名門マネジメント「elite」に所属し、10代の時分より数々のショウや撮影をこなしてきたトップ・モデルのひとり、
Diana Chiaki(ダイアナ・チアキ)。近年、ポジティヴ・パンク風味のガレージ・ロック・バンドTERROR FAMILIA(テロルファミリア)のシンガーやDJとして音楽活動を活発化させてきた彼女が、Powershovel Audioよりソロ名義での初オリジナル・フル・アルバム『First Album』をリリース。ハードなテクノを基調とした楽曲群ながら、彼女の“人間”に惹かれるパーソナルなムード溢れる作品となっています。泣く子も黙るベルリン重鎮
POLEことStefan Betke、RAMADANMANや
James BlakeでおなじみHessle Audioからのリリースで知られるポスト・ダブステッパーJoe、そしてOilworksが誇る鬼才
Bunと、曲者揃いの
リリース・パーティを9月24日に控える彼女に、お話を伺いました。
――アルバム聴かせていただいた最初の感想は"意外"だったんです。もちろん超偏見なんですけど、近年モデルが音楽に参入するのって、キレイめハウスの歌姫?みたいなイメージがちょっとあるじゃないですか。
「シャンシャン系ですか」
――そうそう。でもこのアルバムはすごくダークなテクノで。元々テクノはお好きだったんですか?
「う〜ん、アーティストについて詳しく知っているとかは全然ないんですけど、友達に連れられて聴きに行くのは好きでした。でも大好きっていう訳ではなかったと思います」
――それでもそういうものを作ってみようと思ったきっかけはなんだったんですか?
「私ロックは昔からすごく好きだったんですね。だからDJをやり始めた頃はバーみたいなところでロックをかけるようなDJをやっていて。1年弱くらい。その後〈
it girls〉っていう女の子のイベントにDJで誘われたことがあったんですけど、みんなテクノとかをかけるようなパーティで。じゃあ私もテクノかけなきゃって思ったんですけど、アーティストとかに詳しくないから、作ったほうが早いんじゃないかなと思って(笑)、作り始めたんです」
――GarageBandで始められたんですよね。

「そうそう。何かソフト買った方が良いのかなって思ってたら、私の髪の毛をやってくれてる方のアシスタントさんが、"GarageBandっていうのが元々入ってるよ"って教えてくれて」
――今もGarageBandを使われてるんですか?
「今もGarageBandです。Logicの音源を使いつつ、組み立てるのは今もGarageBandですね」
――ロックがお好きということでしたけど、ロックはどんなものがお好きなんですか?
――
David Bowie(デヴィッド・ボウイ)もお好きなんですよね。彼も電子音楽に傾倒した時期があったわけですけど、そういうところからの影響もあるでしょうか。
「う〜ん、あるのかな、どうなのかな?
RADIOHEAD(レディオヘッド)とかも好きだし、元々電子音は好きですね。80年代生まれですからね、ちっちゃい頃にディスコの映像なんかをテレビで観てるし、10代の頃にサイバー・トランスが流行ってたり(笑)。サイケデリック・トランスとか」
――そういうのも聴かれてたんですねえ。
「はい。パンクも大好きで聴いてたし、レゲエも好きだし。ロックはずっと好き。テクノはミニマルが一番好きですね。全然詳しくはないんだけど」
――
EINSTURZENDE NEUBAUTEN(アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン)もお好きだとか。『半分人間(Halber Mensch)』のDVDを買ってからずっと"Mensch"というバンドだと思っていらっしゃったんですよね(笑)?

「そうなんですよ(笑)。15、6の頃に、レコード屋さんで彼らの映像が流れてて、かっこいい!超タイプだ!って思ったんですよ。とりあえずDVD買って。音楽関連で初めて買ったDVDだったんですよ。とにかく見た目、ファッションとか髪型がすっごい好きで、曲もかっこよくて。でもノイバウテンて知らなかったから、この"Mensch"ってたちヤバい!って思ってて。雑誌のアンケートでも"お気に入りのバンド→Mensch"とか書いたりしてたんです(笑)。でも当然誰にも分かってもらえず(笑)。去年くらいにやっと、あのノイバウテンとこのDVDの人たちが一緒、っていうことを知ったんです(笑)。もっと色々音楽のこと知ってたら、曲の作り方も上手くなるのかな、とは思うんだけど……」
――どんなに音楽の事に詳しい人でも、曲を作るとなるとまた別なんじゃないですか?
「そうですね。何にも知らない子供でも、"この洋服かわいい"って選んだりできるじゃないですか。だからそこは自分に自信を与えるために、"何も知らなくても、良いか悪いかくらい分かるわ!"って言い聞かせたりはしました」
――今回のアルバムは通り一辺倒な感じという感じではなく、様々なBPM / スタイルの楽曲が収録されていますよね。そうやって少しずつ好きな音楽を幅広く聴いているという影響があるのでしょうか。
「そうなのかな。似てる曲ばかりじゃないアルバムにしたくて。色々集まってる感じにしたいなとは考えてました。アルバムにする予定で曲を作ってなかったから、コンセプトがまず無くて。"後付け"と言うのかな、好きなものを寄せ集めたみたいな感じになりましたね」

――これだけバラエティに富んでいると、DJで使うときに難しくないですか?
「使い難いですね〜。悩んでます(笑)」
――当初考えていたDJで使うための曲作り、というところからは変化してきたということなのでしょうか。
「そうですね。元々BPMがゆっくりな曲も好きだから、DJではあまりかけないけど、そういう曲も入れたくて。入れちゃえ、って(笑)」
――全体のバランスとしてはBPM早めの曲が多いですよね。
「割と早め。140とか、もうちょっと早いのもあるかな」
――ダブステップは基本140前後だし、時代は140ってことで、良かったんじゃないですか?
「そうなんだ!よかった。最後の最後まで、130とか、早くても133だったんだけど、マスタリングの時点で140くらいまで、4曲くらいかな、上げたくなって上げたんですよ」
――「Strange Orange」なんかはレゲエのテイストがありますよね。
「特にそうしようと思って作ったわけじゃなくて、たまたまそうなっちゃったんです。イメージしたのは、オレンジ色のキラキラ〜っとした感じだけ(笑)」
――そうなんですか?あの曲がアルバム中一番攻撃的だと思ったんですけど。
「へえー!えっ?ほかの曲と間違えてないですか?」
――間違えてないですよー。絶対その曲ですよ。
「へえ……。受け取り方は人によってきっと違うんですよね。たぶん自分で見てると分からないんですね」
――「Moss」が一番ダークな曲だと思ったんですけど、それも作り手的には全然違う?
「あれはね、森の中で、行くとヒヤッとするところあるじゃないですか。苔とか生えてて。屋久島みたいな。ちょろちょろって水が出てて。そういうのをイメージしました(笑)。若干気持ちが落ち込んでるときに作った曲ではありますけどね。機械的なテクノよりも、もうちょっと人間味とか、自然とか、そういう雰囲気のある曲が作りたくて。昔の人たちも自分で太鼓叩いて、ちょっとテクノっぽい曲でお祭りやったりしてたわけじゃないですか。そういった捉え方をしてもいいんじゃないかなって思うんです。電子音に関して。そういうことは考えて作りましたね」

――「Powwow」は正にそんな、トライバルな楽曲ですよね。同じPowershovel Audioからのリリースで言えば
Maayan Nidam(マーヤン・ニダム aka Miss Fitz)みたいな。
「あれはね、息抜きです。暗い曲が入り過ぎていたから(笑)」
――あの笛の音はどこかからのサンプリングですか?
「そうです。後から自分で吹けばよかったな〜って、若干引っかかってはいたんですけど……」
――今回、ご自分で実際に演奏されているパートはあるんですか?
「ギターの音と、鈴のキーホルダーや机を叩いたり。それから声ですね。あと、中に粒々が入ってて"しゃー"って音が出る楽器を買ったんですけど、それは全く変えて使ってます。自分でもどこに入れたか忘れちゃったんだけど(笑)」
――全体的にモダンなテクノなんですけど、最近のこもった音作りではない、90年代初頭を思わせる輪郭のはっきりとしたビートも印象的でした。
「そうですね、最近のテクノは音の角が丸いですよね」
――90年代を意識して制作されたとか?

「そういうことはないです。でも"beatport"を教えてもらって見たんですけど、使われている音が割と皆さん似てないですか?何でこの音にしなきゃいけないんだろう?っていう気持ちはありました。良い音だから皆使ってるのかもしれないんだけど。それに人と同じようにやっても追いつけないから、私は。知識もやってる年数も全然違うから、違うことをやらないとつまらないだろうな、と思って」
――パンキッシュですね。作りたいものに向かって進んで行くというよりも、浮かんだものをその場で音にしているようなアブストラクトな雰囲気もパンキッシュだと思いました。
「そうですね、漠然としてますね。よくあるのは、"こういう曲を作ろうかな"って超漠然と作り始めて、音を探してるうちに"この音イイな"と思ったら最初に作っていたのはもう止めちゃうんですよ。違うページを開いて、その気に入った音使って違う曲を作り出す、っていうのはよくやっちゃいます。だからその時その時で、みたいなのはありますね。何も知らないままに始めちゃってるから、ちゃんと目標を決めて作ったりしたいんですけどね、本当は。そのほうが楽しそうですよね?」
――う〜ん、どうなんでしょう……。でも、今回のような曲作りは今のDianaさんを直に反映しているんじゃないでしょうか。浮かんだものをすぐ書いたメモというか、スナップというか。それをまとめたもの、という印象があります。
「うん、テキトーって思われるかもしれないけど……」
――いやいや、間に設計図を挟んでいないからこそダイレクトにDianaさんに心の中を映し出してるんじゃないかと思って。モデルという華やかなイメージとは離れたダークなサウンドだけに、失礼かもしれないですけど、実はすごく内向的な性格なのかな、とか。
「そうですね……最近はそうでもないけど……。そういう部分はあります。ほかのモデルちゃんたちよりは内向的かもしれないですね。確かにハッピー系ではないです。友達から見たら全然意外じゃないとは思いますけど。華やかかあ……」
――もちろん、偏見交じりの安直なイメージですけどね。
「まあ、華やかな仕事ですよね。モデルは。お家に帰ったときのギャップとかはあるんじゃないですか?分からないけど(笑)」
――(笑)。音楽はお家で作られてるわけですもんね。ご自宅ではどんな感じなんですか?

「大抵1人遊びしてますね、ちっちゃい頃から。自分で自分を楽しませることは得意です」
――なるほど。じゃあ今回のアルバムはその延長線上と言っても良いかもしれませんね。
「かな。うん。自分ではお家で割と優雅に過ごしてるつもりなんですけどね(笑)。基本家にいるのが好き。モデルをやっているから、ハッピーな感じのパーティに呼ばれてDJをやることは多いけど、特にイベント事が好きなわけじゃないし、シャンパン飲んでワー!とか全然興味ないし。家でGarageBandやってるほうが楽しい(笑)」
――モデルって、誰もが得られる仕事ではないでしょうから多少浮世離れしたイメージがありますし、生活を想像するのが難しい職業です。モデルを職業としている、という環境が、曲作りに影響を与えているとは思いますか?個人的にはあまり関係ないように思ったんですけど。
「どうでしょうね。やってる雑誌なんかカテゴリーも色々だし、モデル全員が共通してるっていうわけじゃないとは思うんですけど、撮影以外やること無いじゃないですか、モデルって。ひたすら鏡見てるわけにもいかないし。半身浴をやったり、ジムに行ったりしてる子はもちろんいますけど、毎日それって……つまらなくないですか?と私は考えていて。"自分をきれいに"っていうのは女の子なら皆やってるし、モデルはそれに特別時間をかけたほうが良いのかもしれないけど、音楽とか趣味がある上で仕事に行くっていう方が私には楽しくて。モデルの仕事だけに日々備えるのではなく。だからモデルの仕事が音楽に影響を与えてるっていう事は無いですね。それっぽく作ろうなんて全然考えてないし」

――そうですね。すごくパーソナルで、音への愛情が伝わるアルバムだと思います。ただ、"モデルである"ということでフィルターがかかるというか、プロモーション的に見られることに対してどう考えてるのかな、と思って。
「そう見られてもいい。全然嫌じゃないですよ。それはもう、15歳からモデルをやっているから仕方ないですよ。単純に、モデルをやっててCDを出したというだけのことで、そういう、他の事は別に何にも考えてないです。どう思ってくれてもいいかな。モデルである以前に、普通に生きていれば心が動く瞬間ていうのは必ずあるわけで。考え込んだりとか、落ち込んだりとか。そういうのは音に出ちゃいますよね。それに、モデルだって色んな種類の子がたくさんいるんですよ。ネクラもヲタクも(笑)。喋らないから人間が出にくいし、テレビに出ているモデルのラグジュアリーなイメージが強過ぎるんだとは思いますけど。10代の頃から良い洋服着て、素晴らしいカメラマンに撮ってもらったりしてたら、やっぱり学校に行くだけでは学べないことを知ったり、色んな経験はすると思う。チヤホヤされるって事の先を考えたら、必然的にキラキラしてばかりではいられなくなるし(笑)」
――仕事として、すごくシビアですよね。
「大変な人はたくさんいると思うけど、私は楽しいですよ。幸せ。実にありがたい仕事だと思ってます。かわいい服を着て綺麗に写真を撮ってもらって」
――なるほど。それでは今後の予定を教えてください!
「今リリース・パーティに向けてどういう風にライヴをやるか色々考えているところです。皆どういう風にやってるんだろう??って思うんですよ……。自分で曲作ってDJもやってる人たちって。出来上がったものをCDに焼いてCDJでつなぐだけじゃつまらないじゃないですか。だからリリース・パーティではCDJも使わないかもしれないな。曲を分解して持って行って、その場で組み立てるというよりは、もっと別のものにしてしまうような感じかいいな、と思っていて。何しようかな、と模索中です」
取材・文 / 久保田千史(2011年9月)