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interview“まだまだやりたい事は萎えてないし、薄くもなってない”ソロ活動20年目を迎えたDJ KRUSHのPast & Future

DJクラッシュ / 2011/12/28掲載
“まだまだやりたい事は萎えてないし、薄くもなってない”ソロ活動20年目を迎えたDJ KRUSHのPast & Future
ターンテーブルとサンプラーの持つ可能性を最大限に活かした独特の音楽性で、日本のヒップホップ、ビート・ミュージックを世界に知らしめた男、DJ KRUSH。あまりに伝説的な存在ながら、伝説にするには早すぎる。最前線に立つ“音楽家”として世界を相手に前進を続ける正にリヴィング・レジェンド。2011年、ソロ活動のスタートから20年目を迎えた彼が、アニヴァーサリー・バッシュを機に本格始動!2012年夏に予定された待望過ぎるニュー・アルバムのリリースに向けマンスリー配信シングル・シリーズが進行中のDJ KRUSHに、“これまで”と“これから”を語っていただきました。
――この時間で振り返るには短すぎると思うのですが、20年を振り返ってみて、長かったと感じますか?短かったでしょうか?
 「想像していたより短かったよ」
――20年前に、現在のことを想像されていたということですか?
 「してなかったね。でもちょっとだけ、すごく遠くに、“幾つまでDJやってるかな?”とは思ってたかな。今回20周年ということになってるけど、本格的なソロ活動でというところの20周年だからDJ歴としてはもっと長いよ。でもアルバム・デビューしたのが30歳だから、決して早くはないよね。その当時すでに家族もいたしね。だからこそ、イコール“職業として成り立つか?”というところで凄く葛藤があったし、“これで生活できるのかな?”という不安もあったけど、そこに行くためにがんばらないと、っていう感じでとにかく必死だった。今目の前にあることに一生懸命向き合って、その場その場を大事にして、次に繋げてかなくちゃいけないって気持ちが強かった様に思う」
――それが今や、世界の……。
 「いやいや(笑) 。でも、俺は英語とか喋れないけど、世界中の人達と音楽を通して交流を持たせてもらえているのは本当に幸せなことだよ!」
――映像作品でしか拝見したことはありませんが、海外でプレイされている時の会場の空気感、圧倒的だと思うんです。ご自身では、そういう存在になると予想していましたか?
 「いや、そうなるってことは全然想像なんてできなかった。ただ、そんな風になれるように、唯一俺にしかできないことをできるように、努力はしてきたよ。今回足を運んでくれた客が次も来たくなるような何かを毎回置いてこなきゃダメだからね。そういう捉え方は、キャリアをスタートさせた頃からすごくあったとは思う」
――具体的にどんな努力だったのでしょう。
 「言葉で表すのはすごく難しいけど、純粋に何事に対しても“KRUSHらしさ”を出していくっていうのを常に念頭に置いて行動してきたことなのかな。俺が誰かさんと似たようなプレイをしたって、アメリカのヒップホップを真似して日焼けサロンに行って真っ黒になって、ドレッドにしてこんなこと(軽く腕を広げて)やったりしても、誰も面白いとは思わないしね(笑)。俺らしさっていうのが本当に大事だと思ってる。そして、俺の場合はその背景にたまたま日本があったりするんじゃないかな。特に海外の人たちは、そこを多分評価してくれてるんだと思う。“あいつのあの感じが聴きたい”っていう感じでね」
――KRUSHさんの孤高のオリジナリティは誰も疑う余地のないものだと思うのですが、
 「いやいやいや(笑)。まだまだ旅の途中!」
――(笑)。自らの意思でオリジナリティを出して、それを聴いてもらおうという気持ちになったのは、やはりソロになられてからなのですか?
 「そうだね。そうなったのはやっぱりKRUSH POSSEの存在が大きかったと思う。MUROがいて、GOがいて、俺がいて。3人ともヒップホップがものすごく好きだったの。でも、MUROくん、GOくんと俺は歳が結構離れてて、彼らは年下だったから、要するに価値基準ていうものが少し違ってたんだよね。その頃、俺はもう子供もいたから、頭の中には“これで絶対メシを食わないと”っていうのがあった。でも彼らはまだそうじゃなかったんだと思う。彼らの目指すところは“いかに本場のヒップホップっぽくやるか”だったんだけど、俺はもっと自由にやりたかった。ヒップホップの美学よりも、自由を取った。それに、どうせやるんだったら世界に出たいと思ってたし、その当時のヒップホップの見本ていうのはアメリカだったんだけど “アメリカっぽいこと”をやってたって絶対ウケるわけがないって……。世界に出たときに、日本人がアメリカの黒人の真似したところで絶対通用しないって思ってたから。なんだかんだで解散した時に感じたのは、やっぱり何か自分なりの個性を確立させていかないと生き残れないってことだった」
――その後、MUROさんたちは現在に繋がる日本のヒップホップ、日本語ラップというか、その土台を作っていかれたわけですけど、それについてはどう思われているのですか?
 「うん、それはそれで彼らの道だったろうし、美学を求めて突っ走るのも素晴らしいと思う。彼らも止まらずに進んで行ったからね。そこに関して何も否定する理由はないよ。ただ見ているヴィジョンていうものが当時の俺と彼らではちょっと違っていただけだから。でも、MUROはMUROで、今では、彼にしかできないことを突き詰めて、シーンに対して大きな存在になっている訳だし。それは俺にとっても凄く嬉しいことだよ」
――そうしてKRUSHさんとMUROさんたちは別の道を歩み始めたわけですが、少し後から出てきた世代の皆さんは、どちらの道も見てきた方達だと思うんです。
 「あはは(笑)。そうだね。俺らより後の世代っていうとどのへんになるんだろう。YASとか?」
――そうですね、KENSEIさんやQUIETSTORMさん達もそうじゃないでしょうか。ご自身で蒔いたものが、個性的に花開いていく姿を見るというのはどんな気分なんでしょう?
 「それぞれ違う色の花が咲くっていうのは面白いよね。人が与えてくれた花壇の中に花を咲かすんじゃなくて、その場所も自分で探してきて耕してさ、自分でスコップで混ぜて肥料も撒いて、自分の好きな色の花を咲かす。すごい大変だけど、俺はそれをやってきたと思うんだよね。“ヒップホップ”っていう、すでにある畑に花を咲かせるのは、俺は嫌だったんだよ。地面そのものを、自分で耕して作り変えたかった。 “ヒップホップかどうか”なんてことは関係なくて、それが俺のヒップホップだと思ってたから」
――それは並の気持ちで出来る事ではないですよね……。
 「でもそれをやらなきゃダメだったんだよ。そうやらないと通用しないだろうなって思ってた。俺は。だってさ、あの当時アメリカのヒップホップって超かっこよかったんだから! Premierの音とか。“こんなのどうやって作ってるんだ!?”って。“真似できない”って思ってる時点でもう負けてるわけ。“それを追っかけてどうするんだ!”っていう話よ。そこに勝つようなものに根っこから変えていかないと。AKAIのサンプラーなんて日本の製品なんだしさあ。それと年齢かな。その時に背負っていた背景と。若ければそんなこと考えなかったと思う。当時は地下足袋履いて泥だらけになってる仕事と天秤に掛けてて、DJばかりだと稼ぎがなくて女房とケンカもしたしね。そうするとやっぱり俺も意地があるからさ。とにかくDJっていう“職業”を成立させたいっていう強い気持ちがあったよ。あと人と同じ事は嫌だったしね。人から命令されるのも嫌だったし」
――それは当時のお話ですけど、現在も“人と同じ事は嫌だ”というお気持ちは変わられていないんじゃないですか?
 「うん、そこは、“人と違うことをしたい”っていうんじゃなくて、“人と同じ事をしてたらダメだって”いう感じ。吸収してからそれを上回ったものを出さないと。そうじゃなかったらオリジナルのものを聴けばいい話だから(笑)。PremireやJ Dillaがヒットしたら、似たような音を作る奴がいっぱい出てくるじゃない。それを超えたものでないと。ある時期は売れると思うよ。“あれっぽいね”って感じで。でも、俺に言わせりゃ“何があれっぽいだよ!”っていう(笑)。“そこじゃねーよ”みたいな(笑)。でもそれを楽しんでる子たちもいるから、そこはあまり強くは言えないけど。でも俺達はそういう価値観じゃない。だから波風あったよ。敵も作るし。『Strictly Turntablized』が出た頃なんて、“これはヒップホップじゃない”とか散々言われてたから。でも、別に既存の枠にはまったものを作ってるつもりはないし、そんな枠で作ってなかったからさ」
――でも、すごく個人的なお話をさせていただけば、やっぱりKRUSHさんの作品は“ヒップホップ”で。当時の僕にとってヒップホップはイジメっ子たちのBGMでしかなかったんですが、KRUSHさんの作品は信じられる“ヒップホップ”だったし、かつ確実に“音楽”で。そこからヒップホップを好きになる事ができたんです。そう思うことができたのは、KRUSHさんが逆にヒップホップ作るつもりじゃなかったからなのかもしれません。
 「今俺がやっている、“サンプリングして、曲として組み上げていく” っていう、ヒップホップをきっかけにした手法って、よく考えると子供の頃から繋がってるんだよね。小さい頃は家が裕福じゃなかったから、プラモデルも買ってもらえなくて。裕福な友達の家に行くと、プラモデルの残った枠とか使わなかったパーツ、残ったシールとかあるじゃない?丸まった半端な接着剤とか。あれをいっぱい色んな友達からもらってきて、集めて、考えて、違う新しいものを好きで作ったり。昔の通信簿を見ると、図工はやっぱり成績良かったのね(笑)。ボール紙で作った帆船が学校に飾られたり、俺の描いた絵が学校の運動会で配る景品の手帳の表紙になったりね。それに太鼓が好きだった。鼓笛隊もやってて。朝礼で生徒が校庭に入っていくときに太鼓を叩いてさ。他の人は笛なんだけど(笑)。そういう子供だったんだよ。だから、その頃のバックボーンがちゃんと今に繋がってるっていう……。でもどこで間違えたか中2くらいでだんだんそういうのが面白くなくなってきちゃって、バイク乗ったり、悪さばっかりしたりとか、まあ、そっちにいっちゃったんだよね(笑)。音楽みたいな表現から離れちゃった。若いから何がやりたいか分からなかったんでしょうだろうね。学校もろくすっぽ行かなかったしね。それで完全に己を見失って燻ってた時に出会ったのが、まあ、みんな知ってると思うけど『Wild Style』だったわけ。昔から音楽は好きだったし、表現することも好きだったから、“レコード盤かよ!”って衝撃受けちゃって(笑)」
――(笑)。そこからスタートして、作品を重ねる度に“音楽”としての磨きがかかっていますよね。
 「『Strictly Turntablized』とかは今聴いたら、俺的には粗いね」
――粗いなんてことはないですが、もっと“ヒップホップ”として認知できる色が濃かったように思います。現在はもっとカテゴリとは関係なく“音楽”としての純度が上がっているというか。
 「自然にそうなっていったんだろうね。最初はやっぱり“ヒップホップ”っていうところがどうしてもあって、そこから派生して色んなスタイルを作っていけないかなっていうところだったんだけど、ある時からそういうやり方がどうでもよくなっちゃったっていうか。根本はヒップホップから入ったから、あのビート感とかは今だに好きだけれども、それを使わせてもらって幅を拡げていくというよりも、“音楽”っていう枠で作っていたらこうなっちゃった、っていうことかな(笑)」
――そうやって毎回進化していても、一聴してKRUSHさんの音だって分かるのは、すごいことですよね。
 「毎回違う色を放っちゃうけど、そこはやっぱり、食べ物と一緒でさ。色んな味があって好き嫌いもあるかもしれないけど、作った本人がちゃんとそこに居るってことが俺は重要だと思うんだよね。それはたぶん、分かるんだよね。音が全然違う、けど、これKRUSHでしょ?みたいな。リズムの感じとか。そこに居続けなきゃ絶対ダメだと思うんだよね。だから、どんなことに対しても、その部分は大事にしていきたいなって」
――20年で、音楽を取り巻くテクノロジーも随分変化しましたよね。KRUSHさんも、『深層』でDAWに移行したり。そういった制作環境の変化が、曲作りに与えた影響って何かありますか?
 「テクノロジーを与えてもらって、今までできなかった事ができたり、もしくはアナログでできた大切なものがデジタルでは表現できなくなっちゃったり、プラスマイナス両方あると思うんだよね。DJプレイに関して言えば、9.11のテロ以降、何10kgもあるレコードのクレートが費用の面で持って行くことが難しくなって、Seratoに変えようかっていうことになったり。でもそれは、1つのきっかけであって、じゃあSeratoでやるなら、単純に代用っていう捉え方ではなくて、それはそれで俺にしかできないことはなんだってやっぱり追求したしね。色んな時代の背景ももありつつだからすごく難しいけど、最終的には何を使おうが、ちゃんと自分自身がそれをコントロールできているかというところが一番大難じゃないかな。だから、自分のやりたい事を具現化させる為にテクノロジーと共存していく事は自然な事だと思うし、逆にそれがアナログでなければならないのであればそうなんだろうしね。今の若い世代を見てると、テクノロジーに使われちゃってる人もよく目にしたりするし、そう言う意味でも、まずは、自分自身が何をしたいのかってところが明確になってないと。アナログだ、デジタルだ、なんていう議論はそこからの話だよ」
――『深層』を初めて聴いたときは、“あのKRUSHさんがパソコンで!”という驚きがやっぱり大きくて。
 「当時は賛否両論、いろんな声も聞こえてきたよ」
――それでもやっぱりKRUSHさんの音であることに変わりはなくて、すぐ好きになりました。しかも、そこから『寂』へと繋げて行ったのにまた感激して。新しいことを途中で始めて、ダメになっちゃう方って結構いらっしゃると思うんですけど。
 「そうだね(笑)」
――『深層』と『寂』の間で色々考えられたんだろうな、と想像していたのですが、いかがでしょう。
 「たぶん、『深層』の時は突っ走ってたんだと思うんだよね。今まで持っていなかった道具を持っちゃったから。でもそこから1回クールダウンしたんだろうね(笑)。冷静に考えてみて、もうちょっと深みのあるものを出したかったから、『深層』でやったことが次へのヒントにはなったんだろうね」
――でも、それはそれでもちろん素晴らしい作品です。
 「ありがとう。もちろん全てが繋がっているんだと思うからね。だから、アルバム1つ出したらそれで終わりではなくて、それを通して、じゃあ次はこうしていこうって……。どの作品もプレイも、俺が腹を痛めて生んだ子供達だから無駄にはしたくないしね」
――なるほど……。それから、長くやられている方にありがちなこととして、回顧主義に陥るっていうのがあると思うんですよ。リヴァイヴァル的なことを始めたり。
 「うん(笑)」
――KRUSHさんにはそういうところが全く無くて、常に前進していますよね。DJプレイにも新しい音楽を取り入れたり。立ち止まらない秘訣って何なんでしょう。
 「秘訣(笑)!? 純粋に音楽を楽しんで、素直に向き合っているってことなのかな。」
――KRUSHさんのダブステップ・セットを初めて聴いた時、本当にびっくりしたんですよ。
 「びっくりしたの(笑)? これまでも1つのセットの中に、ジャンルに捕われないでいろんな音を詰め込んできてて、そこからもっと1つ1つの要素を探求していく過程で、実験的に、あえて1つのセットを通してあえて縛りを付けて、限られた枠の中で俺らしさをどこまで出せるかっていう思いも強くなってきちゃって。最近では4つ打ちのみのセットもたまにやってみたりしてるんだけど、やっぱりさ、色んなジャンルの中でも、こう、グッと来るものってあるんだよ、ポイントが。ダブステップの超かっこいいやつってあるし、テクノでも“これはヤバいな”っていうのがあるし。でも俺はKen Ishiiくんとは違って、畑が違うところでずっとヒップホップでコスりまくってきたわけじゃない?そういう奴が他の畑のものを育てた時に、本筋とは違う出し方になると思うんだよね。それが面白くて。今はそれ楽しんでる感じ。でもそこでもやっぱり重要なのが俺らしさっていうところで。まだまだなんだけど、そういうところでも、もっと成長していければなぁって感じかな」
――最初はびっくりしたんですけど、やっぱりKRUSHさんのプレイで。しかもそれがまためちゃめちゃかっこよかったんですよね。
 「そこがポイントだよね。すごく振り幅があって、その中にダブステップ、テクノなんかがあったりするんだけど、一番上と下はKRUSHの幕に収めてるっていうところが重要」
――特にダブステップなんかは、世代的にKRUSHさんの音楽を聴いて育った方々が多いと思うんですよ。
 「そうだね、試行錯誤しながらね」
――だから言わばオリジネイターですよね。
 「そんなことないよ!俺だけじゃないよ。いっぱいいるんだからさあ(笑)。俺のオリジネイターだっているんだから(笑)。みんな各自の影響を拡げていったわけだし」
――(笑)。もちろんそうなんですけど……。そうやって、KRUSHさんに影響を受けた音楽を、ご自身でスピンされるのってどんな気分なんですか?
 「楽しいじゃない!“かっこいいじゃない!”って。俺じゃこんな発想できないし、“すごいな”って。“何このベース!?”みたいな(笑)。かっこいいから俺はかけるし、今までもそうしてきてたよ。BLUE HERBだって当時誰もかけてなかったけど、かっこよかったからただかけただけで。だってDJだよ!それ基本だよ。それはもう、年齢なんて関係なくて、若い人でも良いと思ったらかける。単純な話。みんな好みが違うし、自分の枠の中での“かっこいい”だから、どう出るか分からないけど。でも自分の見る目はやっぱり信じたいし、負けたくないっていう。ダブステップであろうが、テクノであろうがハウスであろうが。そういう気持ちは、若い時より素直に言えるようになってきたし、できるようになってきたね。若いときはどうしてもほら、逆に小さくなるじゃないですか。“ヒップホップだったらこうじゃなきゃいけねーぜ!”みたいな(笑)」
――柔軟ですね。
 「うん、良い意味でそういう風にやっていきたいよね。“柔軟”てすごく幅が広いけど、純粋におもしろいと思ったものを、どんどん吸収して、どんどん吐き出して、やっていくことが一番楽しいし。それはまあ、みんな、応援してくれる奴らがいるからだけどね。そういうことをやらせてもらってるっていうかね。だからこそ、ただやってるだけじゃなくて、結果を出さないといけなかったりもするしね」
――でもそうやって進んで行くということは、誰もが簡単に出来ることではないと思います。
 「そうだな……。みんなそれぞれ違うからな。でも、進み方とか、結果とかはもちろん色々あるんだろうけど、形はどうあれ前に進むという行為は誰もができる事じゃない。結局はそこなんじゃないかな」
――今もこうしてKRUSHさんが最前線に立たれているというのは、心の、信念の強さゆえなんでしょうね。
 「弱いよ、俺は。女房に訊いたらよく分かるよ(笑)。まあでも、もうこれしかできないし、折れるわけにはいかないから。今の俺がいるのは独りだけの力ではないからさ。やっぱり周りに協力してくれる人たちがいるからね。家族がいて、事務所があって」
――KRUSHさんが今までやってきた事で、後悔してる事なんてあるんでしょうか。
 「……。深い質問だね。そりゃあるよ。人を傷付けたりだとかね。いっぱいあり過ぎて言えないけど、その分、今がんばってるんだと思う。若い頃は半端ばっかりして、色んな人に迷惑を掛けた。だからこそ、今やっている道を最後まで突き通して、中途半端じゃなく終わらせたいっていう気持ちがあるかな。いっぱいあるよ、後悔なんて」
――そうですか……。KRUSHさんに対してちょっと神懸った印象を持っているので、ちょっとホッとした気もします。
 「何言ってんだよ(笑)。フツーの人間だよ俺は(笑)」
――でもブースに上がったときのオーラにはいつも圧倒されます。会場の空気が変わる感じで。
 「それは自分では分からないからなあ。でも俺、別に何にも出してないしさ(笑)。ただ、ステージに上がるときはヤル気で行くからね。それはあるけどさ」
――では最後に、新作に向けての抱負を聞かせてください。10年タームの区切りということもあって、今こそKRUSHさんの新作が聴きたいっていう方はたくさんいらっしゃると思うんですよね。
 「今は9月からスタートしたマンスリーの配信シングル企画が進行中で、これはこれまでのアルバム単位で統一したコンセプトとかテーマをあえて持たずに、曲毎にアプローチもコンセプトも全違うものだから、これはこれでいろんな俺の引出しが見られると思うから面白いと思うよ。このシリーズは来年夏まで続ける予定なんだけど、それを経て夏に(今回のシングル・シリーズとは別の内容の)アルバムってのが今考えてる流れかな。まだまだやりたい事は萎えてないし、薄くもなってない。音楽は懐が深いものだから、やり残してることもいっぱいあるからね。リズムひとつ取っても、音色ひとつにしてもそうだし。まだまだ出来る事がいっぱいあると思う。これから何年先まで出来るか分からないけど、やらしてもらいますよ」
取材・文 / 久保田千史(2011年11月)


[release information]

マンスリー配信シングル・シリーズ
第1弾「光風の翼 - breathe of wings」
第2弾「久遠 - far and away」
第3弾「終夜の地平線 - sleepless horizon」
第4弾「鉤の手 - phasic swing」
※第1弾から第3弾までをコンパイルした限定プレスのヴァイナルが1月下旬にリリース予定!

[tour schedule]

[2011]
12月29日 千葉 柏 LUZROOTS
12月30日 大阪 BLACKCHAMBER(special TECHNO set)
12月31日 東京 代官山 UNIT

[2012]
1月27日 Vienna, Austria WUK
1月28日 London, United Kingdom THE HMV FORUM(with COLDCUT)
2月2日 Brussels, Belgium VK CLUB
2月3日 Amsterdam, Netherlands KLINCH
2月4日 Paris, France LA MACHINE(with DJ VADIM)

2012年2月中旬〜 DJ KRUSH 20周年ワールドツアー 北米
2012年3月上旬〜 DJ KRUSH 20周年ワールドツアー オセアニア
2012年3月中旬〜 DJ KRUSH 20周年ワールドツアー ヨーロッパ
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