KOKIA連載 心は世界に旅をするII〜KOKIA<REAL WORLD EUROPIAN Tour 2010>ドキュメンタリー - Chapter.2 ツアー回顧・中編〜ポズナン→ウィーン→ミュンヘン→マルセイユ
掲載日:2010年11月26日
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 前回は、ヨーロッパ・ツアーのモスクワ公演までを振り返りました。ここでは、ツアーの中盤、ポズナンからマルセイユまでの道のりをKOKIAさんに振り返ってもらいました。




――モスクワからポーランドの移動はどうでした?
 KOKIA(以下、同) 「ツアー初日のモスクワ公演が終わり、次の公演地のポーランドへの移動はもちろんまずは飛行機。モスクワの公演が終わった夜、深夜の空港へそのまま行って移動だったんです。夜中の3時に空港に到着して、朝5時のフライトで、しかも途中で乗り換えがあって……。あまりの眠さにもう、よくわかんなくなっていました(笑)」
――まだツアーが始まったばかりなのに、いきなりすごいスケジュールですね。
 「そうですね。今回、ヨーロッパツアーの公演地を前年度より増やしたことで、行ったことのない国にも足を運んだわけですから、実際に行ってみないとその距離感というのは、わからなかったですからね。スケジュールを見ているだけの段階では“東京、大阪、名古屋みたいなものなのかな?”っと想像していた移動も、それよりもずっと長い距離で大変な移動だったんです。モスクワからポーランドへの移動は間違いなく、今回のツアーの最初の山場でした」
――そうなると体調を整えるのが難しくなってきますよね。
 「そうですね。疲れてくると人間、大したことじゃなくても怒りっぽくなったりしませんか?。私の場合は悔しくて、涙が出てきそうになるんですよね。どうにもならないことに立ち向かわなくてはいけない時。歌わなくちゃいけないから、寝かせてほしい。でも、移動しないといけないので寝れない。そんな中、とにかく私のモチベーションを上げてくれたのはお客さんとの触れ合いでした。励みであり、すべての支えになってました。体力的にはきつかったけど、精神的につらいと思ったことは一度もなかったかな」
――ポーランドのコンサート会場は、去年と同じくブルーノートだったんですよね。
 「はい。2回、3回と歌を届けにいく国はいくつかあるんですけど、ほとんどはその都度違う会場なんですよ。なので、同じ会場にまた足を運ぶというのはホントに稀なケースだったので、すごくおもしろい感覚でした。去年ブルーノートを訪れたとき、“ステキな場所だなぁ。また来たいけれど、きっと2度と来ることはないような遠いところなんだなぁ”っと思っていたのに、またそこに自分が居る。とっても嬉しい気持ちでいっぱいでした」
――ポーランドでのライヴは、去年も“強く印象に残った”って言ってましたよね。きっと、去年に続いて足を運んだオーディエンスも多かったでしょうね。
 「そうですね。昨年に引き続きいらしてくださったお客さんと、半分くらいは新しいお客さんだったんです、不思議なんですけど。ポーランドのお客さんは、とってもやりがいのあるステージを演出してくださる素晴らしいオーディエンスなんです。ミュージシャンのモチベーションを上げるのが上手というか、“温かいなあ”って思うし、こっちも元気になれる。そんな雰囲気を作ってくれるんですよね」
――移動の疲れも忘れるくらい?
 「そうなんですよ! 普通はステージの上で消耗したり疲れたりすると思うんですけど、今回は移動のときに疲れて、ステージでエネルギーを充電するような感じでした。ポーランドのアンコールであの名曲、<What A Wonderful World>を歌ったんですけど、そのときの雰囲気はもう、忘れようもないくらいすごくよくて。お客さんが一緒に歌ってくれた瞬間、私はきっと信じられないくらい幸せな顔になっていたと思います。そうしたことは外国ならではだな、と思いました」
――楽しみ方を知ってる、ということですか?
 「いえ、たとえば日本で“仰げば尊し”って歌えば、自然と“我が師の恩”って続くでしょ? 外国で<What A Wonderful World>や<Over The Rainbow>を歌うと、この曲はみんなが知ってる本当にワールドスタンダードなんだなって気付けるんです」
――次はウィーン。ポーランドからウィーンへの移動は車ですよね?
 「車での移動はけっこう快適でした。前年度のツアーまでは大きなワゴン車だったんですけど、今年はキャンピング・カーをレンタルしてもらえたんですよ。そのお陰で、体の体勢も変えられるし、寝ることもできたので、かなりよかったです。実は私、飛行機は好きじゃないので、というか、大嫌いなので、車での移動は時間がかかっても気持ち的にもとても安心できるものでした。ただ……、今回は運悪く、車のヒーターが壊れてしまって、車の中なのに、ずっと寒い思いをしなければならないという、過酷な状況がありました」
――そんなに寒かったんですか?
 「もうね、極寒でした。車のなかでもずっとコートを着てましたから。“寝たら死ぬぞ”って言いながら(笑)車の中で白い息を吐いてました」
――めちゃくちゃ過酷じゃないですか(笑)。ウィーンでのコンサートはどうだったんですか?
 「ウィーンのステージはとっても良かった、という印象でしたね。やはりコンサートでは初めて行く場所だったんですけど、現地のプロモーターの方、会場の雰囲気、ライヴの内容、総合的に初めてコンサートをしたという事を考えても、とても良かったと思います。オーストリアは個人的に旅行で来たこともあったし、もともとすごく好きな国なんです。“音楽の都”として知られてますけど、“クラシックを勉強していた私が、ポップスを届けに行くのって、どんな感じだろう?”って楽しみにしていました。お客さんも老若男女、いろんな方が来てくれて――お年を召した方が多かったのも、印象的でした――着席の会場だったから、ゆっくりとKOKIAの歌を届けることができたんじゃないかなって。音楽を聴いてもらう環境って、私の歌は特に大事だなっと思っています。きれいな場所だったら、年齢や男女を問わず、足を運びやすいじゃないですか。逆にイベントや企画ものじゃない限り、ワンマンのライヴをわりと汚な目のライヴ・ハウスとかでやるのは、足を運んでもらうお客さんの層をある程度限定してしまうので、あまり好みません。もちろん、そうした環境で歌うこともイベントなどによってはあるのですけど……」
――ミュンヘンの会場はまさに……。
 「ダークでした(笑)。ロックな雰囲気の会場だったから、私よりもギターの松尾さんの方が輝いたと思います。松尾さんは普段、ロックな場所で演奏されていることが多いんですよ。KOKIAのサポートをやっているときは、じつは仮の姿(?)なんだと思います。(笑)」
――なるほど(笑)。ところで、ギターは直ったんですか?
 「ぜんぜん直らないですよ。ずっとガムテープを貼っている状態でした。絆創膏みたいに。結局、スペアのギターは使わなかったんです。何とか音が出るのであれば、使い慣れた自分のギターがいいということで」
――そして次の国はフランス・マルセイユ。
 「フランス国内でのコンサートはいままではパリがメインだったんですけど、今回はパリに加え、マルセイユとトゥールーズ、ブレストにも行きました。そのフランス国内初日がマルセイユだったんです。なんだか、フランスに行くと、“帰ってきた”っていう感覚がありました。ヨーロッパにおけるホームというか。もちろん、5年間やり続けたからこそ、そういう気持ちになれたんだと思うと、とにもかくにもやり続けてみるものだなっと思いました」
――うん、そうですよね。
 「振り返れば5年前、初めてヨーロッパでコンサートをしたのがパリ。私にとって、パリでコンサートをやるっていうことだけでも、5年前はすごいことだったのに、あれから少しずつ種蒔きは着実に広がっていったんだなぁって思います。いまではフランスに行くと“ただいま”って言える自分がいる。その感覚はすごく嬉しいし、自分自身の成長具合を確認できる瞬間でもあって。マルセイユの会場が満員だったこともとても嬉しかったことの1つ。だっていくらパリで大きな会場を満員にしたからといって、マルセイユのような地方も同じフランスというだけで成功するとは限らないですから」
――ヨーロッパにもホームがあるって、心強いですよね。
 「それも今回、ツアーの規模を広げ、訪れる国を広げたからこそ、実感できたことだと思うし。やっぱり、5年間続けてライヴをやってきたことがとにかく大きかったんだと思います。よいライヴを一生懸命に続けていれば、速度は遅くても口コミで広がっていくことを日本でもどこでも信じています。今はインターネットの口コミを皆さん結構参考にするでしょ?」
――マルセイユの印象はどうでした?
 「マルセイユって昔からの漁師の町で、荒くれ者が多いって有名なんだよって、パリのフランス人から聞いていたので、どんな所だろう?っと思っていたのですが、話に聞いていた以上に凄い街でした。しかも私が行ったときって、大々的なストライキが起きていて、かなり街は荒れていたんです。だから辺りはどこもゴミだらけだし、落書きも多いし。ガソリンスタンドもすべてクローズになってしまっていたり。だからもしもの時はの為に、タンクにガソリンを入れてキープしたりもしました。“どうしようもなくなったら、これを使おう”って。とにかく、マルセイユの街のイメージは勢いのある元気な街っというイメージ。でも、ライヴ自体はすごくよかったです。お客さんもとっても温かかったし、盛り上げてくれたり、みんな幸せそうな顔をして聴き入ってくれていました。KOKIAの音楽を好きでいてくれる人は、どこの国でもどんな地域でも、品がいい人ばかりなので(笑)」
――この頃って、ツアー全体の折り返し地点ですよね。この時点での手ごたえって、どんな感じでした?
 「まだまだ後半戦を残して、過酷なスケジュールが続いていたにも関わらず、なぜか私はしっかりとツアーをやり遂げられる、っていう根拠のない自信がありました。3日連続のコンサートがあっても、十分に寝ることができなくても、最後のパリのライヴまで辿り着いて、ツアーを成功させることができる――そういう確信がありましたね。なんだかはっきりとそのゴールをイメージできていたんです」
――不安は払拭されていた、と。
 「いや、不安だらけでしたよ(笑)。“どうなるんだろう?”って思うことはたくさんありましたけど、それを上回る充実感があったんですよね。さっきも言いましたけど、ステージに立つことで元気になれる感覚もあったし、もうすでに“このツアー、やってよかったな”って思っていましたからね。それが私にとって何よりの心の支えだったのかもしれません」
取材・文/森 朋之
※次回は、<ツアー回顧・後編〜バルセロナ→トゥールーズ→ブレスト→
ロンドン→ケルン→パリ>についてのインタビューです。


Column[もう一つのヨーロッパ・ツアー回顧〜OUT TAKE 02]
ヨーロッパでのプレスの反応


 ヨーロッパ・ツアー中は、行く先々の国でかなりの数の取材を受けました。

 日本人のアーティストがライヴを行なうこと自体、かなりレアな地域もあったと思うし、興味を持ってもらえるのは嬉しいことですから、がんばってインタビューに応えていたのですけど、出番の直前に取材を受けなくてはいけない時もあって、いろいろな意味で大変でした。

 海外で仕事をするとき、よく感じることなんですけど、外国のプレスの方って、お仕事なのに、まるでファンの人のように、私との対談を喜んでくれます。インタビューが終わったあと「一緒に写真を撮ってください」って言われたり、「サインをください」て言われることも多いです。日本ではあまりないことなので、そんなとき、“あ〜私はここでは、外国人のアーティストなんだなぁ”ってすごく思います。

 あと、パリでの取材のとき、“いいなぁ”っていつも思うのは、テーブルには必ずお菓子やコーヒー、エスプレッソなんかが用意されていて、“食べながら、飲みながら楽しい会話を”という雰囲気の中、インタビューは続きます。そういう雰囲気はとっても好きです。楽しいですよ(笑)。

 今回もインタビュアーの方から質問を受けていて思ったのは、“日本の音楽って、まだまだ全然ヨーロッパでは知られてないんだな”ということ。音楽にもいろいろなジャンルがあるけれど、いわゆるJ-POPの持っているイメージはフランスの場合、“J-POP=ビジュアル系”という認識があります。もちろん、日本国内ではそうではないわけで……。また、日本国内で報道される“フランスで大成功!”というような見出しも、実際にはその多くは純粋にその土地に住むヨーロッパの方たちに向けたものではない内容のものが多く、J-POP、もしくは日本人ミュージシャンが独自の世界をもってヨーロッパで受け入れられているという例はまだあまり実感として感じることができません。「KOKIAさんはどうして他の日本人歌手のように、派手なお化粧をして歌わないんですか?」なんて、おかしな質問をされなくなる日がくればいいのですが……。とにかく、私は海外のステージに立つとき、いつだって、日本人ミュージシャンという肩書きとともに、誇りをもってこれからも頑張っていきたいと思っています。
<REAL WORLD Tour 2010>ツアー・スケジュール

10月08日 Koncert(ロシア・モスクワ)

10月09日 Blue Note(ポーランド・ポズナン)

10月12日 Haus der Muzik(オーストリア・ウィーン)

10月13日 Feierwerk(ドイツ・ミュンヘン)

10月15日 Poste a Galene(フランス・マルセイユ)

10月16日 Sidecar(スペイン・バルセロナ)

10月17日 la Dynamo(フランス・トゥールーズ)

10月20日 la Carene(フランス・ブレスト)

10月22日 Islington Academy2(イギリス・ロンドン)

10月23日 Cafe Lichtung(ドイツ・ケルン)

10月24日 Theatre Michel(フランス・パリ)
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