やりきれない気持ちをリズムにのせて、今宵もどこかのダンスホールを賑わわせているに違いない“ドドンパ”。どう考えても和製英語なこの言葉、一体どこからやってきたものなのか?CDJournal.com的考察をまとめてみました。
時を遡ること2004年。“
氷川きよしデビュー5周年”という記念すべき年に、満を持してリリースされた
「きよしのドドンパ」。ド〜ドンパ!ド〜ドンパ! の掛け声とともに、老若男女が楽しく愉快に踊る様を、各地方自治体で目にした方も多いことでしょう……(CDリリースに合わせて制作されたキャラクター・グッズ“ドドにゃん”(黒猫をモチーフにした、いわゆるひとつの「ダッコちゃん人形」)も大好評!)。
ステージで一心不乱に踊っていたドドンパキッズの今後も気になりますが、それ以上に気になるのが“そもそもドドンパって何?”という疑問。いつかどこかで確かに耳にした覚えのあるこの言葉。しかしその意味となると……? その由来を探るうちに辿りついたのは、夜空にキラ星のごとく輝く“昭和ダンス・ミュージックの世界”なのでした。
戦後、急激に押し寄せたアメリカ文化の波にのって、ワールド・ミュージック×歌謡曲のクロスオーヴァーが一気に花開いた昭和30年代。ボリビア産リズム“スクスク”(
ザ・ピーナッツ「スク・スク」)、メキシコ(民俗音楽“マリアッチ”)とアメリカン(ポップス)のミックス種“アメリアッチ”(
三田明「恋のアメリアッチ」)、サーフィンの風薫るアメリカ産“スイム”(
橋幸夫「スイム!スイム!スイム!」)、
原由子『東京タムレ』でもお馴染みのタヒチ産“タムレ”(
谷啓「愛してタムレ」)、名物番組『ダンスは一番』でレッスンしましょう“チャチャチャ”(
江利チエミ「チャチャチャは素晴らしい」)、キューバからやって来ました“パチャンガ”(羽田のり子「パッパのパチャンガ 」)……。各レコード会社が競うかのごとく、世界各国から流行のリズム/ビートを持ち寄っては、日本流のアレンジ/歌詞をのせて生み出された、新たなるダンス・ミュージック! 渦中のドドンパも、もちろんその一つ。
純日本産の都々逸(「ドド」)と、キューバ〜アメリカを通って日本へ伝わったルンバ(「ンバ」)を足したものである、フィリピンのバンドが日本のクラブで演奏していたリズムのことである……などなど、その由来/発祥には様々な言い伝えがあるようですが、結局はどれも眉唾もの。その真相は定かでありませんが、当時人気を博していたマンボ/ルンバのようなラテンのリズムをもとに生まれた、日本最初の“和製リズム”であることは間違いない模様。1961年に発表され、一斉を風靡した
渡辺マリ「東京ドドンパ娘」、そして
美空ひばり「ひばりのドドンパ」など、数々の名曲とともに日本の夜を熱く盛り上げたのでした。
一過性のブームとしてあっという間に廃れてしまったものの、歌謡曲再考のクラブ・イベントなどでは、今も多くの支持を集めるドドンパ。ある意味、
イタロ・ディスコとも合い通じる、ローカル色丸出しの濃い個性。日本以外では全く通用することのないネーミング。きらびやかな衣装に身を包んでは、ステップ踏んで腰を動かし、今夜もオマエとドドンパ!
トニー谷が残した編集盤
『黄金のニューリズム』をBGMに「ズンタッ、タタタタッタ」のリズムに身をゆだねるのはいかがでしょ。もちろん腕にはドドにゃん着用で。「ドドンパはお好きですか?」
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