シンプルに“音楽であること”――KASHIFが徹底して単身で挑んだ処女航海『BlueSongs』

KASHIF(STRINGSBURN)   2017/05/22掲載
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 神奈川・横浜を拠点に活動し、鬼才 / 奇才が集う異形の仮想アーバン・ミュージック・コレクティヴ「Pan Pacific Playa」。同集団きってのエレクトリック・ギター弾きとしてJINTANA & EMERALDSやKESとのPALM STREETなどで活躍するほか、(((さらうんど)))一十三十一をはじめとするサポート演奏でアーバン・コンシャスなシティポップのリブート / イノヴェーションを支える人物がKASHIF。近年はスチャダラパーのギタリストにも起用され、かつての異名“STRINGSBURN”と相まって“ギタリスト”としての注目度を高めている同氏が、ソロ名義で初のフル・アルバム『BlueSongs』をリリース。トレードマークの熱い指運はもとより、独特のファンクネスを伴う硬質な楽曲群と、意外にも自ら歌唱したヴォーカルで“コンポーザー・KASHIF”をもじっくりと見せる内容となっています。“直球”と“異質”の感覚が交差するポップス・アルバムに仕上がった同作について、氏にお話を伺いました。
アチコ、Bose(スチャダラパー)、DORIAN、MATERIAL(MGMD A ORG. / CARRE)、テンテンコ、tofubeatsからのお祝いコメントは こ・ち・ら
――ソロ作品を作られているというお話を伺った時、1980〜90年代にあったような、シュレッドしまくるスーパーギタリスト・アルバムみたいな作品を思い浮かべたんです。
 「弾きまくる方向で丸々1枚作ろうと思っていた時期もあったんですよ。加入した頃に出たPPPの初コンピ(2007年)には、テック・フュージョン、テクノ・フュージョンというか、ハウスっぽいのにT-SQUAREみたいなギターが乗る曲を入れたんですけど、それがわりと気に入っていて」
――たしかに「Magnetic Luv」ではかなり弾いてましたよね。
 「そうですね。フュージョンと今っぽい音楽のミックスみたいなことがやりたかったんです」
――PALM STREET名義での活動も弾くタイプでしたし、近年ではEspeciaの「Clover」なんて弾きまくりです。
 「〈Clover〉はたぶん僕の人生史上No.1トゥーマッチなギターだと思いますよ(笑)」
――ここ数年におけるプレイの数々を聴いていても、パームミュートで刻んでるのってあの曲くらいですよね。
 「まあ、ないですよね(笑)。雰囲気の例としてBON JOVIとかAEROSMITHが送られてきたんですよ。でも、ほぼ同時期にSugar's Campaignの2ndアルバムのリード曲に関してAvec Avecくんから“こんな感じでお願いします”って送られてきたのがDEENとかZARDとかBeing系で。だからその時“時代はハードロック・テイストなんだな”って思ったんですけど、社会的にはそうでもなかった(笑)」
――あはは(笑)。初のソロアルバムは、そういった内容のアルバムには全くなりませんでしたね。
 「弾きまくる感じのアルバムは今も作りたいとは思っているんですけど、今回はとにかくギターの面だけではないコアな自分の音楽を一回思いっ切り出してみたいと思ったんです。ギター・インスト、もしくはシティポップ然としたものとか、今の僕の活動から見えるシルエットに忠実なものではなく。“もっと弾きまくった方が良かったんじゃない?”って友達にも言われましたし、今回のアルバムでも上手く組み込めればギターをもっと立たせるつもりではあったんです。別に意図的に外したわけではなくて。作っているうちにバランスの中で自然にこうなっていったんですよ。本当は“印”として弾く部分をもっと入れるべきだったという気もしてはいるんですけど、作曲工程の必然性でこうなって」
――“楽曲”としてのバランスですね。“ギタリスト”としてではなく、“コンポーザー・プレイヤー”としてのイメージを打ち出したかったということなのでしょうか。
 「そういった面も確かにあります。今回のアルバムが今の自分の名刺やポートレートになって欲しかったので。コンポーザーでありアレンジャーであり、ヴォーカリストでも、ギタリストでもあって、今回はミックスもやっているのでエンジニアの領域も少し。もちろんギターのファクターは大きいんですけど、どれかのパーツではなくて、できたら全部やってみたいという願望がずっとあったので。自分をマックス出せる状態のアルバムに挑戦してみたかったんですね。まあ、本音のところではそんな難しい話ではなく、宅録ってそういうことだと思いますし。当初はミックスはエンジニアさんにお願いする予定だったんですけど、時間的な制約という不可抗力もあって、逆にそこに背中を押してもらうように、かねてからやりたかったアルバム単位でのミックス作業を実現してみた感じですね」
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――“全部やってみたい”願望は常に持ち続けていたんですか?
 「そうですね、そもそも“アーティスト欲”みたいなものやヴィジョンは潜在的に常にありました。一十三(十一)さんをはじめ、おかげさまで色々なサポートを頼んでいただける状況があったのですが、それを続けてゆく中で自分の中のアーティスト願望というか、自分のエゴのための製作意欲みたいなものが若干置き去りになっているのはずっと気になっていて。今後の活動を考えていた時に、一度“自分の形”を明確に残しておかないと、っていう気になってきたんです。しばらくそういう事をしていなかったら、自分に何ができるか不安でもあったので、確認してみたかったというか。やっぱり宅録出身者なので、そういった機会には基本的に全てを自分でやってみたいという気持ちがありました。プライベートでも、去年40歳になったりとか、節目がわりとあったんです。年齢的なものとか、キャリア的なものの先を考えると……そういった面では今回のアルバムは、良い意味で5割が負の不可抗力で出来ている部分が大きいとも言えますね」
――そんなあ(笑)。
 「(笑)。後の半分は、永井(博)さんに絵を描いていただけるけることになったり、色んな話の流れで(リリース元の)Billboardさんに声を掛けていただけけたり、そういった幸運なタイミングが重なったというプラスの要素ですけどね。負の要素と合わせたらアルバムを作る条件のロイヤルストレートフラッシュが揃っちゃって、もうやるしかない!っていう感じでした。ほかにも、アルバムを作るにあたってある種冴えないきっかけ的なものはいっぱいありましたよ(笑)」
――(笑)。もっと遡って、ギターを始めたきっかけってどんな感じだったのでしょう。
 「最初のきっかけはバンド・ブームですね。“イカ天”とか“ホコ天”みたいなのが中学1年の頃にあったんですけど、当時同級生の影響でサザンやユーミンにハマっていた自分が、そういったバンドブームのカウンターでギターが目立つアーティストを好きになっていって。そこからCOMPLEXとかBOØWY / 布袋(寅泰)方面に行った時に、同じ学年でエレキギターが巧い人がいたんです。中3になって初めてギターをその人に借りて、UNICORNとかTHE BLUE HEARTSも練習しました。高校に入ってからは“邦楽ダセェ”って思い始めて(笑)。洋楽を聴き始めたら、そのままメタルとかハードロックに行っちゃいました。高校3年間はHELLOWEENみたいなジャーマン・メタルとか、MEGADETHMETALLICASLAYERなんかにどっぷりでした」
――その頃バンドもやられていたんですよね?
 「メタルが好きな同学年の人と一緒に、ろくに弾けないまま強引にやっているバンドでしたね。部活で軽音楽部があって、その部室でMETALLICAのカヴァーなんかで遊んでる感じでした。でも僕はその時期練習しまくって変に速弾きが巧くなっちゃったんですよ。それを聞きつけた1つ上の学年のバンドにヘッドハンティングされて(笑)。Xとかをカヴァーする先輩のバンドで、高2の時にライヴハウスで初めてギターを弾きました。タンクトップで(笑)。それが初めての外に向けての演奏。そんな大げさな話じゃないですけど(笑)」
――外に向けての初プレイはX!
 「あとガンズとMETALLICAもやったかもしれないです。Xとガンズを一緒にやる時点で、わかるようでわからないところがありますよね(笑)」
――当時の定番っちゃ定番ですよね(笑)。プレイヤーとしてはZakk Wyldeがお好きなんですよね?
 「そうですね。僕、一番好きなギタリストがPrinceとZakk Wyldeなんですよ。当時は当然、Ozzy OsbourneBLACK SABBATHをたくさん聴いていたわけですけど、Tony Iommiをはじめ色々なギタリストがいる中で、やっぱりZakkになってから“新しく”なった感じがしたんですよね……こんな話で大丈夫ですか(笑)?」
――大丈夫です(笑)!おっしゃる通りです。Zakkはフレッシュでしたよね。
 「歳も歴代のギタリストの中で一番若かったし、プレイのタイプも違った感じがあって。僕にとっては、当時のハードロック / メタル界においてZakk WyldeとDimebag Darrell(PANTERA)のギターの質感はちょっと違ったんですよね。未来っぽいというか。トラディショナル過ぎないし、新しいメソッドやスタイルを反映させている感じ。血生臭過ぎなくて、次のステップに向けてアップデートされている感じがしたんです」
――そうですね、それまでのメタル・ギタリストとは異なる切り口のアイディアが盛り込まれていたように思います。エフェクト使いにしても奏法にしても。そういう刷新のムードって、実は所謂シティポップ / ニューミュージックと言われるものが登場した頃の感覚に近いものがある気がするんですよ。
 「それはあるかもしれないですよね。メタルとかハードロックって脂っこい感じですけど、Zakk WyldeとDimebag Darrellはプレイが洗練されてる気がしたんですよね。泥臭さだけじゃない気がして」
――シティポップ / ニューミュージック当時のギタリストだって、やっぱり1970年代のハードロックが好きで練習していたんでしょうから、KASHIFさんはそのさらにアップデート版という感じがして。
 「メタルとシティポップってすごい距離がありますけど(笑)、たしかにそうなのかもしれませんね」
――でも、そこを意識して今みたいになってるわけではないですよね(笑)?
 「はい(笑)」
――だから、KASHIFさんがメタル / ハードロックを踏まえた上で現在のプレイをしているというのは、すごく自然なことだと思えるんです。
 「そうですね。実際僕はフュージョンとかはほとんど聴いたことがないんですよ。PPPに加入する前後からブラック・ミュージックが好きになっていったんですけど、例えばTHE ISLEY BROTHERSって、黒人のイイ感じの演奏の中に、すごいディストーションのリードギターが入ってたりするじゃないですか。すごく白人ぽい、ハードロックに寄せたアプローチを持っていて。そのバランスが好きになったんですね。僕はそういうプレイ自体はそこまで得意じゃなかったんですけど、メタル出身だからディストーションでギュッて歪ませながらリード弾くのは好きじゃないですか。それをたまたまソウルっぽいコード進行の上でやってみたらフュージョンぽくなったんです。見方によってはTHE ISLEY BROTHERSやPrinceっぽくもあって。そのままそれをゴリ押ししたのがPALM STREETなんですよ」
――遠回りと言えば遠回りですけど、自然ですね、すごく。
 「厳密にフュージョンを経てきたテクニカルな人と比べると、全くお里の違う構成なんですけど、だいたい誤魔化せる感じがあって。それを12年くらいやってきた感じです(笑)」
――(笑)。でも“ギタリストPrince”は元々そういうハイブリッド感がありましたよね。
 「そうですね。そのバランスはPrinceが相当体現しています。特にリードギターに関してはほぼ白人て感じですよね。そういった流れで僕のプレイのカラーは、メタルが根っこにあるのに“洗練されてるね”みたいなことを言われたりするので、不思議な気分です(笑)」
――日本だとメタル、ハードロックってダサいオタクの領域っていう認識が根強いし、実際そういう部分もあるから、今のお話みたいにフィーチャーされることってなかなかない気がするんですよね。
 「でも、僕が好きで聴いていた頃から20年近く経って、当時よりだいぶ層が拡がっている気がするんですよね。メタルだけで残るというよりも、浸透して、色々なものと混ざってきたというか」
――たしかにそうですね。だからこそ、弾きまくるアルバムを熱望してしまったのかもしれません。KASHIFさんのプレイって、“椰子の木”とか“アーバン”みたいなイメージとは違って、熱さが漲っているじゃないですか。
 「ありがとうございます」
――それこそ“STRINGSBURN”みたいな気持ちになります。STRINGSBURNって、インギーしか浮かばないし(笑)。
 「そうですよね。ギター燃えてる感じの(笑)。あの名前はPPPに入った初期に付けたんです。当時出会ったみんなインパクトのある名前で活動していて……それこそ“やけのはら”くんとか、特攻くん(BTB)とか、大豆くんとか。なので僕も自分のルーツに紐付いたユニークな名前を付けたくなって。しかもメタルっぽい強そうな名前がこういうシーンにあったら面白いじゃないですか。でも全く浸透せず(笑)。STRINGSBURN名義で何曲か出しましたけど、“KASHIF”っていうあだ名でずっと呼ばれていたから、“STRINGSBURNさん”って呼ばれた時に自分で決めたのにすごい違和感があったりして(笑)。何年かしてLatin Quarterくんに“絶対KASHIFにしたほうがいいよ、STRINGSBURNは絶対定着しない”って言われて、4、5年前にKASHIFで完全に統一しました(笑)」
――そうなんですね(笑)。淋しい気もしますけど……。
 「でもSTRINGSBURN名義のアルバムを出すのも諦めていないので。自主でもなんでもいいんですけど、ハングリーな状態で出したいですね。ゴリゴリな感じでやりたいです(笑)」
――それはたのしみです!とはいえ今回のアルバムがまず、驚きの内容でとにかく素晴らしいです。先ほどおっしゃっていたように、今のKASHIFさんの“シルエットに忠実”でない作品になっていますね。
 「やっぱり、シティポップ然としたもの、AOR然としたものとか、周りでたくさん確立されているアプローチとはちょっと違うものを形にしたかったので。最初にイメージしていたのは、テクノっぽいソウルとか、アンビエントっぽいソウルだったんです。シティポップに関わる様になってから、ギターよりむしろドラムマシンやシンセサイザーが好きになっていったんですけど、それを突き詰めた先にネイティヴなジャンルとしてテクノがある気がして。シティポップだとそこに情景とか、80sとか、設定要素がたくさん加わるわけですけど、それらを切り離したプリミティヴな状態がなんとなくテクノだと思ったんです。フュージョンと同じぐらいテクノもそんなに聴いていないので、あくまでアウトライン的な話なんですけど」
――そうですね。Princeの雰囲気もそうですし、初期のデトロイト・テクノのパーティで「Billie Jean」がよく流れていた、みたいな話も思い出しました。硬質なビートにギターが映えるという。シティポップと言うよりも、“マシーン・ソウル”と言う方がしっくりくる作品でした。
 「まさに“マシーン・ソウル”はキーワードとしてありました。歌もソウルだと思って歌っていて、加えてギターが印象に残るようなバランス感で作れたらいいな、と思ったんです。そういったコンセプトを考えていた時期にXTALくんに相談したら、SHY GIRLSの『Timeshare』っていうEPを教えてくれて」
――『Timeshare』めっちゃいいですよね。
 「そう、それがドンピシャだったんですよ。白人ぽいソウルで、ヒップホップを通過したトラップっぽいトラックがテクノっぽいタイトさで、生楽器の要素も絶妙に入って映像的で。あとミックスのバランスも理想的だったんですよね。あれを聴いてアルバムのコンセプトが具体化しました。だから、アルバムの大元のプロデューサーはXTALくんだっていう気持ちがいまだにあるんですよ」
――SHY GIRLSって、所謂チルウェイヴを通過したPBR&B以降、そこから先どうする?っていうタイミングで出てきた人ですよね。KASHIFさんの今回の作品も、昨今の日本におけるシティポップ・リヴァイヴァル以降、どうする?という模索のひとつとしても受け止められます。
 「そうなんですよね。幾つかの部分において現代版シティポップ的なアプローチが飽和状態にあるというのはけっこう思っていて。今やるなら、そういう場所から少し離れて、次を見据えたものを形にしてみたかったんです。それが今回のアルバムで挑戦した大きな課題でした」
――志高いアルバムですね。
 「冴えないきっかけから始まって、志は高くなりました(笑)。周りを見ていると、今“設定の音楽”がとにかく溢れかえっているように思うんです。例えば年代感とか、シチュエーションとか、引用元のアーティストとか。ここ数年、そういう明確なお題や設定に寄せることを意識し過ぎているんじゃないかっていう気がしていて。だから今回、今自分の中にあるものだけでアルバムの全てを構築することも大きなテーマとしました。外界からの情報を一切遮断するくらいの気持ちで。はっきり言ってアルバムの中に真新しい要素って全くないと思うんです。新しくなくても全然いいから、何かの設定に寄せずに自分のエゴだけで、やりたいものだけをやる、ということをかなり意識しました」
――もしかしたらそれは、鶴岡 龍さんのアルバム『LUVRAW』と近い感覚かもしれないですね。
 「作風は全く違うんですけど、根本にある意識は同じ部分けっこうありますね。実際そういった話を2人でした事もありました。今までのことに良い意味で区切りをつけて、さらに次に進みたいんです。本気で志向するものだけを形にしたいという欲求が高まって。“ここまで来たらもうやらなきゃいけない”って感じたというのは共通していたと思います」
――KASHIFさんの近年のご活躍は、リスナーの僕らからしたらとても華やかに見えますけど、“作り手”としての欲求があればそうなってきますよね。
 「そういう欲求のひとつとして、アルバム1枚を作るのに多くの人が関わるプロジェクトとは正反対のことをやりたかったというのもあります。ゲスト、フィーチャリング、ミックスも別の方で、曲毎にディレクションも違ったりすると、状況によっては作品がコンピレーション化しますよね。もちろん良い場合は良さが倍になっていくんですけど、散っていくケースも少なくないと思っていて。今回、ゲストは一十三さんしかいませんし、作詞もイルリメくんに全曲お願いして、マスタリングは砂原(良徳)さん。製作構造としては極端にシンプルな状態にして、変なロスがないギュッとピュアにまとまったものを目指しました」
――KASHIFさんの経歴だったら、色んな豪華ゲストが参加して、あんな人やこんな人に演奏してもらうことも可能だったわけじゃないですか。あえてそれをやらなかった。
 「“誰と誰と誰と誰が参加してるんですか?”って何度も訊かれましたね(笑)。その時は一十三さんが参加するかしないかも悩んでいた時期だったので、“今のところ1人もいないです”って答えたら、意外に思われたみたいでした」
――オールドスクールなアルバムの姿ですよね。
 「はい。ただの宅録の人に回帰したかったんです。何もかもシンプルにしたくて。一十三さんの歌も自宅まで来てもらって録ったくらいなので、僕の部屋の空気以外は一切何も入っていないアルバムです。スタジオに一度も持ち出していない、100%宅録。マスタリングになってやっと外に出たんですよ。結果音に触った人が砂原さんと僕だけっていうのは超贅沢な経験で、とても嬉しかったですね」
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――とても失礼な話ですけど、正直ここまでアルバムとして統一感のある作品になると思っていなかったんです。曲の並び、流れもすごく良くて。
 「ありがとうございます。曲順はXTALくんに決めてもらったんです。あれだけ多岐のジャンルに渡ってDJ経験が豊富な人ですし、流れの感じ方に信頼がおけると当然考えていたので。でも、返ってきた曲順が最初僕としては意外過ぎたんですよね。〈Breezing〉って1曲目のつもりで全く作っていなくて、気に入ってはいたけど7曲目くらいの中途半端な存在の曲かな、って思っていたんです(笑)」
――いやいや、そんなことないですよ(笑)。
 「でも決めてくれた曲順でしばらく聴いたらすごく腑に落ちて。さすがだな、って思いました。それで僕も初めて“アルバムだな”って思えたくらい。DORIANくんにも言われたんですけど、インタールードがあるところはA面B面が切り替わる感じにもなっていたり。今回、XTALくんの決めてくれた曲順がアルバムとしてのアイデンティティにおいて占める部分は本当に大きいです」
――一十三十一さんのヴォーカルも、その流れの中でアクセントとして入ってるのが良いですよね。“フィーチャリング”という感じではなくて。
 「そうですね。一十三さんのヴォーカルがアルバムにとって、とても自然かつ重要な存在になってくれて嬉しかったです。そして今回は派手に“フィーチャリング”っていう感じを作りたくなくて、そういう表記もあえて拘って全く付けていないんです。極端に言うと、一十三さん以外でも今回ゲストで誰が参加してるかを宣伝文句に表記しないでおいてみたいという考えが少しありました。それは話題性を狙った広告的な要素を全て排除して、ただただ“作品のみ”の状態で今の御時世、どこまで伝わるのかを見てみたかったというのもあって。非常に贅沢な話なんですけど、例えば今回の永井さんによる肖像画は、もし永井さんのお名前を出さなかったとしても作品自体の本質的な力や訴求力で絶対人の目を惹くと思うんです。砂原さん、イルリメくん、そして一十三さんのお名前においても、もしアルバムを開封してクレジットを見たら初めてわかるくらいの状態にしたら、そういう作品が今、どういう伝わり方をするんだろう?っていうのを確かめてみたかったというのが本音ではあったくらいでした」
――MATERIALさんのデザインもシンプルですよね。
 「10年ほど前から知り合っていたMATERIALくんは、彼のノイズユニット“CARRE”と音楽の現場が一緒になる事は何度もあったんですが、デザインを頼んだのは初めてでした。彼が音楽と並行してやっている最近のデザイン仕事が本当に素敵なものばかりだったので、僕からお願いしました。最初の打ち合わせでMATERIALくんが永井さんの絵を見た際に、字を埋め込んだりはせずに最大限原画の状態を生かすデザインにしたいって言ってくれて。さらに色々とディスカッションしたので、僕の意向を完璧に汲んでくれたデザインになりました。ブックレットもすごく良くて。本当に頼んでよかったですね。デザインもスウィートではなくてタイトでクールな感じにしたかったので、彼しかいないって思ってお願いしました」
――アートワークも含め、メタデータではなく内容そのものを提示したいという意志が伝わります。
 「今のご時世はとことん広告的に機能面を追求した音楽も、正反対のとことんパーソナルな音楽でも、ある種フラットに共存できる側面もあると思っていて。個人単位の発信がいくらでもできる状況ですから。内容的には後者のものになりたくて今回パーソナルな作品を追求しましたけど、レーベルのサポートの上で作らせていただいた以上、恩返しになる作品にもしないといけないという部分もあって。個人の内向きな追求欲に没頭するとおろそかになるスケジュール管理や、外向きの事をやはり今回レーベルがサポートしてくれたんですけど、以前僕らくらいの歳で音楽やってる人はボンクラ世代的な人が多いという話をXTALくんと話した事があって、自分もやっぱり例外ではなくケツ叩かれないとちゃんと稼働しないんだなと結果痛感しました(笑)」
――ボンクラ世代?そうですか?
 「メジャーのCDバブルの黄金期を純粋にリスナーとして観ている世代だから、音楽をやる側の世界に対してある種幻想や夢を見すぎて壁や距離を作ってしまう部分がある気がするので、そちらの世界に踏みもうと意を決する為のハードルがなんかやたら高い気がします。僕個人で言えば踏み込むのに40年かかったわけで(笑)。でも今はそのスケール感が全然違うというか。若い人はそこの距離があまりなくて、自分の表現を記録して形にして発信する事のフットワークが凄まじく良い。勿論テクノロジーの発展の恩恵で。ただ、そういう若い人の音楽を聴いていて、なんにせよ匙加減なんですが、血の通っていないデータや分かりやすいテンプレートの寄せ集めになってしまっている様な物も少なくない気がします。最近読んだ細野(晴臣)さんのインタビューで、最近の若い子たちの音楽について“ルーツの掘り方によって出る奥行きが少ない”みたいなことをおっしゃっていたんですけど、僕も僭越ながら似たようなことを感じるなあと思いました。自分が今回その奥行きを出せたかはわからないんですけど、そういう時代だな、って」
――個人的にはルーツを全く掘らないで突発的に出てくる音楽も素晴らしいと思うんです。KASHIFさんの世代はその両方を持っている気がするんですよね。例えばJINTANAさんなんて正にそうで、ルーツはめちゃめちゃ掘っているけど、わけがわからない部分がボコっと出たりもする。
 「わけわかんな過ぎますよね(笑)。突発性のあるものも良いですよね。両方あるべきだと思いますし」
――突発的なものだと上の世代には異質なものとして映り、ルーツに根差すと下の世代から老害視されるとか。微妙な世代、年代だとは思うんです。僕も同じ世代なのでそう感じるんですけど。その中でこのアルバムが世に出るのは、良いことなんじゃないかなって。
 「たしかに今のアラフォー世代がデジタル・ネイティヴとアナログ世代のちょうど中間くらいですよね。うまくいけば両方持っていて、下手するとただの時代遅れになっちゃう世代(笑)。その感覚は自分でもすごく自覚していて。それが落とし込めたらいいなとは思っていました。自然に出ている気もしますけど」
――めちゃめちゃ出ていると思いますよ。DTM以降とアナログ・レコーディングのハイブリットみたいな感じとか。砂原さんのマスタリングもそういうところを汲んでいる気がしますね。
 「たぶんそうだと思います。僕はデジタル・ネイティヴでも、アナログ・ネイティヴでもなくて、中途半端なところにいるのがカラーだと思っているんですよね。だからミックスの状態がふらついちゃう。それを砂原さんにまとめ上げて頂けるというのが制作のモチベーションの大きなより所でもありました。今回は自分でミックスまでやったので、砂原さんのマスタリングで何がどう変わったのか、体感できたのも貴重な経験でした」
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――AOKI takamasaさんの『RV8』とかも、やっぱりそれ以前の作品と音の印象が全然違いますもんね。
 「今回のアルバムは、自分の今までの作品からの変化は絶対欲しいけど“変わり過ぎず、でもどこか異質な物”というのを目指して作りました。ちなみに砂原さんは最近だとD.A.N.とか、TEI(TOWA)さんの『EMO』もマスタリングしてますよね。時期的に考えるとTEIさんの次くらいが僕のアルバムだったと思うんです。TEIさんのアルバムは世界のGoh Hotodaさんがミキシング・エンジニアなんですけど、その次が去年まで派遣社員だった僕がミックスした作品……。大丈夫かな?ってドキドキしました(笑)。でも、Hotodaさんのミックスのクオリティが高すぎて、ほぼやることがないくらいだったと何かでおっしゃっていたので、僕のは良く言えば手間がかかってやりがいがあるとも言えるんじゃないだろうか?となんとかポジティヴに考えました(笑)」
――もし今回のアルバムのミックスを他の方にお願いしていたら、どうなっていたでしょうね。
 「それ本当は、今からでも経験してみたいところなんですよね。もっと聴き易くなる気がします(笑)。あと僕、作っている内にトラック数が多くなるタイプなんです。普通、タイトな人なら10、20くらいで終わると思うんですよ。ビート、上モノ3つ、ビートのバリエーション3つ、歌、コーラス、シンセみたいな感じで。僕今回、100トラック越えが3、4曲あって。130超えたのもありましたね。それをエンジニアさんと共有するとしたら、絶対ミックスに相当時間がかかると思って。今回は時間がなさ過ぎて無理だと思って諦めましたけど、もちろん良い機会あればガッツリセッションを共有してミックスしてもらう経験もしたいと思っています」
――DTMとはいえ、ナイアガラの贅沢な録音とか、『AKIRA』のサントラ芸能山城組が何トラック使ったとか、そういう話を彷彿とさせますね(笑)。
 「(笑)。今は何トラックでも録れますけど、逆にそれができることによってコーラスを重ねすぎて、今回のアルバム11曲で歌う労力が30曲分くらいになったと思います。歌入れ期間は約1ヶ月間だったんですけど、朝起きてからずっと上下スエットのまま、酸欠になりかけなりながら歌入れしたこともありました(笑)。ポリープできるんじゃないかってくらい歌いまくったんです。僕顎関節症がひどいから、歌い疲れがすぐきちゃうし……」
――レイヤーの管理だけでも大変じゃないですか?
 「そうですね。少ないものでも50トラックはあったので。あとそれ以上に今回は膨大なライブラリとの闘いが大変でしたね。1ショットのビートのWAVが10GB分くらいあったので、808のキックだけでも恐ろしい数あるんですよ。細かい差を聴き分けるために1個ずつ目をつぶって再生しながら探したこともありました(笑)。それで何か足りないと思ったらWAVを重ねていくんですね。スネアを5つぐらい重ねて作った音とかあるんですけど、曲の途中でアタックを弱めたいからそれを3個に減らすとか、やるわけです。そうすると、1曲の中でのドラムの音の情報管理だけで大変になってきて。そこにベロシティとかフィルタが加わると、何をやったか管理する覚えゲーみたいになってきて。ほんと神経衰弱作業ですよ」
――やっぱりエフェクトで実現するものではダメだったんですか。
 「それでも良いケースはあるのでTPOですけど、エフェクトよりまず音色のチョイスをがんばりました。他に苦心した点としては、ステレオ感や広がりを出すために同じシンセを2つ立ち上げて左右に配置したり、一度録ったギターをもう1回、全く同じようにプレイして左右に振ったり……。〈The Night〉っていう曲はギターのカッティングが入っているんですけど、同じプレイを4回やって重ねてるんですよ。NONA REEVESのオッケン(奥田健介)さんにその話をしたら、“そんなに普通重ねないよ”って言われました(笑)」
――やっぱりアレじゃないですか、メタルじゃないですか?MEGADETHだって相当ギター重ねてるって話ですよね。
 「厚くするなら本数という、ウォールオブサウンドにも通じる理論(笑)。だけどまあ、所謂トラディショナルな、歴史のあるメソッドじゃなくて、我流でやるのが宅録じゃないですか。だから正誤は確認せずに、自分がそう思ったらやればいいんだ、っていうのが今回あったので。それでやったらとんでもなく大変だった(笑)」
――自分で自分の首を締めちゃった(笑)。
 「僕自身、本当にアルバムできるのかな?っていうくらいだったので、完成したのが不思議で仕方ないです。冷静に考えると、一十三さんのアルバムだと制作期間この半分くらいなんですよね(笑)。でも、丸々1人で徹底してアルバムを作るというのは譲れなかったので」
――その苦労がどう受け止められるのか、たのしみですね。
 「ずっと密室で作っていたので、どう思われるのかをふと考えたら、告知解禁数日前からかなりナーバスになったりもしましたけどね。XTALくんとか、オフィシャル・サイトを作ってくれたCIDER inc.の田口(陵)くんとか、何人かの友達には事前に聴いてもらって、“良かった”って言ってくれてホッとしたんですけど、よく考えたらみんな優しい人なので、“もしやその意見、優しさで言ってくれてるのでは?”ってちょっと思っちゃったりもして(笑)」
――そんなそんな(笑)!KASHIFさんの気概は伝わると思いますよ。
 「そうですね。ベーシックな方法に立ち返ったものがやりたかったので。突飛でもなく、新しくもないけど、シンプルに“音楽であること”には拘っているので、伝わってくれたら嬉しいです」
取材・文・撮影 / 久保田千史(2017年4月)
KASHIF『BlueSongs』リリースに寄せて
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アチコ

ヴォーカリスト。戸高賢史(ART-SCHOOL、Crypt City、MONOEYES)とのユニット、Ropesを2011年に結成。2017年よりHotel New Tokyoの“従業員”。(((さらうんど)))、くるり、Gotch、ナオヒロック、MU-STARS、79などの作品に参加。近年はソロ活動も活発。
originalachico.tumblr.com

 KASHIFとは長年、(((さらうんど)))でのサポート参加など含め不思議な縁があり、勝手にではありますが竹馬の友のような気持ちでいます。自分の同世代に彼のようなタイプは彼しかおらず、プレイスタイルも感受性もとても尊敬しています。

 彼がソロ・アルバムの制作を始めた頃、電話で話したのですが、とにかく彼の声は少女のようにときめいていました。満を持して、自分の中から湧き上がるものだけで思う存分制作を進める日々。そこには様々な発見があり、良いことも悪いことも、その全てに新鮮な幸せを感じているようでした。まるで、振り向いてくれたばかりの想い人と初めて行ったデートの報告を受けているような気持ちになり、とても眩しかったのを憶えています。

 遅れてやって来た美しいピュアネスの上に完成したKASHIFの1stソロ・アルバム。これまで私が聴かせてもらったどの曲の音像よりずっと繊細で、インスタでおなじみ制作部屋のサイケなグルーヴも、仲間と見てきた最高の景色も、あの時の電話の声から感じた気持ちの輝きもブルースと手を取り合って、全てブチ込まれていました。イルリメ君が書いた詞も砂原さんのマスタリングも、その音像を更に具現化して彩りを添えていますね!本当に最高です!これから沢山の人に聴いてもらう段階に辿り着いた、搾りたてのオレンジのようなときめきを、日々更新されるSNS上で今なお嬉しく拝見しています。KASHIFおめでとう!またみんなでお茶会をしましょう。

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Bose
(スチャダラパー)

1969年生まれのヒップホップMC。1990年にアルバム『スチャダラ大作戦』でデビュー。1994年に小沢健二と共作した「今夜はブギーバック」が大ヒット。ラップやヒップホップをメジャー・フィールドに浸透させる契機を作る。94年からフジテレビ系「ポンキッキーズ」に約4年間出演。以後、テレビ・ラジオ・舞台・CM、ナレーションなど幅広いジャンルで活動中。出身である岡山県の「おかやま晴れの国大使」を務めているほか、京都精華大学にて、特任准教授(ポピュラーカルチャー学部)を務めている。
www.schadaraparr.net

作品とその作者のイメージがかけ離れているということは良くある。

ファルセットヴォイスで異性の心を虜にするヴォーカリストが、トイレのドアなんかいつも開けっ放しで、オシッコを飛び散らかしまくっても全く気にならないようなガサツな男だったり、めちゃくちゃ過激に絶叫するノイズばかり作っているミュージシャンが、会ってみるとすごく細やかに気配りが出来る人だったり。

それは音楽だけに限ったことではない。すごく繊細で可愛い少女を描くのが得意な漫画家が、小太りで胸毛ボーボーだったり、気が狂ったシチュエーションのコントばっかりやってる芸人が、実は子煩悩とかいうことは、実際によくある。

そういうアーティストの方が、なんか信用出来るなあと思う。どんなジャンルにせよ、面白いものを作る人っていうのは、元々どこかアンバランスで、その崩れたバランスをなんとか埋めようと、必死で、もがいているからこそ、普通の人には作れないものを産み出せるのではないかと思うのだ。

逆に言うと、普段から穏やかに暮らしていて、安定した心で、ご飯もよく噛んで食べたりしながら、ヒーリング・ミュージックを楽しく作ってる、みたいなことには、いっさい魅力を感じないというか。

やっぱり、みんなを本当に、芯から救ってくれるような作品を作っている人は、きっとズタズタの心で、ギリギリ生きながら闘っているはずなんですよ、たぶん。

そういう観点から言えば、この素晴らしく聴きざわりがよくて、甘く切ない音楽を作ったKASHIFというミュージシャンが、マトモな人間のわけがないってことなんです。そこはもう、しょうがない部分として、優しく見逃してあげて欲しいです。

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DORIAN

Rolandのオールインワン・グルーヴマシン「MC-909」を使ったライヴやDJで東京を中心に全国各地で活動中。2009年の初の自主制作盤CD-R『Slow Motion Love』を経て、翌年9月に1stアルバム『Melodies Memories』を発表。2013年11月、3rdアルバム『midori』をリリース。七尾旅人、やけのはら、一十三十一、TOWA TEI、DE DE MOUSE、LUVRAW&BTB、ZEN-LA-ROCKらの作品参加や楽曲提供、リミックスなどでも活躍。
fruitsking.exblog.jp

 カシーフさんが素晴らしいギタリストであるのは周知の事実と言う方も多いと思いますが、そんな彼の『BlueSongs』を再生して、誤解を恐れずに言えばこれは「長年堅実に様々なアーティストの作品やライブを支えてきたギタリストの1stアルバム」と単純に括ってしまえるものではないと確信するには1分とかからないでしょう。

 自身の考えに基づいた世界を自身の手で現出させる人間であるということ。数あるライヴや提供作品の中で耳にする彼のサウンドはあくまで本人以外のフィルターを通したひとつの側面に過ぎないということ。勿論そこから滲み出るものは多分にありますが、それらの蓄積が発展結実したものでもありながら彼の純粋な趣向や美意識が貫かれ具現化したアルバムだと思います。クールで抑制が効き時に孤独な世界が見えますが、それを感じるほどに同時にパッションが見えてくる。1曲目の「Breezin'」を聴きながらゆっくりと夜が明け始める水平線を眺めている気分です。完成おめでとうございます!

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MATERIAL
(MGMD A ORG. / CARRE

2000年代前半から活動するインダストリアル・ミュージック・デュオ、CARREのオシレータ、ギター担当。2015年6月、約5年ぶりとなる2ndアルバム『Grey Scale』を発表。デザイナーとしては、鈴木博文『どう?』、テンテンコの7inch「Wa・ショイ! / Good bye, Good girl.」などを手がける。
mindgainminddepth.blogspot.jp

 覚え書きとして以下に記します。

 2016年12月の初め、脳さんから「カシーフのアルバムのデザインを手伝ってくれ」と依頼を受け、六本木に打ち合わせに行きました。もちろんOKと即座に承諾したものの、詳しい話は全く聞いていなかったので、Billboard Recordsからのリリース、絵は永井 博さん、歌詞はイルリメさん、マスタリングは砂原良徳さん……様々な決定事項に一瞬たじろぎました。「本当に大丈夫なんですか?」と何度か確認しました。しかし、KASHIFさんが僕らの様な‘のら’に依頼した理由を聞き「そりゃ、僕らじゃなきゃダメですよ!さすがカシーフさん!さすがPPP!ヤバい!間違いないっす!」などと妙に納得して打ち合わせに入っていったと記憶してます。

 KASHIFさんの肖像画とデモ曲から感じるブルースとテクノ。まるでMAN MACHINEのような。そこに打ち合わせ場所の香妃園(老舗のチャイニーズレストラン)の空気感がスパイスとして混じり合い、すぐにやるべき事は決まります。

 僕ら3人が慣れ親しんできた永井さんの絵が使われたレコードのどれとも似つかない感じで、かつ、僕らなりの最大限のリスペクトを込めた装丁が出来ると自信を持った夜でした。

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テンテンコ

自作トラックに歌を乗せるライヴDJを中心にフリーランスとして活動。また、滝沢朋恵とのユニット“フロリダ”などのコラボレーションや、コメンテーター、バラエティなど多岐に渡って積極的に活動を展開。2016年にメジャー初となるミニ・アルバム『工業製品』をリリース。
tentenko.com

カシーフさん初アルバムリリースおめでとうございます!

カシーフさんのギターが大好きな私たちには、全部がカシーフさんのアルバムとは、なんて贅沢な一枚なんだろ!!と思います。

新しいけど懐かしくて独特な浮遊感が堪らない曲たち、最高っ……!!オシャレなようでいて、実は剥き出しなギターの音や打ち込みの音、かなり生身でガツンとダメージ食らわされます。一曲一曲が見せる顔もかなりバラエティ豊かな世界観で、どんどん色んな音楽を教えてくれているようだなあと思いました。好きな音楽が増える時って、めちゃめちゃ楽しくて嬉しいんだけど、カシーフさんのアルバムはソレを提供してくれた超貴重でありがたい一枚です!!

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tofubeats

1990年生まれ、兵庫県神戸市在住のトラックメイカー / DJ。2013年4月にスマッシュヒットした「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録したアルバム『lost decade』を自主制作にて発売。同年秋にはワーナーミュージック・ジャパン内レーベルunBORDEから「Don't Stop The Music」でメジャー・デビュー。2014年10月に、メジャー1stフルアルバム『First Album』を発売。2017年5月24日(水)に3rdアルバム『FANTASY CLUB』をリリース。
tofubeats.persona.co

ギタリストとして八面六臂の活躍をみせるカシーフ氏の待望のソロ。

とは言いつつもいろんな姿があるカシーフ氏なので一体どんな内容なんだろうと思いつつ受け取ったデータを開かせていただきました。

外仕事で本当に多くのアーティストのギターをこなされているからこそ、自分名義でコントロールを握った時の自由さをとても感じる本作はとても新鮮でした。

カシーフさんといえばもちろんギターのイメージですが、楽曲によってはそこまでギターを押し出さない仕上がりもあり、絶妙なリズムマシンの塩梅もそうですが、プロデューサーとしての目配せが随所に行き渡っており、まさしく「Breezin'」な風通しを全てに纏った仕上がりだと感じました。

そして何よりじっくりと丁寧に積み上げられたであろうスイートなコーラスワークが本当に素晴らしかったです。幕間のハーモニーを聴いているとなんとも言えない感情が胸の内から込み上げて来ます。

瀬戸内海を背に聞いていても太平洋の波音が聞こえるようです。
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