25年の歴史を凝縮した東京スカパラダイスオーケストラのニュー・アルバム『SKA ME FOREVER』!

東京スカパラダイスオーケストラ   2014/08/26掲載
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TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
『SKA ME FOREVER』
 今年はデビュー25周年ということで、亀田誠治プロデュースによるバンドコラボ3部作のリリースにはじまり、これまでのバンドの足跡を振り返る書籍『スカパラ入門』の発売、全国20ヵ所以上をめぐるホールツアー〈SKA ME CRAZY〉と、そのワーカホリックぶりにターボがかかったようにアクティヴな動きをみせる、東京スカパラダイスオーケストラ。中でも〈SKA ME CRAZY〉ツアーは、デビュー当時からの懐かしいナンバーがふんだんに織り交ぜられたメドレーや、メンバーそれぞれのバックグラウンドを掘り下げるラジオショー的なトーク・コーナー、さらにはステージにオーディエンスを上げて会場中で大合唱したりと、今までのツアーとはひと味もふた味も違った、エンタテインメント性に富んだステージを披露。25周年という歴史を振り返りながらも、さらなるチャレンジが随所にあふれた、とても充実したツアーとなった。
――〈SKA ME CRAZY〉ツアーは、初日の埼玉と後半の東京公演を拝見しましたが、とても斬新な内容でした。
川上 「なんだか、どんどんハードルが上がってるというか。'今までにない'っていうのを追究しすぎて、すごいことになってましたね(笑)」
谷中 「もはやスカパラに、'これは出来ないよ'っていうのはないね(笑)。デビューしてすぐの頃は、何でもアリって感じで手を広げすぎるとイメージがブレたりするのかな? なんて心配もあったし、実際、イメージが膨らみすぎたと感じたときは、少し削ぎ落として、シンプルなイメージに戻して……っていう繰り返しでやってきたけど、今はもう、その心配はなくなって。今年やったバンドコラボにしても、バンドごと一緒にやるなんて、普通はないよね(笑)。でも、そういうチャレンジをやってみても、やっぱりちゃんとスカパラ的な仕上がりになってる。スカパラって、サブカルチャー的に、斜めから切り取ることも大事にしてきたバンドだけど、いわゆる王道みたいなことをやっても、全然スカパラらしさが出せるようになってて。昔だったら、今まで誰も手を付けてなかった曲をカヴァーして、'スカパラに似合いそうな曲をよく見つけてきますね!'なんて言われて悦に入ってる時代は遥か昔に通り過ぎて(笑)、みんなが知ってて口ずさめるような曲を、とにかく一生懸命にアレンジするっていう」
川上 「今までいろんな大ネタをやってきましたけど、今回収録した〈歓喜の歌(交響曲第九番)〉や〈Can't Take My Eyes Off You-君の瞳に恋してる-〉なんかは、その最たる曲というか」
谷中 「まあ、ディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンをカヴァーした時点で、もう我々に怖いものはない(笑)」
川上 「傍から見たら'今さら〈第九〉とかやって、何をバカバカしいことをやってるんだよ'って思いつつも試しに歌ってみると、だんだん気持ち良くなってくる。これはそういう曲です(笑)。ダマされたと思って歌ってみてほしいですね。先日出演したフジロックでも、夜中に会場じゅうで大合唱でした」
〈SKA ME CRAZY〉ツアー初日の川口リリア公演。撮影:仁礼博


――〈SKA ME CRAZY〉ツアー最終日のいわき公演。バンドの創始者でもある元バンマスのASA-CHANGが、脱退後初めてスカパラと共演というサプライズもありました。
川上 「あれは、本当に面白かった! ゲラゲラ笑いましたね。ASA-CHANGが在籍していた頃によく演奏してた〈スカンボ〉もやって。そこで普通に演奏するのもいいんだけど、ASA-CHANG自身から'もう今のスカパラにはついていけない!'みたいな構成を入れるのはどう? とか、自分で提案してましたからね」
谷中 「ASA-CHANGの'東京スカパラダイスオーケストラ!'っていう叫び声一発で、一気に当時の空気に戻ったね。ギターの加藤(隆志)とかドラムの欣ちゃん(茂木欣一)もスカパラとして共演するのは初めてだったから、すごく新鮮だったみたい。あ、パーカッションの大森(はじめ)さんもスカパラでASA-CHANGとやるのは初めてか! 大森さんもステージ上で'ASA-CHANGが辞めたから、俺がここにいる'って当たり前のことを言ってて面白かったね」
――スカパラもASA-CHANGも、それぞれが充実した活動を続けてきたからこその、今回の邂逅だったんでしょうね。しかし、その日のライヴを目撃できなかったリスナーとしては、またどこかで一緒にやってくれることを期待したいところなんですが。
谷中 「うん、お互いのタイミングあったら可能性はあるかもね。ちょっと前ぐらいから、アルバムまるごとじゃないにしても、何かの曲をASA-CHANGプロデュースでやってもらったら面白いのになって、なんて話は出てたりもしたんだよね。俺らの作った曲をアレンジしてもらったり……」
――おぉ〜っ!
谷中 「こないだ会ったとき、'たとえば、〈〜featuring ASA-CHANG〉みたいなのはどうですか?'って訊いてみたら、ASA-CHANGが'いや、そういんじゃなくて……やるんだったら、もうメンバーとしてやったほうがいいと思うんだよね'って言ってて(笑)。まあ、久しぶりの共演を果たしたこともあって、ちょっとおセンチ入ってるだけなのかもしれないけどね」
〈SKA ME CRAZY〉ツアー最終日のいわき公演。元バンマスのASA-CHANGが登場!
――いつかわからないですが、ぜひとも実現することを祈ってます! ということで、ニュー・アルバム『SKA ME FOREVER』について訊いていきたいんですが。アルバムが、25年前にリリースされたアナログ盤(通称:黄色いアルバム)の1曲目に収録された曲のセルフ・カヴァー「ペドラーズ2014」からはじまります。
川上 「今までも演奏してきたし、特に海外で盛り上がる、思い入れのある曲で。今もよく覚えてるけど、バルセロナでライヴしたとき、アンコール中にお客さんが〈ペドラーズ〉のメロディを大勢で合唱してて、これはやらない訳にはいかないなって(笑)。急遽アンコールでやったんだよね」
――2014と銘打って新たなアレンジが施されていますが、それが、加藤(隆志)さんのギターの音色をはじめ、スカパラのサウンドの変遷をそのまま1曲に濃縮還元したようなものになっていて。それが25周年を記念したアルバムの1曲目に入ってるのが象徴的で。さらに聴き進めていくと、アルバム1枚を通じて、25年以上に渡る活動でスカパラが見つけてきたものを、一枚に凝縮してるように思ったんですよね。アルバムの随所に、過去の楽曲や作品を想起させるポイントがあったりして。
谷中 「そうだよね。たとえば川上が作曲した〈Horizon〉なんかも、スカパラがずっと追求してきたダンディズムみたいな感じがあるし」
――ええ。今回収録されたインスト曲「Horizon」なんかは、スカパラ初期作品の『PIONEERS』『FANTASIA』のあたりを思い出したりもして。
川上 「おお、なるほどね。自分たちは意識してないで作ったけど、期せずしてそういう感じになってるのかも。たしかに全時代を網羅している感じもあったり」
谷中 「25周年を記念したアルバムを作りましょうってことで、今作の制作がはじまったけど、まあ、意識してもそういう部分が音楽そのものに出せるわけじゃないから(笑)。常に全力を尽くしてるだけであってね」
川上 「ただ今回は、いつもだったらここで完成ってところで、さらにもう一度アイディアをひねり出してみた。特に前作2枚が海外レコーディングだったこともあって、寿司ネタを新鮮なまま握って出したような作品だったけど、今回はもうちょっと炙ってみたり、他の料理人に手を加えてもらったり、もう一手間かけた感じで、レコーディングが進んでいった感じですね」
谷中 「今までも、ヴォーカリストを迎えたコラボ曲なんかはじっくりアレンジを考えて作っていたけど、今回はバンドコラボもあったりして、さらに一緒に考えた感じはあった。そこでしっかりしたクオリティのものが出来上がってくると、スカパラのメンバーだけで演奏する曲の、バンドコラボ曲に負けないような楽曲を並べたいなって思って」
川上 「〈Sunny Blues 7inch.〉とか〈Can't Take My Eyes Off You〉は、本当アレンジに時間かけてたね。〈Sunny Blues 7inch.〉は、最初はウェイラーズみたいなレゲエ・アレンジでやってて、途中にラップの歌詞を書いたりね」
谷中 「GAMOさんがトースティングしてるような感じで、日本語のラップをやってみようって、歌詞も書いてみたりね」
――そうだったんですか!
川上 「でも、いろいろ考えているうちに、やっぱりスカが一番しっくり来るってことになって、アルバムに入ってるアレンジになった」
――谷中さんが手がけた歌詞も、バンドとして活動する以前の、音楽好きの青年期を思い出させるような内容で。それがまたちょうど、先日発売された『スカパラ入門』で、メンバーそれぞれが音楽的なバックグラウンドを語っていくインタビューや、思い出の地を辿りながらバンドの足跡を振り返っていく記事とも、どこかリンクしているのが興味深くて。スカパラというバンドが、ひたすらに前だけを見て前進するんじゃなく、過去に起こった出来事やさまざまな感情も抱えながら力強く前進している。そんな姿勢をこの曲からも感じるんです。
谷中 「うん。今まで未解決のままになってることも、自分の中で蓄積されて財産になってるのかなって思う。いろんな人のロマンだったり夢だったり……たとえば(クリーンヘッド・)ギムラさんは亡くなってしまったけど、彼は'海外に行ったときに、こういう風にスカパラが見られるようにしたい'って、ずっと語ってたんだよね。ギムラさんが思い描いてた夢を、僕らは僕らなりに形にしてるなって思うし。潰えてしまった夢もいっぱいあったと思うし、メンバーじゃなくても、スカパラに関わってくれた人や個人的な友達にも、いろいろ夢を持っていた人……その夢が思ったような形にならかった人たちもたくさんいて。そういう人たちの想いも込めつつ、一度は諦めちゃったようなことも、面倒くさがらずにイチから考えて形にしていくっていうことを忘れないでやっていけたらいいなっていう……そういう意味を込めた歌詞になったと思います」
――あと、なんといっても外せないのが、亀田誠治さんプロデュースによる、バンドコラボ3部作。10-FEETMONGOL800ASIAN KUNG-FU GENERATIONという、個性の違う3組とやってみて感じたことは?
川上 「とにかく面白かったですね。同じコラボでもシンガーを個人で呼ぶのとは、全然違うんだなって感じて。なんていうか……家ごとやってくるような(笑)」
――'家ごとやってくる'って面白い表現ですね(笑)。たしかに、そのバンドが持ってる空気やこだわりやマナーが、まとめてやってくるわけですからね。
川上 「そうそう、その関係性ごとやってくるわけだから」
谷中 「なんか増築感あるよね(笑)。これは初めて訊くけどさ、たとえば川上がベースを弾いてるときは、それぞれのバンドに違うグルーヴを感じながら弾くわけだよね?」
川上 「うーん、言葉で説明するのは難しいんだけど、ソロで参加してもらうんだったら、スカパラの言語に合わせてもらうこともできるけど、バンド同士だと10-FEET弁とスカパラ弁が共存するように、訛りと訛りがひとつになる面白さがあって。そのブレが面白さでもあるというか」
――なるほどね。たとえば「閃光 feat.10-FEET」は、スカパラと一緒にやることで、10-FEETがもともと持っていた、レゲエのフィーリングもあらためて浮き彫りになったりと、ケミストリーが生じるのが面白いですよね。
川上 「アジカンはすごくタイトなバンドですよね。だからアジカンの場合、一緒になってグォーッと突き進んでいく感じがあって」
谷中 「そう、10-FEETもモンパチも、曲の中にそれぞれのバンドのパートを作ってあるんだけど、アジカンとやった〈Wake Up!〉だけは、そういうのがなく、融合したまま進んで行く構成だったりね」
川上 「音楽以外の部分でも、関係性が深くなったのも嬉しくて。先日もテレビの音楽番組の収録でモンパチと一緒だったんだけど、終わった後にギターの儀間くんが'飲みに行くんすか?'って一人で着いてきて。モンパチは、3人別々にこっちに来るんだよね(笑)。それぞれ個性的で面白くてね」
谷中 「モンパチのメンバーは、気がつくとスカパラの楽屋にいることが多いね(笑)」
川上 「今回一緒にコラボしたバンドだけじゃなく、たくさんバンドがいるけど、他にも一緒にやったらどうなるんだろうっていう興味が湧いてくるよね」
――さて、25年目のアルバム『SKA ME FOREVER』は、客観的に聴いてみてどんな風な作品に仕上がったと思いますか?
川上 「僕はレコーディングが終わってミックスでOK出してからは、新鮮味がなくなっちゃうので、自分の音源はしばらく聴かないようにしてるんです。でも、しばらく時間を置いて客観的に聴いたら、『SKA ME FOREVER』はすごく面白かったですね。まったく後から気付いたんだけど、初期スカパラみたいだなって思ったんですよ。笑えるところがたくさんあって、馬鹿馬鹿しいことを大真面目にやっているところとか……もちろん当時やってたこととは全然違うけど、なんとなく精神的にも自由にやってる感じというかね」
谷中 「今までのアルバムを全部忘れてもらってもいいぐらいのアルバム。それぐらいの感じで仕上がった。スカパラを初めて聴きたいって思う人にとっては、どれを聴いていいかわからないじゃないですか? リスナーとしては、これを聴いてもらえれば、スカパラをわかったつもりになってもらえるんじゃないかな」
――なるほど。しかし、バンドにとって25周年というのは、振り返ると長い道のりですよね。
谷中 「だけど、ずっとライヴをやってて、今年がたまたま25周年だっただけで。25周年だからってわざわざライヴを観に来てくれる人のほうが少ないと思うんだよね。お客さんにとっては関係ないっちゃ関係ないことでね」
川上 「活動が止まってたらいつまでも振り返っちゃうかもしれないけど、ずっと続いてるからね。そんな時間すらないっていうか(笑)」
谷中 「ずっと続けているバンドとしては、普通にアルバムもライヴもよくないといけない。だから、25年目でいつもよりもさらにベストを尽くす、そういう感じだよね……まあ、今回のジャケットを見て思うのは、スカパラで奇跡を起こそうってなんとか25年間、頑張ってるうちに、奇跡を超えて、遺跡になっちゃったっていうね(笑)」
取材・文 / 宮内 健(2014年8月)
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