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interview「On-U Sound」30周年記念Adrian Sherwoodインタビュー

エイドリアン・シャーウッド / 2012/01/20掲載
「On-U Sound」30周年記念Adrian Sherwoodインタビュー
2011年、活動開始から30年目を迎えたUK最重要レーベルのひとつ「On-U Sound」。1980年代、かつては未開の音楽であったレゲエという音楽性を武器に圧倒的存在感でパンク / ニューウェイヴ期を疾走、現在に至ってもなお進化しながら良作をリリースし続けています。再発屋さんではなく、真に現役で存在する80sレーベルというだけでも賞賛に値する同レーベルの総帥Adrian Maxwell Sherwood(エイドリアン・シャーウッド)は、レゲエの変革と共に歩み、シーンの推移を見つめてきた正に生き証人。時を経ても情熱を絶やすことなく、常に最前線で活動するSherwood氏。昨年12月、東京・渋谷 SOUND MUSEUM VISIONにて行われたアニヴァーサリー・パーティ〈DUB SESSIONS: ON-U SOUND 30th SPECIAL〉出演のため来日した氏に、「On-U Sound」の歴史と未来を語っていただきました。
Adrian Sherwood
Adrian Sherwood / photo: Tadamasa Iguchi
――30年前にOn-U Soundをスタートさせた時、レーベルの基本理念のようなものはあったのでしょうか。
 「正直言ってそういうのは全然無かったんだ。レーベルとして生き残っていければいい、っていう気持ちだけで」
――最初から“レゲエのレーベル”として始められたのですか?
 「最初はレゲエのレーベル、っていう感じではなかったんだよね。1番最初にLPをリリースしたNEW AGE STEPPERS(ニュー・エイジ・ステッパーズ)は厳密に言えばレゲエではなかったし、2枚目に出したTHE MOTHMEN……このアルバムは激レアだよ……後にSIMPLY RED(シンプリー・レッド)になるバンドなんだけど、それも全然レゲエを演奏してはいなかった。まあレゲエとはちょっと違ったものを出すレーベル、といったところかな。意図的にそうしたわけではないんだけど。On-Uの前にレゲエのレーベルはすでにやっていたからね。“4D Rhythms”っていうレーベルで、CREATION REBEL(クリエイション・レベル)の『Starship Africa』1枚しか出していないんだけど。“Hitrun”ていうレーベルもやってたし」
――NEW AGE STEPPERSが出てきた頃というのは、ニューウェイヴ真っ只中、という感じだったと思います。そういった環境の中で、Sherwoodさんはどんな音楽を聴かれていたのですか?
 「その頃からずっとレゲエ・ヘッドだよ。周りにいたTHE POP GROUP(ザ・ポップ・グループ)、Mark E. Smith(マーク E. スミス)のTHE FALL(ザ・フォール)とか、そういうものは全部聴いてはいたんだけど、どれかにものすごくハマるってことはなくて。特に好きで聴いているものと言えばやっぱりレゲエだったよ。その頃一緒にツアーを回っていたのもTHE SLITS(ザ・スリッツ)やTHE CLASH(ザ・クラッシュ)で、レゲエに近いものだったしね」
photo: Tadamasa Iguchi
――Shewoodさんはレゲエに対して非常に造詣が深いと思うのですが、そんなあなたからは周りの“レゲエ・フレイヴァ”なバンドはどんな風に見えていたのですか?
 「面白かったよ。最初の頃の、第1、第2世代の黒人たちが育ててきたスカやレゲエなんて、昔はレコード屋の隅っこで安売りされているような、言ってしまえば二流の存在だったんだよね。初めが小さなものだっただけに、それが突然大きなものになっていくのを見るのは面白かった」
――レゲエが大きな存在となるにあたり、やはりパンクの影響は大きかったのでしょうか。
 「UKレゲエにおいてはそうだろうね。それまで白人と黒人が同じステージで演奏するなんていうことはなかったんだけど、Bob Marley(ボブ・マーリィ)やTHE CLASHやTHE RUTS(ザ・ラッツ)……THE RUTSはすごく大事なバンドだよ……彼らが出てきてからはそういうことはなくなったんだ。THE CLASH、THE RUTSはレゲエのフレイヴァがあるバンドだったけど、SEX PISTOLS(セックス・ピストルズ)のJohnny Rotten(ジョン・ライドン)だってレゲエが大好きだった。 SEX PISTOLS が解散した後に結成したPiL(パブリック・イメージ・リミテッド)を見れば分かるでしょ?当時のUKでは“Rock Against Racism”(反人種差別を訴えるロック・フェスティヴァル)や、“Legalise Cannabis Campaign”(大麻合法化キャンペーン)みたいなポリティカルな運動も多くて、一緒になって盛り上がっていったんだよね」
――On-Uのカタログを見ていると、ニューウェイヴィなリリースと、もっとルーツ寄りなリリースと2パターンありますけど、これも意図的にやったことではないんですか?
 「全く意識はしてなかったんだけど、僕はプロデューサーだからさ、様々なエリアのアーティストと出会う機会があって、みんなが色んなヴァイブスを持ち込んでくれたんだ。例えばPiLのKeith Levin(キース・レヴィン)はすごく良いギタリストでしょ?だから僕のレゲエのトラックでギターを弾いてもらおう、っていう風に。そうやってセッションを繰り返して、色んなものをミックスしながらスタイルを作っていったんだ。すごくおもしろい作業だったよ」
Adrian Sherwood & Ari Up
Adrian Sherwood & Ari Up (THE SLITS / NEW AGE STEPPERS) / photo: Kishi Yamamoto
――単純な質問ですけど、そうやってレーベルを続けてゆく中で苦労したのはどんなことですか?
 「みんなから期待されるのはキツかったなあ。アーティストたちはもっと売りたいっていう思いを持ってたんだけど、アンダーグラウンドでやっていたからというのもあって、なかなかそれに応えられなくてね。そういうときは本当に悲しかったよ(苦笑)」
――今でも、制作はもちろん、発送などの作業もご自身でやられているんですよね。
 「始めたばかりの頃は5、6人でやっててね。前にやっていたレーベルの頃から引きずっていた借金の問題もあったりさ。Kishi(Yamamoto)がアートワークやビジネスまわりをしっかりやってくれていたから、すごく助かってた。最初の3年間はすごく大変だったけど、だんだん軌道に乗ってきたんだ。そうなってくると、もっとレコードを出せっていう話になってくるんだけど、なかなかそうもいかなくてね。でも“もっと良くなるはず”っていう気持ちは持ち続けてたから、良いアーティスト、作品を続けて送り出すことができたんだと思う」
photo: Tadamasa Iguchi
――“もっと良くなるはず”という信念はどんなところから得られたものだったんですか?
 「隣の芝は青く見えるっていうけど、僕は売り上げのことは気にしてなかったし、十分良いってことは分かってたからさ。金銭面でみんなからの期待に応えられないのはツラかったけど、素晴らしいものをリリースしているんだっていう思いは変わらなかったから」
――なるほど……。レゲエ / ダブと接した仕事の傍ら、エンジニアとしてSKINNY PUPPY(スキニー・パピー)やMINISTRY(ミニストリー)をはじめとするエレクトロニック・ボディ・ミュージックや、DEPECHE MODE(デペッシュ・モード)などのミックスも手がけていらっしゃいますよね。そういったアーティストたちとレゲエってすぐに結びつかない気がするのですが、どういった経緯で手がけることになったのですか?
 「MINISTRYのAlain JourgensenやDEPECHE MODEのプロデュースをしていたDaniel Millerは、僕のところまで来て、一緒にやりたいと言ってくれたので引き受けることにしたんだ。レゲエだけに留まらないで、どんどんチャレンジしていきたいっていう気持ちもあったから、おもしろそうだと思ったんだよね」
――音楽的には?好きでしたか?
 「うん、好きだよ。でも家でじっくり聴くほど好きかって聞かれたらノーだな。こういう場では正直に言わないとダメでしょ(笑)?」
――(笑)。でも僕はあなたが手がけたボディの作品が大好きです。特にMINISTRYの『Twitch』は、イカれたテープ・ワークや変態的なパニングなど、On-U印のミキシングがエクストリームに現れた作品だと思うんです。ああいうミキシングやどうやって編み出していったのですか?
 「それはMark Stewart(マーク・スチュワート)と一緒に作っていった。エクストリームにミックスする術は彼から学んだんだよ」
Adrian Sherwood
photo: Tadamasa Iguchi
――でも本当は、もっとルーツ・レゲエ寄りのサウンドがお好きなんですよね?
 「そんなことないよ。ジャズやブルース、マイナーコードでダークなものは大抵好きだよ。レゲエ / ダブでも、特にメランコリックで哀しげなのが好きだね。ムーディで歌詞も素晴らしいとなお良い。今一番良い例を挙げるとLITTLE AXE(リトル・アックス)の『If You Want Loyalty Buy A Dog』みたいなね」
――あのアルバムは最高ですよね。
 「でしょ!? ルーツ・レゲエ + ブルースって感じでマイナーコード満載で最高に美しいんだ。ブルースが好きな人はブルースじゃないって言うかもしれないし、ルーツ・レゲエが好きな人はブルース過ぎるって言うかもしれないけど、僕にとっては完璧なバランス。レゲエだけ、とか、ブルースだけっていうのはあまり好きじゃなくてね。そこにチャレンジが入っていないと新しいものが生まれないと思うし」
――やっぱり、新しいもの、今まで聴いた事のないサウンドというものがお好きなんですね。レーベルを始めた頃も、ダブはフューチャー・ミュージックを作り出すためツールのひとつだったのではないですか?
 「始めた頃はそんな事全然考えてなかったよ(笑)。でも作品を作っていくうちに、新しいものを作るほうが楽しいってだんだん思うようになっていったんだ。今も自分の新しいソロ・アルバムを作っているところなんだけど、それも音に色んなスパイスが入っていて、ただダブなだけじゃないんだ。今までで一番自分らしい作品だと思うな。4月くらいにリリースする予定だから楽しみにしてて」
――早く聴いてみたいです!レゲエを核に持ちながら、様々な要素を吸収して進化を続けるのはOn-Uの大きな特徴のひとつですよね。NEW AGE STEPPERSの最新作『Love Forever』も、NEW AGE STEPPERSらしさ満点な上にモダンで、それを象徴的に表していると思います。
 「『Love Forever』聴いてくれたの?」
――もちろん。素晴らしかったです。
 「よかった!ありがとう」
――レゲエの進化の先に、今ではダブステップが挙げられますよね。ダブステップの勃発以降レゲエに対する注目度が再び高まって、元気になっている思うのですが、それについてどう思われますか?
 「そうだといいなって思うよ。ダブステップは最高の進化型のひとつだからね。でもひとつ問題なのは、その裏側でジャマイカのレゲエが死に絶えつつあるっていうことなんだよ。新しいSly & Robbie(スライ&ロビー)、若いプレイヤーが全く出てこないんだ。ダブステップは素晴らしいけど、同時に本物のレゲエが消えてゆく傾向にあるから、僕はその火を消さないってことを目標にしているよ」
――On-Uとして、具体的に行っている策などはあるのですか?
 「そうだね、古いスタイルの作品でも新鮮に聴こえるようにいつも心がけてるよ。本物のレゲエにもちゃんと目が向くようにね。それから若い人たちと作業しながら、ひとつひとつ質の高いものを作っていくこと。才能ある若い人たちはたくさんいるから、そこに僕たちの持っている知識をミックスしていくっていうのは大切なことだと思うんだ」
photo: Tadamasa Iguchi
――今、ジャマイカの若いアーティストでお気に入りはいますか?
 「ほとんどいない。TURBULENCEとかは好きだけど。今のジャマイカはヒップホップ・フレイヴァが入り過ぎてしまっているし、CDプレイヤーも持っていないようなデジタル世代が音楽そのものを大切にしていないんだよね。ジャマイカには今、国の中にレコード・ショップが2軒くらいしかないし。素晴らしいミュージシャンはたくさんいるんだけど、その才能が活かせる方向に向かっていないように見えるんだ。悲しいことだよ」
――では、現在良質なレゲエを産出する国というとどういったところが挙げられるのでしょう。
 「イングランド。日本にも良いレゲエのミュージシャンがいることは知ってるでしょ?ドイツにもGENTLEMAN(ジェントルマン)みたいな優れたアーティストがいる。イタリアやフランス、ポーランドにもね。今では世界中にコミュニティがある。そうなったのはBob Marleyの普遍的な良い歌詞のお陰だろうね。ジャマイカではどんどん衰退しているけれど、世界的に見たら、もしかすると今が一番レゲエが愛されている時代なのかもしれないな、とも思うよ」
――難しいですね。
 「そうだね。でも、メントの時代から、スカ、ロックステディ、レゲエ、ダンスホール、ダブ、今のダブステップに至るまで、それぞれブームが続くってことはないわけじゃない?そうやってパーツが換わっても、全く変化しない部分がある音楽っていうのはやっぱりすごいよ」
――レゲエの変革を見届けながら30年間進んできたあなたですが、レーベルを続けていて良かったことは?
 「う〜ん、何かひとつ思い出みたいな形で良かった、と思うことはないかな。30年間、良かったことは常にたくさんあって、それが全部繋がっている感じ。例えば“あのレコードが好き”って言ってもらえたり、パーティでみんなが楽しそうにしているのを見ることができたり。そういうこと全部。オカンに“ちゃんとした仕事に就け”って呆れられながら続けてきた甲斐があるってもんだよ(笑)。オカンはDEPECHE MODEのレコードが売れた時ですらそんな感じだったんだ(笑)。僕自身は特にお金持ちになったわけじゃないけどさ、みんなが敬意を払ってくれているのも、楽しんでくれているのも、いつも感じてるから。やっていて良かったのはそういうことだよ」
取材・文 / 久保田千史(2011年12月)
通訳 / Miho Haraguchi(thanks!)
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