真心ブラザーズ4週連続企画 『YOUNGER THAN YESTERDAY』 - 第3回 歳の差対談 YO-KING×渡辺大知(黒猫チェルシー)
掲載日:2009年8月25日
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真心ブラザーズ20周年記念 4週連続企画『YOUNGER THAN YESTERDAY』。3週目となる今回はYO-KINGのソロ対談をお届け! お相手は現在公開されている映画『色即ぜねれいしょん』の主役に抜擢されて、一躍話題の人となったインディーズ・バンド、黒猫チェルシーのヴォーカル、渡辺大知。真心ブラザーズがデビューした翌年の1990年に生まれた彼は現在19歳の現役大学生。ロックへの目覚めからモテまで。親子ほどに歳の離れた両者が繰り広げる、“青さ”と“情熱”がほとばしるトークを存分にお楽しみください。




「大知くんには独特な存在感がありますよね。
なによりも、まず顔がいい」(YO-KING)


──お二人は初対面ではないんですよね?
YO-KING 「ちょくちょく会ってますね。『色即ぜねれいしょん』の試写会とか。そういえば、ジャパン(〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009〉)の会場でもふらふらしてなかった? 最終日に」
渡辺大知(以下、渡辺) 「あ、はい。なんか居場所がなくて(笑)」
YO-KING 「たぶん、場内でいちばん見かけたミュージシャンだよ(笑)。すごく“独り感”を醸し出してた」
渡辺 「なんか寂しい奴みたいですね(笑)」
YO-KING 「でもロック・バンドのヴォーカリストとしては逆にいいと思う。なんか孤高な感じで(笑)」
──YO-KINGさんは、『色即ぜねれいしょん』をご覧になって、大知くんに、どんな印象を持ちましたか?
YO-KING 「僕は役者じゃないから、演技のことはよく分からないけど、独特の存在感がありますよね。なによりも、まず顔がいい」
渡辺 「え〜。そんなこと今まで言われたことないです。役柄もモテない奴っていう設定だったし」
──大知くんは、主人公の乾 純(いぬい・じゅん)というキャラクターに、すんなり感情移入できましたか?
渡辺 「そうですね。人前で何か激しいこととかやりたいんだけど、勇気がなくて家で独りでオリジナル曲をテープに吹き込んでる感じとか。すごく、わかるなあと思いました。実際、中学時代の僕がそうだったので」
YO-KING 「俺も同じような感じだったよ。俺の場合は大学に入って、やっとバンドを組めたから、独りの時期が長かったんだよね。(吉田)拓郎さんの曲を弾き語りで歌って、それをひたすら友達に聴かせるっていう(笑)。大知くんは、ギター始めたのは、いつぐらいだったの?」
渡辺 「中学生のときです。最初に音楽の授業でギターを弾いて。それから、すぐにアコースティック・ギターでオリジナル曲を作りはじめました」
YO-KING 「へー。バンド組む前に?」
渡辺 「はい。本当は中学でバンドを組みたかったんですけど、周りに音楽の話ができる人がいなくて。それで弾き語りでやっていこうと思ってたんです。でも、高校に入ったら、すごく音楽に詳しい友達がいっぱいできて。一気に世界が広がったんです」
YO-KING 「いい学校入ったねえ(笑)」
渡辺 「はい。うちのメンバーでギターとドラムは同じクラスなんですよ。みんなマニアックで変態です」
YO-KING 「はははは」
渡辺 「中学の頃にお姉ちゃんの影響で、名前も知らずに、ゆらゆら帝国を聴いていたんです。それで高校に入学したら、教室のドアに、“ゆらゆら帝国”って、でっかく落書きされてて(笑)。それと同時に、うちのドラムが、テンション高いときに、よく、ゆらゆら帝国の曲を口ずさんでいたんで、“あ、その曲知ってる!”みたいな(笑)。そんな感じで、友達の影響で、いろいろ音楽を聴くようになったんです」

YO-KING 「ドアに“ゆらゆら帝国”って、それ凄い教室だよね(笑)」
渡辺 「なぜか僕のクラスだけ、そういう人が固まってたんです。うちのギターとか、すごいセンスで。最初にライヴを観たとき、びっくりしましたもん。高1なのにサイケとかやってるんですよ。柄シャツにベルボトムで」
YO-KING 「小学生時代の浜ちゃんダウンタウン)みたいな格好で(笑)」
渡辺 「はい(笑)。オリジナル曲に混ぜてジミヘンのカヴァーを演奏したり。それを観てショックを受けてギターを諦めたんです」
YO-KING 「高1でサイケとかやられたら、そりゃショック受けるよ。でも、今の話って3年ぐらい前のことなんだよね。そう考えると、ごく最近の話だよ(笑)! だって、今年の3月まで高校通ってたんでしょ?」
渡辺 「はい」
YO-KING 「俺なんて、昔のことは、もう断片的にしか思い出せないもん(笑)。中高生の頃、何かを表現したくてうずうずしてたのは覚えてるけど。文化祭で他の奴らがやってるバンドを観て、“俺の方が上手いのに”って思ったこととか」
渡辺 「そこに入っていこうとは思わなかったんですか?」
YO-KING 「そうだね。サイモン&ガーファンクルとか、あんまり俺が好きじゃない音楽をやってたから。当時はRCサクセションYMOが、どかーんと来た時期だったんだけど、高校の頃はRCの歌う世界は今イチわからなかったし、YMOは打ち込みだし。それで結局、俺は吉田拓郎一辺倒だったんだよね。高校のときに、つま恋でやったライヴを観にいったり。阪神タイガースが優勝した1985年のことですよ」
──大知くん、ポカーンですよね(笑)。
渡辺 「すいません(笑)。自分が生まれる前のことなので」
YO-KING 「大知くんは何年生まれだっけ?」
渡辺 「1990年生まれです」
YO-KING 「俺が1967年生まれだから、えーと……23歳離れてるのか(笑)」
──親子でもおかしくない年齢差です。
YO-KING 「うん。ありっちゃありだよね(笑)。でも、まさか、こんなに歳下のミュージシャンと対談する日が来るとは……。デビューした頃には想像もできなかった(笑)」




「真心ブラザーズの最初の印象は……
すごくギターが上手い感じというか」(渡辺)


──大知くんが真心ブラザーズというバンドを初めて知ったのはいつぐらいですか?
渡辺 「高校生のとき、テレビ(『僕らの音楽』)に出ているのを観て知りました。最初の印象は……すごくギターが上手い感じというか」
YO-KING 「いいね(笑)。このあとリハーサルで桜井がここ(スタジオ)に来るから、ぜひとも直接、言ってやってください(笑)。めちゃくちゃ喜ぶと思う」
渡辺 「なんか、すごく大人っぽい印象を受けたんです。あまり、メチャクチャじゃない感じというか。完成された大人の音楽だなって」
YO-KING 「初期はメチャクチャやってたんだけど(笑)。歳を重ねるごとに洗練されていったんだよ」
──YO-KINGさんも、黒猫チェルシーの1stミニ・アルバムを早い段階からチェックしてたみたいですけど、最初に聴いたときの印象はどうでしたか?
YO-KING 「メチャクチャなんだけど、隙がない感じがしました。“いろいろ分かってるゾ、黒猫は”って(笑)。歌詞もイキそうでイカないところがいいんだよね。ハッキリと“こっちです”って言うような歌詞じゃなくて。それがサウンドとすごく合ってるなと思った。歌詞を書いてるのは全部、大知くんなんだっけ?」
渡辺 「はい。1stは、ほとんど僕ですね」
YO-KING 「歌詞はどうやって書いてるの?」
渡辺 「僕ら、お金がないから、あまりリハーサル・スタジオに入れないんです。だから新曲ができたら、ライヴで練習する感じなんですね」
YO-KING 「すげー、いいと思う」
渡辺 「だから歌詞もアドリブが多くて。パッと思い浮かんだ言葉を繰り返し歌っているうちに、だんだん歌詞になっていくんです。そういうふうに書いた歌詞が多いから、1stには僕のいちばんユルいところが入ってるんじゃないかと思います」
YO-KING 「0コンマ何秒かの間に閃いた言葉を歌ってるわけでしょ? そうすると、やっぱり自分が歌いたくない言葉は当然、歌わないわけじゃん。だから、そこで出てきた言葉っていうのは、大知くんにとってリアルな言葉だよね。その適当さって、すごくいいことだと思う。そもそもロックンロールなんて、適当なもんなんだから。絶対、その書き方を続けた方がいいと思う」
渡辺 「はい。ありがとうございます」
YO-KING 「きっちりロックンロールやってても面白くないもんね。だから、俺たちも今日みたいに、スタジオ押さえてリハとかやってる場合じゃないんだよ」
──そこは、きっちりやるべきなんじゃないですか(笑)。
YO-KING 「(無視して)でも、本番が練習ってゾクゾクするよね。俺らも、初期の頃はそういう感じあったわ。なんか、すげー思い出してきた。(唐突に)そういえばさ、映画のチューが初めてのチューだったんでしょ?」
渡辺 「は、はい。……誰に聞いたんですか、それ?」
YO-KING 「何かに書いてあったよ。それで“すごい嫌だった”って」
渡辺 「そうです。だって、初めてなのに、いろんな人に囲まれて……。しかも、それが全国の知らない人たちに観られるんですよ!」
YO-KING 「フツー、ありえないことだよね(笑)」
渡辺 「こないだは、お母さんにも観られてしまって」
YO-KING 「お母さん、何て言ってた?」
渡辺 「何も言わなかったです(笑)」
YO-KING 「さすがに、何も言わないよね、そこは。でも、ある意味、自慢できる話だよね」
渡辺 「モテなさ自慢だったら、いっぱいあるんですけど。僕、バレンタインのチョコとか今まで貰ったことないですから」
YO-KING 「高校は共学?」
渡辺 「そうです。僕が演じた乾 純は男子校だったから、まだ救いがあるんですよ(笑)。僕のほうが救いようがないんです」
YO-KING 「そうか〜(笑)。でも、これからじゃない?」
渡辺 「実際、周りの人からは、“大学入ったら絶対にモテるよ”とか言われていたんです。僕はあんまり必要以上にモテたくなかったから、心の中で“ヤダな〜”とか思っていたんですけど、いざ大学に入ったら全然、モテないし」
YO-KING 「余計な心配しちゃったんだ(笑)」
渡辺 「すごい恥ずかしかったです(笑)」
──でも、映画も公開されたわけだし、これからモテの波が来るかもしれませんよ。
渡辺 「僕が映画に出てることを知ってる人は、ちらほら学校にいるんですけど、そこはモテに繋がらないんですよ」
YO-KING 「なんで?」
渡辺 「みんな、“あいつは忙しいやろ”とか思うみたいで、飲み会とか全然誘ってくれないんです」
YO-KING 「そこはなんとかしないとね(笑)。でも、分かんないな〜。俺からみたら絶対、モテると思うんだけど」
渡辺 「YO-KINGさんは、今まで、告白とか、どれくらいされましたか?」
YO-KING 「星の数ほどあるよ(笑)」
渡辺 「え〜! 星の数ですか!」
YO-KING 「いち、に、さん、し……(冷静に数え始める)。うん。でも結構されてるね」
渡辺 「羨ましいです」
YO-KING 「小学校の頃は、すごい嫌だったの。告白とかされると、周りが“ヒューヒュー”とか騒ぐじゃん。それが、またうざったくて」
渡辺 「“ヒューヒュー”とか言われてみたいです(笑)。でも、今回の映画に関していえば、モテなかったのが、逆に良かったのかなとも思うんです。監督の田口トモロヲさんからも、“大知はモテなそうだから主役に選んだ”って言われているし。たぶん、モテモテだったら、表情とかに、そういう雰囲気が出ちゃってたと思うんですよ」
YO-KING 「なるほどね。でも、今日ちゃんと話してみて感じたんだけど、19歳でここまでカッコつけてないコって、すごい珍しいと思う」
渡辺 「そうですか?」
YO-KING 「うん。だって、このぐらいの年齢って、いちばんカッコつけたがる時期じゃん。俺なんて自意識過剰で手に負えなかったと思うよ(笑)。そういう意味でも、すごく貴重なタイプだと思う。第一印象も良かったけど、今日、実際に話してみて、さらに印象が良くなりました」
渡辺 「(本当に嬉しそうに)マジですか! ありがとうございます!」
YO-KING 「いやいや(笑)、こちらこそありがとうございました」


取材・文/望月哲(2009年8月)



【渡辺大知 Profile】
1990年、兵庫生まれ。2007年、高校1年の3月に友人たちと黒猫チェルシーを結成。地元・神戸を中心にライヴ活動を展開。08年に日本テレビの深夜音楽番組『音燃え!』に地元のライヴ・ハウスの推薦で出演を果たすと、ザ・ストゥージズやMC5を彷彿とさせる野性味溢れるプリミティヴなロック・サウンドで一躍注目の的に。現在は東京に拠点を移し活動を展開中。09年4月には1stミニ・アルバム『黒猫チェルシー』(写真)がリリースされている。初主演映画『色即ぜねれいしょん』絶賛公開中。 ■https://kuronekochelsea.jp/

【黒猫チェルシー ライヴ情報】
〈クレイジーミッドナイト69〜夏の終りのカミナリ族〉
8月28日(金) CLUB CITTA'川崎
開始&開演:24:00 前売:税込2,500 当日券:税込3,000円(ともにオーダー別)
ぴあP:328-378 / ローソン L:76370 / e+
出演者:騒音寺、片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ、浅草ジンタ、JAPAN-狂撃-SPECIAL、キノコホテル
DJサミー前田

黒猫チェルシー自主企画
〈黒猫チェルシーホテル 本館1階(回)〉

10月12日(月/祝) 渋谷CHELSEA HOTEL
開始:16:30 開演:17:00 前売:税込2,000円 当日券:税込2,500円(ともにドリンク別)
ローソン L:78086
e+ https://eplus.jp/
【プレイガイド発売日 8月22日(土)】
問い合わせ:CHELSEA HOTEL [TEL]03-3770-1567
※対バンあり。後日発表。


シネセゾン渋谷、新宿バルト9、吉祥寺バウスシアターほかにて全国絶賛公開中!

(C)2009色即ぜねれいしょんズ
■『色即ぜねれいしょん』


監督:田口トモロヲ
原作:みうらじゅん『色即ぜねれいしょん』(光文社)
脚本:向井康介
音楽:大友良英
キャスト:渡辺大知(黒猫チェルシー)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、岸田繁(くるり)、リリー・フランキー、堀ちえみ、臼田あさみ、石橋杏奈ほか
上映時間:114分
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