カヴァーアート企画 H.R.ギーガー

エマーソン,レイク&パーマー   2009/09/16掲載
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 映画『エイリアン』のクリーチャー・デザインで著名なスイスの画家/デザイナー、H.R.ギーガー(Hans Rudolf Giger)。エマーソン、レイク&パーマー(Emerson, Lake & Palmer)の1973年の傑作『Brain Salad Surgery(邦題: 恐怖の頭脳改革)』をはじめ、数々のカヴァーを手がけたアーティストとして音楽ファンにもおなじみです。今回は彼の手によるジャケット・アートを集めてみました。

 ギーガーは1940年スイスはグラウビュンデン州の州都クールにて、薬剤師の父親のもとに生まれました。チューリッヒの大学でインダストリアル・デザインとインテリアを学んだ後、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)やエルンスト・フックス(Ernst Fuchs )の影響を受け画家の道へ。ダリをはじめ、サンタナ(SANTANA)1970年作『Abraxas(邦題: 天の守護神)』シニック(CYNIC)『Focus』『Traced In Air』などのアートワークで知られるロバート・ヴェノーサ(Robert Venosa)といった画家たちと交流を持ち、シュルレアリスム/幻想画の世界で活躍します。画風の特徴は、彼自身が“Biomechanical”と呼ぶ、肉体とマシーンが一体となった“何か”で描かれるあからさま過ぎるエロ、グロ&ヴァイオレンス。重度の睡眠障害を患う彼が実際に見た悪夢の世界を形にした作品群は、観る者に心地よい不快感を与えます。

THE SHIVER『Walpurgis』1969
スイス・ロック・シーン黎明期に活躍したバンド、THE SHIVER唯一のアルバム。オルガンが印象的な哀愁漂うヘヴィ・サイケ/プログレッシヴ。プロコル・ハルム(PROCOL HARUM)「Repent Walpurgis」のカヴァーを収録。
Emerson Lake & Palmer『Brain Salad Surgery』1973
ELP自身が立ち上げた“Manticore records”初のリリース作品。このアルバムの大ヒット(UKチャート最高2位、USチャート最高11位)により、ギーガーの名は一躍世界に知られることに。性的なスラングであるとされるアルバム・タイトルからして、両者の作風がぴったりとマッチした傑作。
FLOH DE COLOGNE『Mumien』1974
1960年代から80年代にかけて活躍した、ジャーマン・ポリティカル・ロックバンドの“ロックバンドのためのカンタータ”というサブ・タイトルが打たれた6thアルバム。ザッパに通ずる破天荒な音楽性と、ラディカルなドイツ語詞が魅力。ヒトラーをパロディ化したギーガーのアートワークとともに独裁を糾弾。
ISLAND『Pictures』1977
スイス・プログレッシヴ・ロックの至宝、ISLANDが残した唯一のアルバム。アルバム・リリース時、バンドはすでに解散していました。ヘヴィ・プログレッシヴを聴かせるクリムゾン・チルドレン。
MAGMA『Attahk』1978
“コバイア語”で名高いフレンチ・プログレッシヴ・ロック・バンドの7thアルバム。ギーガーの作風はISLAND『Pictures』とともに、当時『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』で高名なアレハンドロ・ホドロフスキー(Alejandro Jodorowsky)が制作を進めていた『DUNE/砂の惑星』のデザイン・ワークへとつながるテイスト。
Debbie Harry『Koo Koo』1981
ブロンディ(BLONDIE)第1回目の解散直前にリリースされた、フロント・ウーマン、デボラ・ハリーの初ソロ・アルバム。ギーガーはアルバム収録曲「Backfired」「Now I Know You Know」のPV監督も務めました。
Debbie Harry『The Jam Was Movng』1981
『Koo Koo』から2枚目のシングルカット。
CELTIC FROST『To Mega Therion』1985
メタルの重要なターニング・ポイントである、スイスの帝王。かのLee Drian(CATHEDRAL)に「ジャケからしてヤバい」と言わしめた、限りなく冒涜的なアートワークは内容と同等の衝撃。中心人物“Warrior”ことThomas Gabriel Fischerはギーガーのアトリエでアシスタントを務めており、最も親密なミュージシャンであると言えましょう。
PANKOW『Freiheit Fuer Die Sklaven』1987
乱痴気ハンマー・ビートが印象的な、イタリアン・インダストリアル/ボディ・バンド。ミックスはもちろんUKダブ・マイスター、エイドリアン・シャーウッド(Adrian Sherwood)デヴィッド・リンチ(David Lynch)『イレイザーヘッド』劇中歌のカヴァーを収録。『DUNE/砂の惑星』とともにリンチとの接点のひとつ??
Steve Stevens『Atomic Playboys』1989
ビリー・アイドル(Billy Idol)ヴィンス・ニール(Vince Neil)の相棒として名を馳せた腕利きギタリスト、スティーヴ・スティーヴンス率いるソロ・プロジェクトの唯一作。
ATROCITY『Hallucinations』1990
現在はゴス/インダストリアル・バンドとして活躍するドイツのアトラシティ、記念すべきデビュー作。当初は渋めのデスメタルを演奏していました。聖地Morrisound RecordingにてScott Burns & Tom Morrisのデスメタル黄金エンジニア・コンビが録音。
SACROSANCT『RecessesForTheDepraved』1991
ダッチ・スラッシュ・レジェンド、ぺスティレンス(PESTILENCE)のオリジナル・ギタリストRandy Meinhard率いるスラッシュメタル・バンドの2ndフル・アルバム。
COMECON『Megatrends In Brutality』1992
初期Century Media recordsを彩った(?)スウェディッシュ・デスメタル・バンドの1stフル・アルバム。エントゥームド(ENTOMBED)のヴォーカリスト、L.G.Petrovがゲスト参加しています。
DANZIG『III How The Gods Kill』1992
ミスフィッツ(MISFITS)、MANGA、ANIME、筋肉でおなじみの御大Glenn Danzig率いるハードロック・バンドの3rdアルバム。プロデュース/エンジニアリングはDef Jam総帥Rick Rubin。DANZIG名義では最も好セールスを記録した作品。
CARCASS『Heartwork』1993
“リヴァプールの残虐王”がメロディック路線を打ち出し、“琴線に触れる”のタタキとともに、ここ日本でも賛否両論巻き起こした問題作にしてヒット作。カヴァーを飾るのはギーガー制作のオブジェ“Life Support 1993”。PVにも登場、その大きさを把握することができます。
Hide『Hide Your Face』1994
hide(横須賀サーベルタイガー、X JAPANzilch)が遺した初のソロ・アルバム。ギーガー作品は、CARCASS『Heartwork』と同様、立体(hideが着用するマスク)での登場。
DR.DEATH『Preapocalyptic Visions』1997
ナチスを連想させる物騒な名を冠したドイツのゴス/インダストリアル・メタル・バンド。1stアルバム。
Emerson Lake & Palmer『Then & Now』1998
1974年伝説のロック・フェス“California Jam”での模様と、再結成後1997年のライヴを収録した発掘ライヴ音源集。絶頂期と熟練期の比較が楽しめる(?)作品。
DR.DEATH『Somewhere In Nowhere』1999
上記ジャーマン・ゴス/インダストリアル・メタル・バンドの2ndアルバム。
FRICTION『Zone Tripper』(first Tzadik edition)1999
言わずと知れた東京ロッカーズ、フリクションの1995年作。自他共に“東京モーターヘッド”と評するアグレッシヴな作風が話題に。こちらは田中フミヤAUDIO ACTIVEほかのリミックスを収録のEP『Remixxx+One』をカップリング、ジョン・ゾーン(John Zorn)主催レーベルTzadikより発売のUS盤。1985年公開のB級SF映画『Future-Kill』(日本未公開)のポスター用に描き下ろしたものと同じ作品。現在流通しているTzadik盤は別アートワークです。
BLACK SUN PRODUCTIONS『Operett Amorale』2005
“THE ANARCOCKS”という卑猥な名義でリチュアルなセックスを体現するのイタリア人デュオMassimoとPierceによる、ダーク・アンビエント・プロジェクト。本作はブレヒト(Bertolt Brecht)へのトリビュートとして制作されたもの。COIL、リディア・ランチ(Lydia Lunch)、LARSENのメンバーが参加。作品や活動の内容から、ギーガー芸術との親和性が最も高い作品ではないでしょうか。トレードマークのひとつであるエアブラシを封印した近年の作風が集約されています。

そのほか、デッド・ケネディーズ(DEAD KENNEDYS)『Frankenchrist』のLP封入ポスターや、コーン(KORN)のヴォーカリストJonathan Davisが使用するマイク・スタンド、ブロンディのギタリストChris Steinが使用するギター“Gigerstein”などでギーガー作品に触れることができます。皆様の周りのギーガー、探してみてください!
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