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台湾映画「百日告別」、主演を務めたシー・チンハン（STONE / Mayday）のインタビュー公開

Mayday（五月天） 2017/03/02 12:59掲載

台湾映画「百日告別」、主演を務めたシー・チンハン（STONE / Mayday）のインタビュー公開

　2016年、オランダ〈シネマジア映画祭〉で“タイガービア審査員特別賞”を受賞し、第28回〈東京国際映画祭〉では上映決定と同時にチケットが完売するなど注目を浴びていた台湾映画、「百日告別」（監督トム・リン）が、2月25日より東京・渋谷ユーロスペースにて公開中。

　ショパンのエチュードや台湾・沖縄の美しい風景をバックに、愛する人を失った男女が“見つけたもの”を描き、観るものに深い感動を呼び起こす“ヒーリング・シネマ”との呼び声も高い「百日告別」。本作で“台湾のアカデミー賞”とも呼ばれる〈金馬奨〉最優秀主演女優賞を受賞したカリーナ・ラムと共に主演を務めたのは、アジアを中心に高い人気を誇るロック・バンド“Mayday”のメンバーであり、ギタリスト“STONE”としても知られる、シー・チンハン。彼は、先ごろ行われたMaydayの日本武道館公演〈Re：DNA ～2017 復刻版～〉に伴って実施されたオフィシャル・インタビューに応えており、今回の出演について、「脚本を頂いた時、本当に悩みました。自分にこの役がきちんと演じられるのか、という心配からです。けれど、トム・リン監督の作品はすごく好きですし、彼のストーリーテリングの方法が非常に好きだったので、やはり引き受けようと思いました。私にとってこの役柄は非常に大きな挑戦で、また、ひたすら長い苦しみの中に身を置いた日々でした」と語っています。

　妊娠中の妻を失った“ユーウェイ”という役柄を演じるにあたり、トム・リン監督と対話を重ね、“役者”としての姿勢を貫いたというシー・チンハンはその過程を「『百日告別』は、キャラクター作りに対してとても心を砕いた作品で、監督自身もその過程で色々なお話しをされました。ただし監督は（監督の経験を元に作られた作品ではありますが）監督の分身を演じてほしいというのではない、と言われました。そこで監督自身の経験でもある、とても直接的で、厳しい苦しみを伴う、悲しいお話しをたくさん聞きました。監督の良い友達でもある自分としては、なんとか慰めてあげたいという気持ちになりましたが、それは役者としてはやってはいけないことですから、ひたすら監督からの話しを聞くことに徹しました」とコメント。

　また、アーティストや俳優と多彩な活動を行っていることについては、「お互いに良い影響を与え合っていると思っています。例えば、ある役を演じるということは、その人物の一生を学習することになります。自分の経験にない、他の人間の経験を理解する。それはまた、歌に込めたいものでもあるわけです。全てが自分の血と肉になる気がします。わたし自身は色々な仕事をしていますが、全ては自分にとっての挑戦なんです。その挑戦をあえて受けて立つ、ということが自分の楽しみでもあります」と語っています。

［オフィシャル・インタビュー］

――Maydayの日本公演を終えて、久しぶりの日本はどうでしたか？
「今回、また武道館に帰ってこられて、とても興奮しています。そして日本武道館公演〈Re：DNA ～2017 復刻版～〉では、ニュー・アルバム『自伝 History of Tomorrow』のテーマに沿って、Maydayの歩みを日本の皆さんと振り返ることができました。間もなく迎えるMayday結成20年の歴史に日本のみんなにも参加してもらいたいので、できるだけ早く新しいツアーで東京やほかの都市を回りたいです」

――映画ではカリーナ・ラムさんは沖縄で撮影をしていますが、STONEさんは日本での撮影は無かったそうですね。ライブ等では何度か日本に来てらっしゃるとのことですが、日本の印象を教えていただけますか。また、日本で行ってみたいところを教えてください。
「カリーナが沖縄でロケしたことは、本当に羨ましかったです。沖縄はとても人情があるところだと聞いているので、絶対に時間を見つけて行ってみたいです。でも、行きたいところは本当に沢山あって、島めぐり×アートの〈瀬戸内国際芸術祭〉が今のところ“行きたいリスト”のナンバーワンですね」

――監督からオファーを受け、脚本を読んだ時にどう思いましたか？また、この役を引き受けた理由を聞かせて下さい。
「脚本を頂いた時、本当に悩みました。自分にこの役がきちんと演じられるのか、という心配からです。けれど、トム・リン監督の作品はすごく好きですし、彼のストーリーテリングの方法が非常に好きだったので、やはり引き受けようと思いました。私にとってこの役柄は非常に大きな挑戦で、また、ひたすら長い苦しみの中に身を置いた日々でした」

――監督へインタビューした時、あなたとはとてもたくさん話し合ったとおっしゃっていましたが、その中で印象深かったことを教えて下さい。
「『百日告別』は、キャラクター作りに対してとても心を砕いた作品で、監督自身もその過程で色々なお話しをされました。ただし監督は（監督の経験を元に作られた作品ではありますが）監督の分身を演じてほしいというのではない、と言われました。そこで監督自身の経験でもある、とても直接的で、厳しい苦しみを伴う、悲しいお話しをたくさん聞きました。監督の良い友達でもある自分としては、なんとか慰めてあげたいという気持ちになりましたが、それは役者としてはやってはいけないことですから、ひたすら監督からの話しを聞くことに徹しました」

――まだ見ぬ我が子と妻を亡くしたユーウェイという役は、とても難しい役柄ですね。どのようにキャラクターを作っていきましたか？監督の話しを聞いてされたのでしょうか？
「ユーウェイは、わたし自身とは全く違う役柄です。というのは、わたしは家庭がありますし、妻も子供も元気でいますから、自分の経験とは全く異なる役柄を演じたわけです。だから、監督の真実の悲しみ、それを受け止めてこの役を演じました。ただ、先ほども話しましたが監督がご自身の姿をそのまま投影したいということでは無かったのです。監督の悲しみを聞き、それを噛み砕き、またこの役柄に投影していくという作業で、これは非常に苦しみました」

――監督にインタビューした時に聞いた話しですが、撮影現場に向かう時に後ろから声を掛けようと思ったら、もうすでにユーウェイになっていたから別の道を通って行ったとおっしゃっていました。撮影中はずっと役に入り込んだままだったのでしょうか。
「まず、この役が持つ大きな苦しみに対して、わたし自身の人生経験ではまだそこに到達できていないと思っていました。なので、この役柄に起こった出来事を心から信じて演じるということを心掛けました。今回良かったなと思うのは、この映画のなかでショパンの曲がたくさん使われていますよね。自分自身が音楽畑の人間ですから、ショパンの音楽や映画の音楽を聴いて物語をイメージしたり、この役の心の痛みを癒せたりできました。朝起きてから現場に行くまで一時間くらいの時間がありましたが、その間ずっとショパンの曲を聴きながら移動していました。移動している間もこの映画を頭の中でイメージし、ずっと役に入った状態で臨みました」

――クランクアップして、役から抜けるのに時間がかかったのではないですか？
「一ヶ月程度かかりました。撮影が終わってからも映像がずっとフラッシュバックをする状況でしたし、家族と一緒に食事をしている時も気持ちが落ち込むことがあって、妻に“子供もいるんだから”と注意を促されることもありました。その時は“子供の頭を撫でて、お父さんはもう大丈夫なんだよって子供にも分からせてあげて”と妻に言われました。でも、今回その成果を観て、これだけの努力をした甲斐があったなと、充実した気持ちになりました。また妻も、普段とはまったく別の自分を映画のなかに観てくれたようで、そういった意味でも非常に感動しています」

――一番苦労したのはどのシーンですか？
「必ずワンテイクでいこうと思っていた即興的なシーンがありました。というのも、もし次のテイクを取ることになったら、スタッフの皆さんが自分の反応やどのような動きになるか、分かってしまう。それだと真実ではないと感じていたのです。監督は非常に敏感な方で、真実の気持ちであるかどうか見抜く方なので、それではダメだと思って、特に気持ちが入りました」

――一カリーナ・ラムさんとのシーンは、撮影の中でも最後の方に撮ったのですか？
「かなり後のほうで撮りましたね。あの後もいくつか撮影はあったと思いますが、確か沖縄の撮影だったと思います。わたしは沖縄の撮影には行かないと分かっていたので、最後の台詞は、本当に撮影の終盤ということもあって、自分自身の想いも込み上げてくるような状況でした」

――一番好きなシーンはどこですか？
「カリーナ・ラムさんとのシーンがとても好きですね。また、カリーナ・ラムさんと沖縄のおばあさんが歩くシーンはとても好きです。本当にカリーナ・ラムさんの演技は素晴らしかった。やはり金馬奨をとっているだけありますね」

――最初は『五月之恋』で五月天そのままの役ながら、あなただけ陳柏霖のお兄さん役で台詞も多かったですね。そして『星空』の先生役、『明天記得愛上我（Will you still love me tomorrow？）』では準主役、去年は張震が初監督をした『三生《尺蠖》』で主役と、だんだん役の難度も上がってきました。ご自身では、このステップが今回の役作りにプラスになっていると思いますか？
「絶対にそうですね。今まで色々な監督と仕事をしていますが、キャラクターを作り上げていくなかで多くの時間をくださいました。元々わたし自身は演技をすることがメインな俳優という仕事ではなく、音楽畑でのデビューだったので。音楽もそうですが、俳優というのも創造していくという仕事だと思います。なので、自分自身は音楽の仕事をしていく中で、いかに世界を観察し、世の中の人々がどのように動き、どのような対応をするのか観察しています。演技もそう。今までの経験というものが全て自分の糧になっていると感じています」

――『逆轉勝』ではMONSTERが初主演でしたね。Maydayのギタリストの俳優対決となりましたが、お互いに感想を言ったりしたのですか？
「2人とも演じるということへのアプローチが違うので、どのような役作りをしたかなど、そういった話はしないですね。元々MONSTERは完璧主義で、台詞も完璧に覚えていますし、脚本の読み込み方も非常にストイック。ここでは何が起こるということを理解したうえで、役に入っていきます。わたしは脚本に書かれていることが絶対ではないと考えていて、それはトム・リン監督にも言われていたことです。脚本に書かれている通りに全ての台詞を言え、というようなことは要求しない監督です。キャラクターをさらに深く理解し、この状況でどういった台詞になるのか自分のなかで考えながら演じていくというやり方だったので、MONSTERとは演技の方向性がまったく違うわけです。ただ、MONSTERの『逆轉勝』の演技は非常に成熟していたと思いますし、MAYDAYのMVなどで観るMONSTERとは全く違う演技を見せていたと思います」

――ご自身が提案したシーンはありますか？
「あります。先ほどお話しした通り、即興的な演技がとても多く、さっき話したワンテイクでいこうというシーンは、監督からは“ここで怒る”ということだけを指示されていました。ただし、どのように怒るということは自分で考えなければならなかった。自分の今までの経験を全て盛り込んで。あとは後半、ピアノを引き摺り出すシーンがありましたが、あそこは自分が監督に提案したものです。監督からは“今やあなたのほうがユーウェイを理解している。だから自分の思ったことを言ってみて、自分の思ったことをやってみて”と言われました。それで、撮影の際に提案して、監督自身も“確かにユーウェイならそうだね”とおっしゃって、お互いに納得して撮影に入りました」

――あるシーンであなたの声を消していますが、これは監督の考えによるものですか？
「あれは監督が編集時に。実際の撮影時は、ものすごく大きな声で叫びました。映画や映像というのは本当にマジックを起こせるものだと思いますね。あのシーンの演出方法は本当に素晴らしいですね。音を抑えることって、怒りの感情がさらに強まりますね。あの演出のマジックによって、怒りをさらに引き立たすことに成功していると思います」

――アーティスト、俳優、そして作家という才能をお持ちですが、それぞれがご自身の中で影響を与え合っているのでしょうか？
「お互いに良い影響を与え合っていると思っています。例えば、ある役を演じるということは、その人物の一生を学習することになります。自分の経験にない、他の人間の経験を理解する。それはまた、歌に込めたいものでもあるわけです。全てが自分の血と肉になる気がします。わたし自身は色々な仕事をしていますが、全ては自分にとっての挑戦なんです。その挑戦をあえて受けて立つ、ということが自分の楽しみでもあります」

――ご自身が物語や曲も書き、演じて、ご自身で全てこなす、そんな作品も期待してしまうんですが、そういった希望はありますか？
「クリント・イーストウッドを思い浮かべますね。彼は素晴らしい役者でもあるし、素晴らしい監督でもあるし、そしてまたジャズも素晴らしいですね。ある映画の中では、彼が全楽曲のギターを弾いたという作品もありましたね。ただ、イーストウッドも若い時にそれらを成し遂げたわけではないんですよね。自分自身、経験を積んでいくことというのがとても大事だな、と思っています。もちろんトライしてみたいと思っています。監督やスタッフの方々など、自分に自由な空間を与えてくれる方々がいて、その中で自分の力を発揮できる。そうさせてくれる人々を見て、色々な経験をさせてもらっています。今回の映画もそうです。こういった様々な経験を積んだ上で、次のステップに進みたいと思っています」

――監督は本作を撮影する前に『誰も知らない』（是枝裕和監督作）を観てカメラマンと話し合ったとおっしゃっていました。STONEさんは演じる上で、参考にした作品などはありましたか？また、好きな日本の映画や俳優などを教えてください。
「『百日告別』の役柄はとても特殊で、参考にできる同じようなキャラクターはあまり見つけられませんでした。でも、監督の経験と著書がわたしに多くの考えと役へのアプローチ方法のヒントを与えてくれました。それに監督は、自由に演じさせてくれて、束縛しませんでした。日本の映画で僕が好きなのは、北野武監督とその作品です。男っぽくてシャープ。緑豊かな山にある険しい巨石のように、危険と美は隣り合わせという作風に惹かれます」

インタビュアー: 江口洋子
協力: 「台湾エンタメパラダイス」（キネマ旬報社） / アジアンパラダイス
写真提供: B'IN MUSIC

■「百日告別」
2017年2月25日（土）よりユーロスペース他にてロードショー
www.kokubetsu.com

出演: カリーナ・ラム（林嘉欣） / シー・チンハン（石錦航） / チャン・シューハオ（張書豪） / リー・チエンナ（李千娜） / ツァイ・ガンユエン（蔡亘晏）
特別出演: アリス・クー（柯佳嬿） / マー・ジーシアン（馬志翔）

監督: トム・リン（林書宇）
エグゼクティブ・プロデューサー: リウ・ウェイラン（劉蔚然）
音楽: コン・ユーチー（龔鈺祺）【ソーダグリーン（蘇打綠）のアコン（阿龔）】
脚本: トム・リン（林書宇） / リウ・ウェイラン（劉蔚然）

製作: 原子映象有限公司
制作支援: 沖縄県
撮影協力: （一財）沖縄観光コンベンションビューロー / 沖縄フィルムオフィス
後援: 台北駐日経済文化代表処台湾文化センター台湾観光局 / 台湾観光協会沖縄県観光協会 / （一財）沖縄観光コンベンションビューロー
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