大阪発、話題のインスト・ダブ・バンド、neco眠るの魅力に迫る!

2009/07/10掲載
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 “牧歌的かつダンサブル”という矛盾した形容詞がよく似合う唯一無二のサウンドで注目を集めている大阪発のインスト・ダブ・バンド、neco眠る。そんな彼らから、ライヴ音源2曲、リミックス音源1曲を含む9曲入りミニ・アルバム『イーブンキック ソイソース』が届けられた。ダブ、ハードコア、ハウス、エキゾなど、さまざまな音楽からの影響を感じさせつつも、窮屈なカテゴライズから(まさしく猫のように)スルリと逃げ出してしまう柔軟かつ自由度の高いneco眠るのサウンドは一体、どのようにして培われていったのか。バンドの中心人物であるギタリスト、森雄大に話を訊いた。


――バンドの発起人は森さんなんですか?
森雄大(以下同) 「いえ、もともと中学時代の同級生が始めたバンドなんですよ。そこに僕が誘われて。でも、その同級生は辞めてしまって、初期のメンバーで残ってるのは僕とドラム(岡本陽典)だけなんですけど」
――最初に誘われたバンドってどんな感じだったんですか。
「めちゃくちゃ分かりやすく言うと、いわゆる“ダブ・ポップ”というか」
――フィッシュマンズ直系の?
「そうですね」
――それが、どういう変節を経て、今みたいなサウンドになったんですか?
「周りのバンドの影響が大きかったですね。中でもZUINOSINの存在は大きかったです。他人の真似を絶対にしないところとか、いかに自分がやりたいことをオリジナルなやり方で表現するかっていう姿勢にすごく影響を受けました。それ以来、あまりCDも買わなくなったし」
――他人からの影響をなるべく受けないように?
「そうです。あとは僕、ライヴ・ハウスで働いてたから、家でCD聴いてるよりも、現場で実際に起きている面白いことを体験することのほうがおもしろくなってしまって。新世界のBRIDGEってお店で働いてたんですけど、そこはハードコアからフリー・ジャズまで、めちゃめちゃおもしろいミュージシャンがたくさん出演してるお店で。そこで働いているうちに、ジャンルで音楽を聴くっていう感じがなくなっていって、より感覚的に音楽を捉えられるようになったんです」





――曲はどういうときに出来るんですか?
「美味しいものを食べたときとか、自転車に乗ってるときとか、そういう日常的な瞬間に生まれてくることが多いです。ジャム・バンドが安易に宇宙に向かってく感じとか、ポスト・ロックとかでも多いんですが壮大な感じや宇宙感を出すためにとりあえずディレイで飛ばすみたいな“ダブ”に共感できなくて。もっと身近な路地裏だとか、食べ物の中にも、宇宙は広がっていると思うんで、それを音楽で表現したいなと思うんです」
――そう言われてみれば、“ダブ=宇宙”みたいなイメージも、僕らが知らず知らずの間に植え付けられた固定観念かもしれないですよね。確かにダブが路地裏に向かっていっても全然いいと思う(笑)。
「そうですよ。大阪の下町のおっちゃんとか、自由だし、ブッ飛んでるし、めっちゃダビーですから(笑)。ライヴ・ハウスで働いてるときも、受付に座ってたら、いきなりホームレス風のおっちゃんが入ってきて、そばに置いてあったギターを勝手に弾きはじめたり(笑)」
――“おっちゃんも昔、コレやってたんやで!?”みたいな(笑)。
「ホント、そんな感じです(笑)。しかも意外に上手かったっていう(笑)。その向こうで、ZUINOSINが練習してたり。そういう大阪っぽい混沌とした雰囲気も、僕らの音楽には確実に反映されてると思いますね」
――新作の『イーブンキック ソイソース』も、いい意味でのカオスを感じさせる作品になっていますよね(笑)。のっけから、二階堂和美さんをフィーチャリング・ヴォーカリストに迎えて、DODDODO(関西を拠点に活動する女性ソロ・ユニット)の楽曲「猫がニャ〜て、犬がワンッ!」をカヴァーしていたり。
「昔からDODDODOの大ファンで、いつか彼女の歌をカヴァーしたいと思ってたんですよ。そしたら今回、うまいことタイミングが合って。で、“誰に歌ってもらおうか”ってなったときに、これはニカさん(二階堂和美)しかいないだろうと。以前からの知り合いでもあるし、僕らのCDを車で流しながら、鼻歌で歌ってくれたりしてるみたいなんで」
――かと思えば、ALTZのリミックスも収録されていたり。この振り幅の広さも、neco眠るというバンドのスタンスをすごく象徴していますよね。
「ALTZさんがDJしてるようなパーティに遊びにいったり。自分たちのイベントに出てもらったり、単純に好きなのでリミックスをお願いしました。自分たちの曲をリミックスしてもらうことは初めてだったんですが、めちゃめちゃ嬉しかったです」
――ここ最近は、クラブに呼ばれて演奏する機会も増えているみたいですね。
「ちょくちょく誘ってもらうようになりました。クラブもそうだし、いろんな場所で演奏できるのは、すごく楽しいですね」
――ちなみに今までいちばん変わった場所でのライヴは?
「老人ホームですかね。そこで働いてる人が僕らのことを好いていてくれて、慰問ライヴに呼んでくれたんですよ。演奏が終わったあとに、お婆さんが歩行器で僕らのとこまでやってきて、“最後の2曲が、めっちゃ良かってんけど、お兄ちゃん、曲名教えてくれる?”って言ってくれて(笑)。あの一言は本当に嬉しかったですね(笑)」


取材/文:望月哲(2009年6月)
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