シャロン・ヴァン・エッテン / 2010/12/27掲載
悲しさや寂しさがあるから強くなれる。Sharon Van Etten インタビュー
――あなたの音楽は“フォーク”と呼ばれることが多いと思うんですけど、自分ではどんな音楽をやっていると考えているんですか?「もしみんながジャンル分けするとなったときに、一番当てはまるのはフォークかも。特に1stアルバムのときは。新しいアルバムはもっとロック寄りだし……。でも全体的にフォークと呼ばれることについて違和感はないかな」
――アコースティック・ギターをメインに作曲や演奏をしようと思った理由は?
「エレクトリック・ギターよりも振動が体に直接伝わって、楽器と繋がってるって感じが好きだから」
――いつ頃から作曲を始めたのでしょう。
「小さい頃から、特に理由もなく歌うことが大好きで。高校生になってメロディやハーモニーを勉強し始めてから作曲にも興味を持つようになって、曲を作り始めたの」
――その頃はどんな音楽を聴いていたの?
「ほんと?」
――あなたも彼女も喫煙者ですし(笑)。
「そうね(笑)! PORTISHEADのライヴ・アルバム(
『Roseland NYC Live』)はわたしの人生を変えた作品のひとつなの。ライヴ・バンドとエレクトロニックのフュージョンやオーケストラのアレンジ、レコーディングのバランスが素晴らしいし、なによりその中で女性がフロントに立って表現している姿がパワフルだもの」
――“女性の地位”のようなテーマに興味があるの?
「もちろん、女性と男性の地位は平等であるべきだと思ってる。だから、いわゆるフェミニスト、特にハードコア・フェミニストと呼ばれる人たちの意見には反対だな。男性よりも地位が上だと主張しているように思えるもの。以前とあるフェミニスト団体から、子供たちにギターを教えてほしいっていう依頼をされたことがあるんだけど、生徒が全員女の子だって言うから、それはちょっと違うと思って断ったの。男の子もいるんだったらもちろん引き受けたんけど……。できない、って言ったらその団体の女性が激怒しちゃって(笑)。そんなのイカれてるでしょ(笑)?」
――(笑)。曲は、どんなことを考えながら作っているんですか?個人的な内容が多いように思うんですけど……。
「曲を作ることは、わたしにとってのセラピーなんじゃないかな。悪いこと、悲しいことが起きても、気持ちを人に話すのが苦手だから自然とそれが歌に現れてしまうの。そうなることで精神的に開放されてリラックスできる。作っている最中は意図していないけど、出来上がった曲を聴くと開放されてるって分かるの。若いときは気づかなかったけど、大人になってからそう思うようになった」
――そうやってあなたが作った曲を、僕たちが素敵だなあ、と思って聴いているというのはどんな気分?
「(笑)。嬉しい。すごく。こんなに遠くの国なのにそう思ってもらえるなんて」
――どんな風に聴き手が受け取っているのか気になったりしませんか?
「わたしの歌は、流行の煌びやかな音楽みたいに強い言葉じゃなく、弱い言葉だと思うの。悲しかったり、寂しかったり。でもそれがあるからこそ強くなれるんだっていうことに共感してくれたらいいな」
――録音ではコーラスやギター以外の楽器も入っていますが、ライヴではいつも弾き語りのスタイルなんですか?
「夏にドラムもベースもいるバンドを結成して、USではそのバンドでツアーもしているの。今回は1人で来たけど、次日本に来られるときはバンドを連れて来たいな」
――バンド名とかあるの?
「SVE(Sharon Van Etten)バンド(笑)。何か良いのがあったらバンド名は付けたいなって思ってるんだけど……。NYに戻ったら、次のアルバムもそのメンバーで作るつもりだし」
――バンドとして曲を作ることもあるんですか?
「今はわたしの作った曲を演奏してもらってる感じ。わたし自身は楽器の演奏があんまり上手くないから……。友達のバンドの曲に参加したり、ヴォーカル・アレンジを手伝ったりっていうことはあるけど、決まったバンドの一員として作曲したことは今のところないな」
――タトゥのこと教えて。左腕に入ってるのは何かのシンボル?「左腕のは亡くなった親戚を想って入れたもの。手首に入っているのはおばあちゃんが好きだったお花。上に入っているのはファミリーネームのVとEを組み合わせたもので、Vがおばあちゃん、Eの3本ラインが3人の叔父さんたちのことも表わしてるよ。黒いベルトになっているのは、アイリッシュの喪章の風習をモチーフにしてるの」
――アイリッシュの家系なんですか?
「アイリッシュ、ロシアン、ポリッシュ、ダッチ、スウェディッシュ、ジューイッシュ……移民の家系だから複雑で……自分のルーツがどこにあるのかは全然分からないんだけど、家族で伝統的に守っているのはアイリッシュの風習なの」
――日本人だって、一口に日本人といってもルーツには諸説ありますからね。
「そうなんだ。本当のことなんて、きっと誰にも分からないよね(笑)」
――右腕に入ってるのはギター?
「これは1stアルバムのときに使っていたクラシック・ギター。壊れてしまって今は使ってあげられないから……。まだ持ってはいるんだけど」
――今使っているギターって、通常のものより少し小さいですよね。「抱きやすいし、もっとギターと近づきたいから小さいものを使ってるの。わたしの手もすごく小さいし」
「インディペンデント・レーベルのあり方や、流通の仕方を学びたくてフルタイムで雇ってもらったの。オーナーのBen GoldbergはRough Tradeみたいな大きなレーベルでも働いていたことがあるんだけど、インディペンデントで運営することに情熱を注いでいる人だからすごく勉強になった。彼はジャケットのレイアウトひとつにも全員に意見を求めるような人で、みんなに信用されているし、わたしもお父さんみたいに思って尊敬してるの。すごく良いレーベルよ。でも自分の音楽の方で忙しくなってしまったからフルタイムでは働けなくなってきて……。なんだか立場が逆転してしまったような感じ(笑)」
――BEIRUT(ベイルート)やEssie Jainなど、素晴らしいアーティストが多数在籍していますが、そういった人々との交流はありますか? 「小さいアパートの一室みたいな事務所なんだけど、ツアーで近くに来るときはみんな泊まっていくからいつも刺激を受けてる。アーティスト同士の結びつきもすごく強いの。お互いの周りでショウがあるときは手伝いに行ったり。Jeff Mangum(
NEUTRAL MILK HOTEL)がステージに復帰するのをみんなでサポートしたりね」
――THE DEAD Cみたいなエクスペリメンタルなアーティストもいますよね。
「DEAD C! 彼らもやっぱりツアーの度に事務所に寄ってくれるんだけど、最高におもしろい人たち! メンバーのMichael Morleyはソロ・プロジェクトのGATEでEPを出したばかりなんだけど、そのアルバムがすごく良いの。エクスペリメンタル・ダンス・レコードって感じ(笑)」
――一緒に何か作品を作ったりする予定とかってあります?
「一緒に何かやりたいとはずっと思っているんだけど……実現するかどうかは今のところ分からないな。来年に出る予定のGATEのアルバムは間違いなく良い作品になるから、絶対聴いたほうがいいよ」
――1週間ほど日本に滞在して、いかがでしたか?「みんな親切で優しいから最高。どこに行っても景色が違っておもしろいし、街中に神社がぽつんとある感じとかすごくかわいいと思う。今日本語を勉強している最中だから、次に来るときはもっといろんな人と話してみたいな」
――日本の女の子のファッションて、あなたから見てどう?
「夏だったらたぶん日本もUSもそう変わらないと思うんだけど、日本の女の子はすごくフェミニンていうか……寒いのにスカートが短過ぎてクレイジー! あと膝上まであるブーツとか、ふわふわが付いてるブーツとか、わたしは履けない(笑)。ブーツは好きなんだけど……。ゴージャスなファーが着いたジャケットもすごいね! わたしはもっと着やすい服が好き。そのほうが楽だもん」
――いつもショートヘアなのも楽だからなの?
「そう。伸ばしてみたい気もするんだけど、ある程度のところまで伸びるとやっぱり切っちゃう。スキンヘッドにしてたこともあるんだよ!」
――ええーっ!なんで??
「高校生くらいのときのことなんだけど、周りがガーリーガーリーしてるのにうんざりしてて、全部剃っちゃった(笑)。でも剃ったら剃ったでみんな頭を触りに来るの。知らないオジサンにも頭を触られたりして。だからもうスキンヘッドにはしないよ(笑)」
――そっか(笑)。インタビューに答えてくれてありがとう! また来てくれるかな?
「イイトモ?? OK、イイトモ!……なあに?これ(笑)」
取材・文/久保田千史(2010年12月)
通訳/松浦 亮 from

(Mega thanks!)