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アメリカンニューシネマってなんだ?

2007/01/19掲載
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英語圏では“New Hollywood”と称される70年代アメリカ映画で、『俺たちに明日は無い』や『タクシードライバー』といったタイトルで知られる一連の作品群“アメリカン・ニューシネマ”について、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
 ヒーローが大活躍する勧善懲悪モノや、美人女優が出演し、豪華絢爛・夢物語が繰り広げられ、『風と共に去りぬ』などに象徴されるいわゆる“ハリウッド映画”が主流だったアメリカ映画界。そのなかで、1960年代後半に突如として現れたムーヴメントが“アメリカン・ニューシネマ”。そもそもの発端はアメリカのニュース系週刊誌として大きな影響力を持つ雑誌『タイム』が、映画『俺たちに明日はない』(写真・67年)を、暴力やセックスをテーマに反社会的ともいえる若い主人公を描く“新しいアメリカ映画”として紹介したことでした。

 30年代の実話で、銀行強盗犯“ボニー&クライド”の逃走劇をウォーレン・ビーティフェイ・ダナウェイが演じた『俺たちに明日はない』。主演俳優であり、製作者のウォーレン・ビーティは当初、フランスにおける映画運動“ヌーヴェルヴァーグ”の旗手として知られるフランソワ・トリュフォーに監督を依頼したとのエピソードからもわかるように“アメリカン・ニューシネマ”は50年代からゴダールトリュフォーシャブロルといった若い世代の映像作家たちによるフランス映画の革命“ヌーヴェルヴァーグ”から影響とヴェトナム戦争への軍事的介入を開始した大国・アメリカの社会情勢を受け反体制運動のひとつとして誕生しました。

 ジャック・ニコルソン(『カッコーの巣の上で』(75年))、ダスティン・ホフマン(『卒業』(67年))、デニス・ホッパー(『イージー・ライダー』(69年))、そしてデ・ニーロ(『タクシードライバー』(76年))といった当時の若手俳優たちが演じる“アンチ・ヒーロー”像に共感する若者たちが大挙して映画館に押し寄せたとか。60年代後半〜70年代にかけて、ハリウッドのメジャー・スタジオに対抗した“反逆児”たち世に放った、自由で過激な映画が“アメリカン・ニューシネマ”。60年代のカウンター・カルチャーの大きな潮流として、ヒッピー文化や、ロック・ムーヴメント、反戦運動と共に、既存の体制や文化に対する若者からの“異議申立て”だったと言えます。

 
 『ワイルドバンチ』(68年)、『真夜中のカーボーイ』(69年)、『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(73年)など、“アメリカン・ニューシネマ”にカテゴライズされる作品の中でも、モンテ・ヘルマン(『銃撃』(66年)ほか)がメガホンをとったジェイムズ・テイラーデニス・ウィルソンビーチボーイズ)とウォーレン・オーツ(『カッコーの巣の上で』)が出演したロード・ムービー『断絶』(71年)が初公開から35年の時を経て、DVD化されます。この作品は出演者たちにシナリオが手渡されることなく、ほぼ即興で撮影された異色作。『イージーライダー』がヒットを記録する一方で、公開され興行的には失敗に終わったというこの映画が“アメリカン・ニューシネマ”の真骨頂とも言えます。当時の若者に寄り添うように存在した空虚さ、敗北感、怠惰な空気……それらを描ききった屈指の名作です。
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