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エイドリアン・シャーウッド、レゲエへの愛を語る

エイドリアン・シャーウッド、レゲエへの愛を語る
 三宅裕司SET、スネークマンショーからDEPECHE MODE(デペッシュ・モード)SKINNY PUPPY(スキニー・パピー)まで手がける名プロデューサー/エンジニアにして、英国レゲエ/ダブのパイオニア、On-U sound主催者Adrian Maxwell Sherwood(エイドリアン・シャーウッド)『ダブセッター』で再び顔を合わせたLee“Scratch”Perry(リー・スクラッチ・ペリー)とともに来日中の彼を直撃。リハーサル直後の疲労と空腹の中、穏やかに答えてくれました。

――また日本にお越しいただきありがとうございます!
エイドリアン・シャーウッド(以下同) 「うん、僕もうれしいよ」
――今回は再びLee Perryとの来日です。Leeとの付き合いは長いですよね。
 「『Time Boom x De Devil Dead』(87年)のときからだから、22、3年てところかな」
――初めて顔を合わせたときの印象はいかがでしたか。
 「そりゃ僕にとっては“ヒーロー”だよ」
――作を重ねて、印象は変わりましたか。
 「Leeに初めて会ったときは、彼にとって人生の一番辛い時期だったんだと思うんだ。やたら酒をあおって、ウィードもしこたま吸って、いつ何が起きても不思議じゃない状態だったよ。今のLeeはベジタリアンで酒も草もやらないし、聖人のようだね(笑)」
――2006年の〈DUB SESSIONS vol.2〉で来日された時にお二人のセッションを拝見したのですが、あなたが今でも畏怖の念と言うか、変わらない尊敬を抱いているように感じました。
 「Leeは20世紀の音楽で最も重要なアイコンの一人だからね。彼が1960年代、70年代、80年代に遺したもののどれを取っても、強烈なインパクトと影響力があったと思うよ」
――あなたがレゲエのシーンから出てきたことは間違いないと思うのですが、レゲエ以外の音楽で好んで聴くものはありますか。
 「ジャマイカン・ミュージックが一番好きなのは間違いないよ。あとはジャズとか……。家では娘が好きでかけているものを聴くことが多いかな。最近ロンドンの音楽がおもしろいよね。グライムとか、ダブステップとかね」
――ダブステップは具体的にどんなアーティストがお好きなんですか。最近のあなたの作風だとSkull Disco周辺なんか合いそうですけど。
 「DIGITAL MYSTIKZ、BENGA……HORSEPOWERもいいし……みんな好きだよ(笑)。レゲエから発展した音楽がやっぱり好きなんだよね。ダンスホール、ジャングルときて、最新型はダブステップ。レゲエが単にノスタルジックな音楽として留まることなく、常に進化しているということが感じられるし、素晴らしいよ」
――ダブステップは近年ベルリン・ダブと接近してきていますが、そちらのMoritz Von Oswald(モーリッツ・フォン・オズワルド)周辺のダブにも興味がありますか。
 「BASIC CHANNELとか? クールだよね。一緒に何か作るといった予定はないけど、今年の〈The Big Chill Festival〉(本年は8月6日より3日間開催、英国の大型野外フェス)で〈Summer Of Dub〉っていうライヴ・イベントをやることになっていて、それに出てもらおうと思ってBASIC CHANNELにも声は掛けてるんだ。あとDIGITAL MYSTIKZとかCongo Natty(コンゴ・ナッティ) 、KODE 9も誘ってるよ(編集部注:BASIC CHANNEL、DIGITAL MYSTIKZは結局出演しない模様。その他Andrew Weatherall(アンドリュー・ウェザオール)、DUB SYNDICATE、MOODY BOYZが出演予定)」





――近作のTHE BIRTHDAYをはじめ、ACOAUDIO ACTIVE(オーディオ・アクティヴ)など、バラエティ豊かな日本人アーティストのリミックス・ワークを手がけておられますが、そのチョイスにご自身の意思は反映されているのでしょうか。
 「THE BIRTHDAYは友達に頼まれたのがきっかけだな。ACOも最初はSinead O'Connor(シニード・オコナー)のプロダクションが気に入ったからとういうことでオファーをもらったんだけど、彼女自身素晴らしいアーティストで、新しいチャレンジだった。AUDIO ACTIVEは家族だね。10年以上の付き合いだし、日本におけるダブのパイオニアだよ」
――ご自身をエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーであると考えていますか。
 「いや。本当はアコースティックなサウンドが好きなんだよ。ドラム・マシーンに始まり、ここ20数年でエレクトロニクスの機材はどんどん強力なものになってきているから、可能性を広げるためにそういうものはもちろん使うけどね」
――近年は昔のようにテープ機材を用いた制作はされていませんよね。
 「テープはね、デカ過ぎるんだよ(笑)。この部屋いっぱいのテープを使ってできることが、今はではパソコン一台に収まるからね。そういうことを考えると、アナログ機材を使ったアート・フォームっていうのは、終焉に近づいているんじゃないかな」
――アナログ機材の雰囲気もデジタルで表現できるということなのでしょうか。
 「先日リリースされた『ダブセッター』はほとんどプログラミングで作っているから、聴いてもらえれば分かると思うよ。MPCのスウィング機能を使ったりすれば、ドラム・マシーンとは違って生っぽい、セクシーな感じがちゃんと出るんだよね」
――最近はDJのときもCDでプレイされていますよね。
 「ヴァイナルでしかスピンしないDJもまだまだたくさんいるけど、僕がCDを使うのは単に便利だからなんだよ。音の質感はもちろんヴァイナルのほうが良いよ。でもフロアでそれを求めている人がどれだけいるのかってこと。分かる人には違いが分かるかもしれないけど、そんなこと気にしない人は気にしないんだよ」
――最後に、日本の好きなところと、今後の予定を教えてください
 「日本人は、お互い適度な距離を保ちながらも尊敬し合って生活してるってところがいいよ。新しいものを取り入れることに積極的で、プログレッシヴかつクレイジーなところも素晴らしい。僕の住んでいるところでは保守的な人が多いからね。環境もいい。都市部はきちんと整備されているし、田舎に行けば温泉があって、桜も見られるし。僕が日本に住んでいないから、ある種ファンタジーかもしれないけどね。今後の予定としては、来年の12月でOn-Uが30周年を迎えるから、それに合わせてリリースするBOXセットの準備だね。Kishi(Yamamoto/On-U作品の多くでアートワークを手がける)の作品がたくさん載ってるブックレットも入ることになっているよ」



取材・文/久保田千史(2009年6月)
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