このアルバムは“問いかけ”なんだ――フジロック出演決定! 英国の人気バンドが新作アルバムをリリース

トラヴィス   2016/04/28掲載
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 時が経つのは本当に早いもので、今年はトラヴィスのデビュー20周年だそうだ。英国のギター音楽がここ10年ほどのあいだ低迷してきたことを思うと、彼らの地に足がついた歩みにはあらためて驚かされる。そしてそのトラヴィスの輝かしいディスコグラフィに、またひとつ素晴らしい作品が加わった。ほとんどの楽曲が2〜3分台という非常にコンパクトな構成ながら、そのリリックからは現代社会への辛辣な言及も読み取れる通算8作目のアルバム『エヴリシング・アット・ワンス』について、ダギー・ペイン(b)とニール・プリムローズ(ds)に話を訊いた。
――最近のライヴでは、あえてマイクを使わずに「FLOWERS IN THE WINDOW」(3rdアルバム『インヴィジブル・バンド』収録曲)を歌うのが恒例となってますよね。あれ、ホントにいい演出だなと思って。
ダギー 「ありがとう。あれをはじめたのには大きなきっかけがひとつあってね。じつを言うと、僕らはあの曲をしっくりくる形でレコーディングできなかったんだ。というのは、もともと〈FLOWERS IN THE WINDOW〉はピアノとアコギ、あとはタンバリンとバック・コーラスだけでつくった曲でね。いま思えばその編成で録ったデモがいちばんよかったんだけど、スタジオ内でプロデューサーを交えながらいろいろ試していたら、結果的にそれとはちがうアレンジで収録することになってさ。だから、あれは自分たちがあの当時に思い描いていた演奏を、今またライヴで再現しているような感じなんだよね」
――なるほど。とはいえ、ああいうアンプラグドな演奏を披露できる環境って、それなりに限られてはきますよね?
ダギー 「たしかに、あれはフェスとかアリーナみたいな会場だとなかなかやれないよね。でも、昨日みたいなインドアの会場(東京ドームシティホール)だと、あの演出はすごく効果的というか、会場のみんなが曲の世界にもっと没頭できるんじゃないかなと思って」
――本当にそのとおりで、あの静まり返った状況でフラン(・ヒーリィ)の生の歌声が聴けるのは、とても素晴らしい体験でした。ただその一方で、フロアのところどころから放たれるスマホのシャッター音が、どうも気になっちゃって……。
ニール 「あははは(笑)。まあ、ライヴの瞬間を写真に残してもらえるぶんには、ぜんぜんかまわないんだけどね」
ダギー 「まあ、そこはシャッター音をミュートしてもらえればいいわけでさ」
――それが、日本のスマホはミュートできないように設定されているんですよ。盗撮防止のためってことで。
ダギー 「え、そうなの!? へえ〜」
――実際、今回のアルバムにはそうした現代社会に対するメッセージも込められていますよね。だから、あのシャッター音にはちょっと思わせられるところもあったというか。
ダギー 「なるほどね。ちなみに君はこの作品にどんなメッセージが込められていると思ったの?」
――それこそ、ああいうスマホみたいなコミュニケーション・ツールに対する警鐘みたいな感じかな。
ダギー 「正解(笑)。とくに〈Paralysed〉〈Animals〉〈Everything At Once〉〈3 Miles High〉あたりはそんな感じだね。つまり、“人と人がうまく繋がりきれていない”ってこと。というのも、今って誰もが、インスタグラムとかFacebook、Twitterなんかで“理想の自分”をプレゼンしあってるような感じでしょ? そういう“理想の自分”が、今の世の中にはたくさん漂っている。でも、そのSNS上でみんながプレゼンしてるものって、その人本来の生活とは、またちょっと違うものでもあるわけだよね?つまり、実際のその人にはもっと動物的な欲求なり、本能があって、それこそが人間本当の姿なんじゃないかなと僕らは思ってる。で、今回のアルバムではそういうことを歌ってるんだよね」
――なるほど。
ダギー 「ただここで誤解してほしくないのは、そこで僕らはみんなのことを“そんなのフェイクだからよくない!”と説得しようとしているわけじゃないんだよ。ただ、そういう現実があるってことをリスナーに投げかけたかったというか」
ニール 「そう、いわばこのアルバムで表現しているのは“問いかけ”なんだよね。つまり、僕ら自身がなにかを変えようとしているわけじゃないんだ。ただ、みんながそれに気づくことで、なにかが変わることもあるんじゃないかなって」
――そもそもトラヴィスは、そうした時代の潮流と冷静に付き合い、ムーヴメントと一定の距離を置きながら活動してきたバンドですよね。それこそあなたたちがデビューしたのは、ブリット・ポップ後期にあたるわけで。
ダギー 「うん。実際、ブリット・ポップってすごくいいムーヴメントだったと思うんだ。ブラーパルプも、みんなすごくエキサイティングだったし、とくに93〜96年あたりはホントおもしろい時期だったと思う。でも、やっぱりムーヴメントである以上、そこには必ず終わりがあるからね。だから、その一部に組み込まれると、結果的にそれがバンドの衰退にもつながってしまう。で、僕らが99年に出した『ザ・マン・フー』って、いま思えばブリット・ポップのハングオーヴァー(二日酔い)みたいな感じだったと思うんだけど」
――あははは(笑)。
ダギー 「実際、すごくメランコリックなアルバムだったでしょ? でも、きっとそれがよかったんだと思う」
ニール 「うん。僕らは流行りものじゃなくて、自分たちのやりたいパーティをただ続けていたんだよね」
ダギー 「そもそも僕らは17歳の頃から友だちとして一緒にやってきたわけだからね。それこそ当時はプロでもなかったわけだし、ただみんなと部屋に集まって、一緒に音楽を聴いて、ひたすら楽器を鳴らして歌うっていうことを延々と繰り返してた。で、僕らはその時の感覚のまま、またこうして新しいアルバムをつくったっていうね(笑)」
取材・文 / 渡辺裕也(2016年4月)
ライヴ写真 / 古溪一道
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