マッドネス、アバ、クイーン、そしてビリー・ジョエルといった人気アーティストのヒット曲をフィーチャーしたミュージカルが“ジュークボックス・ミュージカル”“トリビュート・ミュージカル”と呼ばれ、日本にも多数上陸し、大ブームとなっています。そこで“ジュークボックス・ミュージカル”についてCDJournal.com的考察をまとめてみました。
7月27日より東京厚生年金会館にて上演開始された、
ビリー・ジョエルの楽曲の数々をフィーチャーしたブロードウェイ・ミュージカル『ムーヴィン・アウト』(写真右:
OST)。劇中では「素顔のままで」「ストレンジャー」「アップタウンガール」「ロックンロールが最高さ」といった珠玉の名曲とダンスで愛と青春の輝きを最大限に表現。ビリー・ジョエルさながらの熱唱と、エネルギッシュなダンスを繰り広げるダンサーたちが拮抗し、観客の心に雄弁に語りかけてくる……といったダンス・ミュージカル。
昨年日本上陸した際には新宿・歌舞伎町に
フレディ・マーキュリーの銅像が建ち、会場となったコマ劇場は大改修、レッド・カーペットにバー・カウンターが設置されことも話題となった、
クイーンの曲で近未来を描いた『ウィー・ウィル・ロック・ユー』(写真左:
OST)。そして日本でもっとも人気のある、最大規模のミュージカル劇団、
劇団四季が上演した
アバの『マンマ・ミーア!』(海外上演の
オリジナル・キャスト盤がリリース)。さらには日本人キャストとして
中川晃教が主演した
マッドネスの『アワ・ハウス』……。これらのミュージカルは、映画として日本上陸した
ボーイ・ジョージ(
カルチャー・クラブ)の評伝ミュージカル
『TABOO』のように楽曲のオリジナル・アーティストをストーリーで描いた評伝劇ではなく、それぞれのアーティストのヒット曲をオリジナルのストーリーにあてはめたもの。これらのミュージカルが、“ジュークボックス・ミュージカル”、“トリビュート・ミュージカル”と呼ばれています。
世界的に見ても70年代以降の音楽シーンで活躍するほとんどのアーティストがいわゆる“シンガー・ソングライター”であり、観客も「ロック」に青春を捧げた世代が中心となってきていること。そんな中で70年代ロック/80年代ポップスのリバイバルと上手にシンクロし、“懐メロ”としてミュージカル界を席巻した、というのがヒットの要因のようです。
まだ日本に上陸していない話題作は? というと、アメリカ演劇界最高の栄誉とされるトニー賞を受賞した『ジャージー・ボーイズ』(写真左上:
OST)が挙げられます。これは
フランキー・ヴァリと
ザ・フォーシーズンズの伝記ミュージカルで、「君の瞳に恋してる」「シェリー」など誰もが知る大ヒット曲をフィーチャー。まるで本物のフランキー・ヴァリが歌っているかと錯覚してしまうほどの熱演が話題になっています。そのほか、カリフォルニアを目指して旅をするティーンエイジャーを
ビーチ・ボーイズの曲で描いた『グッド・バイブレーションズ』や、NYタイムズでは残念ながら酷評されてしまったようですが、
ジョン・レノンの生涯を描いた『レノン』も注目を集めました。
エルヴィス・プレスリーを取り上げた『オール・シュック・アップ』は、アメリカの人気ネイル・ブランドO.P.Iが上演を記念し、エルヴィスの曲名にちなんだネイル・カラーを発売したことでも話題となりましたね。
ミュージカルとは離れてしまいますが、今年9月に東京で上演される台湾のバレエ団、クラウド・ゲイト舞踊団によるバレエ公演『雲門舞集』では、現代音楽の巨匠で前衛芸術音楽の第一人者
ジョン・ケージの曲をフィーチャーした「行草 貳(II)(CURSIVE II)」(写真右:
DVD)が上演されます。1930年代にはバレエ団のクラス・ピアニストをしていたというジョン・ケージの最晩年の曲が多数使われているとのこと。こちらもコアな音楽ファンにオススメできるステージです。
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