近年ますます評価を高めている
ヴァシリー・ペトレンコ(Vasily Petrenko)率いる
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団。先月発売された
ヒラリー・ハーンの新譜『チャイコフスキー&ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲』でも絶妙なサポートを聴かせて話題になりました。
そのペトレンコ&ロイヤル・リヴァプール・フィルが進めている
ショスタコーヴィチの交響曲シリーズの第3集
『ショスタコーヴィチ:交響曲第8番』(NAXOS・8.572392)が7月14日にリリースされます。
ショスタコーヴィチの交響曲演奏に、新しい可能性を示す当シリーズ。今回の第8番は、第2次世界大戦中に書かれ、その曲調のあまりの暗さに初演当時はとても評判が悪く、その上1948年には“ジダーノフ批判”の対象となり、1960年まで演奏が禁止されてしまったといういわく付きの作品です。ショスタコーヴィチ自身も非難されることを覚悟していたのか、自らの作品について相反する発言をし、作品の意図の理解の妨げとなったことでも知られています。
この作品には、常に寒々とした空気が漂い、あらゆるものを残酷に打ち倒す、野蛮で暴力的な雰囲気が満ちています。第2楽章で少しだけ明るさが感じられるものの、最後まで悲劇的な音に満ちていますが、皮肉屋のショスタコーヴィチのことですから、これらの重苦しい音楽にも何かの意図が含まれているのかもしれません。
ペトレンコの演奏はあくまで客観的に、作品の造形を浮き上がらせていきます。でも、だからこそ、ショスタコーヴィチの投げかけた謎にいっそう翻弄されてしまうような気もするのです。