那倉悦生 「鏡を抜けて」 第3話「リンボに産まれて」

ENDON   2017/02/24掲載
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第3話 「リンボに産まれて」
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MA 「parts of the midnight」 2015
紙にペンキ, コラージュ 210mm x 297mm
実に素晴らしい機械でしてね、と、ベンチに腰掛けていたら、突然話しかけられた。私は目線を上げた。ホームレスと紳士の混ぜ物のような男が立っている。両手で差し出すように、30センチ四方ほどの箱を抱えている。私は無視した。男は私の隣に腰掛けた。面倒なことになった。私はこれを作るために10年間を要しましたとも!ガラス玉のような爛々とした瞳で男は言った。これのために私は、妻を失いました、逃げて行ってしまったわけです!幸い子供はおりませんでして、というのも私は無精子なんです、お恥ずかしい!私はスマートフォンでニュースサイトを見ている。どこか遠い国の内戦について描かれている。今日はですね、ついにこの素晴らしい機械が出来上がったというわけで、そのリリースパーティーというわけなんです、いわばね、おかしいでしょう、面白いでしょう?! 私はげんなりしたが、その場を去ることはしなかった。私は今日、こいつを初めて起動させてみるわけです、その前に、これはパーティーですから!お祝いですから!缶ビールを渡してくる、私は無言でそれを受け取った。生ぬるくていやな味だ。絶好のリリパ日和だ、見てください、あの雲、女性器にクリソツではありませんか!男は缶ビールを一気に飲み干した。そして、吐いた。うええ、おええ、畜生!なんて味だ!クソ不味い!まあいいでしょう、こんなのは余興に過ぎない、それより今日はコンパニオンを呼んであるんです、豪華でしょう!もうすぐくると思うんだけどなあ、本当にもう時間なのだけれど!半分狂っていると思っていたが、完全に発狂してやがる、私は立ち上がった。そこへ、若いいい女がやってきた。遅いぞ!時間を守れない人間は誰からも信用してもらえないぞ!男は箱を大事そうに抱えたまま立ち上がった。私はどうしても再び、腰掛けてしまうのだった。いい女はごめんなさいと蚊の泣くような声で述べた。男はいきなりいい女にビンタをかました。私は怒り狂い、男の禿げ上がった頭頂部をぶん殴った。弾みで箱が落ち、中から拳銃のようなものが出てきた。あんた、お前!てめえ!男は拳銃まがいを拾い上げると私に向けた。やめてよう、もうやめてようと女がつぶやく。36℃の夏の日だ。面倒なことになった。
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