーマ曲ですが……。
 「これはアンコールとして聴いてください。〈Dessin〉は、ピアノを練習している人にエチュードとして楽しんで弾いていただければうれしいですね。今回のレコーディングはRed Bull Music Studios TokyoでヤマハCFXを使用して行なったのですが、すべてがとても快適で完璧で、楽しんでできました。ただし、このアルバムは僕にとってひとつの大きな挑戦です。有名な作品を並べることはせず、こんな曲があるから聴いてという感じで選曲したからです。僕のスローガンは、“退化でも進化でも変化することが大切”。停滞することがもっともよくないことで、つねに移動していることが重要。それをモットーに、これからも前進あるのみで進んでいきたいと思っています」
取材・文 / 伊熊よし子(2018年11月)
Info
■清塚信也コンサートツアー 2019 connect
http://tristone.co.jp/kiyozuka/tour/

1月26日(土)愛知 名古屋 愛知県芸術劇場コンサートホール
2月1日(金)福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
3月15日(金)香川 高松 レクザムホール(香川県県民ホール)
3月16日(土)大阪 ザ・シンフォニーホール
3月29日(金)新潟 長岡リリックホール・コンサートホール
3月31日(日)富山県教育文化会館
4月13日(土)宮城 日立システムズホール仙台コンサートホール
4月14日(日)東京 赤坂 サントリーホール
4月17日(水)北海道 中川郡 幕別町百年記念ホール
4月18日(木)北海道 旭川市大雪クリスタルホール
4月19日(金)北海道 札幌コンサートホールKitara小ホール(昼夜2公演)

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