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interview“意識が及んでいない部分を探りたい”Akiko Kiyama、待望の2ndアルバム『Doublethink』をリリース

AKIKO KIYAMA / 2011/11/30掲載
“意識が及んでいない部分を探りたい”Akiko Kiyama、待望の2ndアルバム『Doublethink』をリリース
 ベルリン / 東京を行き来しながら、オリジナリティ溢れる作品群を生み出し続けているクリエイターAkiko Kiyma。彼女が2008年の『Seven Years』以来約3年ぶりとなる待望の2ndフル・アルバム『Doublethink』田中フミヤ / 半野喜弘が主宰する「op.disc」よりリリース。“かのRichie Hawtin(リッチー・ホウティン)が名作ミックスCD『DE9 | Transitions』(2005)で楽曲を使用したベルリン在住邦人女流ミニマリスト”という前置きをぜひ一度横に置いて聴いていただきたい、“表現者”としての幅を確実に拡げた実に魅力的な音楽作品に仕上がっています。同作について、メールにてインタビューに答えていただきました。
――「op.disc」からのリリースは2度目となるわけですが、yoshikiさんとのコラボレート作以来ずっと交流が続いていたのですか?アルバムリリースに至った経緯を教えてください。
 「yoshikiさんとのスプリットEP後もopのパーティーでプレイさせていただいたり、コンピレーションに参加させていただいたりと交流は常にありました。いつ頃かよく覚えていませんが、シングル・リリースのお話をいただいて。自分としてはアルバムを作りたかったこともあり、昨年イタリアで(田中)フミヤさん、半野(喜弘)さんと同じフェスティバルでプレイした際に直接話し合って、アルバムという方向に決まりました」
――ミニマル一辺倒ではなく「Ex5」や「Advantage Of Tweezers」のようなホームリスニング・フレンドリーな楽曲も収録され、前作に比べよりアルバム単位での作品作りを意識されているように感じました。全体通してのコンセプトのようなものはあるのでしょうか。
 「ミニマルはもちろん自分のスタイルだったり、作品の落としどころだったりしますが、自分がミニマル・ミュージックにとても大きな影響を受けたかと言われると実はそうでもないんです。数年前からリリースやプレイを重ねるうちに何かとても閉塞感を感じ始めていたのは確かですね。お客さんはそういう音を求めて遊びに来てくれるんだと思いますが、自分の中ではあくまで沢山ある落としどころのひとつでしかないので、一度リセットさせたかったんです。そういう経緯で、2009年頃からとてもプライベートに“Ex5”や“Advantage Of Tweezers”のような曲を作ったりしています。そもそもミニマルやテクノを作り始めた時も“リリースをしたい”とかそんな気持ちはどうでも良くて、ただ自分の中で作りたいから始めたことなので、本来の気持ちに戻ろうという意識があったんだと思います。この数年は“作らないといけないから”作っていたというのは事実で、そこからやっと解放された部分と、厳密には解放できていない部分が両方あって矛盾に苦しんだのですが、それがある日とても不思議で滑稽に感じられて。アルバム全体や個々の楽曲についての細かいコンセプトというのはないんですが、その変遷期というか、時間の経過を丸ごとパッケージにしたかったということです」
――各楽曲の印象が少し明るくなったような気がします。ファニーというか。以前よりも“気持ち”が込められているのを感じるのですが、気のせいでしょうか…。震災後、「Descanso」主催のチャリティ・コンピレーションや、ベルリンでのベネフィット・イベント〈KI.ZUNA〉などに参加されていたこともあって、“少しでも明るくしよう”という意志のようにも思えるのです。
 「昔の自分のトラックを今聴き直してみると確かに暗いな、と思いますね。当時は“暗い”とか“黒い”とか色々言われても自分ではピンと来なかったのですが。敢えて明るくしようという意識は正直全くなかったです。いつもそうなんですが、頭で“○○しよう”という意識を制作においては極力消すようにしています。そういう意識が及んでいない部分を探るために音を作っていると言ってもいいので。でも結果的に音が明るくなっているんだったら、意識になくてもどこか身体か頭の奥の方にはそういう思想があったのかもしれないですね」
――ホーンやストリングスのサンプリングを用いることで、オーガニックなテイストが増したと思います。そういった効果を狙って使われたのでしょうか。
 「そこはよく分からないです。中学生の頃から“NinjaTune”の大ファンだったのでサンプリングに抵抗がないんだと思います。ギターを使い始めたのは何ででしょうね。その昔自分でもギターを弾いていたり、ロックが好きだったりで音が懐かしかったのか、単純に音が好きだったか、ですね」
――「Maggio」のスクラッチはご自身がプレイされたものですか?「Advantage Of Tweezers」のギターはご自身で弾いていらっしゃるのかな、と思ったのですが。
 「“Maggio”のどこの部分かよくわからないのですが、とりあえずスクラッチはしていないです。ターンテーブルは家にあって、DJミキサーも形だけ一応持っているのですが、本当に一度も家でもDJをしたことがなくって。宝の持ち腐れ状態です。ギターはたまに自分で弾いて録音することもありますが、サンプルとして大量に保管してしまうので、実際どれがどのサンプルだったか全くカオス状態で……。すいません、パソコン内の整理整頓はものすごく悪いので、何がどこにあるかよくわかってないんです。使ったか覚えてないですね」
Akiko Kiyama
――ミニマルというと淡々としたイメージがありますが、Kiyamaさんの楽曲はどことなくストレンジで、イーヴン・キックの音楽以外からの影響も強く感じます。普段どんな音楽を聴いていらっしゃるんですか?
 「音楽の聴き方は他人からもおかしいと言われるし、自分でもまあおかしいかなと分かってるんですが、とりあえずジャンルも録音状態も全くこだわらないです。ジャンルにこだわらないのは良い事だと思っているし、たくさんそういう人もいると思いますが、どういうわけか録音状態にもこだわらないので、ラジオで気に入った瞬間を録音して聴き直すとか、CDよりYouTubeに上がってるライヴの方が良ければそればかりを聴いたり。多分、作品全部のクオリティーが高いことを求めてないんだと思います。何か感じられるものがあったらそれをずっと聴いているタイプなので、消化するのにとても時間がかかって。なかなか次に進めないです。ここ最近、とにかくよく聴いているのはMotorというアーティストで、移動中も寝る時も歩いている時も聴いてます」
――ジャケットの髪の毛が意味するものは?
 「“Doublethink”という名前にちなんで、何かいかにもそれらしい(本物らしい)ものに、“実は違う”というものを対比させるか、混在させるかしようと思っていて。日常にどんなものがあるかなと考えた末にウィッグを思いついて買ってきたんです。モノクロの予定だったのでグレー系で、単色だと多分つまらないので、老婆系のウィッグなんでしょうか、微妙に白髪や黒髪が混じってるものを買ってきて。それに普通の三つ編みを金属のボールやチェーン、ビニールのチューブなど混ぜて編み込んでいたんですが、絵としてあまり面白くなくって。“こういうアクセサリー売ってそう”っていう。 どうしようか考えているうちに三つ編みを中途半端に5本くらい作ってしまっていて、することがなくて放置していたんですが、ふとそれがおもしろい物体のような生き物のように見えてきて。アリクイに見えたり、カニに見えたり、カツラにも見えたり。それから少し改良したり写真の撮り方や色見を工夫したりで、今のジャケットになりました」
――ジャケットもストレンジですが、インストだけにそれぞれのタイトルがまた想像力を掻き立てますよね。「I'm Sorry I Did It」は“寝坊しちゃったのかな?”とか。「Sea Otter vs Turtle」は「ぼのぼの」を連想しちゃいましたけど…。タイトルにまつわる印象深いエピソードがあれば教えてください。
 「“I'm Sorry I Did It”はタイトルの通りで、ああいう曲に本当はしたくなかったんです。“○○しよう”という欲を消して作っているので、そうしていたらこんなになってしまったんだって、自分に対してかお客さんに対してか分かりませんけど、謝っています。多分自分に対してですね。“Sea Otter vs Turtle”はあんまりほのぼのする話でもなくて。作っていた前後の日に、強烈な夢を見たんです。フライパンの上で私がラッコを焼いていて、ラッコはすごく苦しそうで私もそんなことしたくないのに、何故かそうしなくてはいけなくて。それが焼けたんでお皿にひっくり返したら、今度は亀になっちゃったっていう夢で、あまりに強烈だったので……」
――アルバムタイトル『Doublethink』は“東京とベルリン”という2都市を思い浮かべたのですが、安直過ぎでしょうか……。
 「大きな意味では東京、ベルリンというのも当たってなくないですね、今言われて気付きました。矛盾した思想が自分の中に共存してしまっているのがとても不快で、どうにかどちらか1つに絞りたかったんです。互いに矛盾はしていても、それぞれ間違っていないと思っていたのか絞りきれず、その間悶々としていたのですが、それでも不思議なことに月日が半年も1年も経ってしまって。私としてはそれが信じられないことで。こんな状態は有り得ないと思っていたのに。今でも正直その状態はある種続いているんですが、逆に言えば両方とも肯定して受け入れることが少しずつ出来てきたのかもしれないです。自分にとってそれはかなり大きな変化だと思っています。それが良い事が悪い事か、いまだに分かってませんが」
――動物ファンとお見受けしております。一番好きな動物を教えてください!
 「東京の実家に犬がいるので犬はもちろん好きですが、一番好きな動物は猫。特に化け猫みたいな猫ですね。あとパンダの座っているところも好きです」


取材・文 / 久保田千史(2011年11月)
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