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意味を受け手に委ね自由に作り上げることで生まれた、マーキュリー・レヴのエレクトロニックなニュー・アルバム

 まるで天国が頭の上から降ってくるような、そんな素晴らしい体験だった。ポップでドリーミィなメロディとノイズ・エクスペリメンタルなギターによって、サイケデリックなサウンドスケープを展開する米国随一のオルタナティヴ・バンド、マーキュリー・レヴ(Mercury Rev)が、およそ8年振りにサマーソニックの会場に降臨したのである。先だってリリースされた最新作『スノーフレイク・ミッドナイト』は、これまでになくエレクトロニックな要素を導入した彼らの“新境地”とも言える内容だったのだが、果たして彼らにどのような心境の変化があったのだろうか。ヴォーカルのジョナサン・ドナヒューに、新作やライヴのこと、そしてバンド活動を長く続けるコツなどについて話を訊いた。



――最新作はエレクトロニックな要素が非常に増え、今までの作品とはだいぶ印象が違うのですが、何か心境の変化でもあったのですか?
ジョナサン(以下同)「うーん、正直分からないんだ(笑)。だって、スピーカーから出てきた音を聴いて自分たちでも驚いたくらいだから。ただ、アーティストとしては自分自身を驚かすことができるのは重要な要素だと思う。それができなかったら他の人を驚かすことは不可能だしね。1つ言えるのは、今作で自分たちのルーツ的な部分に立ち返ったところはあるのかな。たとえばアヴァンギャルドな音楽とか、実験性の高い音楽とかを昔から好んでいた。そういう意味では、僕らの最も初期のサウンドに近いのかもしれないよね」
――アヴァンギャルドで実験的な音楽というと?
 「テリー・ライリースティーヴ・ライヒフィリップ・グラス。もしかしたらベートーヴェンもそうかも。あとはガムラン・ミュージックとかね」
――最近、自分たちのスタジオ(“6 Hours Studio”)を設立しましたけど、そこで好きなだけ実験ができるようになったことも新作に影響している?
 「それはあると思うけど、実は最近、そのスタジオをワインバーに改装して、普段はそちらをオープンさせているんだ。賢いだろ(笑)? いわゆるスペイン風のタパス料理を出している“エレファント”という名前のバーなんだ。今度遊びに来てよ」
――ぜひ(笑)。ところで、マーキュリー・レヴは毎回アートワークも印象的ですよね。本作ではウサギとネコをモチーフにしていますけど、これは何かを象徴しているのでしょうか。
 「僕はウサギの目がすごく好きなんだ。ミステリアスだし、『アリスの不思議な旅』を彷彿させるしね。ネコももちろん好きだよ。この2つの動物たちは、言葉を発せずとも饒舌な何かを持っていて、それを見た人それぞれが何かを心に思い浮かべてくれるような気がするんだ」
――受け手が自由に感じ取ってくれればいい、と。
 「うん。それと、僕はシンプルさということにすごく惹かれるんだよ。たとえば日本の俳句が昔から好きで、松尾芭蕉の作品を読んだりしていたのだけど、俳句というのは自分自身をそこに投影させることによって、いろんな意味を読み取れる芸術だと思うんだ。それと同じように、僕ら自身の音楽やアートワークからもさまざまな意味を読み取ってもらえたら嬉しいな」
――あなたたちのライヴは、いつ観てもドラマティックで感動的なのですが、オーディエンスにどんな体験をしてほしいと思っているのでしょうか。
 「うーん、“人生”かな。生きるということの美しさ、激しさ、不思議さを見せたいと思っている」
――人生のダークサイドについてはどうですか?
 「それも重要な要素だね。僕の中にも、そしてみんなの中にもダークな部分はあるから。今“激しさ”という言葉を使ったけど、もしかしたらそれがダークサイドということかもしれないな」
――あなたのライヴ・パフォーマンスには、シアトリカルな要素が非常に強いと思うのですが、これまでに演劇かなにかを学んだ経験があるのでしょうか。
 「とくにないけど……でも、もうすぐアルゼンチンで撮った僕の初の主演映画が公開される予定だよ。監督がすごくクレイジーな奴で(笑)、タイトルはまだ流動的なんだけどね」
――それは楽しみです。ところでマーキュリー・レヴは結成から20年以上経ちますが、バンドを長く続けるコツはありますか?
 「流れに任せること、そして相手をありのまま受けとめることかな。こちらが望む姿ではなくてね。でも、僕らの人間関係というのも、人生と同じように先が読めないところがあるよね。すごく激しくやり合うときもあるし、もちろんディープな部分もある。だからこそ人生も、バンドも素晴らしいんだよ!」
取材・文/黒田隆憲(2009年8月)
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