TOKYODIONYSOS kapitel 2――鼎談: MTR(CARRE) x 那倉太一(ENDON) x MA(HIDDEN CIRCUS) x YVK1st.(ZENOCIDE)

2015/07/02掲載
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タイトルがエンボスで記されている以外は何のインフォメーションも伴わない静謐な純白パッケージ。通常とは左右逆様となっているジャケットの開くと現れるのは、ペインター・MA氏による強烈なヴィジュアルワーク。CDに収められているのは、東京版BRUJERIAの様相を呈する覆面ゴアグラインドANAL VOLCANO、あらゆるフィールドを横断するインダストリアル・デュオCARRE、新鋭スラッジCHAOS MONGERS、独自の手法で非音楽を音楽として構築するENDON、トラディショナルなクラスト / スラッシュを新感覚で更新するFILTHY HATE、名匠・INCAPACITANTS、ワールドワイドな活動を展開するステンチ / ノイズ・クラスト現行日本代表ISTERISMO、Lee“Scratch”Perry来日公演のオープナーを務めて注目を集めたヘヴィウェイト・ダブPREPARATION SET、殺伐とした重量リフを自在に組み合わせるZENOCIDEの9組。
アートワークを含め、整然と、各々が紐付けられることを無視しているようにも思える並びが、カテゴリやスタイル、シーン等のショウケースとなることを静かに拒否しているのがENDON・那倉太一氏主宰「G.G.R.R.」よりリリースされたコンピレーション・アルバム『TOKYODIONYSOS』
本連載では、MTR氏(CARRE)、那倉氏(ENDON)、MA氏(HIDDEN CIRCUS)、YVK1st.氏(ZENOCIDE)の4者鼎談で、同作に込められた意図を紐解きます。2回目は、彼らのならではの“ジャスト”論。
 1.  2. 
kapitel 2
――お話を伺っていると、本作はそれぞれの音楽性でコンパイルされたというよりも、交友関係のパッケージであるように思えます。音楽的にはむしろ、ある意味まとまっていないというか。
MTR 「交友関係というのは、はっきり言ってそう」
那倉 「そうなんだよね。ナチュラルな交友関係で選んだらハイコンテクストになるのは当たり前で」
YVK1st. 「ZENOCIDEとENDONが音楽的に意気投合したことって皆無だと思うしね。」
那倉 「そうだね(笑)」
MTR 「この方が僕らとしては自然だけど。そうじゃなかったら、まあ“見たことのある”ハードコアのコンピになってたはずだよね」
那倉 「 “友達の選び方”っていうかね……でもそれってすごく大事じゃないですか」
――そうですね。悪い意味ではなく。
那倉 「そうそう。良い意味で。悪い意味で言うと、このコンピに誰が入っていないか、っていうことです(笑)。それも悪い意味でとても大事」
――(笑)。でも、入れたくても入れられなかった人もいるんじゃないですか?
那倉 「それが不思議なもんで、いないわけですよ。収録時間の関係で何アーティストくらいになっちゃうし、誘いたかったけど今回はちょっと……みたいな話は一切無い。これはある種のイイ話だと思いますけどね(笑)」
――完璧なラインナップ。
那倉 「完璧っていうわけでもないけど(笑)」
MTR 「あはは(笑)。いや、俺は完璧だと思うよ」
那倉 「面子選びの時点で完璧かどうかみたいなのは、考えもしなかったけどね。結果そうなった。でも若手で纏めよう、っていうのはあったかもしれない。INCAPACITANTSは入ってるけど、あの方達はエターナル・フレッシュネスなので(笑)」
MTR 「そうそう!」
――PREPARATION SETとFILTHY HATEのようなバンドが一緒に収められているとういのも、意味付けしたものではないんですね。異種格闘技的なノリで作ったコンピレーションとは違って。
MTR 「ああ〜。奇を衒うっていうのは全然無い」
那倉 「どちらかというと、すごくフツーなこととして(笑)。ダブとハードコアが一緒になるっていうのは、まあフツーじゃないですか」
YVK1st. 「そうだよね。ノイズとハードコアが一緒になるのだって、1980年代のBears(大阪・難波)なんかからフツーにあったんだろうし」
――そうですね。PREPARATION SETはある意味VERMILION SANDS的な感触もありますし。
YVK1st. 「まあそう言われればそうですね。完全にミッシング・リンクですね」
那倉 「うん。異種格闘技的なコンピレーションて、僕らが見てきたものって二項対立のベースを敷いた上で盛り上げるのが多いと思うんです。それとは違って、俺たちは正に“自然”と一緒(笑)。山があって、川があって、木があって、みたいな。山と川と木って、実はだいぶ違うじゃないですか。ブツとしては。我々が勝手にナチュラル枠で勝手に括ってるだけで彼らからしたらもしかしたら迷惑かもしれないすよね。それはフツーに、“現場”と一緒っていうことだと思うんですよね」
MTR 「山があっても、富士山みたいに突出した山じゃなくて、山脈なんだよね」
――コンピレーションというよりも1枚の“アルバム”としての印象が強い作品になっているのは、その“自然”に起因しているのかもしれませんね。
那倉 「元々ミックステープみたいな感じにしたいっていうコンセプトがあったんですよね。基本的には交友関係で集まった面子なんですけど、一組だけ意識的に入れたアーティストがあるんですよ。それがCARREです。何曲目から何曲目まで何々っていうバンドが入っていて……みたいな、組数の多いスプリットのようなコンピレーションにはしたくなかったので、最初に曲順である程度のストーリーを作って、その中のある切れ目を強調する為にSEを入れるという作業をCARREに一任しています。わざわざそういう役割ではクレジットしていないんで、一見するとほかのアーティストと並列的な立ち位置なんですけど」
MTR 「僕らだけ、全曲が出揃ってから作曲を始めたんですよ。まあ曲順とかはタイちゃん主導で一緒に考えたんですけど、最終的なバランスは僕らで全部決めて。だから、はっきり言ってこのコンピを一番聴いてるのは僕らなんですよ。通して5、60回は聴いたから。曲もこれのために結構曲を作ったし。ボツ曲がたくさん(笑)」
――CARREのアルバム出せるじゃないですか(笑)。
那倉 「まじすか……」
MTR 「(笑)」
YVK1st. 「そのお陰で、ジャンル云々とは違うものになってるよね。そもそも、“ハードコアしか聴かない” なんていう人の方がよっぽど少ないと思いますけどね、俺は。ハードコアが好きな人ってだいたい他の音楽も聴くでしょ。でも逆にこのコンピは、もし仮に“ひとつのジャンルしか聴かない”っていう人がいたら、そういう人ほど面白く聴けるのかもしれない、っていう気もする。全部ノイズとして聴こうと思ったら全部ノイズとして聴けるし、全部ハードコアとして聴こうと思ったら全部ハードコアとして聴ける。ダブだと思ったら全部ダブだし、みたいな。それをフツーにリスナー側が決められるというか」
MTR 「そうだね。“何のコンピなんだ?”って言われると難しいけど、音楽に余地を残してるよね」
YVK1st. 「これは昔話なんだけど、MTRくんの運転でCORRUPTEDを観に大阪まで一緒に行った時に、車の中で、バイト先の人に音楽をやってることを知られて“どんなのやってるの?”って訊かれた時どう答える?みたいな話になって。ZENOCIDEは所謂ハードコア・パンクだけど、ビートが遅かったりするから、スラッジの現場だと“ハードコア過ぎ”、ハードコアの現場だと“ドゥーム系でしょ?”みたいに言われる。CARREも音はノイズっぽいけど、クラブでもやったりするから、ノイズの現場だと“テクノじゃん”、クラブだと“ノイズでしょ?”って言われる。そういうの、いつも何て答えるか困るんだよね、って言ったら、MTRくんは“俺も完全にそうだから、最近は開き直ってインダストリアルって答えるよ”って。その時から、俺も開き直って“ハードコア”って答えることにしたんだよ。MTRくんのことすげー信頼出来ると思った瞬間でもあったんだけど」
MTR 「なるほど。そうだったんだ(笑)」
YVK1st. 「最初は普通にクラストのバンドとして始まって、途中から遅いのをやりたくなったからそうしたけど、“スラッジのバンドです” って約束したつもりもないしさ。ブラスト入れたくなったら入れるし、Dビートの曲やりたくなったらやるしさ。自分たちがかっこいいと思ってるんだからいいでしょ?っていう」
MTR 「そうそう。かっこよければ何でも良いんだよ」
YVK1st. 「ダサいのやるのが一番ダメなんだよ。でもまあ、CARREもZENOCIDEも、元々居た畑を言い訳に使ってる感じはあるよね。言い訳って言うと語弊があるかもしれないけど。“まあ、ハードコア・パンクなんで” みたいな」
那倉 「そうだね。“ジャンルの有名どころ勢揃いコンピ” とは違うという意味でも、意義があると思うんですよ。 “フッド・ミュージック”とか“クルー”のコンピだったらこういう感じもあるかもしれないけど。そういう性格のものでもない。まあZENOCIDE周りにはクルーもあるけど、このコンピに関して俺たちは所謂“クルー”ではないし、“フッド”でもない。それでも団体芸が成立しているというのは、まあ、ある種の美談だとは思いますね」
MTR 「うん、リーダー不在で成立してるっていうのも間違いないしね」
YVK1st. 「あと、ひとつ言っておきたいんだけど、“何のコンピなのか”っていうのをまとめる流通用の謳い文句として、インフォに“エクストリーム”って書いてあるんだけどさ。これ本当ダサいから。誰が言ったか知らないけど。“エクストリーム”って絶対に言われたくない。俺たちは“ジャスト”だから。これが“フツー”なんだよ。今回の俺たちの『CD』はキーワードが“アンチ・エクストリーム”なんだから」
MTR 「ZENOCIDEのジャストは等身大っていうことなの?」
ZENOCIDE『CD』
YVK1st. 「等身大っていうか、“ちょうどいい”っていう感じ。音はすげーデカいほうが気持ち良いけど、まあ、そんなにデカくなくてもいいかな、っていう。まあ、1stアルバム作った時は、がんがんエクストリーム志向だったんですよ。“すごいほうが良い”みたいな。“誰もやらないようなことやっていこう”って思ってた時期もあったんだけど。今はもう、そういうの飽きてるから」
MTR 「そっか。CARREはけっこう、“背伸びしない”っていうのがコンセプトとしてはかなりあるんですよ」
YVK1st. 「まあフツーより大きく見せてもね、バレるしね」
MTR 「喧嘩強くないのに強そうにしても、CARREにしてみたら全然意味ないし(笑)」
那倉 「うちの場合、特にそういう感覚はないなぁ。自分の大きさなんて考えたこともない(笑)。まあ5人組だっていうのも自身のサイズを隠蔽する仕組みなんだろうね。俺たちもエクストリームではないんだけどさ、でも間違いなく看板には書いてあるよね。ていうか音響的にどこを切っても誰にとってもジャストじゃない音楽なんてのも、存在するのかどうか怪しいしね」
――僕も表現として“エクストリーム”という単語はよく使いますが、実際のところは特に1990年代以降、文字通りのエクストリームな音楽なんて存在しないですよね。表現というか、“ジャンル”ですね。
YVK1st. 「そうそう。ジャンル。世の中、そんなにエクストリームなものなんて無いでしょ」
MTR 「無い無い。もう出てこないよ。人間のサイズは変わらないんだから」
YVK1st. 「うん。もっと良いセンテンスがあると思う。こんな、友達同士が集まって“みんなでひとつのもの作ろう!”とか、全然エクストリームじゃないでしょ(笑)」
那倉 「確かにフツーだね」
YVK1st. 「そうだよ。大森靖子とかの方がよっぽどエクストリームじゃん。あと、会ったこともない人とTwitterで喧嘩するのとか超エクストリームじゃね?インターネットでさ」
那倉 「でも、やっぱインフォには“エクストリーム・ミュージックのコンピですよ”って書かざるを得ないというね」
――それに、それが無いと初動でどこにも受容されないという危険性もありますよね。特にこのコンピレーションは。
MTR 「そうですよね。みんな馴染んでるエクストリームっていう言葉をとりあえず使ってるけど、みんなが思っている“エクストリーム”ではない、っていうことですよ」
那倉 「まあ、そうだね。かといって所謂“エクストリーム・ミュージック”クラスタに無視されても困るしね」
MTR 「そうなんだよね。エクストリームっていう言葉は難しいよ。でも、改めてその言葉を使いたい、っていう気持ちもある。吉田美奈子さんの90年代の作品で『Extreme Beauty』っていうアルバムがあるでしょ。あの場合の“エクストリーム”って語感は凄く好きで。あの感じなら使いたい単語だなぁ〜って。このニュアンス伝わらないか(笑)」
進行・文 / 久保田千史(2015年2月)
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G.G.R.R. presents
“TOKYODIONYSOS”
Release Party

ggrr.figity.com

2015年7月11日(土)
東京 新大久 EARTHDOM

開場 16:00 / 開演 19:30
前売 1,500円 / 当日 2,000円(税込)


[live]
ANAL VOLCANO / CARRE / ENDON / FILTHY HATE / INCAPACITANTS / ISTERISMO / PREPARATION SET / ZENOCIDE


[DJ]
AIWABEATZ / LOVEJUICE / YWK1 / 李ペリー / SHOT-ARROW / BLACKMONEY



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