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interview“英語でしか言えない言葉、日本語でしか言えない言葉があるってすごいこと”Kylee、初のフル・アルバム『17』をリリース

Kylee / 2011/11/25掲載
“英語でしか言えない言葉、日本語でしか言えない言葉があるってすごいこと”Kylee、初のフル・アルバム『17』をリリース
伸びやかな歌声とエモーショナルなギターロックをベースにした楽曲群で颯爽と登場、00sエモっ子たちのハートを鷲掴みにしたUSアリゾナ在住のシンガー、Kylee(カイリー)。『亡念のザムド』『機動戦士ガンダムUC』といったアニメ作品の主題歌や「ニッセン」CMソングなどを通じ、お茶の間での知名度も獲得、“ポップ・スター”としての輝きを増してきた彼女が、集大成となる1stフル・アルバム『17』を11月23日にリリース。日米ダブルならではの感性が活きる、日本を賑わすアイドルたちとも、セレブ化するアメリカン・アイドルたちとも異なる、“ティーンによる、ティーンのための”を地で行く等身大の魅力を持ったポップ作品に仕上がっています。現在の自身の年齢をタイトルに冠する同作について、時折混じる関西弁がキュートな日本語でKyleeが語ってくれました。
――Kylee、ラーメン好きなんですよね。アメリカでも、ラーメンて身近にあるものなんですか?
 「ラーメン大好きです(笑)。小さい頃はお母さんの地元の滋賀と、アメリカを行ったり来たりしていて。小学校、中学校は夏休みの間だけ滋賀の学校に通ってたこともあったんです。だから滋賀で結構有名な“来来亭”っていうラーメン屋さんにはよく行きますね。家族のお祝いごとがあると食べに行ったりもします(笑)」
――お祝いでラーメン食べに行くんだ(笑)。じゃあラーメンは日本に来たときしか食べられないんですか?
 「アメリカでも食べられるんですけど、おいしいラーメンとか日本食はカリフォルニアやニューヨークみたいなところに行かないと無くて。アリゾナは日本食のお店もあるにはあるんだけど、ビミョーな感じ……(笑)。メキシコ料理の方がおいしいです」
『17』初回限定盤
――普段食べるのもメキシカンなものが多いんでしょうか。
 「はい。でもお母さんがほとんど家で作ってくれてるから、一番食べることが多いのは和食なんです」
――じゃあ昔から日本の味には馴染みがあったんですね。日本で作品を出して来日する機会が増えてから、新しく発見したラーメンは?
 「とんこつ!」
『17』通常盤
――とんこつラーメン食べたことなかったんですか?
 「ラーメンって言ったら滋賀で食べる醤油味しか知らなくて。東京に来るようになってから初めて知りました。東京には“来来亭”がなかったから……」(※実は東京にも練馬と町田の2店舗があるようです。東京のファンは要チェック!)
――“来来亭”本当に好きなんですね(笑)。東京にはあまり来たこと無かったんですか?
 「はい。ディズニーランドに行ったことがあるくらいでした」
――滋賀やアリゾナと東京って、随分違いますよね。
 「東京はアメリカで言うとNYとかに似てるかなって思います。私が住んでいるアリゾナと滋賀は広くて、もっとナチュラルっぽい感じですね」
――そういうところから東京に来ると、疲れませんか?
 「レコーディングとか、ライヴとか、色んな思い出を作ってきたから、東京って考えると“音楽”ってイメージが強くて楽しいです。滋賀で作ってきた思い出を考えると、家族に会いたくなって滋賀に行きたくなったりもしますけど……」
――歌を始めた頃、こうして東京まで来てライヴやレコーディングをするなんて、想像してた?
 「全然想像してなかったです。“歌手”っていうお仕事は、なんだか遠いイメージで。目指しても難しいからなれないのかな?って思ってました。でもオーディションを受け始めたとき、お母さんに“Don’t keep your hopes up”、簡単に叶うとか、絶対できるとか思い過ぎちゃうとダメだよって言われたのを今でも覚えています」
――歌を始めたのは、歌手になりたかったから?それとも歌が好きだから歌手になりたかったんですか?
 「もちろん歌うのが好きだからです!楽しいから。小さい頃からどこに行っても歌いまくってました(笑)。テレビを観るときはその番組のテーマソングを歌いながら観たり、車の中でも通ったところに山や木あったら“♪In the mountains, in the trees”とか全然意味がないこと歌ったり(笑)。昔撮ったホームビデオを観るといつも歌ってて、自分で観ても“うるさいな〜”って思います(笑)。すごく元気でした」
――今も元気でしょ?
 「もちろん元気です!でも子供の頃の方がもっともっと元気だったなぁと思います。子供の頃って人の迷惑なんて気にしないですから。今観ると“わたしはわたし”みたいな部分が面白くて。でも、本当に歌が好きだったんだなと思って嬉しくなります」
――今はやっぱり、人が聴いてるってことをちゃんと意識してるってことですよね。
 「はい。前は人が聴いてどう思うかは別で、歌をただ自分で楽しんでいただけでした。歌手になってからは、自分だけじゃなくて聴いてくれている人たちを元気にできたり、一緒に楽しむ方がもっと楽しいなって、だんだん思うようになってきました。アメリカ人でも日本人でも、どんなに違う世界に育っていても、感じる気持ちはみんな同じ。人間は人間だから」
――歌の上手さを聴かせようとするような声の歌手ってたくさんいると思うんですけど、Kyleeの声は自分で楽しんでいるのも、楽しんでもらおうっていう気持ちも伝わる声だと思います。ナチュラルで。Kylee自身は自分の“声”についてどう思っていますか?
 「小さい頃からChristina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)、Avril Lavigne(アヴリル・ラヴィーン)とか、宇多田ヒカルさん、YUIさんとか、色んなアーティストを聴いてきたけど、みんなジャンルでハマったというより、やっぱり声にハマって。オリジナルな声があって、歌ってるときの強さっていうか、聴いててグッとくる感じの声が好きで。あたしもそういう、どんなジャンルを歌っていても聴いてすぐ分かるような声になりたいって思ってます。でも上手く歌うことも大切ですよね。難しい曲を上手く歌うようにがんばるのは自分でも楽しいし、聴いてる方も楽しいんじゃないかなって思います。みんなにも、カラオケで歌うときとか、キーの高さ、声のレベル、そういう歌の中でのチャレンジを面白いって思って欲しいです。でもやっぱり一番大切なのは、みんなの気持ちを元気にできるメッセージを発信すること。がんばってる歌詞だと歌も上手くなっちゃうっていうか(笑)。難しくてもがんばって練習すれば、上手くなって気持ちよく歌えるし、もっともっと楽しんでもらえると思います。気持ちよく歌うのが好きだな」
――今までの歌で、一番難しかったのは?
 「う〜ん。2つあるかな。“Everlasting”“キミがいるから”。“キミがいるから”はリリースしたのが15歳のときなんですけど、10代のときって声が変わっていくから、キーが高くて最初は乗り越えるのが難しかったです。“Everlasting”は、ファルセットにならないように、チェストヴォイスで長く持たせるのが難しいです。ちゃんと練習しないと歌えない2曲ですね」
――どっちの曲も、ライヴでもばっちり歌えてましたよね。以前の来日時よりも声に張りが出てたし。
「Everlasting」
 「ありがとうございます!」
――難しい曲、楽しい曲、今まで歌ってきた曲がこうして1枚のアルバムになったのを見て、どんな感じ?
 「すごく嬉しいです。10代の色んな気持ちが詰まったアルバムで、アーティストとしてみんなに届けたい、共感してもらえたり元気になれるメッセージやテーマも入ってるし。自分から見ても、“成長”を感じます。最初はデビューするのがすごいことだったのに、もうアルバムまで出来て。もっともっとがんばりたいと思っていますし、このアルバムをファースト・ステップにしたこれからの夢がどんどん広がって、自分がどこまでがんばれるか試してみたい気持ちになってきています」
「キミがいるから」
――今までもすごくがんばってきたんだと思うけど、まだがんばるんですね。
 「ここまで来たから、どこまでがんばれるか自分でも知りたいです。歌が上手い人がたくさんいる世界ですからね」
――でもKyleeは“歌手でありたい”っていうより“歌が好き”っていう気持ちが強いから、大丈夫なんじゃない?
 「本当ですか(笑)!? 嬉しいです!でも歌うだけじゃなくて、曲を作ったり、詞を書いたり、楽器を弾いたり、音楽にはたくさんの手段やプロセスがあるので、もっともっとがんばっていきたいです」
――今回のアルバムでは自分でギターを弾いてる曲(「Yours Truly」)があるんですよね。
 「はい。この曲は友達に“ごめんなさい”って気持ちを込めて作った曲で、最初は本当にレコーディングすると思ってなかったんです(笑)。1stアルバムに、自分で作詞も作曲もした、アーティストとしての1stステップ的な曲を入れることができてすごく嬉しい!」
――アルバムに入るヴァージョンはその友達に聴かせた?
 「はい。聴かせました。彼もすごく感動して、喜んでくれました。この曲が、初めて全部自分で完成させることが出来た曲になりました。今までコーラスだけとかヴァースだけとか、部分的に作った曲はいっぱいあるんですけど……。この曲が自然にできたのは、本当に相手に聞かせたいメッセージがあったからだと思います。これまでいつも完成出来なかったのはたぶん、いつも自分のことばっかり考えてたからかも。メロディとか、ライミングとか、いつも悩むんですけど、この曲は本当にフワッとナチュラルに来て、ワー!できた!っていう感じでした(笑)。このアルバムを通して、歌だけじゃなくて、自分が考えてる言葉とか、作りたい音楽をちょっとずつ見てもらえることができて嬉しいです。これからも次のアルバムのために、もっと勉強したいです!」
――Kyleeの歌って、歌詞がすごく大事だと思うんですけど、普段は英語で考えて英語を話してるでしょう?歌を歌うときは英語で考えてるの?日本語で考えてるの?
 「今の状態では、英語と日本語だと英語の割合が多いです。やっぱりアメリカの学校に行ってるし、友達もみんな英語ですから。でも同じくらいの割合になれるようにがんばっていきたいです。やっぱりハーフだから、半分半分にしたい!最近は例えば、テーブルにぶつかったりしたときに、“Ow!”じゃなくて、“痛い!”って言ったり(笑)。頭の中で両方の言葉で考えちゃう。前は英語の部分が多くて、夢とかも全部英語だったんですけど、いつも日本語と英語どっちも使って歌っているうちに、両方で考えることができるようになってきています」
――前に日本に来たときよりも、日本語ずいぶん上手になりましたよね。
 「あはっ(笑)」
――日本語の歌詞はやっぱり日本語で考えないと伝わらないって思う?
 「はい。日本語で考えられるようにならないと、なかなか日本語の歌詞は書けないと思います。東京に来るようになったばかりのころは、周りの人たちと日本語で喋るとき、英語みたいにナチュラルに言葉が出なくて“これってどう言ったら伝わるんだろう”って頭の中で英語で考えて。苛立ってたっていうか、困ってたっていうか……。日本語でもナチュラルに考えたり話せたりできるようになりたいなっていつも思ってました」
――最近、“2つ以上の立場で物事を考えられる脳を持っている人は得意分野で伸びる”っていう研究結果があるんだって。
 「すごい。やったー!」
――ライヴのとき、“半分アメリカ人、半分日本人のあたしがいる”ってMCで言ってましたよね。
 「はい。アメリカ人が日本で、逆に日本人がアメリカで、どんなに長く住んでいても、それぞれ分かり辛いことがあるんじゃないかなって思います。中には “分からないものはどうでもいい”みたいな人もいるんですけど、あたしは2つのカルチャーが両方頭の中にあるから共感し易いし、すごいラッキーだなって思います」
――どっちのことも考えられるのがKyleeの魅力のひとつで、両方の良いところが歌にも出てると思うんですけど、自分でどう思う?
 「喋っている言葉が何語でも、そのカルチャーに入り込まないと分からないことがいっぱいあるから、真ん中にいられることができてなんかすごいって思います。アメリカと日本でもいろいろ違うところがあって、それぞれのカルチャーってすごい大切ですし。そういうのは話してるときにすごく感じるんです。“話す”ことって本当に大切で、話してはじめて分かるっていうか。英語でしか言えないことも、日本語でしか言えない言葉もたくさんあるんですよね。例えば、日本に来たアメリカのバンドメンバーに“ごちそうさまでした”とか“おつかれさまでした”ってどういう意味?って訊かれたときに、そういう言葉は英語に無いから、どうやったら説明できるんだろう?って思うのと同時に、あたしは“おつかれさまでした”の意味をどうやって自分で理解してるんだろう?って英語で考えちゃうんです(笑)。そういうときに、やっぱり日本語でしか考えられない、英語では伝えられない部分もあるんだって思うんですね。それってすごいことだと思います」
――なるほど。アメリカの友達に、日本のことを教えたりすることってありますか?
 「はい。アメリカの友達に、日本の写真とか見せると“What is That?”とか、“Weird...”みたいな感じになることがあって、説明するのが難しいんです(笑)。でも逆に、日本の人にアメリカのことを“あれはフツーなの?”とか“それは大丈夫なの?”とか質問されるときもあるし。その真ん中にいることが面白くって(笑)。両方見てると、人間として“普通”、英語で言えば“Normal”っていうものがどんどん小さくなっていくんです。カルチャーの違いを受け入れる力がどんどん広がって、他のカルチャーを見るときに、自分の尺度ですぐ“Judging”することがなくなってきていると思います。」
――そうなってくると、日本とアメリカだけじゃなくて、もっと色んな国で歌ってみたくなりませんか?
 「そうですね!」
――じゃあ、今一番の目標を教えてください!
 「アーティストとして、もっと自分で作詞/作曲ができるようになりたいです。あと音楽をメインに考えられる環境を作ることかな。いつも学校と音楽、半分半分でやってきた感じがするから。両方とも大切なんですけど、音楽をもっともっとがんばれる空気にしたいって思います」
――もっと小さい目標は?
 「……あんこ食べられるようになりたいです(笑)。あんこ嫌いなんです(泣)。おもちが大好きなんですけど、お菓子にはいつもあんこが入ってて邪魔なんです(笑)。なんでやねん!みたいな(笑)。誰があんこを作り始めたのか……。でも食べられるようになったら、もっと楽しみも広がると思うんです(笑)」


取材・文 / 久保田千史(2011年10月)
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