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クリエイターとしての才覚がフルに発揮された小山絵里奈の2ndアルバム
2008/07/11掲載
 さる6月25日より配信限定でリリースされている小山絵里奈の2ndアルバム『NOMMO』。“広くファンの声を集めて、彼女の楽曲を育てていく”という斬新なウェブ企画“GROWING DROPS”をもとに作り上げられた今作で展開されるのは、寓話や童話にも相通ずる、ファンタジックで普遍的な楽曲世界。レコーディングからミックスまで、すべてをひとりで手掛けるなど、クリエイターとしての才覚をフルに発揮した今作について、小山絵里奈に語ってもらった。



 創造力に満ちた音の位相、繊細な美しさと獰猛な生命力を同時に感じさせる電子音、そして、宇宙的な世界観と日常的な風景をナチュラルに重ねる歌の世界。坂本龍一に才能を見い出され、1stアルバム『VIVIDROP』によってエレクトロの新しい可能性を示した小山絵里奈が、ニュー・アルバム『NOMMO』を完成させた。ウェブ上で行われた、“広くファンの声を集めて、彼女の楽曲を育てていく”という企画“GROWING DROPS”が基点となった本作は、“オウテカ meets 宮沢賢治”とでも形容すべき、とんでもなく個性的で、きわめて普遍的な内容を持った作品に仕上がっている。
 「大きなものを描きたいという気持ちはありました。それは“オーケストラを使う”みたいなことではなくて、もっと感覚的なものなんですけど。自分も成長していきたい、というのもあったし」


 前作では坂本龍一、ZAK、NUMB竹村ノブカズ、高山徹といったクリエイターがエンジニアとして参加していたのだが、今回はレコーディングからミキシングまで、すべて彼女自身が担当。千葉県の、とある森の近くにある自宅スタジオで紡ぎ出されたサウンドには、当然、彼女の感性をよりビビッドに反映されている。
 「ひとつひとつの音のバランス、奥行き。ミックスって正解がないし、まとめるのはかなり大変でした。計算とかできないから、ぜんぶ耳で確かめるしかないんですよね。たとえば『デメララ』だったら、“森のなかで演奏している感じ”とか」


 また、詩人・トメキチとの共作を含むリリックも、このアルバムの大きな魅力。祖父の葬儀で聴いた骨の音から広がったという「MARIMBON」、スペイシーな音像のなかでサンプリングされたホーンが舞う「PARTY」、感情的なメロディと浮遊感たっぷりのトラックがひとつになった「ユートピアとくま」。寓話的、童謡的な雰囲気を持つ楽曲は、アルバム全体として、まるでひとつの神話のような繋がりとして聴こえてくる。
 「歌詞に関しては、詩人のトメキチの存在が大きいですね。彼の詩には宇宙をテーマにしたものも多いんですけど、それは頭のなかに置き去りにされてるものではなく、ちゃんと現実の暮らしと結びついていて、それがすごいなって思うんです」


 アルバム・タイトルの『NONMO』とは、西アフリカ、ドゴン族の神話に伝わる水陸両棲の異性人。昼は人間に知恵を授け、夜は海に戻っていったと伝えられる“ノンモ”の存在は、このアルバムの支柱となっている。そこに描かれているのは、文明の成り立ち、そして、煮詰まりまくっているように見える、現代社会の行く末だ。
 「そういうテーマは特に考えてなくて、曲順を並べてみたら、そうなってたっていう。何ていうか、私としては、希望を描いてるつもりなんですよ……って、あんまり言うとウソっぽくなっちゃうけど(笑)。ただ、神話と歌のつながりって強いと思うんですよね。神話を、ただ朗読で口承されていたものが、歌や音にのせてみることで、より神話の奥深さを感じたり秘められたものを発見したり、何かが浮かび上がったり人々の想像が広がったりして面白くなったんじゃないかなって」


取材・文/森朋之(2008年7月)



●小山絵里奈 2ndアルバム『NOMMO』
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1. KAI
2. MARIMBON
3. 儀式菓子
4. 白銀
5. PARTY
6. 月雫
7. eardrum
8. デメララ
9. Little Things
10. ユートピアとくま
11. 幻ゲーム
12. UNBORN
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