真心ブラザーズ、伊藤大地&岡部晴彦との“Low Down Roulettes”インタビュー

真心ブラザーズ   2014/12/05掲載
はてなブックマークに追加
2014年にデビュー25周年を迎えた、真心ブラザーズ。彼らは今年、自身のレーベル〈Do Thing Recordings〉を設立。3月には第一弾シングルとなる「I'M SO GREAT!」を発表し、4月からはライヴハウス・ツアー〈WE ARE SO GREAT! 〜俺たち、エライよね〜〉を敢行した。このツアーでは馴染み深いMB'sでなく、ドラムの伊藤大地、ベースの岡部晴彦という、10歳以上年齢の離れたミュージシャンたちとの4人編成で全国各地を回った。そうして新たな風を取り入れてきた記念すべきアニバーサリー・イヤーを締めくくるのは、2年半ぶりとなるオリジナル・アルバム『Do Sing』だ。ツアーを共に回った伊藤・岡部との〈Low Down Roulettes〉というバンドとして、アルバムまで完成させた彼ら。今回は特別に、YO-KING桜井秀俊に加え、伊藤大地と岡部晴彦も同席しインタビューに応えてくれた。
――今回、〈Low Down Roulettes〉という新たな編成でアルバムを制作するに至ったわけですが、このメンバーが揃ったきっかけから伺えますか?
桜井 「今年(2014年)の春から、真心でツアーをやることが決まってて、それがライヴハウスで細かくいろんなところを回ろうというものだったんです。そのツアーでは4人編成のロックな感じでやりたいなって考えてて、ずっと一緒にやってるMB'sのリズム隊でもいいんだけど、新しいレーベルを立ち上げたっていうこともあって、この機会に新しいバンドをやれたらなって想いもあり。その前の年にやってた、地球三兄弟(註:奥田民生・YO-KING・桜井秀俊によるユニット)のライヴで(伊藤)大地くんが叩いてくれて、また是非お願いしたいと、まず大地くんのスケジュールは押さえて。で、ベースはどうしようかって考えてた時に、自分たちの知り合いから探す手もあったけど、大地くんにピンと来る人がいたら誘ってもらおうと思って、紹介してくれたのがハルくん(岡部晴彦)だった」
伊藤 「ハルくんは、お互いにアマチュアだった十代の頃からライヴハウスで対バンしてて仲も良かったんですけど、そんな一緒に演る機会はなくて。で、誰かベーシストいないって言われて、最初に浮かんだのがハルくんだった。Twitterとかではフォローしてたんですけどしばらく会ってなかったので、検索したらちょうどセカイイチのライヴをやってたので、こっそり観に行って。久々にプレイを見て、やっぱり間違いないなと(笑)」
岡部 「ありがとうございます!」
――つうか、こっそり観に行ったんですね(笑)。
伊藤 「だってまあ“真心でベース探してるんだけど、観に行っていい?”って訊いてから行くのも、なんかアレですからね」
岡部 「前もって聞いてたら、音めっちゃデカくしてたかも(笑)」
――真心でベースを弾かないかっていう話をもらった時は、どう思いましたか?
岡部 「え!? 真心ブラザーズって、俺が知ってる真心ブラザーズのこと?って思いましたね」
――(笑)他に何かあるんですか?
岡部 「大ちゃんとはお互い高校生ぐらいの時から対バンしてたけど、その頃会ってた以来で、それがまた一緒に出来るっていうのが嬉しかったですね。それにしても、今回のオファーが本当だと知った時は、ビビり倒しましたけどね」
YO-KING 「全然ビビってるようには見えなかったけど(笑)」
――ハルさんが、最初に真心のおふたりと会ったのは?
桜井 「ハルくんと一緒にスタジオに入る前のタイミングで、彼が参加してるネモトラボルタっていうバンドのライヴを観る機会があって。バンドも最高だったし、ハルくんの演奏もめちゃめちゃ良かったんで、終演後挨拶に行ったら、上半身裸のハルくんがいましたね(笑)」
岡部 「ネモトラボルタのサポートでドラム叩いてるみよちゃん(山口美代子)が桜井さんともともと知り合いで、そのライヴに来てくれるように声をかけたらしいんですけど、桜井さんが来るっていうのを前もって聞かされてたから、もう緊張して緊張して(笑)」
YO-KING 「で、その後に真心のライヴが中野サンプラザであって、ハルくんが観に来てくれたんだよね。終わってから楽屋に挨拶に来てくれて、なんかニコニコしてたし、全然緊張しているようには思えなかったよね。ビビってたら、あんな笑顔は出ない!(笑)」
岡部 「あの時のサンプラザのライヴが最高だったんですよねぇ」
YO-KING 「本当はスタジオに入る前に顔合わせも兼ねてみんなで食事でもしようって話もあったんだけど、スケジュールが合わなくて、結局、初めて4人揃ったのがリハスタだったね。で、とりあえず1曲やったら、もうまったく問題なくて」
――たとえば、今までずっと一緒にやってたMB'sのリズム隊と、今回の2人のリズムでは、音を合わせてみてどんなところが違うなって感じましたか?
YO-KING 「若い!」
――リズムに若さが出てましたか。
YO-KING 「あと、曲をよく覚えてくれる(笑)」
――記憶力の問題ですか(笑)。
YO-KING 「同じ曲をやるとしても、全然違うというか。もちろんどっちもいいんだけどね。そこがやっぱり打ち込みじゃなくて、人と演奏する楽しさであって。そういう意味では古い曲も新鮮に出来たし、よかったですよ」
――この2人が、新しい風を吹き込んでくれた。
桜井 「うん。期待したものの、200%で返ってきましたね」
岡部 「おお、嬉しい!」
伊藤 「真心ブラザーズの曲は、もちろん昔から聴いていたし、それが一緒に演奏出来ることになるとはって感慨もあったし。あと、4人なんだ?って驚きもありましたね。鍵盤がいないけど大丈夫かなって最初は思ったけど、この4人で全然大丈夫でしたね。真心の曲には鍵盤が印象的な曲もいっぱい聴いてきたし、最初のツアーで組まれたセットリストにもそういう曲が入ってんだけど、鍵盤が入ってないことで音が淋しくなるっていうよりも、むしろバンドとしての一体感が出て」
YO-KING 「そもそも、その時のツアーでは、4人でバンドをやりたかったの。もっと言えば、俺がギターを弾きたかったんだよね」
――なるほど!
YO-KING 「イメージとしては、ローリング・ストーンズをやりたかった。でも、いざ4人で音を出してみたら、ストーンズも出来るけど、それ以外のスタイルも出来る。リハを重ねるごとにそれをわかってきて。最初の趣旨は、ギター・バンドで全国をどさ回りするっていうコンセプトだったけど、ツアーがはじまってみたら、このバンドがあまりにも良すぎて、アルバム制作までお願いすることになって。さらには、アルバムのレコ発ツアーまで一緒にやってもらうことになった。もともとは、ここまで決めてたわけじゃなかったからね」
――最初は、ツアー1本回るだけの予定だった?
桜井 「うん。あわよくばレコーディングまで行けたらいいね、ぐらいの感じでしたね」
――それがステージを重ねるごとに、バンドがどんどんいい方向に転がっていった。
YO-KING 「〈スピード〉みたいな激しい曲もすごくカッコいいんですよ。ちゃんとLow Down Roulettes解釈の〈スピード〉になってる。大地くんのドラムのイメージって、もうちょっとおとなしい曲調で叩いてるっていう印象が世間的にはあると思うんだけど、こういう激しいのを叩けて嬉しいみたいなことを大地くんが言ってくれたのをよく覚えてて」
伊藤 「でも、ツアーのセットリストで最後の曲が〈スピード〉なんですよね(笑)。最後、“死ぬ〜!”って思いながら叩いてました(笑)」
YO-KING 「あそこまで激しい曲を叩いてたことってあったの?」
伊藤 「ハルくんと出会った頃は、ブルーハーツが好きなヴォーカルと一緒にやってたこともあるんですけど、〈スピード〉ってまた違った感じで激しいじゃないですか」
YO-KING 「たしかに、ジャンルがわかりにくい曲だからね。そういう感じで、新しい大地くんの側面や、新しいハルくんの側面を引き出せたっていう意味でも嬉しいよね」
――逆に言えば、このバンドで一緒に演奏したことで、もともと大地くんやハルさんが持っていた音楽性によって、真心の曲から新しい魅力も引き出されていった。
桜井 「まったくその通りですね。春のツアーを回ってた時に、沖縄のライヴだったかな。〈ENDLESS SUMMER NUDE〉をやろうかって話になって。今までだと、この編成では考えられなかったことなんですね。10人でドーンとソウルフルにやるか、あるいは弾き語りでやるかのどっちかだった。4人バンドのスタイルでこの曲はないと思ってたんだけど、試しにリハでやったら、軽く出来ちゃって(笑)。最初のツアーでここまで来たかぁと。もうこれで、このバンドならなんでも出来るなって確信しましたね。それはやっぱり大地くんとハルくん、2人の表現力がもたらしてくれたものだから」
――実際にツアーを回ってみて、若い二2人の印象はどうでしたか?
YO-KING 「とにかくハルくんが、よく食ってた(笑)」
岡部 「食いましたねぇ〜! ツアー中は6kg増えてましたね(笑)」
桜井 「ハルくん、だいぶ早い段階で白飯を頼むんだよね」
YO-KING 「で、大地くんはぶどうが大好き」
桜井 「ブレないよね、そこは。ハイチュウまでぶどう味だからね(笑)」
岡部 「演奏的なところでは、盛り上がった自分をもっと出していいんだって思えたあたりから変わってきましたね。最初はやっぱりちょっと遠慮があったけど」
YO-KING 「たしかに、どこまで自分を出していいのかっていうのはあるよね。でも、ハルくんは函館で妙にテンション上がってたよね(笑)」
岡部 「そう! まさに函館で、真心のおふたりよりも先にお立ち台に昇っちゃって。それは俺の凡ミスで」
YO-KING 「俺自身としては、あの曲のあそこで乗ろうとか、なんとなく段取り考えてたんだけど、気がついたら先にハルくんが昇っててね」
岡部 「昇ってから、アッ!って気がつきましたよね(笑)」
桜井 「いやいや、どんどん自由にやっちゃってください!」
YO-KING 「お客さんに拍手を求めたり、盛り上げ役をどんどん先頭切ってやってくれるから、そういうのはすごくありがたいよね」
桜井 「ある曲で、ベースソロの後にギターソロが入るんだけど、ハルくんがベースソロで盛り上げすぎて、自分のソロが終わったらハルくんが“オイ! オイ!”って煽りはじめて。俺、ギターソロを一生懸命に弾いてるんだけど、お客さんはみんな、ハルくんの煽りに引っ張られちゃって、俺はまるで“オイ! オイ!”のバック演奏だな!(笑)」
(一同爆笑)
岡部 「ホント、すみません(笑)。どんどん自然に、ひらめくままにやれるようになっちゃいました。でも、逆に演奏そのものはすごくナチュラルにやれるようになりましたね。最初は、自分を出さなきゃって意識が強かったし気負いもあったけど、真心のおふたりが示してくれる矢印に沿っていって、大ちゃんと音を混ぜたら、ちゃんと出来上がるっていうのを、ツアー途中でわかりました」
真心ブラザーズ / Do Sing
――ステージを重ねるごとに一体感を増していったこのバンドで、アルバム『Do Sing』は制作されたわけですが、レコーディング自体はツアー終了後に取りかかった感じですか?
桜井 「何曲かはツアー中におおまかに作って、出来たものはお客さんの前で披露して。実際にライヴで演奏していったほうが、その曲がどんなものかわかりやすくなるから」
――ツアー中にどんどん明らかになっていった、バンドの表現の広がりみたいなものも、アルバムに反映しようと思った?
桜井 「反映しようというか、4人で精一杯表現してたら、思っていたよりも全然カラフルになったというか、1曲1曲が表現しきれているアルバムになりましたね」
――今回のアルバムの方向性決めた曲というと、どれになりますかね。
YO-KING 「最初は〈ヒナタのブルース〉っていう曲のような感じで、アルバム1枚通して作れたらと思っていたんだよね」
――「ヒナタのブルース」は、冒頭の発言にもあったような、ストーンズにも通じる、ロックンロールやブルースを基調にした骨っぽい感じの曲調ですね。
YO-KING 「うん。グルーヴ重視の曲で、そこは聴きどころのひとつではあって。だけど、〈ヒナタのブルース〉が出来た時点では、まだ曲が出揃ってなくて。だんだん曲も出揃ってきて、バンドで音を出していくうちに、そこでは収まりきれない部分も出てきて。まあ、真心のアルバムはいつもそうなんですけどね。結局『KING OF ROCK』でさえも、実はバラエティに富んだアルバムだし、常にバラエティになる宿命にあるんだよね。それにルーツっぽいものは、100歳になっても出来るかなって思うし、今は今出来ることを、たくさん食い散らかしていくほうが楽しい」
――アルバムを通して聴いてみても、バラエティに富んではいるけれど、どこかで根っこで通じてる感覚がある。
桜井 「そうでしょうね。やっぱりロックンロールとリズム&ブルースっていう太い幹があって、そこからは大きく外れていない」
YO-KING 「最初にストーンズって言っちゃったけど、ストーンズもレゲエあり、カントリーあり、ポップスあり、何でもあるからね。そういう意味ではストーンズっぽい。だから後世で、こういうバラエティに富んだアルバムが出たら、僕らがストーンズっぽいって言ったような文脈で、“真心っぽいアルバム”って言われたら最高だよね」
――なるほど。では、アルバム収録曲の中から、いくつかピックアップして訊ければと思うんですが、3曲目「splash」はアルバムの中でもソウル・ミュージックの薫りが際立ってます。
桜井 「これは作曲期間の後半戦に差し掛かった頃、徳間ジャパンの品川さんという、コ・プロデューサーという立場で参加してくれてますけど、その方が甘い物を持ってスタジオに来て。“ソウルが聴きたいな〜”って、おねだりしてきてね(笑)」
――甘い物を持ってきて、スウィートなソウルを所望されたわけですね(笑)。
桜井 「アルバム全体としてちょっとロック寄りなバランスを感じつつ、〈サマーヌード〉に代表されるような、真心なりのソウルを聴きたいってね。まあ、たしかにそうだなって思って作ったのがこの曲ですね。サウンドのイメージとして、シュガー・ベイブがあって。そこにどれだけ寄せるか?っていう。で、最初は大地くんもイナタめに叩いてくれてたんだけど、そこまでいっちゃうとイナタすぎるから、“65%ぐらいで”みたいな指示をYO-KINGが出してね」
YO-KING 「16ビート寄りにするか、8ビート寄りにするか、その間の何%みたいなことだよね」
伊藤 「リズム録りは僕とハルくんと桜井さんの3人でして、YO-KINGさんは仮歌を入れてたんですよね。で、MIXブースで3人の演奏を聴いて、もうちょっと8ビート寄りでとか指示してくれて」
YO-KING 「“65%から、64%に”みたいなね。まあ、半分冗談なんだけど(笑)」
――ロックンロールに寄せるか、ファンキーに跳ねるかっていうさじ加減みたいなことですかね。どっちに触れるかで印象も変わってきますからね。
桜井 「正直、俺だけその微妙なさじ加減はわからなかったんですけど。ちょっと存在消しながらやってみました(笑)」
YO-KING 「あと、その言葉でいろいろ理解するっていうのも大事で。なので、桜井さん以外の大地くんとハルくんはわかってくれた(笑)」
桜井 「100%と50%の違いはわかるんですけどね。その間になると……(笑)」
岡部 「65%って微妙っすよねぇ」
伊藤 「ライヴのリハーサルの時はひとまずやってみて、2人がOKってなったら“はい、次の曲行こう”ってなるから、レコーディングのようなやりとりはそんなになかったんですよね。ライヴではとくに言われたこともないし、俺らの解釈で演奏して、それで雰囲気がよかったらOKってなるんだけど、録音では細かいやりとりが出来たからよかった」
桜井 「求めるセンスみたいなものを、再確認出来た感じはありましたね」
――大地くんとハルさんが、今回のアルバムの中で印象深い曲は?
YO-KING 「あ、〈君がそばにいるだけで〉はカウント多めに入れておいたから」
伊藤 「え!? そうなんですか!」
YO-KING 「大地くんが、自分のカウントが嫌いだって言ってたから、それをちゃんと残して。クレジット上も、カウントのボイスは伊藤大地だって明記してます(笑)」
伊藤 「ありがとうございます(照)。〈ヒナタのブルース〉はライヴのリハーサルで作っていった曲ですね。デモを2回ぐらい聴かせてもらって、ライヴ前にリハーサルで試しにあわせてみて……それで本番にやるんですよ(笑)。アルバムに収録する新曲を作っていくっていう作業としても、このバンドでの録音としても序盤だったから、とくに印象に残ってますね」
岡部 「〈グライダー〉もそうだね。あと、〈いつもの〉の音数も少ないヌケ感は、僕にとっては新鮮でした。〈あいつが夢所からやってくる〉では、初めてレコーディングでアップライトベースを演奏したんですよ。そういう意味では、今までのキャリアの中でもやってなかったことを、真心でやらせてもらってる。〈ヒナタのブルース〉も、音が伸びないように、ベースのブリッジの部分にティッシュを詰め込んでるんですけど、あんなにティッシュ詰め込んだのも初めてですね。倍ぐらい詰め込みましたよ」
(一同爆笑)
――そうして、普段のプレイとも違ったアプローチを試すことが出来たり、また自分も気付かなかった、新たな引き出しを開けられるような感覚というか。
岡部 「そう。みんなの演奏を聴いてたら、自然とそうしたいなって思うんです。それを追いかけていくと、またティッシュの枚数が増えてる」
桜井 「そこまでいくと、もはや詰めるものもティッシュじゃないほうがよかったんじゃないか(笑)」
岡部 「そうかもしんないですね(笑)」
桜井 「この2人が音作りをしている時点で、曲のカラーが決まるんです。だから、俺らもやるべきことが見えてくるし、曲がさらにブラッシュアップされていくというかね。こんなしっかりした土台があるなら、もっと立派な家建ててもいいや、みたいなね」
岡部 「わぁ、嬉しいなあ!」
YO-KING 「あと、4人ともOKが早い。それはすごく大事でね。俺は、ポンポンと録っていきたいタイプだから、1曲に1日かけるとか、あまりやりたくないんですよ。たとえば真心の2人がOK出しても、もう1回やりたいっていう人もいるわけですよね。だけど、この2人から、そういう発言はほとんどなかったんじゃないかな。その潔さが、やっぱり2014年っぽくてね。90年代のような金があった時代は、何十テイクも録って、どんどん泥沼にハマっていくっていうのも多かったからね。でも、この2人にはもともと力量があるから、最初の2、3テイクでお宝が隠されているんだよね。曲に慣れてないから、ちょっとしたミスはあるんですよ。でも、それが人間的でいい。ストーンズでビル・ワイマンが、Bメロに行く時に必ずトチるみたいなね(笑)。で、無理矢理ごまかす感じとか、そういうのが大好きなんですよ(笑)。それがバンドであり、音楽であるとも思うから。なるべく“いいミス”は残したいですよね。まあ、それは他人の演奏か、自分の演奏かによっても違うんだけど(笑)」
――たしかに、自分のこととなると判断に迷うでしょうね。
YO-KING 「他人のいいミスを残したいから、その目で俺は自分の歌も考えないといけないみたいなところがあって。このミスは残そうとか、このガラガラ声は残そうとか、どんどん自分にとっての判断が甘くなる(笑)」
――甘くなっちゃうんですか!(笑)。
YO-KING 「普通、歌い手っていうのは自分の歌を直したがるもので。自分が思ってる以上に上手く残したい。でも俺は、自分が思ってるよりも、ちょい下手なぐらいで残したいんだよね」
――それって、なかなかそこまでの域には達しなさそうですよね。
YO-KING 「それは、自分に相当な自信があるから出来る!」
――さすがです!(笑)。
YO-KING 「上手いっていうところに、さほど価値を置いていないというかね。とくにこの4人に関しては上手いのは当たり前だから、そこから先の話で。手練どもが音を出して、ちょっとミスってるぐらいがいいんです」
――ちょっとしたチャーミングみたいな感じもありますからね。
岡部 「でも、OKテイクを出すにしても、チャーミングなテイクにOKを出す傾向にありましたよね」
桜井 「うん、真面目な印象のテイクよりもね。打ち込みじゃなくて、せっかく人を通して音を出してるんだからね」
――4人が集まってすごく生真面目に制作しているっていうよりも、和気あいあいと楽しみながら音楽を奏でているような、そんな印象が確実にサウンドに表れていると思います。
桜井 「4人のメンバーに限らず、何曲かでサポートしてくれたミュージシャンとか、レコーディング・エンジニアとか、あとはレコード会社の制作スタッフすらもノリノリな感じでやれたのでね。そういう雰囲気は、アルバムに詰まってると思います」
――それは25周年を迎えて、新たに自身のレーベルを立ち上げた、環境の変化も影響している。
桜井 「それはそうでしょうね。初めて一緒にアルバムを作るスタッフだらけでしたからね。いろんな人がいろんな意見を言ってくれて、それが新しい人からだと“そんな視点もあるんだ? じゃあ、ちょっと試してみよう”ってなったり。そういったやりとりも、いちいち面白いから」
YO-KING 「幸せなバンドが、楽しくレコーディングしたって感じだよね。個人的に思ってるのは、いいアルバムを作るのはもちろんなんだけど、それよりも、その日1日のレコーディングが楽しいっていうことが、順番が上なんです。それでずーっとやってきた。それがすごくハマったアルバムが、今回の『Do Sing』だと思うし、その結果が素晴らしいアルバムになればいいなって思いますね。それはもう、性(さが)だからね。苦しい思いをして名盤を作ろうとは、全然思わないから。自分のスタイルにあっていて、さらにその時点で楽しいんだから名盤にならなくても楽しいだろうっていう。なりましたけどね、結果として名盤に」
――たしかに、結果として名盤になりましたね! そのアルバムを携えての全国ツアーも、年明け早々からはじまります。
YO-KING 「ひとつ言っておきたいことがあって、大地くんのライヴの時のカウント出しが、絶妙に上手いんですよ」
伊藤 「はははは(笑)」
YO-KING 「曲が終わって、拍手待ちからのカウントをはじめるタイミングね。今までやったドラマーの中でも、かなりすごい! もちろん会場によっても違うし、その日のノリによっても違うんだけど、計算してるか本能かわからないけど、常にバッチリの間合いでカウントを言いはじめるんだよね」
伊藤 「そんなこと言われたら、次から意識しまくっちゃうじゃないですか!(笑)」
岡部 「でもたしかに、ン!?って思ったことはないですね。まだ入らないの?とか、もう行っちゃうの?みたいに思うことが、ほとんどない」
YO-KING 「それはね、隠れたファインプレーなんですよ。だからまあ、ライヴ感覚が鋭いんでしょうね。それはベースからはじまる曲の時のハルくんもそうなんだけど。2人とも場数を多くこなしてきたから」
伊藤 「これってもう、ツアー1本目のカウントに響きますよ(笑)」
――でも、これからまた一緒にツアーを回るわけですが、若い2人が真心先輩に学びたいことなんかはあったりしますか?
伊藤 「う〜ん、春のツアーで20本近く回ったから、結構学んだつもりではあるんですけど……学ぶというより、こっちからも与えられたらいいなって思います。学ぶ、学ぶっていつまでも言ってられないし、こうやって取材にも一緒に呼んでもらってるぐらいだから、同じバンドの一員としてね。いつまでも"勉強させてもらいます"っていう姿勢も、なんだかなって思うし。まあ、気持ちとしてはそうなりがちなんですけどね。でも、お互いにいい刺激になればいいなって思います」
岡部 「もうねえ、大ちゃんの発言が素晴らしすぎて。そうかあ!って気付きました(笑)。でも春のツアーで、真心のおふたりから音楽に向かう姿勢というか、力まないっていうことを学んだんで。それに、今までの自分が培ってきたものを混ぜて、グチャグチャにして、いろんなものを出していきたいですね」
YO-KING 「ていうかハルくんは、早めに函館から出しまくってたからね!(笑)」
取材・文 / 宮内 健(2014年11月)
Do Sing Tour with Low Down Roulettes
2015年1月16日(金)宮城 仙台 darwin
2015年1月18日(日)北海道 札幌 ペニーレーン24
2015年1月23日(金)広島 CLUB QUATTRO
2015年1月25日(日)福岡 イムズホール
2015年2月1日(日)愛知 名古屋 CLUB QUATTRO
2015年2月25日(木)京都 磔磔
2015年2月27日(金)東京 恵比寿 Liquid Room

前売 5,500円(税込)ドリンク代別


Do Sing Tour with MB's
2015年2月15日(日)大阪 IMPホール
2015年2月21日(土)東京 中野サンプラザ

前売 5,800円(税込)ドリンク代別

真心ブラザーズ オフィシャル・サイト www.magokorobros.com/
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] Arvin homa aya  実力派シンガーの話題曲 アナログで連続リリース[インタビュー] ジェイコブ・コーラー × kiki ピアノ 凄腕師弟コンビ
[インタビュー] 文坂なの \[インタビュー] 人気ジャズ・ピアニストが立ち上げた新レーベル 第1弾は田中裕梨とのコラボ・シングル
[特集] いよいよ完結!? 戦慄怪奇ワールド コワすぎ![インタビュー] you-show まずは目指せ、新宿制覇! 新宿発の楽曲派アイドル・グループがデビュー!
[インタビュー] 想像を超えた創造。タフでラフでラブな一枚 崇勲×ichiyonのジョイント・アルバム[インタビュー] 千住 明、オペラ・アリアをヴァイオリンで 千住真理子とともに20年以上前の編曲スコアを再録音
[インタビュー] 思い出とともに甦る名曲の数々 藤あや子のカヴァー・アルバム[インタビュー] 紫 充実の新作を発表、海外フェスへの出演決定と結成55周年に向け勢いを増すバンドの現在と未来
[インタビュー] RISA KUMON バイリンガル・シンガー・ソングライター  ユニバーサルなアルバムでデビュー[インタビュー] HAIIRO DE ROSSI ジャズ・ラップの金字塔 10枚目にして最高傑作
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015