結局誰とも共有できない部分――ギリシャラブ、京都が生み出した新たな謎

ギリシャラブ   2017/03/28掲載
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 去る3月11日、東京・代官山のライヴ・ハウス「晴れたら空に豆まいて」で、ミロクレコーズ所属バンドが結集したその名も〈ミロク謝音祭〉なるイベントが行われた。ミロクレコーズとは東京に拠点を置きつつ京都のバンドもリリースするユニークなインディーズ。そのレーベル・ギグのトリを務めたギリシャラブのステージは、見る者をくぎ付けにする、奇妙な魅力に満ちていた。有機的に流れていく4人の音。何に惹かれているのかわからない。だが何故か目を離せない。耳に独特の歌詞が引っかかってくる……不思議なバンドだ、と。
 2014年に結成され、京都で活動する4人組バンド、ギリシャラブ。全曲の作詞作曲を担当している天川悠雅(ヴォーカル, パーカッション)を中心に、取坂直人(ギター, コーラス)、埜口敏博(ベース, コーラス / 同じく京都で活動する本日休演のメンバーでもある)、坂口雄一(ドラム)という、京都在住の20代前半の若者達がその正体だ。2015年、京都のSIMPOレコーズより1stミニ・アルバム『商品』を発売。また同年、Helga Pressより発売された、京都の若手音楽家のコンピレーション・アルバム『From Here To Another Place』に「どういうわけか」で参加するなど、着実にその歩みを進めてきた。
 そして今回、満を持して1stフル・アルバム『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』を発売。同じレーベルであるミロクレコーズ所属のバンド、本日休演の岩出拓十郎もプロデューサーとして参加した、そのサウンドはまるで“文学ロック”という新ジャンルを作り出したかのようだ。哲学的、文学的な言葉はどこまでもシンプルなバンド・アンサンブルの上に物語を紡ぎだし、サウンドはブラーなどUKロックからの影響が見受けられるものの、そうしたリファレンスに縛られない、独自の世界が確かに存在している。それはフランスの上質な恋愛映画や短編小説に触れているかのようで、“ロック・バンド”という概念では捉えきれない彼らの不思議な存在感を引き出していると言っていいだろう。
 メンバー4人全員が揃ってインタビューを受けるのは今回が初めて。ギリシャラブという、京都が生み出した新たな謎を、少しずつ解き明かしていきたいと思う。
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――まず、バンド結成当時のことから教えてください。
天川 「俺が2014年の9月に兵庫から京都に引っ越してきて、〈スタジオSIMPO〉で〈迷え悟るな〉〈無人島〉の2曲を録った頃から、ギリシャラブっていう名前でやり出したと思います。メンバーは、俺と取坂。サポートでベースをやってくれる地元の友達がいたけど、ドラマーがいなくて。俺がドラムも少し叩けたから、レコーディングなら別録りでできるし、レコーディングやろうか、という感じで始まりました。ライヴはやってなかったんです」
――バンドを始めるにあたって“こういうバンドにしよう”という考えはありましたか?
天川 「京都に引っ越してくるまで、自分たちが聴いていたような海外のインディ・ロックとかを聴いてる人が周りにいなかったんですけど。京都のインディ・シーンには、そういう音楽から影響を受けたバンドがけっこういてびっくりしました。でも英語で歌ってたり、日本語で歌ってても洋楽のバンドの感じを、わりとそのまま素直に出してるものが多くて。日本語で歌ってはいるけど、サウンドや演奏、アレンジの作りは洋楽のインディの感じをそのまま出してるようなバンドが多かったですね。俺らは、洋楽の影響はあるけど、もっとオリジナルなものを作りたいと思っていました」
――オリジナルなものとは、具体的にどのようなイメージでしょうか?
天川 「日本のロックには、かなり音圧が強いものが多いように感じて。そういうものに対するオルタナティブとして、音圧的にもアレンジ的にも、音の隙間を使うような演奏をしたい、というのはありました」
――バンド結成時から一緒に活動していた取坂さんは、最初にスタジオSIMPOでレコーディングした頃はどういう意識でいましたか?
取坂 「俺は天川にイギリスのロックとかを教えてもらうことが多かったんですけど。〈無人島〉とか録ってた頃、天川がブラーにめっちゃハマってて。でも俺はそのころブラーの良さが全然わからなかったんです。〈無人島〉は“ブラーのこの曲っぽくやろう”って感じで作ってたんですけど、正直“こんなんがいいんか”とか思いながらリフとか作ってました(笑)」
天川 「今では取坂もブラー好きだけど、そこまでの大ファンってわけじゃないし。でも、だからこそいいっていうか、俺に合ったようなメンバーを探してたら、ブラーのフォロワーみたいなバンドになっただろうけど、全然そうならないのは、好きな音楽がバラバラっていうところがあるかもしれません。ただ、やはり少なくとも俺にはブラーの存在は大きくて、ヴォーカルとギター、ベース、ドラムという編成もそうですし。過剰なまでにポップなソングライティング、架空のストーリーテリング、アイロニカルな歌詞、デーモン・アルバーン自身の思惑、ナルシスト感(笑)など、様々な面で影響を受けました」
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――その後、天川さんのそうした明確な音楽指向を共有できるメンバーが徐々に集まっていったということですか。
天川 「そうです。まずはドラム。最初はサポートだったんだけど、2015年の3月に、現メンバーの坂口が入りました。洋楽やインディ音楽を聴いてて趣味が合ったし、初めてスタジオ入った時のプレイが良かったから、いい人見つかったな、と思ってました」
坂口 「正直、最初にライヴを見たとき、演奏はそんなによくないなって思いました(笑)。でも、これはギリシャラブのライヴに来てくれた人が、一番よく言うことなんだけど“歌詞が印象的だ”みたいな。それはすごく感じて。何を表現したいのかはそこまでわからないけど、ちゃんと表現したいことがあるんだな、そういう人とやると面白いんだろうな、と思って入りました」
天川 「あと、メンバーが固まっていく過程で、本日休演というバンドに出会い、音楽的に自分のやりたいことが広がってきたことがやっぱり大きかったですね。技術不足でできないことも多かったから、もっと練習して成長したいと思ったんです。それまでベースもサポートだったけど、そういうわけにもいかなくなってきた。そんな時……2015年の大晦日だったかな。京都のライヴ・ハウス〈ネガポジ〉の年越しイベントで初めて埜口と話して。そこにいた音楽ライターの岡村詩野さんが“埜口くん、ベースやったら?”って言ったのがきっかけで入ることになりました」
埜口 「僕は、その半年ほど前、本日休演のメンバーとして対バンで最初にギリシャラブを見たんですけど、その時には既に独自の世界観みたいのは強く感じていました。でも、俺ら(本日休演)の方が面白いな、とは思っていましたね(笑)。ただ、海外のインディ・ロックが好きでも、そのままじゃなく、自分の中に落とし込んで、よくわからない自分の中にある他のものも一緒に出して、っていうのが俺は好きで、そういうのを感じられたからバンドに入ってみるのも面白いかもって思ったんです」
天川 「本日休演は……初めて見た時はなんていうか……衝撃的で。演奏はうまいし、音楽的なバックボーンがちゃんと曲や演奏に出てる気がしました。俺は初めインディ・ロックの影響が強くて、ペイヴメントみたいに、ヘタウマというか、下手でも逆にそれがかっこいいみたいな精神も、ある程度自分の中にあって。でも本日休演のライヴを見たことは、そういう精神から完全に決別する契機になりました。もっと音楽的なバックボーンを演奏者一人一人がそれぞれに持って、うまくなるってことも含めて、演奏にもちゃんと向き合うことが必要だという意識へと変わっていきました」
取坂 「俺は本日休演を最初に見た時は、“すごい!”けどよくわからん、って感じでした。俺はまだ京都にいなかったし今ほど音楽も聴いてなかったっていうのもあって。天川には“俺、ギターは(本日休演の岩出に)負けてないよ”とか言って(笑)。でも、天川には“いや、お前は負けてる”ってまじめにキレられた(笑)。そこから俺も京都に引っ越してそれまで以上に練習したし、ギターについて考えるようになった。本日休演の良さがわかるようになったのも京都に来てからでした」
――という経緯で現在の4人が揃ったわけですね。そこからどのように音楽的に変わっていったのでしょうか?
天川 「もちろんそこからはだいぶ変わりましたね。今回のアルバムにも入ってる〈パリ、兵庫〉〈よろこびのうた〉〈つつじの蜜〉とかその頃にできた曲なんですけど。それまでの『商品』っていうミニ・アルバムに入ってる〈無人島〉〈迷え悟るな〉のような曲とはちょっと違う。音楽的な広がりはかなり出ましたし、単純に曲の良さと歌詞っていうだけじゃなく……リズムにこだわり出しました。今まではそういう曲をやりたいと思っても達成できずに、計画段階で終わってる感じはあったんですけど、埜口が入って、この4人だったらできるかなって思えてきたんです。しかも、埜口とやりだした時点で岩出ともスタジオに入ることが増えてきて」
――今回のアルバムでプロデューサーをつとめたその岩出さんは、バンドにはどのように関わり、貢献してきたと言えますか?
天川 「プロデューサーというか、メンバーって感じでした。毎回ギリシャラブと岩出の5人でスタジオ入って。ただ、岩出は楽器を持たず、ノートを持って座ってました(笑)。いろいろ書きながら、こういうのがいいんじゃないか、と意見を言ったり、誰かの意見に反応したり」
坂口 「岩出が意見を言ってくれるから、議論が活発になって。その結果自分の演奏を見つめることになった気がします。本日休演ならどう?っていう発想が入ったことで、客観性もできました」
取坂 「天川と岩出は、ギターに対する考え方が違うんです。岩出からはギタリストとしてどうギターを考えるかって部分で影響を受けた気がします。フィジカルな部分というか。リズムとか抜き差しとか。今までは決まったことをその通りにやってたけど、今回のアルバムではそうじゃない部分もあって。ちゃんと決めずにスタジオ入って、いいものが取れたらいいね、っていう。そういうものを拾えたのはけっこうデカイですね」
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――そうした流れで自然と岩出さんも一緒に今回のアルバム『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』のレコーディングへと進んだ、と。録音も本日休演が所属している京大軽音のボックスで行われたそうですね。
天川 「そうです。ただ、構想というか、タイトルは最初にもうあって。アルバムを作ることになってから『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』っていうタイトル・トラックが最初にできて、アルバム全体の流れが自分の中で決まりました。結果として、ギリシャラブの自己紹介的なアルバムになったと思っています」
取坂 「真剣に作ったけど、でも軽く聴けるアルバムになっていたら嬉しいですね。実際、天川も俺も京都に来て、本日休演とかに出会ったりする中でちょっとアングラな方向へと行っていた時期もあったけど、最近またちょっとポップな方に向かっていて。それがこのアルバムにも出ている気がするんです」
天川 「うん、レコーディング前……いや、レコーディング中からそういう方向へとシフトしていたよね。京都に来てから確かに岩出たちと親密になっていったけど、アングラとポップの折衷というよりは“俺たちはポップ・バンドだ”っていう意識がさらに出てきたんです。その後はもうそっちにどんどん傾倒して、“ポップ・バンド”ということを前提としてやるように、変わってきたということですかね。そうやって作業中はとにかくポップなものを作るということに集中していたので、レコーディングが終わるまでは……というか終わってからも、どうやってリリースするかっていうのは決めてなかったんです。アルバムを出すにしても、自主レーベルじゃないけど、自分たちで出すっていう考えもありました。どっかデモテープ送ってみるとかも考えていたし……そのくらいまずは作業に集中していたんです。結果として本日休演と同じレーベルから出すことになりましたけど、結局それもすごく自然な流れでした。ただ、本日休演の岩出がプロデュースして、本日休演のメンバーも関わっている、しかもミックスにも本日休演周辺の仲間が参加していて、しかも本日休演のレーベルから出すっていうのはちょっと界隈で固まりすぎかなとは思っていましたね(笑)。でも、ミロクのホームページだったかブログだったかに、“アーティストを第一に考えてやりたい”っていうのが書かれていて。どこから出しても、結局自分たちでプロモーションとかやるしかないんだろうな、っていう覚悟は芽生えていたのでお世話になってみるか、という感じでした」
坂口 「やってみてミロクでよかったなあって思うのは、密接にコミュニケーション取れることですね。LINEのグループにはスタッフもメンバーも一緒にいて、どんなに小さなことでも話し合えるのがいいな、と思いました」
――小さなこともレーベルやバンド内で情報共有されているというのは意外というか、興味深いです。というのも、ギリシャラブの曲は全て天川さんが作詞作曲されているとのことですが、特に歌詞は誰もが気軽に共有できるようなものではない、というか、むしろとてもセンシティヴな美学に貫かれている印象だからです。天川さんは歌詞作りにおいて映画や小説から着想を得ることが多いそうですね。
天川 「そうですね。今回のアルバムは特に主題が明確にあって。船を盗んで旅に出て、その船が沈むっていう物語を考えていたんです。テオドール・シュトルムの『みずうみ』という小説と、その『みずうみ』が作中に出てくる、トーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』という小説が参考になってます。恋愛がうまくいかない小説なんですけど。たとえば詩が美しいとか、花が美しいとか言っても、社会的にはあまり意味がなくて、たいがいの人はそういうことにあまり興味がなかったりとかしますよね。そういう意味では、芸術と社会生活の間の齟齬のようなことを割とテーマにしています。でも物語の最初と最後を決めちゃったから、その間はけっこう自由に書きゃいいかな、そこまでコンセプトに縛られず、逃避行を書くのが面白いかなっていう感じで作りました」
――「夜の太陽」の“番う海”という歌詞が、次の曲の歌詞にもまた出てきたりと、歌詞にも流れを感じましたが、それは意識的なものでしょうか?
天川 「それは引用ですね。実はオマージュと引用とパロディがすごく多いっていうのはあります。“太陽と番う海”っていうのはランボーの『永遠』からの引用です。それが出てくるのは〈夜の太陽〉〈セックス〉〈機械〉の流れの時かな。あれは全部セックスについて書いた歌詞です」
――“太陽と番う海”という一節は何を象徴したものなのでしょうか?
天川 「太陽が海に沈んでいく時に、太陽と海が番っているように見える、っていうことですね。全然違うものが、どっちがどっちかわからなくなるまで溶け合っている。それが性行為のメタファーにもなるし、性行為に限らず、コミュニケーション自体の理想の一つになっていると思うんです。“犯す”っていう言葉もよく出すけど、それも一緒ですね。領域を犯すっていう感じで」
――今の自分とは離れたところにある物語として描かれていることが多いと感じます。
天川 「実体験をある程度元にして作ることが多いけど、ただ、例えば今日あったこととかを、次の曲作る時に書くっていうことはほとんどないですね。かなり前のこととかを引っ張り出してきて作るんですけど。昔のことって、“あの時あの子が言ってたこと、当時は何言ってるのかわからなかったけど、今聞いたら、あいつこんなことを言ってたのか”ってわかる、とかいう言い方がありますよね?でも俺はけっこう逆で、出来事には意味があると最初から捉えるというか。“あの子が言ってたこと、どういう意味なんだろう”ってその場で考えますし。でもかなり経って、そういう意味的なものから、その当時の出来事が自由になる瞬間、ただの出来事として自分の中で立ち現れてくる時がある。そうなった時に、初めてその物事とちゃんと向き合ってるって気がするんです。だから“これはどういう意味なんだ”って歌詞で聞かれることもあるんですけど、出来事を意味から解き放つために書いてるような感じなんですよね」
――自分から離れて物語になる瞬間、それが曲になっていると?
天川 「そうですね。そうやって言葉を、意味じゃない部分で理解したいんです」
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坂口 「ただ、歌詞はコンセプトを大事にしてるけど、曲自体は1曲1曲で聴けるような形になってて。曲作りにまで歌詞が入ってるわけじゃないのかなって思ってます」
天川 「そうだね。同一のテーマを使って、同じ内容を歌った3曲を並べても、曲としての出方が違って、聞こえ方が変わるっていうのが面白いかな、って」
――それこそ複数のメンバーで聴かせることの意味ですね。
取坂 「ただ……実はメンバーが一人増えるんです。ギターとベースのできる人が」
――なんと!
天川 「ここでそう言っちゃえば、もう確定になるか(笑)」
――単純になぜギターとベースができるメンバーが加入するのですか?
天川 「ギリシャラブは音の隙間を活かしてやってるバンドですけど。そういうことをやるためには、今のヴォーカルとギター、ベース、ドラムっていう、ロック・バンドではほとんど最小に近い編成はうってつけだと思うんです。音圧を必要としないっていう考えの中でやるんなら。でも、それは裏を返せば、安全パイじゃないけど、やりやすい環境の中でやりやすいことをやってるっていうことなんですよね。でも、ギターが増えたり、編成が変わった時に、音圧を上げながら、隙間を活かすっていう方向性を保ってやるのは、今までほど簡単にいかない。ともすれば凡庸なロック・バンドに成り下がる可能性もある。でもそういう挑戦をやりたいっていうのがあって、それで思い切ってメンバーを増やすことにしたんです」
取坂 「今まではギター1本だったので、曲を作る時にまず、どういういうことができないのか、みたいのがあったんですけど、それがなくなると思っています。ギター1本だと、どうしてもひねくれ感みたいのが出ちゃう感じもしましたし。だからこそ、今までできなかったことをやりたいですね。もっとポップにできるかなって気もします。もちろん、何ができるのか、どうなるか僕自身も全然わからないし、逆にちょっと不自由になった気もするかもしれないけど……でも楽しみです。挑戦です」
天川 「例えばギリシャラブは、本日休演に比べて格段にギター・ソロが少ないんです。ギター・ソロを弾いちゃうと、バッキングする人がいなくなるからっていうのもあって、選択肢は狭かった。だからギター2本になって選択肢が広まっても、今の良さを活かしたままでパワーを上げるっていうことをしたいですね。目論見としては」
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――となると、ポストパンクやガレージロック的要素は減っていくかも?
取坂 「そういうギターロックからも離れるかもしれないですし。別にギターにこだわらず、自由にやりたいですね」
埜口 「編成が変わることと関係があるかわからないですけど、バンドでライヴをやってると“ああ、俺今バンドしてるわ!”みたいな瞬間があるんです。例えば俺がもう一つやっている本日休演だったら、ライヴでその瞬間、瞬間で偶発的なものを出していかないとやってられない、みたいなところがある。そこが面白いわけですけど、ギリシャラブの場合も、決まったことをしながらも、どうやってバンド全体でライヴ感を出していくかをこの機会に改めて考えていきたいですね」
――ライヴと言えば、先日の代官山でのイベントでのパフォーマンスを見ていて、自分から離れた客観的な、物語のストーリーテラーとしての目線が、ライヴでは主観に立ち戻って歌っているように感じました。少なくとも作品とライヴとは明らかに違うんだなと。
天川 「そうですね。ライヴでストーリー的な面白さを、音源で出してるのと同じくらいの密度で伝達させるっていうのは、やりようによっては可能だけどあまり興味がなくて。例えば歌詞を完全に伝えさせて、その世界観に完全に入らせるっていうのは、音源ではやることもあるけど、ライヴではあまりやることじゃないなって。以前、オアシスリアム・ギャラガーが“ライヴのときは歌詞の意味なんて考えずに、次の歌詞がなんだったか思い出してるだけだ”って何かのインタビューで言ってたんですけど(笑)、本当にライヴはそうあるべきかなって思います。歌詞の意味を考えて、それを伝えようと思いながら歌うってことは俺も全くないですし。次の歌詞とか思い出しながら、とにかくその場を必死でやる。もうその必死さしかないというか、その必死さで熱を生まないとダメだな、ライヴはその熱なのかなって気がします。決められたことをやるにしても、決められたことじゃないことをやるにしても。そこを必死でやらない限り、ライヴでは意味がないって思います」
――つまり、ライヴではより肉体的な感じでいたいと?
天川 「そうですね。“熱狂のライヴ”とかいうけど、一番大事なのは、まずやってる側が熱狂することです。必死にやるし、誠実にやる、みたいな感じです。人としゃべってても、確かにこいつ言ってることが面白いとか、興味深いとかっていうのもあるけど、でもやっぱその人を好きになるかとかって、そういうことじゃないですよね。どれだけ面白くても、ずっとふざけてるヤツとか、俺あんま好きじゃないですし(笑)」
――これからはその熱意、熱気、必死さをより前面に出すような活動が期待できそうですか?
取坂 「そうですね。まず、またすぐにでもレコーディングしたいです。今回のアルバムをレコーディングした時より実力もついてきたし。前のレコーディングは決まったことを録るのに、ギターを少し重ねるって感じだったけど、次はレコーディングで、もっと実験したりとか。録り方とか、音とかにもっとこだわってやりたいですね」
天川 「今回のアルバムを岩出と一緒に作ったり、外部の人といろいろやって、逆に思ったのが、結局誰とも共有できない部分が、自分の表現の一番大事なところにあるということです。“ギリシャラブっていうのはこういうバンド”とか、“ギリシャラブの歌詞はこういう歌詞”っていうのにとらわれず、メンバーの中で、自分にしかできない仕事をやるっていうことに自覚的になってやれば、今年はもっといい音楽を作れるかなっていう感じですね」
取材・文 / 安部 清(2017年3月)
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