植村花菜 連載 『マイルストーン〜トイレの神様』 - Chapter.1 Mini Album『わたしのかけらたち』Interview
掲載日:2010年3月3日
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 植村花菜の1年振りの新作は、発売前から話題を集めている楽曲「トイレの神様」が収録されたミニ・アルバム『わたしのかけらたち』。トータル・プロデューサーに寺岡呼人を迎え、サウンド、歌詞、ビジュアルなど彼女の世界観に多角的な変革をもたらした一枚だ。このアルバムの制作により、彼女の“シンガー・ソングライター”としての才能がさらに深化した!
植村花菜
――制作前の寺岡さんとの打ち合わせの充実度が反映してか、この6曲入りのミニ・アルバムは内容も濃いですね。今回のコンセプトはどのように決まりました?
植村花菜(以下、同) 「過去の作品を聴いていただいた呼人さんが“植村花菜のパーソナルな部分を歌にも出した方がいい”と思われたようで。それで、“ありのままの私”とか“赤裸々に表現する”というテーマになって、素の植村花菜に近い作品になりましたね」
――リード曲「トイレの神様」は“9分52秒”という長さにも驚きましたが、1月頭にラジオでオンエアされてから、リスナーからの大量の熱いコメントとリクエストが殺到したほどの曲ですね。この曲は、どういうシチュエーションで生まれた曲なんですか?
 「今回は、曲作りに対して、ひとつ殻を破りたかったんです。今までよりも、もっと自分をさらけ出した曲を作ろうと思ってました。<トイレの神様>の歌詞は今までとは違って、曲よりも詞を先に書いて……。デモの段階でも2番のサビのところで泣いてしまって歌えなかったんです。こんなに感情をコントロールできない曲は初めてだったので、自分でもびっくりしてます」
――<トイレの神様>以外も感動的な楽曲が揃ってますね、今回のアルバムは。
 「他の曲でも自分の気持ちを赤裸々に綴るっていうのはテーマで。多分今までとはちょっと違うと思いますね」
植村花菜――「猪名川」という曲は故郷の兵庫県にある川での思い出を綴った曲で……。
 「<猪名川>は、私のルーツを出したいっていうこともあったので、それで今回書くことになって。猪名川は私の街の川で、作詞家の岩里さんにその風景を話した上で、“誰もが自分の故郷の川を思い描けるような感じで書いていただけませんか”とオーダーして。くじけそうになったり、悩んだりしたときに、川に行って、いろいろ考えたりして。そんなことをしていた昔を思い出している感じですね。サウンドは、なるべく打ち込みにして、歌とギターが前に出るようにしましたね。今回はアルバム全体を通して、歌とアコギっていう私のルーツを軸に作っていこうって感じでした」
――「忘れないよ」の歌詞は、苦い経験なのに赤裸々に気持ちが表現されてます。
 「この曲だけずっと前に書いた曲なんですけど。これは苦い経験というか……何だろうな。辛いけど、それを乗り越えて……。何て表現したらいいのか……、強がってますよね。恋愛では必ず教訓を得るようにしていて、どこが悪かったのかよく考えますね。この歌詞もそうですけど、傷ついたけど、この傷を忘れないでまた、前向きに強く生きていきたいなと」
――「わたしはじめ」も失恋後の歌ですね。
 「そうですね。完全に吹っ切った感じですね。チャラけてるというか。今回、なぜか全曲が別れの曲なんですけど、他の曲がしっとりしてたので、<わたしはじめ>はライヴで盛り上がれる、コミック・ソング的な楽しい曲を入れたいと思って書いたんです。音は豪華なんですよ。バンジョーもホーンも入ったし、楽器系はすべて生だし、すごい贅沢です。コーラスも初めて友達とかを呼んできて、“ほんまでっか”とか入れさせてもらったんです。ブックレットのクレジットを見てもらえばわかるんですけど、このコーラスの中には私の姉も入ってます(笑)。普段の私っぽい曲ですね」
――「マスカラ」は、恋人と別れてから少し時間が経ったようなシチュエーションで。
 「マスカラって、メイクのときに“目が大きく見えてほしい”っていう意志を込めるものなので、この曲も女性の強がる部分というか、すごい失恋してしまって切ないけど、今日も思いを込めてマスカラを塗るっていう。女性らしい別れの曲を書きたいなと思って。出来たときも切なくて、泣きそうになりましたね」
――賑やかな「わたしはじめ」のあとだから余計に切なく聴こえます。
 「<わたしはじめ>と比べたら、“同じ人ですか?”って言われるかも(笑)。サウンド的にもR&Bっぽい感じが今までなかったので、新鮮に聴こえるかも」
――「サンシャインストーリー」は他の曲とは違って疾走感のあるロック・チューンでリスナーに勇気みたいなものを与えてくれますね。
 「別れがあって、でもそのあとに出会いがあるっていう。自分の輝く未来というか、先を見つめて頑張っていきたいっていう内容で。これも“ライヴで盛り上がれるような曲がほしい”と思って。別れを受けた上で、前進するっていう曲がほしくて」
――アレンジの磯貝サイモンさんは、今回が初めてのお仕事ですか?
 「彼自身がシンガー・ソングライターで、もともと呼人さんの知り合いで推薦していただいて。やってみたら、ものすごく素晴らしい才能の持ち主だとわかって。私“天才モン”って呼んでるんです。あだ名付けちゃった(笑)」
――アルバム全体を通して、出来上がった感想は?
 「今回は、アルバム全体的に、本当にいい曲が出来たと思って。いろんなことをさらけ出すってことで、私自身もいろいろ勉強になったので、今後に繋がる作品だなって思って。ここからスタートして、この先、どういう曲を作っていけばいいのかっていうのがわかった気がします。私の分岐点になるような作品になるんじゃないかなって完成したときに思いました」
――今までの作品もベストを尽くしてきて、素晴らしい作品でしたけど、今回は“曲作り”というか、“物作り”というか、その本質のようなものを掴んだように感じますが。
 「そうですね。これから先も今回の経験が活きると思うんです。<トイレの神様>が、歌うときに覚悟がいるような曲だったので……。やっぱり、身を削ってこそシンガー・ソングライターなんだなと改めて思いました。今まで、どこかで格好つけてたり、綺麗な言葉を選んだりしてたのかなって。曲を届けるなかで、感動して泣いていただいたり、元気になってもらったり、そういう仕事が出来ているっていうのは幸せなことで。その分、自分の痛いところも、恥ずかしいところも、リスナーの方に共感してもらえるように、どんどんさらけ出さないとって思いました」
取材・文/清水 隆(2010年2月)

※次回、反響の大きい楽曲「トイレの神様」についてをさらに掘り下げます。
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