ミニ・レビュー
マルケヴィッチの息子というキャッチ・フレーズなど必要ないほどに活躍の場を広げている俊英指揮者オレグ・カエターニが、2003年から続けているショスタコーヴィチ交響曲録音の集大成だ。彼の特徴は、精妙なアンサンブルを駆使して多彩な表情を描き出す希有なバランス感覚だと言える。そのことがショスタコにつきまとう重々しさや深刻さから作品を解放し、ニュアンス豊かな響きを引き出すことにつながっている。第5番の冒頭でも、弦の強奏の後の静けさにハッとさせられ「あっ、これがカエターニの意図か」と知らされる。もちろんダイナミックなフォルテシモに不足はないが、あくまで感情の暴発はコントロールされ、響きの見通しはクリアだ。しかも音楽に勢いがあり、一音一音が鮮やかに鳴り響く。第14番の深い音楽性にも惹かれる。第15番の巧みな棒さばきも冴えている。
収録曲
ショスタコーヴィチ:
[Disc 1]
01交響曲第1番ヘ短調op.10
02交響曲第15番イ長調op.141
[Disc 2]
01交響曲第12番ニ短調op.112「1917年」
02交響曲第2番ロ長調op.14
[Disc 3]
01交響曲第3番変ホ長調op.20
02交響曲第14番ト短調op.135「死者の歌」
[Disc 4]
01交響曲第4番ハ短調op.43
02交響曲第4番ハ短調op.43より未発表断片
[Disc 5]
01交響曲第5番ニ短調op.47
02交響曲第6番ロ短調op.54
[Disc 6]
01交響曲第7番ハ長調op.60
[Disc 7]
01交響曲第8番ハ短調op.65
[Disc 8]
01交響曲第9番変ホ長調op.70
02交響曲第10番ホ短調op.93
[Disc 9]
01交響曲第11番ト短調op.112「1905年」
[Disc 10]
01交響曲第13番変ロ短調op.113「バビ・ヤール」
演奏
オレグ・カエターニ指揮 ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団 [3] (1)ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ合唱団 (2)マリナ・ポプラフスカヤ(S) ミハイル・ダビドフ(BR) [10] パヴェル・クディノフ(BR)