Hi-Fi CAMP 連載「RIDE AWAY〜僕らの住む街から〜」 - Chapter.03 Album『2nd BEST』インタビュー
掲載日:2010年10月29日
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 Hi-Fi CAMPのインタビュー、今回はいよいよ完成したニュー・アルバム『2nd BEST』についてじっくり語ってもらった。

 爽やかなポップ・センスと力強く聴き手の背中を押すメッセージで、昨年のデビューから一躍ブレイクを果たした彼ら。2枚目となる本作では、熱く刺々しい曲調の「ドラゴンフィッシュ」など、その世界観を広げる新たなチャレンジが結実している。ライヴでの直接的なコミュニケーションを経験したことも曲作りに大きな影響を与えているようだ。同時に、前回の連載でも語っていた「待っている側の音楽」という彼らのアイデンティティも、しっかりと磨きあげられている。SOYA、KIMのツイン・ヴォーカルの歌声、AIBAの類まれなるアレンジ・センス、TOSHIROのスクラッチを活かした、包容力ある楽曲が詰まっている。

 彼らは果たしてどんな思いをアルバムに込めたのか? 全曲解説と共に、4人に訊いた。
――まず、『2nd BEST』というタイトルはどの段階から決まってました?
 SOYA 「もう随分前ですね。前のアルバムのタイトルが『1st BEST』って決まった瞬間かな(笑)」
――なるほど。アルバムの名前自体はずっと前に決まっていたわけなんですね。そこに向けてどういうものを作っていくか、どういう方向性でバンドを進化させていくかということのイメージが固まってきたのはいつ頃でしょう?
 KIM 「最初からタイトルが決まっているという時点で、それがコンセプトでもあったんですよね。全曲シングル・テイストで、全力を尽くしてやるという。今回は1年たらずの間でしたけれど、より深みが一曲一曲にあると思います。掘り下げて作れた感じがしますね。4人の個々のベストを尽くしたものを集めたのが、今回の『2ndBEST』なんだという」
――では、皆さんそれぞれ、今作を作るにあたってどういうところを掘り下げていこうという意識があったんでしょう?
 SOYA 「僕は、今回の自分なりのコンセプトに“挑戦”というものがあって。新たなものに挑戦しよう、新たな幅を広げてみようという意識がありました。たとえば<ずっと幸せに>のようなハッピーなラブ・ソングを作ってみたり。<ドラゴンフィッシュ>のような喜怒哀楽の“怒”の部分を表現してみたり。<ALIVE>のように壮大な作風のものを作ってみたり。そういう挑戦をメンバーのみんな、特にAIBAが見事に最高の曲にまとめてくれたと思います」
 KIM 「僕はテーマを決めて曲を作ることは少ないんです。それでも、ライヴを通してファンのみんなとの対話ができたと思っているので。そのおかげで書きたい曲の幅が広がってくれた。デビューをしてからの年月で得た経験をフルに出せたんじゃないかと思ってます」
 AIBA 「制作期間がまとまっていたので、集中して楽曲を作ることができたということはありますね。一曲一曲丁寧に、入念に話し合いをしながら取り組んでいけた。それがベストを尽くしたというところですね」
 TOSHIRO 「去年と違っていろんな経験をしてきたぶん、思っていることが形になって出せるようになった。それはよかったと思いました。経験は視野を広げさせてくれるんで」




――ギター・サウンドのフィーチャーも、このアルバムの一つのポイントになっていると思うんですけれども。アルバム全体を通して、どういうイメージを持ってサウンドを作っていったんでしょうか?
 AIBA 「今回のアルバムは、ギターとかストリングスとか、弦楽器が前に出たアルバムだと思ってます。そこまで強い意識でコンセプトとしたわけではないんですけれど。Hi-Fi CAMPとして前のアルバムから幅を広げようと思ったときに、そういう可能性があった。もう一つ言えるのは、ライヴ感を考えたときに、ギターはすごくライヴ感が出ると思うんです。今回はライヴ感を意識した曲が多い。その辺を求めて作ったところはありますね」
――アルバムは、Hi-Fi CAMPとしての新たに踏み出した部分、そして守っている部分がいろいろな曲に表われているアルバムだと思うんです。それを改めて言葉にしてもらうならば、どういうものになると思いますか?
 SOYA 「新たに得たのは幅の広さですね。さらに、一曲一曲の深い世界観を持てるようになったと思います。変わらないというのは、僕らがどんなに挑戦しても、AIBAが軸になってしっかりまとめてくれる。そこは僕らの核というか。まとめ役がいるというのが大きいですね」
 KIM 「まとめ役がいると、ブレーキかけてくれるんで」
 SOYA 「やんちゃできるからね(笑)」
 AIBA 「で、俺は迷うとTOSHIROに訊く。僕、歌詞に対しても思ったことを言うんですよ。でも2人もプライド持って書いているし、こだわりもある。そういった時はもう一人の意見を仰ぎたくなるというか。それを経てHi-Fi CAMPの音楽になるというのはありますね」
 TOSHIRO 「その時その時に、思ったことを言い合ってるような感じですね」
――そうやって話し合う上でも、4人が仙台という同じところに暮らして、同じ空気を吸っているというのは大きいんでしょうね。
 KIM 「そうですね。日常の距離感も近いですからね。東京に住んでたらお互いの家同士も遠いですよね、きっと。でも、俺らは、全員の家にチャリで行けますからね」
――では、聴き手との関係性はどうでしょう? Hi-Fi CAMPって、最先端に立って“ついてこいよ”というメッセージを放つタイプじゃないと思うんです。むしろ、聴き手の生活の中で、家に帰ってほっと安らぐようなときに聴く音楽。そういうところに歌モノとしてのあり方を見出していると思うんですけれど。
 KIM 「そうですね。もちろん最先端の音楽も大好きですけれど、今の僕らがやっているのは、みんなに寄り添いたいという歌なので。生活の一部になってほしいという気持ちはありますね」
――でも、同時によりスパイスを効かせた曲もどんどん作っていきたいという意識もあるという。
 KIM 「そうですね。やっぱり、ライヴを考えると、まったりばっかしてられないし(笑)。刺激的な曲があってこそのリラックスできる曲だし。喜怒哀楽、いろいろあったほうがやってる僕らも楽しいし、より人間らしいと思うんですよね」
取材・文/柴 那典(2010年10月)


メンバーによる全曲解説


01.「Prelude 〜Alive〜」
 「もともと<ALIVE>という曲が最初に出来上がっていて。それがすごくいい形に壮大に仕上がったので、その曲を最後にしようということが決まっていたんです。CDを聴き終わったらもう一度聴いてほしいという気持ちが強くあるので、エンディングからオープニングに繋げるという意味でイントロをつけたんです。テンションが上がってくるような、気持ちが高ぶるようなものをイメージして作りました」 (AIBA)
02.「離れていても」
 「僕たちがずっと言っていきたい“離れていても変わらない絆”というものを描いた曲ですね。結成当初のHi-Fi CAMPらしい曲だという意味合いもあるので、アルバムの始まりとしてもすごくいいんじゃないかと思います。1年以上ぶりのアルバムなんで“待たせたな”という気持ちもこもっていますね」 (KIM)
03.「一握りの空の下」
 「今までのHi-Fi CAMPのサウンドをベースに、今年に入って得てきた僕らの“ライヴ感”を足したような曲ですね。今までのサウンドが好きだった人にも“Hi-Fi CAMP、待ってたよ”って思ってくれれば嬉しいです」 (SOYA)
04.「RIDE AWAY〜雪の降る街から〜」
 「今回のアルバムのリード曲です。曲自体のクオリティも高いし、サウンドも歌詞もすべてがハマったというのがまずその理由としてはあるんですけれど。何より、自分たちの生まれ育った街で、今でもお世話になっている仙台をレペゼンする曲だということで、これをリード曲に選ぶのに、みんな迷いはなかったです」 (SOYA)
05.「ずっと幸せに」
 「ツアーを通して思ったことの一つが、みんなが聴いてほんわかするような、笑顔になるような曲が作りたいということ。さらにノリがよければもっといいね、というイメージで作った曲です。幸せな曲は、みんなを柔らかい笑顔になる。それをライヴで見たかったという気持ちが一番強いです」 (SOYA)
06.「夢の向こうへ」
 「アルバムの中でも落ち着いたタイプの曲ですね。位置は前半なんですけれど、そこで“第一部終わり”みたいなイメージがある。で、次の<ドラゴンフィッシュ>がまた激しい幕開けになるんです」 (KIM)
07.「ドラゴンフィッシュ」
 「喜怒哀楽の“怒”の部分の表現をしたいと思った曲ですね。ドラゴンフィッシュというのは深海魚なんです。深海魚の形はイビツに見えるかもしれないけれど、深海魚は自分達のことをイビツとは思っていないかもしれないよ、というイメージから作りはじめました」 (SOYA)

 「この曲は特にスクラッチのハマりもよかったです」 (TOSHIRO)
08.「夜空のLUV LETTER」
 「これはまず恋愛の歌詞を書こうと思ったんです。遠距離恋愛になる瞬間から始まって、その後の気持ちを書いていって、着地させました」 (SOYA)
09.「R」
 「この曲は大きなテーマ性をつけたいと思って書いた曲なんです。“R”には2つの意味があって、まずはリサイクルとかリユースとかの“R”。もう一つは朝日が上る“RISING”の“R”。世の中は巡っているし、俺らもその中で生かされている。だから、何かしらいい方向にパスをつなげればいいなと思う、という曲なんです。できることは限られているかもしれないけれど、その小さいことをしていこうよ、と」 (KIM)
10.「羅針盤」
 「情報が溢れている時代だからこそ自分の信念をしっかりもたないと飲み込まれてしまうんじゃないかという、警鐘を鳴らすような歌ですね。今までも漠然とそういうことを思っていたんです。でも、最近になって、もう少しきっちり考えたいという気持ちに変わってきで。そういう意志も、曲に反映されていると思っています」 (KIM)
11.「メモリーズ」
 「最初は恋愛にも関係なく、ただただ喪失感を描きたかったんです。でも、それだけを書くとすごく深く突き詰めたものになってしまう。そこまで深く突き詰めたものは書きたくなくて恋愛の曲にしたんです。もし別れが辛すぎるのであれば、みんなが強いわけじゃないから、別れを抱えたまま生きていくのもありなんじゃないか、という歌です」 (KIM)
12.「Lost Love Song」
 「僕らのアルバムの中でのディープな部分だと思います。深いHi-Fi CAMPのサウンドの中での代表曲というか」(SOYA)

 「後半で一番盛り上がるところですね。そこから後は“締める”方向に向かっていくので」 (KIM)
13.「春風」
 「<夜空のLUV LETTER>が待っている側の心境だとするならば、これは待たせている側の心境なんです。僕の地元が青森県の弘前市で、桜祭りが有名なところなんです。僕は高校から仙台に来ているので、その時の心境を歌った歌でもあります。自分が見て育った桜が、自分のイメージする桜の歌の根源なんですよね」 (KIM)
14.「ALIVE」
 「このアルバムで一番はじめに出来て、もうその時点でアルバムの最後にしようと決めていた曲です。この曲を作るにあたっては、愛って何なのか、永遠って何なのか、突き詰めたくなったんですよね。愛が繋がって、その子供がパパやママの幸せを引き継いで、どんどん幸せを繋いでいくのが永遠なんじゃないかと考えて。それをどうにか歌詞にしようと思ったのがこの曲。説得力をつけたくて、結構練りましたね」 (SOYA)
取材・文/柴 那典(2010年10月)

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