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サクソフォン四重奏を知らないかたにも素晴らしさを伝えたい――The Rev Saxophone Quartetが追求する伝統とオリジナリティ
2017/09/08掲載
 “トンガっている”という形容は、はたしてクラシック音楽シーンでも通用するものだろうか……と思いつつ、今年の3月にデビュー・コンサートを行なって活動を本格化させたサクソフォン四重奏団「ザ・レヴ・サクソフォン・クワルテット」には、(もちろん鋭敏さばかりを前面に出しているわけではないのだが)やはりこの表現が似合うと思う。ソロ活動にも光が当てられている上野耕平を中心に結成されたこのグループは、サクソフォン四重奏団という伝統的なスタイルを突き詰めながら、既存の認識さえも打破しかねないオリジナリティの追求に余念がない。
――デビュー・コンサートでは、グラズノフデザンクロフローラン・シュミット、リヴィエという4人の作曲家による四重奏曲を演奏しましたが、この4曲を並べるのはサクソフォン四重奏にとって、頂点を突き詰めたプログラムでもあるということでしたね。
上野耕平(ss)「ド直球の決め打ちプログラムと表現してもいいでしょうし、4曲を一気に演奏するという高いハードルを、自分たちに課したコンサートでもありました」
宮越悠貴(as)「プレイヤーとしても挑戦的なことでしたし、サックスを演奏している人には無謀に思われたかもしれません」
上野「僕たちとしては、サクソフォン四重奏を知らないかたにも素晴らしさを伝えたいですし、そうした意味でも頂点の音楽を最初に提示したかったという意図はありました」
田中奏一朗(brs)「僕はあれをやりきったことで、自分にもこのクワルテットにもさらに余力や可能性があるなと実感できました」
都築 惇(ts)「このプログラムがお客さんにどう評価されるんだろうと、楽しみと不安とが同居していましたから。終演後にいい意見がもらえて安心しました」
――その後、ミューザ川崎シンフォニーホールでは、バリトン・サクソフォンの四重奏をはじめ、やや実験的なコンサートをしました。
上野「バリトンの四重奏で演奏したのは、マーク・エンゲブレツォンという作曲家の曲ですが、4人が距離をとって演奏し、サラウンド効果も狙ったような音楽ですから、これからも広いホールで演奏する機会があると思います。サクソフォン四重奏は、基本的にソプラノ、アルト、テナー、バリトンという4本で固定されていますが、全員がどの楽器でも演奏できますので、ソプラニーノ四重奏もアレンジ次第で可能です」
宮越「そうした実験的なことをやって、驚いていただいたり楽しんでいただけることが、自分たちの良さかなと思います。それとはべつに、僕はカプースチンの〈8つの演奏会用エチュード〉や〈24の前奏曲〉といった、ジャズのテイストをもつピアノ曲をサクソフォン四重奏に少しずつアレンジしていますが、これもほかのクワルテットにないレヴだけの魅力になればいいですね」
上野「本当にいい音がするアレンジなんです」
宮越「メンバーそれぞれの音を想定しながら楽譜を書いていますから。上野さんなら難しいパッセージも吹いてもらえるだろうとか、かなり低い音だけど都築君なら大丈夫だろうとか、バリトンだけど奏ちゃんなら音がたくさんあっても上手に吹いてくれるはずだ、とか……」
都築・田中「それはうれしいですね」
上野「で、自分のところにいちばんおいしいメロディを残しておくんでしょう?」
宮越「そこは、特権じゃないですか(笑)」
©shumpei ohsugi
――4人それぞれの音楽的個性なども、クワルテットとしての演奏や活動に色濃く反映されていくのかなと思えますが、お好きなアーティストや音楽をうかがってもいいですか。
都築「僕は、レ・ヴァン・フランセ(木管五重奏団)の演奏や音の作り方にはいつも感心してしまいますし、その一方でビョークや機械的なサウンドの音楽なども好きです」
田中「僕はジャン=イヴ・フルモーさんというサクソフォン奏者がずっと好きです。あとはヴァイオリニストのヴェンゲーロフT-SQUAREでベースを弾いていた須藤満さんの演奏も、ベースラインを演奏する立場として参考になります」
宮越「僕の場合は小学生の頃から、デイヴィッド・サンボーンがアイドルなんです。フィル・ウッズマイケル・ブレッカーチャーリー・パーカーなど、影響を受けたプレイヤーはたくさんいますね」
上野「僕はカルロス・クライバー、ジャズのベン・ウェブスター、クラシックでのサックスですとアルノ・ボーンカンプというオランダのプレイヤー。それからクイーンも好きですが、あのコーラスを聴いているとサクソフォン四重奏に生かせないかなと思います。今、みんなが挙げたいろいろな音楽は、きっとレヴの音楽作りに生きていると思いますし、自分たちのオリジナル曲やアレンジを増やしていくとき、ヒントになることもたくさんあるでしょう」
 FACEBOOK等のSNSも使い、演奏やメッセージ、ときにはバックステージの楽しい様子も発信している4人。スタイリッシュなヴィジュアルも目を引くが、気になったらその演奏にアクセスを。
取材・文 / オヤマダアツシ(2017年8月)
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