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interviewSUTEKH、音作りへの愛を語る

スーテック / 2010/06/03掲載
SUTEKH、音作りへの愛を語る
clicks & cuts
 クリック・テクノ / ハウスの先駆者として、Kit ClaytonとのユニットPIGEON FUNKのメンバーとして、その名を知られるサンフランシスコ在住のアーティスト、SUTEKH(スーテック)ことSeth Horvitz。“クリック”の語源となったMille Plateauxのコンピレーション・シリーズ『Clicks & Cuts』 の初登場からはや10年。オリジネイターは今何を考え、何を生み出そうとしているのでしょうか。5月3日東京PHASEWORKS presents〈PHASE13〉、5月4日大阪〈テクノ喫茶special〉とイベント出演のため来日したSUTEKHが語ります。通訳は、現在彼と共同で作品を制作中、自身も間もなくニュー・アルバム『Artificial Insemination』をリリースのミラクル火星人アーティスト、Coppe'氏に担当していただきました(ウルトラ・サンクス!)。


Hands On Feet
──あなたのやっていることをご自身で読者に説明するとなると、どんな感じになるでしょう。
 「まず一番大事なのは、僕が作っている音を、ご自身の耳でとにかく聴いてみて欲しいってこと。色々とジャンル分けされることが多いけど、そういうのは大嫌いなんだ。でも何かしらカテゴライズした方が便利なのは分かるからね、そうなると、僕が嫌じゃないもので一番しっくりくる言葉は“エクスペリメンタル”かな。SUTEKHという名前を“テクノ”とか“ダンス・ミュージック”という言葉に紐付けて覚えてくれている人が多いだろうけどね。確かにそれは僕のキャリアのルーツだけど、小さい“テクノ”の枠には収まっていたくないんだ」
──先日のライヴはビートが効いた“テクノ”寄りのセットだったと感じました。ノンビートの作品も多数作られていると思いますが、シチュエーションによって変えているんですか?
 「そうお? 先日と同じセットをミュンヘンのテクノがかかるクラブでプレイしたら、たぶんお客さんはエクスペリメンタル過ぎて困っちゃったと思うよ(笑)。でもビートが効いているという意味ではそうかもね。ああいう場所、時間帯でライヴをするときは、そうじゃないとみんな寝ちゃうから(笑)。ノンビートのものをやるのは、クラブみたいな雰囲気じゃない場所のときだね。人がたくさん集まる場所でお酒を呑みながらわいわいやるのも、静かにじっくり耳を傾けるのも、どっちも大好きなんだ。でも歳を取って “じっくり”シチュエーションの方が好きになってきたかもね(笑)」
Two Vireos──(笑)。歳を取ったといえば、Mille Plateauxのコンピレーション『Clicks & Cuts』が出てから今年でちょうど10年なんですよ。あのコンピレーションであなたの名前を知った方はたくさんいらっしゃると思います。収録されていたアーティストは皆それぞれ音楽性が拡散してきていますが、あなた自身はどのように変化してきたと感じていますか?
 「そうだね、10年経ってるね。たぶん、多様性に富んだものになってきてるんじゃないかな。1つのカテゴリーに対して、もうこのくらいでいいんじゃなかな……って思ってしまうタイミングが早いんだ。テクノのアーティストには同じような作品をいくつも出す人がいるけど、僕はそういうのには耐えられないから。毎回違うフレイヴァのものを作ってる。それぞれ聴いたときに驚きがあって、心に残るような作品を作りたいんだ。ただひたすらマーケティングに沿った音楽を作るなんてことは、僕にとっては自殺に等しいからね(笑)。“マーケティング”って言葉を聞いただけで具合が悪くなるよ(笑)。僕のやっていることはアートの世界のものであって、お金のためのものじゃないから」
──それはあなたの主催するレーベル“CONTEXT FREE MEDIA”のコンセプトでもあるんですよね。
 「そう。レーベルの運営ってすごく大変で、リリースの間がずいぶん開いてしまっているけど、そういう風に続けていけたらいいなって思ってるよ」
Notes From Doctor Island──でも、音楽で収入が得られるに越したことはないですよね?例えば、CM音楽の制作などでクールな作品を実現している方々もいらっしゃいます。そういったものに興味はありますか?
 「う〜ん、基本的にはやりたくない。というかできない。既に完成している僕の作品を、何かのCMで使用したいっていう話なら、まずOKは出せないな。僕はその“何か”のために曲を作ったわけじゃないから。“こういう何かのために作ってください”っていうオファーなら、“何か”について考える余地があるから可能ではあると思うけど……100%の力を注ぐことは不可能だよ。やっぱり、僕自身から出る音楽を聴いてほしいからね。ライヴをやるにも、ブッキング・エージェントと仕事をしたことはないんだ。これからもないと思う。今回の来日もそうだったんだけど、お金のためじゃなく、僕の音楽を聴いて、好きだと思って連絡をくれるような人のためにライヴをしに行きたいんだ」



SUTEKH_@PHASE
SUTEKH @PHASE



Born Again──そうやって生活していくのは大変なことですよね?
 「うん、大変。食べて、音を作って。余計なものは買いたいとも思わないし。スタジオにあるのも必要な機材だけだしね。質素な毎日だよ(笑)」
──すいません、最近リリースが少ないのはマーケティングに対するあなたのスタンスと関係のあることなのかと思ったもので……。ここ数年はSoul Jazz recordsからの12”シリーズと、Leafからのリミックス集『Born Again』くらいですよね。
 「そうだっけ、リリース少なかったかなあ。あんまりちゃんと覚えていないんだ(笑)。たしかに、ここのところはリミックス・ワークが多かったね。フランスのAUFGANG(アウフガング)っていうバンド(Francesco Tristano在籍)や、スイスのCreaked recordsから出てるOyっていうアーティストのリミックスなんかをやったよ。Oyはかなりおすすめ。聴いてみたほうがいいよ! 僕自身も9月にCreaked recordsからアルバムを出す予定なんだ。あとは音楽をもっと深く学ぶために大学に通ったり、ヤマハのディスクラビア(TM)のプログラミングにハマったりしていたんだ(笑)。今年の4月にはディスクラビア(TM)を使ったコンサートもやったんだよ。(と言ってそのときの映像を見せてくれるSUTEKH。かなり楽しそう)ステージにはディスクラビア(TM)が1台置いてあるだけ。後ろのスクリーンにはその鍵盤の動きが映しだされるようになってるんだ」
Aufgang──プレイヤーピアノ(自動ピアノ)みたいな感じですか? ナンカロウ(Nancarrow, Conlon)のような……。
 「そうだね、僕のはそれに映像とコンセプトが付いてる感じ。すごくシンプルなシステムだよ。このピースのコンセプトは、“時間の意識の形”なんだけど……トップ・キーからボトムまで下がっていくフレーズを、テンポを倍にしながら16回繰り返すんだ。そしてこれがスクリーンに映る鍵盤を追う目の動きと譜面の関係……つまり目と耳の関わりを示した図ね(と言って見せてくれる。相当楽しそう)。同じカーブがたくさん出てくるでしょ?」
──フラクタルですね。
 「うん。このカーブは音からのみ得られているものであって、それって全くイリュージョンだと思うんだ。花が開く瞬間とか……自然界にあるものと同じ美しさを感じるよ。とまあ、最近はこういうことをやっているわけ。SUTEKHっぽくないよね(笑)。新SUTEKHだよ(笑)。ディスクラビア(TM)を使ったコンサートは日本でもやってみたいよ」
──(笑)。では、これからのSUTEKHはヴィジュアル面も重要になってきそうですね。
 「かもね。色々なタイプの音楽をやってきたけど、今また原点に戻った “超テクノ”な作品を考えてるんだ(笑)。でもそれにも映像は絶対付けたいって思ってる。完璧なサウンドシステムとスクリーン、スペースがないと不可能な構想なんだけど……音は“超テクノ”っていう(笑)。実現したらみんな絶対びっくりすると思うな(笑)」
──コンセプチュアルなものがお好きなんですね。
 「うん。でもコンセプトの説明ばかりが先行してしまうのは良くないよね。大事なのは僕の場合やっぱり音そのものの驚きだから。オーディエンスの反応で一番好きなのは、“なんじゃこりゃ”って顔なんだ(笑)」
Music Grows On Trees──Carsten Ncolaialva noto)やChristian Fennesz坂本龍一とのコラボレートで知られた存在となりましたが、あなたと同じ『Clicks & Cuts』世代のアーティストは、現代音楽寄りのハイアートというか、所謂“テクノ”と違っていまだにアカデミックで難解な印象を持たれているような気がします。 そんな皆様に、楽しみ方のコツを教えてください!
 「坂本龍一の“CHAIN - MUSIC”(坂本龍一がイラク戦争に抗議するためにスタートさせたプロジェクト)には僕も参加したよ。友達のo.lammから受け取って、AGFに渡したんだ。う〜ん、どのあたりが難解なのか分からないし、僕自身は“難しいものを作るぞ!”って意気込んでるわけでもないから何とも言えないけど……自分の中で消化できない、新しいものに接すると不安になっちゃうってことなのかな。まずはやっぱり聴いてみて、その刺激から、音から何かを感じてほしい。分からないことがあったら何でも質問してほしいよ」
取材・文/久保田千史(2010年5月)
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