マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)率いるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(以下、RCO)が只今来日中! 11月15日に行なわれた記者会見の模様をレポートします。
RCOにとっては15回目の来日となる今回のツアー(2004年から首席指揮者を務めるヤンソンスにとって同団との来日は4度目)。東京・京都・愛知・神奈川での計6回のコンサートでは、
マーラーの交響曲第3番をはじめ、
ギル・シャハムをソリストに迎えた
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、
ブラームスの交響曲第4番、
チャイコフスキーの交響曲第4番など、多彩なプログラムが用意されています。
昨年は、もう一つの手兵であるバイエルン放送響と来日をしたヤンソンス。日本をこよなく愛するマエストロは、次のように語っています。
「私はこれまでに何度も日本を訪れています。昨年は一人の子どもを連れて、今年はもう一人の子どもを連れてやって来たという気持ち。もう何度も申し上げているのですが、とても大切なことなので敢えて言います。私が日本をこれほどまでに愛する理由、それはモラルの高さ、人々の働く姿勢、真面目さにあります。多くの人からそれを感じ、そして世界の人々にそのことを伝えていきたいと思うのです。
日本に来ることは大きな喜びであると同時に、責任も伴います。RCOは定期的に日本を訪れています。だからこそ、来るたびに何か新しいものを付け加えなければなりません。ですから今回も、バラエティ豊かなプログラムを考えて抜いて持ってきました」 マーラーの伝統を受け継ぐオーケストラとして名高いRCO、今年はアニヴァーサリー・イヤーでもあり、会見ではマーラーに話題が集中しました。今回のツアーで演奏される交響曲第3番にかけるヤンソンスの意気込みも並々ならぬものです。
「RCOとマーラーとの関係は皆さんもよくご存じのことと思います。ウィレム・メンゲルベルクとマーラーが特別な信頼関係にあったことから、RCOにとってマーラーは特別な存在となりました。マーラー自身も、ウィーンよりも多くコンセルトヘボウで自作の指揮をしています。
今回日本ツアーに携えてきた交響曲第3番は、大作ばかりのマーラーの交響曲の中でも“もっとも偉大な作品”と言うことができるでしょう。第3番では、大きな質問が提示されています。それは世界中の人類すべてに問われる大きな質問です。まったくの無から始まった世界における神との対話、人生そのものに対する問いかけがこの作品の中にはあるのです。そういった意味でも、この作品はあらゆる人々に訴えかける力があると思っています」 指揮者にとって、マーラーの作品を演奏することには特別な意味があるとヤンソンスは語ります。
「指揮者にとって、複雑で大きな意味を持つマーラーの作品を演奏すること自体が大きなイベントです。RCOとマーラーとの関係を考えると、それはよりいっそう大きなものになります。
一つのオーケストラと作曲家が深い関係にあった場合――たとえばベルリン・フィルとベートーヴェンなど――、縁の深いオーケストラが存在したら、他のオーケストラはその作曲家の作品をより上手に演奏してはいけないものでしょうか? 答えはもちろんNOです。作曲家との縁は、オーケストラの演奏にとって必ずしも重要なファクターとはなり得ません。一概には言えないものがあります。
ただし、ここがミステリーなのですが、RCOとマーラーを演奏すると“あぁ、彼らの音楽なんだ”とすごく感じるのです。彼らの血の中、身体の中にマーラーがいる。ここまで言えば、今回の公演が特別なものであることがお分かりいただけるでしょう」 ライヴ録音でのマーラーの交響曲シリーズも進行中のRCO。アルバムはすべてRCOの自主レーベル(RCO LVE)から発売されています。今回の来日に合わせて、最新盤の『マーラー:交響曲第2番』がアジア先行でリリースされました。DVDも付いて、ヤンソンスの指揮姿を観ることもできます。
アニヴァーサリー・イヤーに、マーラーの血を受け継ぐ名門オーケストラの演奏を堪能する絶好のチャンスです!
ヤンソンスの右隣はRCO事務局長のヤン・ラース