“インストゥルメンタル”。そうクレジットされているオープニング曲「あの頃に...」を聴いた瞬間、あっと思った。メンバーの声が幾重にも重なるコーラス。歌詞がないことで、このグループならではのハーモニーがいっそう際立っている。ビーチ・ボーイズのオリジナル・ニュー・アルバム『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ〜神の創りしラジオ〜』は、文字通り“直球”と思えるそんな1曲で幕開けする。
1962年、キャピトル・レーベルからリリースされたファースト・シングル「サーフィン・サファリ」から数えて、ちょうど50周年。グループとしての大きな節目に当たる年に発表された新作であることもさることながら、2011年11月、長らく未完成な状態が続いてきた“幻のアルバム”
が、ついにオフィシャルな完成盤として世に出た。そうした背景も、このニュー・アルバムが感じさせる迷いのなさに、影響を与えているのかもしれない。60年代後半、そのレコーディングが迷路にはまり込んだ成り行きを含め、正式なリリースまであまりにいろいろあり過ぎた『スマイル』とは対照的。誰もがそうと認める“ビーチ・ボーイズらしさ”をごく素直に発散していこう。メンバー自身のそんな姿勢が、歌声はもとより曲調からもストレートに伝わってくるからで、曲名からして“ラジオ讃歌”になっているアルバム・タイトル曲は、まさにその象徴。ミディアム・スローの三連に乗って歌われる、ほのかにメランコリックなメロディ、そしてハーモニー・コーラスに、思わず膝を叩く向きも少なくないのでは。
【日本盤ボーナス・トラック】
ザ・ビーチ・ボーイズ/恋のリバイバル
(50周年記念エディション)
がエグゼクティヴ・プロデューサーの位置につく。そんなバランスも、一時は訴訟合戦にまで発展した両者の確執を思うと“感慨”以外の何物でもないが、それ以上に心動かされるのは、ポップ・ミュージックとしての淀みのなさ。“原点回帰”というのとも微妙に違う、バンドとして一山も二山も越えた彼らだからこそ到達することができた、晴れ晴れとしたポップさである。キャピトル・デビュー以前メンバーだったデヴィッド・マークスが、晴れて正式メンバーとして参加。からりとしたギターで“らしさ”倍増に貢献している。その一方で、これはブライアンらしさの発露とも言えるポケット・シンフォニー的な楽器づかいも、そこここに登場する。歌詞からして寓話的な「ビルとスーの私生活」で聴かれるヴィブラフォンの、愛らしくも効果的な響きといったらない。『スマイル』発表の半年後リリースされただけのことはある。そう実感させられる所以でもある。
終盤を飾る「パシフィック・コースト・ハイウェイ」、そして「過ぎゆく夏」が、いまや老境を迎えたメンバーたちの諦観をうかがわせる、それと同時にいまなお音楽に寄せる若々しい思いをも感じさせる。そうした構成も心にくい。ブライアン、ラヴ、マークスに加え、