ニュース

小沼純一、石田昌隆が登壇、ポーランド映画『パプーシャの黒い瞳』トーク・イベント開催

2015/04/27 15:57掲載
はてなブックマークに追加
小沼純一、石田昌隆が登壇、ポーランド映画『パプーシャの黒い瞳』トーク・イベント開催
 歴史上初めてのジプシー女性詩人“パプーシャ”を描いたポーランド映画、『パプーシャの黒い瞳』(絶賛上映中)。その魅力を、よりディープなところまで楽しむべく企画されたトーク・イベントが4月26日(日)、東京・岩波ホールで開催。この日は、ジプシー音楽の魅力をテーマに、著書『映画に耳を:聴覚からはじめる新しい映画の話』といったユニークな音楽・文化批評活動で知られる小沼純一(早稲田大学 文学学術院教授)と、世界中のミュージシャンを撮影し、ジプシー・ミュージシャンとの親交もある石田昌隆(写真家)をゲストとして迎えました。

 まずは石田より、「パプーシャが“ガジョ”(ジプシーの言葉で“よそ者”の意味)に詩の才能を発見されて、本になって、こうして映画になって世界に知られたのと同じように、音楽に関しても、ルーマニアのタラフ・ドゥ・ハイドゥークスやファンファーレ・チォカリーアなど今人気があるバンドでも、冷戦期の東欧の場合は誰にも知られてなくて、パプーシャと同じように、あるガジョがたまたまジプシーたちと親しくなって、彼らの音楽をCDなど多くの人に聞かせられるような形にしてくれたおかげで、かろうじて僕たちに届けられた。映画の中にもしょっちゅう出てくる“秘密と掟”を守るってことでジプシーの共同体は閉鎖的だから、そのガジョがいなくて、外に発信していなければ、ほとんどの音楽が埋もれてる。僕らが今聴いているのは、かろうじてたまたま僕らの側に伝わったもの」とコメント。

 そこで観客にiPhoneで紹介されたのが、フランスのトニー・ガトリフ監督の映画『ベンゴ』のテーマ曲に使われていた女性歌手の曲。「この女性歌手の歌はCD化したり世界ツアーをしたりしても通用する素晴らしさなんだけど、旦那さんの反対で表に出てこなくなっちゃって、今はもうどうしているのかわからない。『パプーシャの黒い瞳』を見て、この曲を思い出した」(石田)。


 小沼も、「ジプシーの人たちの“秘密と掟”って説明されないから何だろうと思うけど、共同体を開くこと自体が秘密と掟を破ることなんでしょうね。グローバリゼーションの時代だけど平準化されることで失われていくものがたくさんあるのは事実」と語ると、「インドから始まってヨーロッパ各地へ移動していってそれぞれの土地の音楽や楽器を取り入れていったジプシー音楽って、フランスではマヌーシュスイングになったり、ハンガリーではチャルダッシュになったり、根っこは同じでも花開く時は違う花粉がついている。石田さんは、その特徴をどう思う?」と問いかける。

 それについて、「ジプシーは行き着いた国の音楽を吸収しながらも、共通するものとして“粗野”っていう感じのものを持ってる。一見違うと思うかもしれないけど、レゲエやヒップホップにも共通するようなラフでタフな音楽」(石田)と答え、さらに、「もう一つの特徴は歴史に翻弄されていること。『パプーシャの黒い瞳』の中では時代的にナチスのジプシーの虐殺が出てくるけど、たとえば、現代ならタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの長老ニコラエ・ネアクシュがチャオシェスク(元ルーマニア大統領 / 独裁者として知られ1989年、東欧革命の政変により処刑された)のことを歌ってるけど、ベルリンの壁崩壊以後はたしかにCDで流通する機会は増えた。でもそれまであった結婚式で演奏して“おひねり”をもらうみたいな演奏機会が少なくなって、また音楽のやり方が変わる」(石田)。

パプーシャの黒い瞳

 また“かろうじて”とこの日何度も繰り返した言葉を使いながら、「ガジョがいなければ届けられなかったジプシー音楽が知られることには、いいこと悪いこと色々あるけど、『パプーシャの黒い瞳』も一人のガジョが彼女と出会って、それからいろんな奇跡が重なって、かろうじて映画になって届けられて、限られた観客がそれを知る。かろうじて繋がった細い糸をまた今こうして繋いでいるんだってことが感動的」(石田)。

 「私たちはCDやメディアを通してジプシー音楽の存在を知るけれど、その音楽を発見した人自身もメディアなんですよね。人が人に媒介することで伝わっていく」(小沼)など“伝わること”の素晴らしさについて語ると、映画公開に合わせて発行されたパプーシャの詩集を最後に紹介。「パプーシャの詩は森や自然を書いているものが多いんだけど、とてもシンプルで直裁な言葉が、今の私たちにとっていかに自然が遠いのか、森や移動する事が私たちにとってどういうことなのかなど、色々と感じさせてくれる。パプーシャが歌っていた詩が、文字として出版される。音楽も同じで、文化とは一つのところにとどまっているだけではなく移動することでまた何かを生み出す」(小沼)と締めくくりました。

(C)ARGOMEDIA Sp. z o.o. TVP S.A. CANAL + Studio Filmowe KADR 2013
最新ニュース
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] みやけん 人気ピアノYouTuber 『俺のヒットパレード!』第4弾リリース![インタビュー] Billyrrom 注目の新世代バンドに聞く新章突入と〈HEADZ 〜NEW HOT WAVE〜〉出演への思い
[インタビュー] 町あかりの歌謡曲・春夏秋冬 春のテーマは「ディスコ」![インタビュー] Arvin homa aya  実力派シンガーの話題曲 アナログで連続リリース
[インタビュー] ジェイコブ・コーラー × kiki ピアノ 凄腕師弟コンビ[インタビュー] 文坂なの \
[インタビュー] 人気ジャズ・ピアニストが立ち上げた新レーベル 第1弾は田中裕梨とのコラボ・シングル[特集] いよいよ完結!? 戦慄怪奇ワールド コワすぎ!
[インタビュー] you-show まずは目指せ、新宿制覇! 新宿発の楽曲派アイドル・グループがデビュー![インタビュー] 想像を超えた創造。タフでラフでラブな一枚 崇勲×ichiyonのジョイント・アルバム
[インタビュー] 千住 明、オペラ・アリアをヴァイオリンで 千住真理子とともに20年以上前の編曲スコアを再録音[インタビュー] 思い出とともに甦る名曲の数々 藤あや子のカヴァー・アルバム
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015