変に“分かり合おう”みたいな感じではない――POLTA初フル・アルバム『SAD COMMUNICATION』の背景

POLTA(JP)   2015/08/18掲載
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禁断の多数決のシンガーとしても活躍した尾苗 愛(g, vo)と、福田 傑によるPOLTAが、活動7年目にして初のフル・アルバム『SAD COMMUNICATION』をリリース。1960〜80年代を粉砕して90年代でリビルド、現代の空気を纏ってアウトプットする病的なまでに“ポップ”が詰まった全10曲は、両人が腕利きのコンポーザーであることを改めて証明するマスターピースとなっています。同作が湛えるメロディの背景に塗り込められたストーリー、特異なリリックの真意を、お2人に語っていただきました。特設サイトに掲載されたセルフ・ライナーノーツも併せて必見です。
――POLTAの結成は、尾苗さんが禁断の多数決でご活躍されるより全然前なんですよね。
尾苗 「はい。元々POLTAがメインでした。禁断の多数決は少し参加するだけだと思っていたんですけど、1、2年目くらいから状況が変わってきて……POLTAに集中集中しなきゃと焦りはじめて。ずっと(福田を)待たせた状態でしたし(笑)」
――待っている間、不満に思ってました(笑)?
福田 「不満じゃないです(笑)。(尾苗)本人がやりたがってたし、禁断の多数決は本当にかっこいいバンドですから。でも、POLTAの作品を録音し始めてから2年くらい経っていたので、先延ばしにするのは良くないかな、とは思っていました」
尾苗 「個人的には両立出来てるつもりだったんですけど……」
――尾苗さんはPOLTA以前から、ROCKET Kにも在籍していらっしゃっいましたよね。
尾苗 「はい。富山で大学に通っている頃からK.O.G.A.のバンドが好きだったんです。デモテープを送ったらデビューするみたいな話になって、東京と富山を往復しながらレコーディングを経験させてもらったこともあったんですよ。結局はうまくいかなかったんですけど、その時の経験でちょっと味をしめたんですかね。それで内定もいただいてたのに上京しました。ちょうどそのタイミングで古閑(裕)さんが女の子ヴォーカルを探していたので、紹介してもらって加入した感じです」
――ご自身発信の音楽活動は、どのように始められたのですか?
尾苗 「最初は、メンバーを見つけるのが大変だったので、しばらく“尾苗 愛”名義で弾き語りをやっていたんです。1年くらいやったかな。それからメンバー募集をして、アユくん(ayU tokiO)、ベースのmegちゃん、ドラムのシュウくんと4人でPOLTAを結成しました。その後3人が抜けて、サポートを入れて活動を続けていたんですけど、それが傑くんだったんです」
――福田さんもその頃、音楽活動はされていたのでしょうか。
尾苗 「傑くんは元々、“傑”っていう名義のソロ・ミュージシャンだったんですよ」
福田 「ほぼ活動してなかったですけどね(笑)。ときどきライヴをやる程度で」
尾苗 「そうだっけ?けっこうやってたと思うけど」
――尾苗さんは福田さんのライヴを観て声をかけた感じなんですか?
尾苗 「いえ、MySpaceです。当時流行ってたから。良い音楽ないかな〜、って検索して見つけました。わたしフジファブリックがすごく好きなんですけど、MySpaceで聴いた時はフジファブリックっぽいな、良いな、って思ったんです。それで連絡を取ってPOLTAの初企画みたいなライヴに出てもらったんですよ。そこから親交が続いて」
――その時の検索ワードは?
尾苗 「“東京 + パワーポップ”です」
――その単語で検索するのはシブいすね(笑)。リヴァイヴァル全盛の90年代ならともかく、00年代以降ではなかなかそういう人いない気がします。
尾苗 「そうですね……。わたしの耳は時が止まってるのかもしれないです(笑)」
――そもそも、“音楽やるぞ!”って意気込んで上京するのとかも昨今あまり聞かない気が……。
尾苗 「そうかもしれない……。傑くんもそうなんだよね」
福田 「そうですね。熊本で大学を卒業してから東京に来ました。大学時代はバンドを組んでいたんですけど、もう少しバンドがやりたくて。田舎にいる時は、下北沢は楽園に違いないと思ってたんですよ。あそこに行けば、自分が好きなものと同じ音楽をやっている人がごまんといるって、信じてました」
尾苗 「うん、それは思ってたよね……」
福田 「だから東京ならメンバーが見つかると思って来たんですけど、それが一番の大きな間違いでしたね……(笑)」
尾苗 「傑くんPOLTAに入る前はずっと独りだったもんね……」
福田 「ずっと独りでデモテープ作っていて……」
尾苗 「埋もれていたのをわたしが救い上げたんだと思っています(笑)」
――周りにそういう人って少なくないですか?
福田 「いないですね……」
尾苗 「東京の大学でサークルに入って、みたいな人が多いかもしれない」
福田 「すっごく羨ましい!」
尾苗 「そういうバンドには負けたくないですね」
福田 「尾苗さんそんな風に思ってるんだ(笑)」
――なるほど……。それもあってか、POLTAの音楽を聴いていると、ポップな中に気合いとか、情念みたいなものを感じるんですよね(笑)。ライヴを観て余計にそう思いました。
尾苗 「ああ〜(笑)!」
――あまり意識はしていない?
尾苗 「東京に出てきちゃったからには、“やってますよ!”って言いたいというか……。実家まで伝わるように。“後には引けない”みたいな気持ちはちょっとあるかもしれないです(笑)」
福田 「そうなんだ(笑)」
――それに対する焦りのような思いもあるのでしょうか。なんとなく、焦ってる印象の歌詞が多いように思うんですよね。
尾苗 「えっ!そうですか……。でも、わたしの歌詞は自分のことがあまり反映されていないと思うので、焦ってるとしたら傑くんなんじゃないかな(笑)?〈みそじれーしょん〉とか傑くんの歌詞だもんね」
福田 「焦ってる……。う〜ん……。全然、自分の気持ちを書いてるわけではないんですけどね」
――そうなんですね。では〈みそじれーしょん〉だと、どんな人物を想定して書いているのでしょう。
福田 「う〜ん、ライヴハウスで出会った人とか、会社の同僚から聞いた話を混ぜ込んでいる感じです。基本的には、いくつかの“この言葉を使いたい” っていうキーワードから派生して書くことが多いですね」
――言葉遊びみたいな。
福田 「そうですね。でも、POLTAに入る前の20代後半、1回音楽を止めて、普通に就職をた頃の気持ちに近いのかもしれないなあ……」
尾苗 「そうだね、“時は待ってはくれない”だもんね」
――〈30〉もそういう内容ですよね。
福田 「そうですね。これはちょうど、POLTAのイベントに誘われる直前に書いた曲です。25、6歳かな」
尾苗 「そうなんだね」
福田 「銀座線で虎ノ門まで通勤していた時代の歌なんですけど、とにかく辛かったんですよ……。帰りは新橋から乗って、赤坂見附まで銀座線に乗るんですけど、あの周辺のロケーションを含めて毎日がすごく辛くて」
――切ないすね……。曲自体はきらきらしたポップスになっているはずなのに。業が出ちゃってる感じですよね。
福田 「僕の曲は全体的に基本そうですね……。そういう性分なのかな……」
尾苗 「ふふふ(笑)」
福田 「ふふふって。愛ちゃんの歌詞もけっこうヒドいけどね」
尾苗 「わたしのはそんなに深刻じゃないでしょ(笑)」
福田 「全部ストーカーっぽい内容だしさ。しかも相手が見えない。見えたとしても過去形っぽい」
尾苗 「……そうかもね」
福田 「あとは、個人的なことを押し付けてるような歌とか……」
尾苗 「うん……基本あまり家から外に出ないから……頭の中だけの話みたいな」
――メガロマニアですか。尾苗さんの歌詞の中に、実体験はないんですか?
尾苗 「〈キラーサンセット〉はどちらかと言うと実体験に近い感じです」
福田 「(笑)」
尾苗 「?」
福田 「これが実体験て、かなりヤバいでしょ」
尾苗 「えっ!? う〜ん……。ずっと憧れの子がいたのは本当ですね。女の子。なんでこんなの書いたんだろう……。誰か共感してくれるかな?と思っていたんですけど、そうでもないのか……」
福田 「そうね」
――(笑)。POLTAは歌詞がどれもおもしろいですよね。単語単位ではストレートでも、組み合わせで曲げてくる感じで。それは狙い通り?
尾苗 「わたしの場合は狙って書くことが出来ないので……傑くんは狙ってるのかな」
福田 「語感がおもしろければいいな、とは思ってますね。あとは“この言葉はまだみんな使ってないんじゃないか”とか」
尾苗 「〈みそじれーしょん〉とか」
福田 「まあ、〈みそじれーしょん〉はちょっと特殊だけど」
――きゃりーぱみゅぱみゅさんですね。
福田 「そうですね。〈ふりそでーしょん〉にすごく感銘を受けて」
――〈ステマステル〉も。
福田 「そうですね。〈つけまつける〉にいたく感銘を受けて。〈みそじれーしょん〉は頭の3音まで歌詞も全く一緒なんですよ」
尾苗 「友達に聴かせたら “この曲2曲目で大丈夫なの?”って言われましたけど……」
福田 「怒られる気もしたんですけど(笑)、まあ3音なら」
尾苗 「4音くらいまでなら大丈夫かな(笑)」
――他の楽曲でも、様々なオマージュが見受けられますね。
福田 「そうですね、〈遠くへ行きたい〉とか」
尾苗 「他に何かあったっけ?」
福田 「〈ロマンス〉もそうでしょ。原田知世さんとかさ」
尾苗 「そっか。ユーミンさんとかね。特に意識はしてなかったけど、そうなっちゃった……」
――いえ、拝借を糾弾したいわけではないです(笑)。単純に音楽大好きなんだな〜、と思って。
福田 「好きですね」
尾苗 「わたしは……好き?なのかな……」
福田 「尾苗さんは曲というよりも、コードが好きなんだよね。コードだけが好き」
尾苗 「(笑)。うん……コード進行しか聴いてないかもしれない。ジャンルとかあまり関係なく」
福田 「打ち上げでも和音の話ばかりしてるもんね」
尾苗 「コード感が好きだから、アレンジとかは苦手なんです(笑)。コードがかっこよければ何でも良いんだよ」
福田 「“このコードの流れはかっこいい!”みたいな感じなんでしょ?」
尾苗 「そうそう。“この転調は素晴らしいな”とか」
――でも、それだけでは作れなそうな曲ばかりですよね。シンプルに聴こえるけど、決してストレートではないアレンジとか。
福田 「尾苗さんの曲はそうかもしれないなあ。コードをかなり捻ってあるし」
尾苗 「そうかな。でもたしかに、傑くんはもっとシンプル志向なんだよね。これはコードだけの話だけど(笑)」
福田 「アレンジも尾苗さんは基本、音がいっぱい鳴ってるほうが好きだよね」
尾苗 「うん。いっぱい色んな楽器が入ってるほうが好き。たくさん重ねたい」
――お2人のそのバランスで良い感じになっているのかもしれませんね。YOUNG MARBLE GIANTSみたいなニューウェイヴ / ポストパンクの隙間を活かす手法と、シティポップ的なウォール・オブ・サウンドのちょうどいいまとめ方というか。
福田 「それは嬉しいです。シティポップ感でニューウェイヴをやる、っていうコンセプトはあったから」
――ブルーアイド・ソウルのテイストがうっすら入ったりもしていますよね。
福田 「そうですね、〈すみっこがかり〉のベースは特に。イナタい感じの。そういうものが僕自身、特に好きなわけではないんですけど、親近感はあるんですよ。ソウルって、綺麗なメロディの曲なのにけっこうヒドいこと歌ってたりするじゃないですか。“早く出て行ってほしい”とか(笑)。そういうところに近しさを感じるというか。音楽的にどうこうではないので、接近の仕方は他のバンドとはちょっと違うかもしれないです」
尾苗 「基本的に、“何かのジャンルみたいな曲を作ろう”っていうこと無いよね」
福田 「(笑)」
尾苗 「えっ?違うの?」
福田 「僕はけっこう“こういう曲を作ろう”みたいに思ってるんだよね(笑)」
尾苗 「そっか……」
――バンドあるある“方向性の相違”ですか。
尾苗 「あはは(笑)。わたしはとにかく作って、出来上がった中から良い曲を選ぶ感じなんですよ」
――これは偏見かもしれないですけど、既存の形を想定して作らないスタイルって、女性に多い気がします。それ故におもしろいものが出来上がるわけですけど。
福田 「そうかもしれない」
――福田さんの異ジャンル交配も、それぞれの要素が強く主張するものではないですよね。少しの違和感が、逆にキャラクターとして立っていて。
福田 「そうですね。たぶん、僕がちょうどホビー世代というか、改造するものが流行った世代だからだと思うんです」
尾苗 「ミニ四駆とか?」
福田 「そうそう。SDガンダムとかね。だから、“魔改造” 的なものにすごく憧れがあるんですよ。“やっちゃいけない改造”みたいな。ミニ四駆だと、“これ削るとボディがバラバラになる!”っていうところまで”やってみたり。実際、コーナーリングの途中で全部粉々になったことがありました」
尾苗 「へえ〜。そう聞くとかっこいいね」
福田 「でもたいして速くなかったんだよね(笑)」
尾苗 「遅いんだ(笑)」
福田 「速くないのに変な拘りだけはあるっていう……」
尾苗 「うん、でもたしかに、何かと何かを混ぜるのはたのしいよね」
――でもお互い、頭の中で想定している“何かと何か”は別のものかもしれないですね(笑)。
尾苗 「そっかー(笑)」
福田 「そうですね(笑)。あまり共有してないです」
尾苗 「そうだね。正直、〈遠くへ行きたい〉とか、まだよくわからないまま歌ってる感じがある」
――何がわからないんですか(笑)?
尾苗 「良い曲なのはわかるんですけど……たぶん何か理解してないよね」
福田 「けっこう説明はしたんですけどね……」
――説明が必要(笑)。
尾苗 「そうなんですよ。歌詞が難しいところとかも、説明してもらいます」
――〈遠くへ行きたい〉に関してはどんな説明をしたのでしょう。
福田 「『遠くへ行きたい』っていう朝の旅番組があって、この曲はその番組の主題化〈遠くへ行きたい〉(ジェリー藤尾)へのオマージュなんですよ、っていう話から始まって……。僕は通勤時に曲が出来ることが多いんですけど、この曲は中央線を使っていた頃の歌なんですよ。東京駅まで通勤するんですけど、東京駅は新幹線も、東海道線とかの有料特急もあって、その気になればそのままどこへでも行けるんですよね。朝9:00くらいに着いて、構内を歩くと、特にお年寄りなんかは、ものすごいハッスルしているわけですよ。駅中のお弁当屋さんとかで」
尾苗 「うんうん」
福田 「みんなビール飲んだりしてるわけ。朝から」
尾苗 「うん」
福田 「そこを横切って八重洲口に出て通勤する時に、“この野郎!”っていう気持ちになるわけ。今日はもう、仕事なんかサボって、どこへでも行くぞ!みたいな。それを曲に込めたんですよ」
尾苗 「……よっぽど仕事に行きたくないんだね」
――尾苗さん全然納得していないみたいですけど(笑)。
尾苗 「う〜ん……」
福田 「そこに、日曜朝の旅番組を見ているような気持ちを加えてるわけ。だから、サビの部分とかはテレビの中の話なんだよ。そこではもう、自分の話じゃなくなってるんだよね」
尾苗 「そうなのか……でも……そのテンションと、歌のテンションが違うからなあ……」
――まあ、違うは違いますよね。
尾苗 「そうなんです。だからがんばって歌ってるんですけど、なんか難しくて。何言ってるのかわからないこともあります。正直」
――でもとてもエモーショナルに歌っていらっしゃいますよね。どんな気持ちで歌っているんですか?
尾苗 「……何も考えずに歌ってますね。“無”です」
――歌詞からは、2時間ドラマとか昼メロ的な歌謡感が感じられますが。
尾苗 「そうですね。でも歌謡曲っぽく歌ってるわけでもないし……。“焼ける砂漠の真ん中もいい”とかって、たぶん、すごく情熱的なんだろうなあ……とは思いつつ……」
――めっちゃ醒めてますね(笑)。
尾苗 「わたし“焼ける砂漠の真ん中”なんて、怖過ぎて行きたくないです(笑)」
福田 「でもまあ、一番盛り上がるところがトップキーっていうか、一番良いキーになるようには書いてるんだよ?」
尾苗 「うん……えっ?いきなりキーの話?」
福田 「歌詞の話だと埒が明かない気がしてきたから」
――モメがちなお2人ですが、共通して好きな音楽とかは無いんですか?
尾苗 「わたしは結局、コードしか好きじゃないみたいだから……」
福田 「でも共通して好きなのは、FOUNTAINS OF WAYNEだよね」
尾苗 「あっ、FOUNTAINS OF WAYNE好きです」
福田 「2人が一番近いのはそれかな。FOUNTAINSはすごく頭の中にある気がする」
尾苗 「うんうん。わたしはそこから、THE CARDIGANSとか」
福田 「そうだね、ギターポップの流れで言うと」
――60〜80年代が向こう側に見えながらも、やっぱり90年代が前提としてあるんですね。
尾苗 「そうですね。所謂名盤と言われているものは一通り聴いたんですけど、やっぱり音古いな、って思っちゃって。かといって今の今過ぎるやつだと耳が疲れちゃう(笑)。それに、20歳前後に聴いていた音楽は、一生聴くことになるって、よく言うじゃないですか」
福田 「ミュージシャンらしくない発言だな(笑)」
尾苗 「そうだねえ(笑)」
――今回のアルバムでギターを弾いていらっしゃるゲスト・プレイヤーの皆さんのテクニシャンぶりも、90年代感の一因かもしれません。90年代シンガーのバック・ミュージシャンを彷彿とさせるプレイで。
福田 「たしかに!そういう演奏が得意な人ばかりでしたね」
尾苗 「それを出来る人にお願いしてますね。この人だったらこういうの弾けるかな、っていうのは想定してたから、たぶん頭の中で90年代っぽい感じのが流れてたのかも。みんなそれを酌んで、すぐ理解してくれました」
福田 「そう。テクニックと優しさを兼ね備えた人ばかりだったね」
――それでもやっぱり、聴いている感覚は“今”なんですよね。かつ所謂“今っぽい”とは違うのが新鮮です。
福田 「それは嬉しいです!そう思えたことがなかったから」
尾苗 「まだそこは俯瞰出来てないかもしれないです。色んな今の曲の中にPOLTAが混ざった時に、“古い”って思われないかな、ってちょっと心配でした」
福田 「そうだよね。最近の音楽はみんなおしゃれだもんね」
――でもまあ、フレーズとかの引用は古いのかも(笑)。
福田 「たしかに……ベースに関して考えると古いのかもなあ」
――決して新しくはないですよね。今のバンドって、もっとベース・ミュージックの影響があったりしますもんね。
福田 「そうですよね。やっぱり、楽器を始めた頃に“これが弾ければだいたい大丈夫だろう”と思って練習していた曲が古かったんですかね。VAN HALENとか」
尾苗 「あはは(笑)。その時の手癖が残ってるんだ」
福田 「ペンタトニックで速く弾ければ大丈夫!みたいな(笑)」
――(笑)。でも、そういうのもPOLTAの楽曲では良い方向に作用している気がします。Sky Ferreiraちゃんがハードロックを引用する、みたいな感じもあって。
福田 「そうなんですか……。僕、女性ヴォーカルの音楽を全然聴かないので、わからないんですよ……」
尾苗 「わたしも。きゃりーぱみゅぱみゅさんしか聴かない」
――それは意外です。VIVIAN GIRLSとかも好きなんじゃないかと思ってました。
福田 「若い男の子が複数人でチャラチャラやってる音楽が好きなんですよね〜。女の子が入ってるバンドはあまり好きじゃないんですよ。だからパワーポップでも、ASHはそんなに好きじゃなかったり」
――Charlotteさん素敵ですよ。
福田 「なんか、“ズルい”って思っちゃうんですよね。そう言いつつも、かなり聴いてはいましたけど(笑)」
――じゃあPOLTAはズルい部類ですよね。福田さんの曲は、尾苗さんが歌うことを想定して作っていらっしゃるのかと思っていたので、想定外でした。
福田 「そうなんですよね……。POLTAに入ってからは、わりと女性ヴォーカルも聴くようになりました。それまでは、日本のもので言えば椎名林檎さんと、aikoさんくらいしか聴いてなかったです。その2つはあまり女性ヴォーカルであることを気にせず聴いてましたね」
尾苗 「うん、わたしも好きです。aikoさんすごく好き」
福田 「aikoさんすごいよね」
――ソングライティングの面で?
福田 「全部すごいですね。ずっと若くて、ずっとかわいいし」
尾苗 「うんうん」
福田 「ずっとおしゃれだしね。曲も、どうしてこんなに良い曲を書き続けられるんだろうって思う。しかもTwitterがすごく良いんだよね。過不足なく、サービスがあるっていう」
尾苗 「ちょうど良いよね」
福田 「完全に天才以外の何者でもないですよ」
――だいぶウォーシップですね(笑)。
尾苗 「そうですね。aikoさんはかなり聴きました」
――でもシンガーとしては、あまり影響を受けている感じしませんよね。
尾苗 「そんなことないですよ!わたしの場合は歌に関しても、特に何かから影響を受けたっていうことは無いんですけど、aikoさんは影響受けてると思います。たまに自分で歌っていて、おこがましいですけど“今aikoさんぽいかな” って思う時があるんですよ(笑)」
――尾苗さんの歌って、独特の色気がありますよね。そこは意識して出しているのでしょうか。
尾苗 「いや〜、それはたぶん、出ちゃってるんだと思いますね」
福田 「自信ありげな発言だな(笑)。そこはね、僕の指導の賜物だと思いますけどね。意図的に歌い方や発音を指示している曲がけっこうあるので」
尾苗 「ちょっと!全部持っていかないで!わたしの試行錯誤の賜物なんです(笑)!」
――なんでそんなに福田さんをライバル視してるんですか?
福田 「そうなんですよね。以前、僕らが共通して好きな、とあるバンドのライヴに一緒に行って、打ち上げにも参加したことがあったんです。その時、バンドのメイン・ソングライターの人が、POLTAの曲について尾苗さんに色々質問してきたんですよ。尾苗さんがPOLTAの全楽曲を作っていると思っていたみたいで。“あれはどういう気持ちで書いた歌詞なんですか?”とか“どうしてこういう曲になったんですか?すごい曲ですね”みたいな。それが全部僕の書いた曲だったんですよ。そしたら尾苗さん、“具合悪くなったんで帰ります” ってめちゃくちゃ怒って帰ったんですよ(笑)」
尾苗 「泣いて帰りました……」
福田 「びっくりしたよ」
尾苗 「今回のアルバムも、10曲中6曲が傑くんの曲になっているのがめちゃめちゃ悔しくて。わたしの曲は4曲ですけど、1曲はアユくんが歌詞を書いているので、歌詞を書いたもので言うと3曲しかないんですよ。7年やって自分はこれか……と思って……」
福田 「6と4で、1動いたら半分になるんだから、たまたまだって言ってるんですけど……」
尾苗 「2違うのは大きいんですよ……。ライヴのセットリストも、7曲あったら4曲はわたしの曲ってずっと決めてたんですけど、傑くんが人気曲ばかり書いてくるから、だんだんそうもいかなくなってきて。4対3になり、5対2になり……。大人になったなあ、と自分でも思います」
福田 「その発想すごいよね……だってバンドだよ?しかもヴォーカルでしょ?ギター・ヴォーカルなんて花形だよ?ライヴ中、僕のこと見てるお客さんなんて、ほとんどいないんだから」
尾苗 「……ってよく言われるんですけど、悔しいんですよ」
福田 「すごい自己顕示欲……。まあヴォーカルだから、それくらいのほうがいいけどね。尊敬します」
尾苗 「わたし曲書くのが遅いから、助けてもらったのに、こういう風に言っちゃうんですよね……」
福田 「尾苗さんはアユくんのこともかなりライバル視してるよね。アユくんが良い曲書いてくると本当に悔しがってるし……。僕はそんなことないですよ(笑)。仲良くしてます」
――ライバル心ていうのがまた、今時珍しい気がしますね。ライヴの雰囲気を含めて、オールドスクールなロック・スピリットを感じます(笑)。
尾苗 「あはは(笑)」
福田 「(笑)。古閑さんのおかげです、ってちゃんと言っておきなよ」
尾苗 「古閑さんのおかげです(笑)!」
福田 「酔っ払った時もそうなんですよ。全くお金持ってないのに、“わたしの奢りだ!”ってみんなに振舞ったり」
――ロックですね。
福田 「それで僕、毎回貸してるんですけど、返してくれって頼むと“ケチくさいこと言うな!”って言われてうやむやになるんですよ」
尾苗 「そんなことないです!返してます!」
福田 「尾苗さんはさ、アーティストじゃないんだよね。ロックスターなんだよね」
――そういうものに憧れがあるんですか?
尾苗 「憧れというか……親近感はありますね」
福田 「破滅型のね」
尾苗 「そう生きることしか出来ないんだろうな〜、みたいな感じ?」
――でも基本、家にいるんですよね?
尾苗 「家に、いますね……」
――ベッドルーム・ロックスターですね。
尾苗 「な、なんですか、それ!? なんかかっこいいですね(笑)!」
――『マンガ道』では、“ファッション・リーダーになる”って宣言されてましたよね。
尾苗 「そうなんですよ!」
福田 「泥酔した時にも “わたしはおしゃれになりたいんだ!”ってうわ言のように言うんですよ……」
――わかりますよ。おしゃれになりたいです。
尾苗 「ですよねえ」
福田 「でも、褒められた服はだいたい人からもらったやつだったりするんだよね」
――わかるー!僕もそう(笑)。
尾苗 「本当ですか!自分で選んだ服は全然褒められないんですよ……。最近は、人前に出る時にはちゃんと周りの人の意見を聞くようにしてるんですよ(笑)」
――これから人気者になったりしたら、スタイリストがついたりするかもしれないですよ。
尾苗 「そうですよ!うんうん」
――ロックスターですもんね。
尾苗 「そうですね。でもロックスターって、独り善がりな感じもしますけど……」
――POLTAとしては“こうなりたい!”みたいなヴィジョンはあるのでしょうか。作家的なお仕事は、もっと色々出来そうですけど。
尾苗 「ぜひぜひ!お待ちしております!」
福田 「僕は作詞をしたいですね。歌詞はとにかく拘って書いてるので。良いか悪いかはわからないですけど……」
尾苗 「でもやっぱり、想像出来るものにはなりたくないですよね」
福田 「それって、よく10代の子供が放つ常套句だよね」
尾苗 「厨二病的な感じ……めっちゃありますね……」
――さきほど“あまり共有してない”とおっしゃっていましたけど、つくづくそうなんですね、お2人は。カヴァーアートもそういう感じで。
福田 「そうですね。一緒に何かしている感じがしない。たまたま近くに立ってるだけ、みたいな」
尾苗 「たしかに……。演奏もしてないし」
福田 「そういうところがPOLTAの音楽と近いな、って思ったんですよ。スタンドアローンというか」
――かわいいですよね。ちょっと80年代タッチもあって。
福田 「Twitterで見つけたすごく良い絵を描く人が、あけたらしろめさんという方なんですけど、たまたま禁断の多数決のファンだったんですよ」
尾苗 「わたしのことを知ってくれていて」
福田 「この人に頼みたいね、っていう話をしていた時に、その人が“尾苗 愛”ってつぶやいたんですよ(笑)」
尾苗 「そう。私の名前を一言つぶやいていて。興味持ってくれてる!と思って連絡を取ったんです」
福田 「すごく熱い人なんだよね」
尾苗 「ブックレットの中も1曲1曲をイメージして描いてくださって。ぎっしり。傑くんは漫画大好きだから、白黒というのもハマったんだよね」
――このカヴァー・アートは、タイトルともリンクしているのでしょうか。
福田 「そうですね、独立した個が触れ合う部分にフォーカスした気持ちがすごく強くて。タイトルには、ネガティヴなことを媒介にしたコミュニケーションという意味合いを込めたんですけど、最近ではそれが、誰かを貶めることによるコミュニケーションになってしまっているじゃないですか。それはすごく悲しいと思うんです。僕が考える“ネガティヴなことを媒介としたコミュニケーション”というのは、ネガティヴなことが誰かの心を揺さぶったり、共感できたりすることなんです。さっきのソウルの話が正にそうですけど、音楽ってそうだったはずなんですよね。自分たちの曲がそうなればいい。僕たちが独立した個に見えるのも、そういう部分をコミュニケーションの手段として持っていたいからかもしれないです。それを基に人と繋がるというのが、自分たちにとっては今、健全なのかな、っていう気がしています」
――そういう繋がりのほうが、信頼が感じられますね。
福田 「まあ、喧嘩ばっかりですけどね(笑)」
尾苗 「変に分かり合おうみたいな感じではないですからね(笑)。でもそれは、Sadなことじゃないのかもね」
取材・文・撮影 / 久保田千史(2014年6月)
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POLTA
『SAD COMMUNICATION』発売記念イベント

polta.in

■ 2015年8月21日(金)
ミニ・ライヴ&サイン会

東京 タワーレコード新宿店
開場 19:00 / 開演 19:00

[ご参加方法]
観覧自由。対象店舗にて7月29日(水)発売POLTA『SAD COMMUNICATION』(HFCD-020)をご購入頂いたお客様(ご予約者様優先)に先着でサイン会参加券を配布致します。イベント時、参加券をお持ちのお客様には商品にサインをさせて頂きます。当日、商品を忘れずにお持ち下さい。

[対象店舗]
タワーレコード新宿店 / 渋谷店 / 池袋店 / 秋葉原店 / 横浜ビブレ店 / 吉祥寺店 / 町田店




■ 2015年8月28日(金)
ミニ・ライヴ&サイン会

東京 HMV record shop 渋谷
開場 20:00 / 開演 20:00

[ご参加方法]
観覧自由。HMV record shop 渋谷にて7月29日(水)POLTA『SAD COMMUNICATION』(HFCD-020)をご購入頂いたお客様に先着でサイン会参加券を配布致します。イベント時、参加券をお持ちのお客様には商品ジャケットにサインをさせて頂きます。当日、商品を忘れずにお持ち下さい。




■ 2015年9月3日(木)
共演: 白波多カミン

東京 dues 新宿
開場 18:30 / 開演 19:00

[ご参加方法]
※下記対象店舗にてPOLTA『SAD COMMUNICATION』(HFCD-020)をご購入頂いた方に先着で、「イベント参加券」を配布させて頂きます。
※ディスクユニオン新宿本館BF日本のロック・インディーズ館にて白波多カミン『白波多カミン』(TSUNO-001)をご購入頂いた方に先着で、「イベント参加券」を配布させて頂きます。
※3月11日発売の白波多カミン『白波多カミン』(TSUNO-001)をディスクユニオンにてご購入頂いた方で、レシートまたは特典のピックを当日お持ち頂いた方も入場可能となります。
※「イベント参加券」は、先着順での配布のため、なくなり次第配布終了となります。予めご了承ください。

[対象店舗]
ディスクユニオン新宿本館BF日本ロック・インディーズ館 / お茶の水駅前店 / 神保町店 / 下北沢店 / 吉祥寺店 / 中野店 / 立川店 / 町田店 / 高田馬場店 / 池袋店 / 横浜関内店 / 横浜西口店 / 千葉店 / 柏店 / 北浦和店 / 渋谷中古センター / 大宮店 / オンラインショップ



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