「サマーソニック08」でのライヴから半年ぶり。第51回グラミー賞受賞後初のライヴという絶好のタイミングで行なわれている
コールドプレイ、待望の来日公演。その初日となるさいたまスーパーアリーナでの公演(11日)を最速レポート!
会場となるさいたまスーパーアリーナには、デビュー当時からのファンやUKロック・ファンはもちろん、かなりの数の女性リスナー、さまざまな国の人々(あらゆる言語が客席では飛び交っていました)が大集合。その幅広い客層からは、コールドプレイがあらゆるジャンルのリスナーを虜にし、ファンに取り込んだことを物語っているよう。
開演時間となる17時に、オープニング・アクトを飾るエレクトロニカ系アーティスト、Jon Hopkins featuring Davide Rossiのステージがスタート。ラップトップPCやエフェクターなどを駆使するJon HopkinsとヴァイオリンのDavide Rossiの2人編成によるライヴは、スクリーンにオリジナルのアニメ映像を映し出してのライヴ。シュールかつキッチュなアニメーションには、日本のイメージを用いた映像も。フィルムを用いたと思われる独特な質感のアニメ映像が、静かに漂うエレクトロニカの音と絡むことで会場を異空間の世界へ誘っていました。
約30分間のオープニング・アクトの後、ヒップホップなどが会場にはSEとして流れ、期待感は高まるばかり。会場のボルテージも高まった18時過ぎ、
ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」が会場に荘厳に鳴り響きはじめると、会場では曲にあわせて手拍子が起こり始める。そして、曲が終わると同時に客電が落ち、ステージ後ろにはアルバム・ジャケットに用いられたドラクロワの絵が一瞬にして登場。大歓声に包まれる中、ステージには花火を手にしたメンバーが現れ、ついに日本公演がスタート!「天然色の人生」から始まったライヴは「ヴァイオレット・ヒル」へと続き、その曲の流れからサマソニの感動が一瞬にして蘇った人も多いのでは?
それに続く3曲目からの流れがとにかくすごいの一言。ベスト・オブ・コールドプレイとでも言うべき、一撃必殺のキラー・チューンのオンパレード。悶絶必死のセット・リストに興奮せずにはいられないファンの大合唱が次々と生まれ、早くも会場は興奮のるつぼに。
グラミー賞についてのMCが挟まれると温かい拍手と大歓声に包まれ、多くのファンがフェイヴァリット・ソングとして挙げる「イエロー」に突入。アリーナ全体で無数の風船が宙を舞い、割れると紙吹雪が舞うという演出が施された「イエロー」でも、もちろん会場はフルコーラスで大合唱。本編最後を飾ってもおかしくないほどハッピーかつ感動的な展開に、ライヴ前半でこれだけのものを見せられたら、この先はいったいどうなるんだろうと思ってしまうほど。
その後は、ジャズマスターの轟音サウンドが鳴り響く「Chinese sleep chant」で、ギター・バンドとしての一面もしっかりと浮かび上がらせ、壮大でメランコリックな音楽を奏でるだけではないことをしっかりと証明。最後のコーラス・パートをオーディエンスに歌わせた名曲「フィックス・ユー」は、その大合唱を聞いたクリスが「Incredible! Fantastic!」と声をあげるほど。CDとは違う新たなアレンジで披露された「ゴッド・プット・ア・スマイル・アポン・ユア・フェイス」や「ザ・ハーデスト・パート」では、新鮮な驚きと感動を生み出していきました。
そして、ライヴ中盤、ついにグラミー賞を受賞したアンセム「美しき生命」が登場! 前奏が鳴り響くと同時に会場の盛り上がりは頂点に達し、クリスの言葉にオーディエンスはすばやく反応し大合唱。この日一番の盛り上がりを見せたと言っても過言ではないはず。曲の最後でステージ上に倒れこんだクリスが、オーディエンスのコーラスで立ち上がり、そのまま次の曲へと進むという流れも、サービス精神旺盛な彼らならでは。
そのサービス精神はそれだけにとどまらず、今度はアリーナ後方に用意されたステージへと移動して、アコースティック・セットを展開。サマソニで行なわれたこの演出を再現してくれたことにファンは大喜び。このセットではドラムのウィルがヴォーカルを務めるなど、遊び心に満ち溢れた2曲を披露。
「美しき生命」のリミックスが会場に流れるなか、ステージ上にメンバーがあらためて登場し「ポリティック」を披露。静と動のコントラストが映えるロック色強めのこの楽曲が終わるやいなや、スクリーンには桜の映像が映し出される。すると「ラヴァーズ・イン・ジャパン」の前奏が鳴り響き、上空からたくさんの蝶々がひらひらと宙を舞い、アリーナ全体を覆いはじめる。幻想的で美しすぎるその状況は、まさにライヴのハイライト。メランコリックな楽曲と相まって、オーディエンスは幸せな時間を噛みしめていたことでしょう。
レーザーを駆使した光の演出、メンバーの映像はもちろん、イメージ映像なども映し出す巨大スクリーンやアリーナ上に設置された球体。アリーナ前方に用意された花道や後方に用意されたステージ、オーディエンスの上空を行きかう風船や宙を舞う蝶々。サマソニで見せてくれたライヴは、ほんの序章に過ぎなかった……。そう思わずにはいられないほど飛躍的にスケールアップした一大エンターテインメントを見せてくれました。
ステージの端から端まで走って、オーディエンスに応え続け、ときにジョークを交えたMCで笑わせる。美しすぎるメロディと緻密なアレンジで構成された楽曲を、寸分の狂いのない演奏で奏でる。そんなライヴ・バンドとしての姿もしっかりみせつけてくれたコールドプレイ。“今世紀最高のロック・バンド”という言葉に嘘偽りがないことを、このライヴを観たオーディエンスは確信したはず。
アンコールを含めて約1時間半ほどのライヴは、あっという間の出来事。コールドプレイを愛する気持ちが会場に溢れかえり、誰もが笑顔でライヴを楽しんでいたのが非常に印象的でした。生きる喜びを音楽で呼び起こすコールドプレイのライヴは、まさに“美しき生命”を観る者に感じさせるライヴでした。
写真:シャノン・ヒギンス