MANU & CHAO - 「マヌを好きな人が増えたら戦争は起きないと本気で思ってるんです」――渡辺俊美が語るマヌ・チャオの魅力
掲載日:2014年05月02日
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「マヌを好きな人が増えたら戦争は起きないと本気で思ってるんです」
――渡辺俊美が語るマヌ・チャオの魅力
ひとりの表現者として、ひとりの男としてマヌ・チャオに敬意とシンパシーを寄せる渡辺俊美さん(TOKYO NO.1 SOUL SET / THE ZOOT16)。マノ・ネグラ時代からのマヌの大ファンである彼は、マヌから受けたインスピレーションを自分のもとに引き寄せながら、自身の表現を続けている。「ボブ・マーリーとかジョー・ストラマーみたいに偉大な人はたくさんいるけど、マヌ・チャオはそういう人たちの現代版ですよね」と話す俊美さんならではのマヌ論をお届けしよう。
――マヌの音楽と初めて出会ったのはいつごろなんですか。
 「僕はレ・ネグレス・ベルトとかの流れでマノ・ネグラを聴くようになったんですけど、あのミックス感〜ジャンルレス感にハマったんですよね。ただ、より深くマヌの存在を意識するようになったのは、TOKYO NO.1 SOUL SETと平行する形で(ソロ・プロジェクトである)THE ZOOT16を始めてから。それからひとりのアーティストとしてマヌを意識するようになったんです」
――じゃあ、マノ・ネグラはリアルタイムで聴いてた?
 「そうですね。ただ、当時はハウスとかヒップホップのほうにハマっていたので、掘り下げて聴いていたわけじゃなかった。DJでもマノ・ネグラの曲をかけてたけど、ハウスと比べると音圧がないんですよ。だから、クラッシュみたいなパンクの流れか、アルチュール・アッシュレ・ネグレス・ベルトの流れでかけることが多かった。ただ、マヌもマノ・ネグラからソロになってどんどん音楽性が変わっていったじゃないですか?それこそポール・ウェラーがジャムからスタイル・カウンシルにかけて進化していったように」
――どんどん音楽性の幅を広げていきましたよね。
 「ですよね。僕もTHE ZOOT16を始めてからマヌと再び出会ったわけですけど、それも必然的なものだったと思うんですよ。自分が何をしたいのか、何をすべきか――そういうことを考えていくなかでピタッと合致したのがソロになってからのマヌであって、僕もそこから“自分のアイデンティティを表現するのが音楽なんだ”という意識を強めていったんです。そのなかでマヌの反グローバリゼーションの思想を掘り下げていくことにもなったし、マヌの父親(ラモン・チャオ)の本も読むようになって」
――ひとりのソロ・アーティストとして意識するようになったわけですね。
 「そうですね。マヌがどうしてソロになったのか、一度、片っ端からインタビューを掘り返してみたことがあったんですね。テリー・ホールスペシャルズ / ファン・ボーイ・スリー)やポール・ウェラーのインタビューも掘り返して……なんでみんなソロになったのか知りたかった。テリー・ホールは“他のメンバーの家族まで面倒みきれない”と言ってて(笑)、 ポール・ウェラーも同じようなことを言ってたんです。マヌは自分の哲学を持っていて、ひとりでもそれを形にできる人だったんですね。僕はそんなマヌのスタンスに刺激されたんです」
――マヌのソロのスタイルって自由ですよね。弾き語りでも特殊な編成でも大所帯でもマヌ・チャオ。俊美さんは彼のそういう自由な音楽表現に刺激を受けたところもあったんじゃないですか。
 「そうですね。旅先にサンプラーとギターを持っていって、手軽に作ってる感じというか……楽しそうにやってるんですよ。レコード会社からケツを叩かれてやってる感じがしない(笑)。自分の曲をサンプリングする感じとか、伝統音楽を崩していく感じなんてのは、初期のヒップホップに近い気もしましたね。手元のレコードを使って、自分の作品にしてしまう。マヌにしてもラップをするけどモロに韻を踏むわけでもないし、モロにヒップホップというわけでもない。そこがSOULSETと近い気がしました。THE ZOOT16の『RIGHT OUT!』(2004年)は曲が全部繋がってますけど、あれはマヌの『Radio Bemba Soundsystem』の影響なんです。あとね、マノ・ネグラからは血と汗の匂いがするんですけど、ソロになってからのマヌの音からは太陽と希望が見えるんです。自然と一体になった感じがするんですね。そこが大好きなんです」
――確かにそうですね。マヌのソロからは土や潮の香りが漂ってきますよね。でも、そのなかには都会のざわめきもあって……。
 「そうなんですよ。そこがナオト・インティライミとは違うところ(笑)。マヌは“目的”があるんです」
――“目的”とは?
 「“自分で選べ”っていうスタンスを人に見せていくことだと思う。“こうしろ・ああしろ”というような直接的な方法ではなく、ひとつのメッセージを詩人のように表現し、“僕はこう思う”っていうミニマムな意志を表明していく。だからこそ“これは俺のことを歌ってるんじゃないか?”と共感する人たちがいて、そうやってメッセージが世界中に広がっていくんでしょうね。大きな問題提起ではあるんだけど、そこをうまく表現してるんですね、マヌ・チャオという人は」
――いろんな角度から読み取れるようなメッセージというか。
 「そうですね。その一方で、社会活動は社会活動としてやってる。それでいて、明るくて説教臭くない。“さあ、君はどうする?”っていう。小沢(健二)くんもそういうところがありますよね。マヌと小沢くんは共通するところがあると思う」
――マヌのアートワークについてはいかがですか。ソロ以降は『MANU & CHAO』を描いたヴォジニアクが手がけているわけですが。
 「マヌとヴォジニアクって長いつきあいなんですよね?」
――そうですね。
 「だからね、ヘンな表現だけど……2人はデキてるんですよ(笑)。この本は2人の子供なんだと思う。愛が満ち溢れてるし、マヌの内面がここに表現されてるんだと思う」
――なるほど。ところで、俊美さんが一番思い入れのあるマヌの曲って何ですか?
 「やっぱり〈Rumba De Barcelona〉かな。あれが一番アガるし、バルセロナに憧れるようになったきっかけの曲でもあるし……今は自分にとっての〈Rumba De Fukushima〉〈Rumba De Tohoku〉を歌ってるつもりなんですよ。僕ね、マヌを好きな人が増えたら戦争は起きないと本気で思ってるんです。争いごともなくなるんじゃないかって。みんなマヌの世界に触れれば、“なんで今まで知らなかったんだろう?”と思うはずで、ひとりでも多くの人に知ってほしいんですよね。僕、福島でラジオもやってるんですけど、マヌの曲をよくかけるんです。僕が初めて洋楽に触れたとき、言葉も分からないのに愛を感じたり前向きになったりしたわけですけど、みんながそういう気持ちになったら……と思ってマヌ・チャオをかけてる。そこから何かを感じてくれたら嬉しいし、愛を感じたり前向きになったりしてくれれば、それが“日常に戻る”ということだと思うんですね」
取材・文 / 大石 始
取材協力: a-bridge
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