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エンニオ・モリコーネが語る「ある天文学者の恋文」と映画音楽の“怖い”話

エンニオ・モリコーネ   2016/09/21掲載
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 『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』『マレーナ』の名匠、ジュゼッペ・トルナトーレ監督による『鑑定士と顔のない依頼人』以来となる新作「ある天文学者の恋文」が、日本でも9月22日(木・祝)より全国順次ロードショー。主演は『ミッション』『エム・バタフライ』『魅せられて』『ロリータ』エイドリアン・ライン版)の名優ジェレミー・アイアンズと、『007 慰めの報酬』でボンドガールに抜擢され、一躍注目を浴びたオルガ・キュリレンコ。天文学者エド・フィーラム教授(アイアンズ)と密かに愛を育んできた教え子エイミー・ライアン(キュリレンコ)が、唐突に聞かされたエドの訃報を受け入れられずにいる最中に届くエドからの愛らしくも切ない“恋文”。死後も存在だけが“観測”されているかの如く振舞うエドが遺した手紙やメールを、崩壊してもなお放った光を数光年先に届け続ける星に見立て、ともすれば理解を得られないかもしれない2人の関係を、トルナトーレ監督ならではのストーリーテリングで優しくミステリアスに描く作品です。
 本作の印象を清々しいものにしている大きな要素のひとつが、2人の行く末を見届けるように入り込む劇伴。作曲はもちろん、トルナトーレ作品には欠かせない存在であるエンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)。クエンティン・タランティーノ監督作品「ヘイトフル・ヘイト」で第88回〈アカデミー賞®〉“作曲賞”に輝いたモリコーネは今年、11月に米寿を迎えるのみならず、音作曲家・指揮者生活60周年のアニヴァーサリー・イヤー。これを記念したアルバム『モリコーネ 60』(Decca Records)のリリースやワールド・ツアーの開催も決定しているマエストロに、自身と映画音楽の関係について語っていただきました。
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©COPYRIGHT 2015 - PACO CINEMATOGRAFICA S.r.L.
――今回の映画では、観客同様、音楽も主人公たちの行く末を見守っているかのような印象を受けました。作曲にあたり、監督から何らかのオーダーがあったのでしょうか。
 「今回はトルトナーレから受け取った脚本を読み、“こういった音楽はどうだろうか”という提案をしました。そこから2人での話し合いが始まります。会話は非常に重要です。トルナトーレのように何年も一緒に仕事をしてきた間柄では、会話から得られるものがとでも多いのです。意見の相違があるにはあるのですが、それは毎回起こることです。2人で解決しながら作り上げてゆきます。特別難しいことはありませんでした」
――監督との会話の中では、どんなことが決められてゆくのでしょう。キーワードのようなものを設定する感じでしょうか。
 「キーワードのような、ひとつのことを決めるわけではありません。もう少し大きなコンセプトのようなものを監督との会話を通じて構築しながら、それに沿って作曲を進めていきます。最初の段階では、音楽の全容はわかりません。楽譜としてすべてが明確になるように推敲に推敲を重ねる過程で、自分が求めている音楽、頭の中での完成形が作られます」
「ある天文学者の恋文」予告編
――音楽単体の録音 / ミックスや、映画のサウンドトラックとしてのミックスの状態にも、モリコーネさんの意図が込められているように感じました。過去にサイケデリックな楽曲も多数手がけていらっしゃるので造詣は深いかと存じますが、普段からレコーディングをはじめとするテクニカルな部分にもタッチしていらっしゃるのでしょうか。
 「その質問はとても奇妙に感じられますね。というのも、私は全部やる主義だからです。作曲をしてからも、録音、ミックス、出来上がった映画に対する落とし込み方にも、私はすべて携わります」
――それは譜面を書くだけではないという点において、所謂シンガー・ソングライター / プレイヤー・コンポーザーのような感覚に近いですよね。ポップスの手法というか。
 「そうですね。その通りだと思います。そういった作り方であることが多いですね。必要な楽器の演奏家は、すべて私が直接指名して、演奏していただきますし」
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――モリコーネさんのおっしゃる“純粋音楽”のように、映画音楽に関してもモリコーネさんのパーソナルが反映されていると考えても良いのでしょうか。
 「まず私がすべきなのは、“楽譜を書くこと”だと思うんです。作曲すること。私は与えられた時間を、すべて楽譜で表現することに費やします。それは何故かと言えば、演奏家、ないしは聴き手にすべてを伝えるためです。映画音楽に関して言うと、最も重要なのは、その映画作品に適切な音楽を落とし込むことです。たしかに監督から影響を受けることもありますし、監督の意見を取り入れることもあります。ただし、その音楽が、私のスタイルを持つ、絶対的に私の音楽でなければならないと考えています。この点は譲りません。私は第一に作曲家です」
――モリコーネさんの作品には、クラシカルやジャズのみならず、様々な音楽の要素が含まれていますよね。今回の映画でも、湖畔のシーンとエイミーのスタント・シーンでは全く異なる表情の音楽を聴くことができます。普段モリコーネさんはリスナーとして、どのように音楽と接しているのでしょうか。
 「好きな曲というものはもちろんはいくつかあります。ただし映画音楽に関して言えば、普段“聴く”ことは絶対にありません。身震いがするほど恐ろしいことです。仮に映画の中の1曲を非常に気に入ってしまったとします。それが頭に張り付いてしまい、“自分が他の映画の音楽を作っているときに、その曲を取り入れてしまうかもしれない”と考えるとぞっとするのです。そんなわけで、映画館では極力音楽を意識しないようにしています。音楽を聴かないようにするばかりか、いっそ映画館に行かないようにしているほどです」
取材・文 / 久保田千史(2016年9月)
「ある天文学者の恋文」 gaga.ne.jp/tenmongakusha
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2016年9月22日(木・祝)
TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー


[監督]
ジュゼッペ・トルナトーレ
『ニュー・シネマ・パラダイス』 『鑑定士と顔のない依頼人』

[音楽]
エンニオ・モリコーネ
『鑑定士と顔のない依頼人』 『ヘイトフルエイト』

[出演]
ジェレミー・アイアンズ 『リスボンに誘われて』
オルガ・キュリレンコ 『007 慰めの報酬』

[あらすじ]
著名な天文学者エドと彼の教え子エイミーは、皆には秘密の恋を謳歌していた。しかし、突然エイミーの元に届いたエドの訃報。現実を受け入れられないエイミーだが、彼女の元にはその後もエドからの優しさとユーモアにあふれた手紙やメールや贈り物が届き続ける。エドの遺した謎を解き明かそうと、エイミーは彼が暮らしていたスコットランド・エディンバラや、かつて2人で時間を過ごしたイタリア・サンジュリオ島を訪ね、そこで彼女が誰にも言えずに封印してきた過去を、エドが密かに調べていたことを知るが――。
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配給: ギャガ
後援: イタリア大使館  
原題: Correspondence / イタリア映画 / 英語 / 122分 / カラー / シネスコ / 5.1chデジタル / 字幕翻訳 松浦美奈

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