森川誠一郎(
血と雫,
Z.O.A)、黒木真司(Z.O.A)、Takeshi(
Boris)、Atsuo(Boris)の4名から成る新プロジェクト“A/N(eɪ-ɛn)”が始動。11月16日(金)に初公演〈第一幕“或る時・花”〉が東京・高円寺
Highにて開催されます。当日に先駆け、トレイラーが公開中。
2本のギターと2本のベース、3声のヴォーカルを4名が固定せずフレキシブルに担うことで、未聴の表現を模索するA/N。公演は専属映像チーム“Quwah”による映像を交え、“体験する映画、意識が経験する映画”を体現する内容が予定されています。
公演当日より、初のレコーディング作品『素描集I』の先行販売もスタート。ゲスト・ヴォーカルにSaya(la scène)を迎え、必殺のスラッジング・ドゥームからクリアなギター・アンビエント、フリーフォームの緊張感までをパックした全8曲入りの同作は、おなじみ中村宗一郎(Peace Music)がマスタリングを担当。アルバムからは、Quwahがディレクション / エディットを手がけた収録曲「雨音」の映像が公開されています。
なおA/Nは、11月8日(木)20:00から
FRESH LIVEおよび
ニコニコ生放送にて放送される「FOOL'S MATE channel」の特番に出演。トークに加え、ライヴ・パフォーマンスも予定されています。詳しくは
オフィシャル・サイトにてご確認ください。
去年あたりからBorisのAtsuo氏とYBO2のトリビュートアルバム「鬼 O.N.I」のレコーディングを頻繁にしていた頃。その流れから部分パートに黒木真司(Z.O.A)を呼び込んでの録音作業中のこと。そもそも黒木がスタジオでギターを弾く姿を観たのは数年振りのことで、近くに居るようで遠く、遠くに居るようで近いという不思議な関係でもあり、こうしてまた人前で弾く姿を観るのは嬉しい限り。そして、ブランクを全く感じさせないギタープレイ。それが必然なのか偶発なのかはともかく、そこで何か新規にユニットが発生しても面白いのではないか?と、いう発案が、A/Nが生まれるきっかけにあったと思う。まだ、その頃はそれが何である、こうである等の具体的なプランは無かったと記憶するものの、ただでさえ多忙なAtsuo氏とTakeshi氏のスケジュールの間に、A/Nの生態プランが次々と投げられて来る。それによって漠然としていたものが段々とクリアになる様子がとても面白く、魅力的に感じた。
例えば、デモテイクからOKテイクに変化する過程と同じように、沢山の意見やアイデア、閃き、偶然といった要素が重なり合うようなこと。また、演奏メンバーだけに限らない映像を含む集合体でもあること。または運動体。映像の内容もそうであるし、その見せ方に然り、音楽だけに限定されない要素のある複合性。大掛かりではあるけれど、その実は至ってシンプルな思考の実践にも思う。裏を返せば既成概念にある当たり前とは違うだけのことで。これはわたしの解釈だけれども、ここでいう楽曲というのも、完成があるようで無い。何を持って完成という訳でもなく、視覚を含む相互関係で成り立つかのバランスが重要視されているのではなかろうか。
A/N ”演奏”メンバーはBorisの二人とZ.O.Aの二人。計四人。と、書くと何の変哲も無いバンドグループのようだけれど、これだけには収まらずと言ったところ。また、最低限演奏に必要な歌詞やメロディを各自が持ち寄り、それらを誰が歌うと言った構成アレンジ等、わたしにとっては新鮮な試みも多々ある。そのような過程がある中で部分的ではあるけれど、Takeshi氏の書いた詩の一節にある「無数の孤独」という語感も素晴らしいと思えた。演奏に触れる機会に探して欲しい。と、何に限らずこういった些細な感銘から大きなものまで、当事者間に発生する要因があってこその集合体であることがとても美しく思える。
偶然の深さと光。未来のことは誰にもわからないけれど、始まりは知覚によって動き出している。――森川誠一郎