【リメンバー テクノうどん】日本にうどんがあったから――R&Bシンガー・セクシーキラーが吼える〈テクノうどん〉パスト&フューチャー

2014/08/15掲載
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テクノ + うどん。スクエアとラウンドを二等分する字面と、人懐こい語感。テクノを聴きながらうどんを踏むという、タイトルまんまの内容。それが2012年、東京・浅草橋の異色スペース「浅草橋天才算数塾」での開催を基点とするイベント、〈テクノうどん〉。シンプルな楽しさが話題を呼び、徐々に規模を拡大。今年も7月6日、昨年に引き続き東京・青山 Cay(Spiral B1F)にて2部制で開催され、盛況となりました。エレクトロニックなビートに合わせて自ら踏んだうどんを食べるという行為が、何故人々の心を捉えたのか。その秘密や、開催までに味わった苦心の道程、そしてこれからの展望について、首謀者のひとりであるR&Bシンガー・セクシーキラー氏(元DJぷりぷり / 浅草橋天才算数塾)にお話を伺いました。
セクシーキラー氏
――〈テクノうどん〉はそもそも、どんなイメージでスタートしたんですか?初期は浅草橋天才算数塾での開催でしたよね。
 「最初は、呑み屋みたいな感じだな。当時、天才算数塾で居酒屋のイベントをやっていたこともあってな。沖縄の友達と遊んでいた時に “テクノを聴きながらうどん踏むイベントやったらおもしろくない?”っていう話になったから、“じゃあ、やろっか”みたいな軽い感じで始まって(笑)。初回はうどんとドリンクオーダー1,000円ていう価格設定でやってみたら、何も告知していなかったのに30人くらいお客さんがいらっしゃって。算数塾の常連の方々も “楽しい”って言ってくださったんですよ。それで1年経ってまたやってみようと思って。 “たのしい”っていう意見が一致するイベントって珍しいから(笑)」
――そういうものですか(笑)?
 「お客さんそれぞれ色々好みがあるんで(笑)」
――まあ、そうですね(笑)。風営法を皮肉っていることでも注目されていますけど、当初からそういったコンセプトもあったんですか?
 「イベント終了後のメディアの取り上げ方がそういう形になっているけど、実際には告知文章にもあるように“テクノの音楽を聴きながら、うどんを踏んだらどうなるか?”っていうギャグで始めたんだな。その中でちょうど風営法の話題にもなったので、話の中で“うどん踏んでいるだけです”って警察に言って、“うどん法”が成立したらおもしろくない?って感じで。“うどん法”できたらヤバくね?うどん県から苦情殺到。今度は風営法じゃなくて“うどん法どうなる?”ってニュースが流れそう。勝手に世の中勘違いだらけだね」
――2回目も天才算数塾での開催でしたが、ずいぶんお客さんが増えていましたよね。
 「第2回目からはちゃんと宣伝してみたら、SNSで盛り上がって、チラシを作らなくても当日230人くらい入ったんですよ。算数塾では収まりきらなくなっちゃって、急遽別の場所も借りて、休憩場も作った。あの伝説の悲なみちゃんをDJで呼べたっていうのは、改めてタイミング良かったと思うYO!」
うどん @Cay South-Aoyama, Tokyo 20140706
――それで3回目は算数塾から飛び出して、もう少し大きな会場でやってみたわけですね。
 「そうだね。3回目は東京と大阪でやってね。大阪では朝7:00から15:00まで。初めてにも関わらず100人以上集まってくださったから、初開催にしては、成功だった。でも、大阪でやるのはなかなかハード。イベント前に関西周辺を随時営業して回って交渉。人力ぴあならぬ自家製チケットを作って、色んなお店に協力していただけたことは、とてもでかかった。すごい面倒な作業なんだけど、人とあって、話してその場の付き合いではなく、また次の時の付き合いとしてできることが収穫でした。会場はYOSHITAKE EXPEさんもイベントで使用していたホテルの方のご厚意で、心斎橋のど真ん中にある場所を良い条件で貸していただけたんだけど、結局スタッフ7人分の新幹線代や材料代なんかの諸経費ですごくお金がかかった。時間も限られていたから東京と大阪で3日間眠れなくてな。疲れたんだけど、思い出としては心に残ってます。そんなわけで体力的に、若いけどちょっと無理だな、と思ったんですよ……。だから4回目は東京だけで、“朝の部”と“夜の部”に分けてやったらまあ、ちょうど良い感じなのかな、っていう(笑)」
――でも “朝の部”のスタートが朝7:00からというのも、なかなか大変なんじゃないですか?あえての早いスタートなのでしょうか。
 「テクノうどん第3回目から“朝の部”を始めたんですけど、池尻大橋でラオス料理屋さん(シャルマン ラオ)をやっているcay前店長の森川(俊二)さんが、“うどん屋といえばやっぱり、朝7:00オープンだよね”とおっしゃって。朝からやるのも良いかな、って思ったんだよな。早い時間だと場所代も良い条件で貸していただけるということもあって(笑)。それに、朝7:00からのイベントっていうのはSpiral始まって以来のことだと思うんですよ。朝早くのイベントって最近は増えたけど、その時はコンビニ並の普及率を誇るラジオ体操くらいのもんだったんだよ。それ以外で考えると、いち早く始めた屋内早朝イベント、っていうことでさ。青山という場所に朝っぱらから人が集まるっていうのは、インパクトがあるじゃないですか」
――そうですね。朝からたくさんお客さんいらしてましたよね。
 「そうなんですよ。“朝の部”は450人くらい。“昼の部”は550人くらい入って、入場規制がかかったYO」
第4回テクノうどん @Cay South-Aoyama, Tokyo 20140706
――朝来られていた方々の会話を小耳に挟んだら、“朝活”なんておっしゃってる方もいらっしゃいました。そういうところを狙う意味もあったんですか?
 「そういうわけでもないんですけど(笑)、“うどん踏んで食べてから会社行く”みたいなツイートはいくつか見かけましたね。そういう感覚でいらっしゃる方も多かったんだと思います。いらっしゃる方の客層が、普段音楽イベントに足を運んでいるような客層と全く違っていて。イベント前の質問事項にお子さん連れの方からメールにて、“スピーカーの音量ってどれくらい出るんですか?”っていう音楽イベントだったら聞かれない質問があったり。普段クラブに行っているような方だったら、たぶんそういう質問は出てこないじゃないですか。あとは、クラブに“独りで行きたいけど恥ずかしくて行けない”っていう人もいらっしゃったみたいだし、“テクノうどん”だと誘いやすいということもあってか、グループでの参加も多かったな。とても勉強になった。そこは、たまたまSNSで “テクノうどん”ていう名前だけで盛り上がっちゃったことも大きかったですね。」
――名前先行型(笑)。
 「そうなんですよ(笑)。有名なDJのプロフィールや前置きの文章よりも、シンプルで、単純である方が伝わりやすいということを学んだな。所謂音楽のイベントだと、何と何が対バンするとか、誰がDJをやるとか、そういうことで足を運ぶ方が多いじゃないですか。それと違ってイベント名のイメージが先行することで多くの方に興味を持っていただけるっていうのは、おもしろいな、と思いました。クラブと違って、ナンパ目的の人とかもいなかったですよね」
第4回テクノうどん @Cay South-Aoyama, Tokyo 20140706
――そうですね。可愛らしい女性はたくさんいらっしゃってましたけどね。
 「そうなんですよ!かわいいお客さんが多くて。そういうのも大事です(笑)。忙し過ぎて、メアド交換できなかった!次回あれば絶対番号聞く!セクキラだからな!」
――(笑)。以前と比較すると、細かい部分が色々と改善されていましたよね。それはやっぱり、様々なお客さんがいらっしゃるようになったことへの配慮なのでしょうか。例えば2回目の開催では、自分で踏んだうどんを踏んだ本人が食べるのではなく、まとめて製麺してたじゃないですか。現在では、ちゃんと踏んだ本人を札で特定できるシステムになっていますよね。
 「算数塾で開催した第2回テクノうどんの時は、所謂家庭用のガスコンロでは茹で時間が間に合わなくなってしまって。あれは完全に僕らのミスでした。自分で踏んだうどんを自分で食べる醍醐味を味わいに来てくださった方はがっかりされたかもしれませんね。あんなにお客さんがいらっしゃるとは正直思っていなかったんですよ。ていうか、いつもありえない出来事に遭遇するので、そこでの現場力というか、優秀なスタッフの機転やメンバーに助られたな。反省会を経て問題点を踏まえ、次からはアメシンくん(手塚新理 / 東京・浅草 飴細工アメシン)が改造して作った番号札付きの網を使って自分で踏んだうどんを食べられるように工夫したり、火力問題を解決して、予備のお湯を別に作るようにしたり。製麺にパスタマシンを使ったのも、麺の太さ6mmだと10分かかるところが、3mmだと5分で茹でられるからなんですよ。早く切れるし。本来はちゃんと包丁で切らなきゃいけないんですけど……。1時間にどれだけの人数に対応できるのか、シミュレートもしました。システムの相談にはすごく時間がかかりましたね。そういうメールのやり取りや電話のやりとりが、1日の6分の1を占めていたような。すごく濃密なやり取りがあっという間で……イベントはそれほど煮詰めた確認作業をしないと出来ないんだよ。今改めて思ったよ」
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うどん製麺
――今回はうどんだけでなく、サイドメニューも充実していましたね。そういうところにも進化を感じました。
 「サイドメニューを出したのは、茹でている間の待ち時間に、つまみが食べられるようにしたかったからなんですよ。前回もサイドメニューを出すには出したんですけど、採算度外視で仕入れた高級品だったんで、高くて全然売れなかったんですよね(笑)」
――たしかに、あまり高いと買わないかもしれないですね……。
 「そうですね。だからコロッケと焼きおにぎりは良かったですね。けっこう買ってくださっている方も多くて。お店(Cay)の売上にも貢献したかったしな」
――トッピングの海老天なんかもおいしかったですよ。
 「ありがとうございます。よかった(笑)。うどんも、どうやって美味くするかを色々考えたんですよ。足踏みうどんのお店に行って研究したり。経費を抑えるために、会社に交渉したり」
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トッピング / サイドメニュー
――想像以上に大変そうですね。
 「そうなんですよ。簡単そうで複雑っていう(笑)。企画って、誰でも出来そうで、出来ないものなんだよ。自分で体験してみないと分からないし、言葉では説明し辛い。“企画なんか誰でも出来る”とか、高を括って見られるのは困るな」
――構図自体はシンプルなんですけどね。
 「そう。やることはシンプルなんですけど、色んな手間も経費もすごくかかる」
――総合的に考えると、なんだかんだで音楽イベントよりも格段に費用がかかりそうですね。
 「倍以上かかりますね。会場になったCayさんのご厚意ですごく良い条件でやらせていただけたんですけど、それがなかったら、難しかったです。気持ちや熱意で参加してくださった方々に、感謝」
――上がりはちゃんと出たんですよね。
 「やっぱり物販での売り上げが大きくて。TシャツはBEAMSさんとのコラボレートで作っていただけたのが良かったですね。本当はアパレルさんとコラボレートで靴下も作りたかったんですよ」
――うどん踏む用の(笑)?
 「そうです。うどん踏む用の(笑)。かわいい靴下が出来たら、かわいい女の子が来るかもしれないじゃないですか。やっぱり、テクノうどんにはかわいい子が来てほしい(笑)!」
テクノうどんマーチャンダイズ
――そうですか(笑)。1,000人近くのお客さんがいらっしゃると、客層が多様化してイベントが活性化する反面、運営する側としては色々と難しい局面も迎えるのではないでしょうか。
 「そうですね。1,000人規模になって、良いこと悪い事も含めて今まで目にすることのなかった景色を見ることが出来ました。その景色を見たからこそ、もっと勉強して、まだまだ揉まれなければならないと自負してる。第4回〈テクノうどん〉では、当日の仕切り、タイムキーパーと経理はアメシン君、ホームページやデザインは駒ヶ嶺(亮一)さん、出演者の交渉と広報その他は僕という形で、それぞれ特技を活かして進行することが出来たので、上手くいったと思います。課題はたくさんありますけどね。例えば、来場者が多ければ多いほど、縛りや決まり事を作っても、埒が明かない。今回で言えば、イベント2日前に当日の注意事項を前売予約してくださった方全員に送って、撮影はOKだけどアップロードはNGにしたんですよ。禁止事項って、音楽のライヴ・イベントや演劇だったらわりと守られると思うんですけど、うどんだとなかなか難しい。“テクノうどん”なんて珍しいから、撮って公開したいっていうのはよくわかるんですけど。実際かなりSNSで写真や動画が拡散されていて、複雑な心境」
――アップロード禁止にしたのにはどういう意図があって?
 「オフィシャルで入ってもらったカメラマンに還元したかったというのがひとつありますね。記録はちゃんとしたカメラと撮影者でちゃんと残したいっていう。でも今は携帯で簡単に撮れるし、楽しいから、禁止が難しいっていうのはわかってるんですけど。話題が拡がってくれるのは嬉しいんですけど、“その場に来たからこそ楽しめるもの”っていう要素も重視していたから、情報を公開され過ぎるのも微妙なんですよ。謎な部分が残ってるほうがおもしろい。仕方ないことですけどね」
――有名税っていうことですかね(笑)。
 「そうですね(笑)」
――客層の多様化を踏まえて何か留意した点はありますか?
 「まず会場かな。当初は、青山ということもあってピテカン(原宿ピテカントロプス・エレクトス / 1984年閉店)の跡地(現メキシコ料理店)も検討していたんですけど、青山のおしゃれな感じに合う会場の雰囲気とか、よくわからない組み合わせなんかを吟味して、あの形になったんだな。あと今回は、サブカル臭を出来るだけ無くすようにしたね。僕個人としては、そこにかなり拘りを持っていて」
――幅広い層にアピールしたいということ?
 「はい、それとクリアな感じにしたくて。やっぱり、今回DJで参加してくださった大度さん(真鍋大度 / Rhizomatiks)みたいに、マニアックなことも、プロフェッショナルなことも両方出来る人に憧れるんですよ。どんな状況でも、色んな立ち位置から物事を進められる人というか。大度さんはNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』みたいな面で見られる割合が大部分だと思うんですけど、そのほかのみえないところでの動き方や、DJも昔からやっていて、音楽への情熱も人一倍強かったりするじゃないですか。そういうところがかっこいいんですよね」
第4回テクノうどん @Cay South-Aoyama, Tokyo 20140706
――そうですね。それは天才算数塾の見られ方を意識していて、そのイメージを排除したところで何かやってみたかった、ということですか?
 「テクノうどんに関して言えば、そうですね。できるだけ見えないようにはしたかった。算数塾の企画は算数塾の企画でちゃんとやるんですけど、僕はサブカルチャーに興味があるわけでもないし。本当のサブカルチャーは好きなんですけど、とにかく中途半端なのは大嫌い」
――サブカルチャーっていうか、所謂“サブカル”が嫌いっていうことですよね。
 「そうですね。今、なかなか本物のサブカルの人ってあまりいないから。例えば音楽だったら、出演者の音楽を目当てに、本当に好きな人しか集まらないイベントってあるじゃないですか。数の大小ではなく、そこに目的を持って来て、お金を払って、鑑賞するという。そういうイベントに人が集まるっていうのはすごく良いことだし、大好きなんですよ。でも、お金払ってでも行きたくなる良いイベントは少なくなりました。だから最近は、馴れ合いや“いい人”ビジネス、村意識のあるイベントに行くことを避けて、自分が本当に行きたいものを欲求で選択して、常に新しいところやひどいところなど意見が同じイベントなのに、何パターンも意見や感想が別れるようなイベントに行くようにしてるんですよ。東京に限らず、全国おもしろければ。それがすごく勉強になってる。その場でしか見られないものを見に行く足の軽さも大事にしてるね。その点、〈テクノうどん〉はお客さんのメインはうどんを踏むことで、DJ目当てに来てるわけじゃないと思うんですよ。大度さん自身は有名かもしれないけど、DJとしては知る人ぞ知る存在だし、中西俊夫さんをDJで呼ぶという話もあまり聞いたことがないし。藤崎ルキノさんもそうですよね。お客さんの8割は知らない状態で。だから、音楽が好きで来てるかどうかというのとは、また別の話になってくる」
第4回テクノうどん @Cay South-Aoyama, Tokyo 20140706
――なるほど……。でも、音楽を聴くという目的の人でも興味津々のDJラインナップですよね。それぞれに個性的で。人選はどのようにされのでしょうか。
 「自然な感じであのラインナップになったんですけど、色んな人に“なんでこんなセレクトになったんだ”って言われますね(笑)。アメシンくんは、10代の頃に木更津でDJをやってたみたいで。中西俊夫さんは個人的にずっと呼びたかったので、まさか本当に参加のお返事いただいたときは、嬉しかった。小田島 等さんや、ボノボ(東京・渋谷 bar bonobo)の成(浩一)さん、長谷川踏太さん(W + K Tokyo / tomato)、真鍋大度さんは個人的にお世話になっていたり、恩返しや感謝の意味も含めてぜひ参加していただきたくて。野本かりあさんは、CAPSULEのこしじまとしこさんとメールのやりとりをしていた時に、“かりあちゃん良いよ”って紹介してくださったんですよね。こしじまさんのアドバイス、本当に助かりました!」
――それだけの面々を集めるからには、音楽目的の人とうどん目的の人をクロスオーヴァーさせていこうという意図もあるのではないですか?うどん目的でいらっしゃった方が、音楽に興味を持ち始めるような。
 「そうですね、“知らないけどなんか良い”と思えるような環境作りは考えてますね。19歳の頃から、カウンター・カルチャーに関して問題意識を持っていたので。根本的な考え方は、今も昔も変わっていません。言い方は悪いんですけど、洗脳していくというか。世の中の大マジョリティの中にも、一見マトモそうに見えて、実はヤバい人って多いじゃないですか(笑)。真っ当そうに世間が見える人ほど、多角的な視点では変態的。そのからくりはいったい何だろうか?っていう。健全な場所で、そういう領域まで持っていく方が近道のような気がするんですよ。ほかのスタッフの考え方はまたちょっと違うんですけど(笑)、僕個人としてはそういう感じで。本当に良いな、と思えるものはちゃんと評価されていくと思うんですよね」
第4回テクノうどん @Cay South-Aoyama, Tokyo 20140706
――たしかに。 “健全”であることはツールとして大事ですよね。 “クラブ”と言えばノリピーに始まり、“摘発”“脱法”みたいなイメージしか持たれていない感じですもんね。
 「そうでしょうね。そこに今“うどん”が入るっていう(笑)。いろんな人手や準備も必要だし、少し地味な作業だけど、そうすれば少なからず状況が変わる気がする。常に緊張感がある感じが良いですね。だから、次回以降は子供が巣立った世代、YMO世代の歳の人もいらっしゃるような年齢の振り幅が大きいイベントにしたいんですよ。10代の方や動物もOKにしたいっす!大変だけど。個人的には松平 健さんを呼んで、おばちゃんたちも巻き込んだ幅広い年齢層にもたくさん来ていただくことも考えてますね」
――そうなんですね(笑)。1980年代後半のレイヴが登場した時代って、DJが有名かどうかということよりも、その場所の空気を重視する傾向があったと思うんですよ。〈テクノうどん〉はそういう感覚に近いところもあるのでしょうか。
 「そうですね。昔インドのゴアに行ったことがあるんですけど、街中の、おばちゃんが経営しているようなレストランでパーティをやってたりするんですよ。ああいうのいいな、と思って」
――サウンドシステムもノリ的に近いものがありますよね。
 「そうかもしれない。実際そこまで考えていたわけではなかったんですけど、結果的にそうなって。最近見た〈ラオスフェスティバル〉内のイベントで観た高校生のジャズ・バンドの演奏みたいな感じも良かったですね。台しか置いていない手作りっぽいステージで、しかも高校生のジャズ・バンドはラオスとは全然関係ないのに、妙にカレー食べながら音楽を聴いてしまって。あと、数年前に沖縄のゲストハウスのイベントにDJで呼ばれた時、現地にCDJが無くて島民の方がプレイステーションをCDJ代わりに持ってきたんです。たぶん、普通なら怒るところだけど、その場の雰囲気や一生懸命用意してくださった気持ちは、完成度の高いステージ作りとはまた違った魅力があって。変に思い出に残ったんですよ。どんな音楽でも並列に見せてしまう、人の思想やプロ以外の手が加わる熱量を感じさせる手作りのステージ、そこが目指すところなのかとも思ったり……。80年代後半というところで言えば、水中にスピーカーを入れてプールでイベントやったりだとか、当時は場所に特化したイベントも多かったんですよね。そういうところにも興味があります」
――〈テクノうどん〉では開催環境を変えての展開は考えてはいないんですか?野外とか。
 「野外は大変なんですよ。保健所やイベント保険の申請もあるし、床のブルーシートをもっと頑丈なものにするだけで100万とか200万とかかかるらしいんですよ。雨が降った時のことを考えて屋根を作るとなると、設備代だけで辛くなっちゃう」
――それは結局屋内のほうが良いってことになりそうですね。
 「そうなんですよ。屋内じゃないと無理。しかもCayみたいに、プロフェッショナルのスタッフの方がいらっしゃる場所だと本当にやり易いんですよ。今回も色々助けていただきました」
スタッフの皆さん
――大阪での開催はしんどかったとおっしゃっていましたが、開催地を拡大することは検討していないのでしょうか。オファーもあるんじゃないですか?
 「経費がかかるので、積極的には考えてないです。オファーはたしかに、けっこうありますね。サンフランシスコとか、海外からも」
――今回1,000人以上動員したということで、より大きな会場での開催ということは考えていらっしゃると思うんですけど。
 「そうですね、検討はしています。1,000人規模で一斉にうどんを踏むっていうのはインパクトがあるな。見たことないですけど。でも結局、難しいのは中身や質をどう追及していくかっていうこと。イベント内容以外の事も意識しながら極限まで費やさないと。イベントが大きかろうがく小さかろうが、どんな場所でやるべきかということは常に考えます。1,000人クラスになると様々なファクターが絡んでくるので、自分たちの意思をどこまで自由に出来るかっていうところが課題ですね。今僕が行なっている活動の原点は、インディペンデントの立場から様々な場を見てきた感覚を存分に使って、“ここでしかできないこと” 好き勝手にやるっていうことなんですよ。大きい場所でしか出来ないこともあるけど、逆に大きい場所では出来ないこともあるっていうこと。それが自分たちの出来るペースに合ってる。例えば日本武道館とか東京ドームみたいに突き抜けた場所だったらおもしろいとは思うんですけど。誰かお金出してくれたらやれますね。出してくれますか?? 誰か!! あとは、Richie Hawtinさんがイビサで2万人動員したイベント(Richie Hawtin presents ENTER.)とコラボレートするとか。そういう、個人では明らかに不可能な場所で出来れば笑えるほどおもしろいので、興味ありという感じです」
――壮大ですね(笑)。
 「イビサのあの感じを、例えば〈瀬戸内国際芸術祭〉と絡めて瀬戸内の島でやるっていうのも考えてます。けっこう盛り上がるんじゃないかと思ってるんですけど」
――瀬戸内良さそうですね。本場のうどんもあるし。だいぶ色々構想はあるんですね。
 「はい。あと個人的には、Senor Coconutさん(Uwe Schmidt)とやりたいです」
セクシーキラー氏
――〈テクノうどん〉当日にセクシーキラーさんのDJを拝聴致しましたが、Senor Coconutsさんの曲に頼り過ぎの選曲じゃないですか(笑)?
 「あはは。すいません(笑)。ほんと、好きなもんで。あとは細野晴臣さんの『トロピカル・ダンディー』をライヴで聴きながらうどんを踏むとか、ショーケンのライヴ聴きながらとか、TRFSAMさんにうどん踏んでもらったりとか(笑)」
――贅沢過ぎでしょ(笑)。ほかにはどんな展開を考えているんですか?
 「そうですね……。ここでは言えないです。ひみつ・トラブル。どうしようかな」
――色々夢広がりますね(笑)。
 「そうですね。それも日本にうどんがあったからですよね(笑)」
取材・文・写真 / 久保田千史(2014年7月)
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