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【特別企画】Singer――菅原紗由理ドキュメント〜表現の本質を掴む19歳 Vol.2
2010/05/21掲載
「キミに贈る歌」で華麗なデビューと
ファイナル・ファンタジーのテーマ曲との出会い



菅原紗由理


キミに贈る歌

 そしてついに、彼女の歌が世に放たれる。最初の音源は、2008年12月17日に配信された「Destiny」。フランツ・リストの「愛の夢」をサンプリング、ヒップホップ・グループ“I THE TENDERNESS”のFEROSをフィーチャーしたこの楽曲により、彼女の存在は大きな注目を集めた。そこから本格的なデビューに向けた楽曲制作に入り、「透明感のある声を生かし、力強くも切ないラブ・ソングというのが僕の中でのキーワードであり、18歳の等身大の気持ちをリアルに表現した楽曲を目指しました」(Sin)と言う「キミに贈る歌」や「Destiny」を含むミニ・アルバム『キミに贈る歌』でついにメジャー・デビュー。表題曲が<第3回 レコチョク新人杯>でグランプリを獲得するなど、ダウンロード・チャートを中心にロング・ヒットを記録、“19歳になったばかりのニューカマー、登場”というニュースが音楽シーンを駆け巡ったことも記憶に新しい。
 また、2009年9月にリリースされた1stシングル「あの日の約束」では、“離れてしまった恋人への思い”を表情豊かに歌い上げ、シンガーとしての類まれな才能をアピールすることに成功している。


 「初めて、デモをいただいて聴いたとき、恋に悩んでいた時期でもあったので、歌詞の内容が自分の気持ちと重なる部分がたくさんあり、イメージが一気に湧きました。あとは、どういう風に自分なりに表現しようかなぁ?って考えましたね」(菅原)

 そして、このシングルのリリースと前後して、彼女を本格的なブレイクへと導くプロジェクトが発表される。「FINAL FANTASY XIII」のテーマソング「君がいるから」を歌うことが決まったのだ。「Eyes On Me」(フェイ・ウォン)、「real Emotion」(倖田來未)、「Why」(絢香)といった名曲を送り出してきたFFのテーマソングを担当することは、彼女にとって大きなチャンスだったことは間違いない。しかし、『FF XIII』のアソシエイト・プロデューサーである今泉英樹氏によると、このときのアーティスト選考は非常に難航していたという。


 「過去のFF作品を見ても、作品的にも戦略展開的にも後々非常に大きな影響力を持つ要素がテーマ・ソングでしたので、それだけスタッフの間では今まで以上に選考の基準が上がっていましたし、慎重度が増している状況でした。そのため、関係スタッフ全員が一致する選考の決め手がどうしてもなく、頓挫する寸前だったと思います」(今泉氏)



ファイナル・ファンタジーのプロデューサーも驚いた
シンガーとしての成長力


 その後、たまたま読んでいたスポーツ新聞の記事で彼女の存在を知った今泉氏は、その歌を聴いた瞬間、「この人だ」という強い確信を持ったという。


 「以前、代理店の方から、自分と同じ秋田出身ですごい歌手がデビューするということを聞いていたので、この人がそうだと思い、即CDを買いに行き、聴かせてもらったのが始まりでした。今の時代には珍しい非常に透き通った歌声の中に力強さを合わせ持ち、表現力の幅の広さを感じました。この人であれば、今回のFFの作品性と重厚なストーリー性に間違いなくマッチングすると確信し、即スタッフに曲を聴いてもらったところ、今までの難航状態が嘘のような満場一致となりオファーさせてもらったというわけです」(今泉氏)

 「ゲームのストーリーにも通じる“願い”、“信じる”、“夢”、“奇跡”などのキーワードはかなり強調させてもらいました」(今泉氏)というコンセプトのもとで制作された楽曲「君がいるから」。彼女自身、「『FINAL FANTASY XIII』の世界観や壮大感を、どうやって歌と歌詞で表現しようか、ということが自分の中で一番難しかった部分でした」という試行錯誤を経て作り上げられたこの楽曲は、シンガーとしての彼女のスケールをさらに引き上げることになる。


君がいるから

 「曲が完成した1ヵ月後にマスコミ向けの『FF XIII』の発表会を開かせていただき、その際、菅原さんにお披露目でテーマ・ソングを歌っていただきました。その時の彼女の歌声には驚きましたね。1ヵ月しか経っていないのに別人のように歌が進化していたんです。レコーディングにも立ち合わせていただきましたが、歌うたびに進化するんです。プロデューサーからの指示に対する順応の高さはもちろんですが、彼女自身で曲のイメージを非常に大切にしますし、歌詞の一つ一つを、背景を含めてきちんと理解し自身の中に組み込んでいき、貪欲に自分のものにしようと望むんです。そんな真正面から純粋に楽曲にぶつかっていく姿勢が、表現の幅に広がりを持たせているのでしょうし、進化するスピードの速さにも繋がっているのだと感じます」(今泉氏)


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