【特集】ジム・オルーク×バート・バカラック バカラック・トリビュートの魅力を探る

ジム・オルーク   2010/04/07掲載
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オール・カインズ・オブ・ピープル つねに革新的な音楽を作りつづけているアヴァン・ポップスの異端児、ジム・オルークが、20世紀を代表する作曲家、バート・バカラックの楽曲に挑んだトリビュート作『オール・カインズ・オブ・ピープル〜ラヴ・バート・バカラック〜プロデュースド・バイ・ジム・オルーク』を4月7日にリリース! この二人の才能がぶつかったらどうなる?――それだけでも非常に興味深い本作には、さらに細野晴臣サーストン・ムーアソニック・ユース)、やくしまるえつこ相対性理論)、カヒミ・カリィらをはじめとする国内外の錚々たるゲスト・ヴォーカリストが11名も参加! リリースを記念した本特集では、『CDジャーナル4月号』と連動して、この素晴らしき化学反応を楽しむための企画を展開! 雑誌とあわせてお楽しみください。




1000字で知るバート・バカラックの音楽
〜その甘やかな音楽の核心にあるもの〜


バート・バカラック スウィートなメロディをあきらめなくても、革新的なソングライティングは可能である。作曲家バート・バカラックが歩んできた道のりは、このことを証明し続けた歴史であった。

 1928年生まれのバート・バカラックは、42年生まれのポール・マッカートニーのようなロックンロール・エイジではない。彼が若かりし頃に夢中になったのは、チャーリー・パーカーディジー・ガレスピーらが演奏していた、ビ・バップと呼ばれるモダン・ジャズの原型であった。そして、それと同時にドビュッシーラヴェルなどのフランス印象派によるクラシック音楽も、彼は愛した。このような彼の音楽的嗜好性は、40年代のジャズ・ミュージシャンの問題意識、つまりスウィング・ジャズのマンネリズムをいかにして打破し、塗り替えていくか、という探究心と同調したものだともいえる。たとえば40年代に活躍したジャズ・オーケストラであるスタン・ケントン楽団は、積極的に近代クラシック音楽が開発した和声を取り入れることでジャズの発展に貢献している。

 若き日のバート・バカラックは、フランス6人組のメンバーとして知られるダリウス・ミヨーやアメリカ実験音楽の始祖のひとりであり、ジョン・ケージの師匠でもあるヘンリー・カウエルに音楽を師事していた時期がある。つまり、革新的な音楽を生み出そうという空気を体の隅々まで吸い込みつつ、音楽修行をしていたのである。ピアノを痛めつけながら作曲をする音楽仲間を横目に見ながら、彼が自らの音楽における重要な要素として尊重し続けたもの、それは美しいメロディだった。彼の音楽的特徴としてよく語られる、大胆な転調やテンポ・チェンジといった技巧は、未知の素晴らしいメロディを創造するためにこそ必要とされたのである。そして新しいメロディは、ポップ音楽における新しいドラマツルギーを可能とし、稀代の名作詞家ハル・デヴィッドのペシミスティックともいえる言葉をともなって、胸の奥がキュンとするような素敵なヒット曲を数多く生み出した。


遥かなる影
代表的な曲をベストで聴こう!
『遥かなる影〜バート・バカラック・ベスト・セレクション』
(UICY-80051)
 先鋭的な音楽を好む、発展途上の若き音楽ファンは、カーペンターズ「遥かなる影」(70年)、ディオンヌ・ワーウィック「サン・ホセへの道」(68年)、B.J.トーマス「雨にぬれても」(70年)といった彼の代表曲を聴いてみても、なんだか物足りなく感じるかもしれない。そんな生意気な人間は、彼の『何かいいことないか仔猫チャン』のサントラと、ダリウス・ミヨーの「男とその欲望」というバレエ曲を続けて聴いてみてほしい。このふたつの作品にどこか共通する要素を発見したとき、あなたは音楽リスナーとして少し立派になったと感じるはずだ。
文/水上 徹


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