タラ・ジェイン・オニール / 2011/07/07掲載
“コピー機みたいに演奏するのは楽しくない”Tara Jane O'Neil、二階堂和美とのコラボレート作『タラとニカ』をリリース
現在は米オレゴン・ポートランドを拠点に活動するミュージシャン / 画家、
Tara Jane O'Neil(タラ・ジェイン・オニール)が、
二階堂和美とのコラボレート作
『タラとニカ』を
Sweet Dreams(US盤はK records)よりリリース!ソロ作、RETSIN他でのシンガーとしての魅力はもちろん、RODANやTHE KING COBRA等での活動、
JACKIE-O MOTHERFUCKER(ジャッキー・O・マザーファッカー)への参加など、多彩な顔を見せてくれるマルチ・インストゥルメンタリスト / サウンド・アーティストとしても名を馳せる彼女。そしてMike Patton(マイク・パットン)級ヴォイス・パフォーマー / サウンド・メイカーとしての二階堂和美。2人で作り上げたのは、ほぼ全篇即興、コミュニケーションの空気が伝わる心地良い緊張感と、巧みな音選びがナチュラルに流れる“時間”そのもの。発売に伴うツアーのため来日中のTJOに、この作品についてお話を伺いました。
――このアルバムを作ろう、ということになったのはいつ頃のことだったんですか?
「うーんと2008年かな? 東京で個展も開かせてもらったツアーなんだけど、そのツアー前に“ニカと一緒にやりたいんだけど、いい?”って訊いたら“いいよ!”って。それで実現することになったの」
――何故彼女となら良いものが出来ると思ったのでしょう。
「実際はどうなるか全然分からなかったんだけど(笑)。このアルバムの話が出る前に3回ジャパン・ツアーをして、その間に何度も共演して彼女のことが好きだったから。実験ね」

photo: Megan Holmes
――二階堂さんとTaraさんは、アルバムでしか接していない方々には“歌もの”のイメージが強いんじゃないかと思うんです。今回は歌抜きのエクスペリメンタルな作品なので、そういった皆さんには最初ちょっと取っ付きにくいかもしれないという気がしたのですが……。
「う〜ん、あたしは別にオーディエンスのために音楽を作っているわけじゃないから。歌を歌っている作品はもちろんあるけど、インストゥルメンタルが良いときもあるし。エクスペリメンタルだったり、ノイズだったり、その時々で色んな音楽をやりたいの。ひとつのことだけっていうのは超退屈だから。それが皆に受け入れられるかどうかっていうことは考えてないな」
――そりゃそうですね。
「あたしが最初に聴いたニカのアルバムはイールさん(『また おとしましたよ』)だったんだけど、初めて彼女の声を聴いたときの印象って強烈だから、気持ちは分かるんだけどね」

『タラとニカ』
――この作品を作るにあたって、何かコンセプトはありましたか?
「全然。何にもないの(笑)」
――とりあえず集まって、音を出して、という感じ?
「そう。最初はトンラウム(京都にあるスタジオ)で。小さな部屋に福田さん(Sweet Dreams)、Geoff Soule(ジェフ・ソール / 元FUCK、TJOソロ作やTHE NAYSAYERにも参加)、ニカ、あたし。で、録音。パーカッションやらストーブやらヤカンを叩いたり。2回目は旧グッゲンハイム邸。トンラウムで録ったセッションにオーバーダブしたの」
――すごくリラックスして、楽しい雰囲気が伝わってくる録音ですよね。
「カフェや車の中でも録音してすごく楽しかったし、リラックスしてたけど、チャラい感じじゃないよ、もちろん(笑)。音を出すときはかなり集中してたから」
――車の中でも録音したんですか?
「本当は琵琶湖のほとりで録音するつもりだったんだけど、風が強くて。ジャケットはその時の写真。マイクを持っているのが東さん(トンラウム・スタジオ)。この写真気に入ってるの」
――ライヴでは音源とは一味違った感じになっていましたね。
「あたし自身は特に楽器を変えたりしていないんだけど、ライヴでは一緒にやるプレイヤーがいつも違うから、そういう風に聴こえるんじゃないかな」
――Taraさんはソロでライヴをされるときも、同じ曲でも毎回随分と違って聴こえるんですよね。それもあまり意図していないんですか?
「コピー機みたいにいつもいつも同じように演奏するのが嫌だから変えてるの。そんなの全然楽しくないもの」
――じゃあ、形の決まったものより、今回のアルバムのようなフリーフォームな作品を作るほうが実は楽しい?

photo: Sarah Cass
「そうね、録音している時はめちゃめちゃ楽しかった。演奏してる時はね。デートみたいな感じで。でも最終段階はツラかったなあ〜(笑)。録音したものをProToolsで編集したんだけど、すごく大変だったの。福田さん、東さん、ニカの写真をPCの前に飾って、それを見ながらがんばったわけ(笑)。ハァ……」
――いつものソロ・アルバムと、今回のようなアルバムの決定的な違いってなんでしょう。
「歌がない(笑)!」
――そ、そうっすね(笑)。今回の作品では、Taraさんの1音1音を扱う瞬発力がいつにも増して強烈だと思うんですよね。
「そうね、それは正しいと思う。ほとんどのパートでは何も考えずに、出てくるものをそのまま音にしていったから。オーバーダブの時はもう少しちゃんと選んで作るようにしたけどね。最初に何か決めて作ったのは“4 Trains”だけかな。でもその曲もほとんどインプロヴァイズなの。
Moondog(ムーンドッグ)の曲とか、ニカに教えてもらった〈蘇州夜曲〉(
服部良一)もやったんだけど、あんまり上手にできなかったからお蔵入り(笑)」
――それは聴いてみたいですね!
「あたしが死んだらね(笑)」

photo: Ryo Mitamura
――ライヴを拝見した時、お祭りというか、ちょっとリチュアルな感じがしたのですが、そういう雰囲気を意識していたのですか?
「ニカのパーソナリティもあると思うけど、パーカッションが入っているからプリミティヴな感じがするのかな。でも特に意識しているわけではなくて、その時その瞬間で感じたものをそのまま音に出そうと心がけているから、それがリチュアルな雰囲気に繋がっていくのかもしれないね」
――アンコールでは「サザエさん」のエンディング・テーマを少しカヴァーしていましたね。“タラちゃん”が有名なキャラクターだってこと、知らなかったんですか(笑)?
「うん……。ニカにダマされたの……(苦)。今はちゃんと分かってる。日曜の夕方でしょ」
――日本には何度もいらしているTaraさんですが、今回は状況が状況だけによく来てくださいましたね。
「日本のアーティストと一緒にアルバムを作って、日本のレーベルからその作品が出ているんだから、日本のオーディエンスにライヴを観てもらうのは良い事だし、当然よ。10日間くらい日本にいても死なないってことくらい分かるし」
――ありがとうとしか言いようがないです。
「こちらこそ!アリガト!」
取材・文/久保田千史(2011年6月)
通訳/松浦 亮 from

(arigato!)