ワレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)が手兵ロンドン交響楽団を率いてただいま来日中! 11月24日に都内で行なわれた記者会見の模様をレポートします。
ロンドン響にとっては、1963年に初来日して以来21回目の日本ツアーとなる今回。アニバーサリー・イヤーを迎えるマーラーを中心にしたプログラムを引っさげて、全国で公演を行ないます。
このマーラー・チクルスは世界ツアーの演目でもありますが、日本ではヴァイオリニストの諏訪内晶子を迎えてのシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」も注目されるところです。
2007年から首席指揮者を務めるゲルギエフは、次のように語っています。
「私にとって、ロンドン響とのマーラーは特別なもの。最近はオーケストラにも若い団員が増え、世代交替が進んでいます。こうした若い人たちの熱気あふれるマーラーを、ぜひ皆さんにも聴いてほしいと思います」(ゲルギエフ、以下同) また、コンサートと同様に録音にも並々ならぬ熱意を傾けるゲルギエフ。ロンドン響の自主レーベル“LSO Live”と、もう一つの手兵マリインスキー劇場のレーベル“Mariinsky”から続々とCDをリリースしています。
「我々はレコーディングというものを非常に重要視しています。LSO Liveでリリースしているマーラーのチクルスもほぼ完成に近づいており、まだリリースされていない交響曲第5番も、先日録音が終わりました。第9番はまだ録音していませんが、皆さんにお聴きいただける日も近いと思います。レコーディングは、オーケストラの団員との関係を育みながら進めていくもの。何度も演奏をし、経験と時間を重ねてから録音することには、とても大きな意味があるのです」 LSO Liveレーベルにとって、日本の市場は世界で2番目に大きいとのこと。一方、北米ではCDよりもダウンロードが優勢で、若い世代の新たなリスナー層の獲得を実感しているそうです。
「私は20年間、専属アーティストとして大手レコード会社で録音をしてきました。でも何かが確実に変わってきていると感じ、ここ数年は自主レーベルでの録音にシフトしています。大手レコード会社では、“ショスタコーヴィチの『鼻』を録音したい”と言っても、なかなか実現が難しい。けれど自分たちのレーベルでは、オーケストラがみずから録音レパートリーを決めることができます。私は首席指揮者として演奏するのと同じくらい、どの作品を録音するかを決断をすることに大きな責任を感じています」 ゲルギエフがロンドン響にデビューしたのは、今から22年前。その当時を振り返ってマエストロは次のように語りました。
「私がロンドン・デビューをしたときは批判をされました。まだ学校も出ていない子どもたちを共演者として連れてきて“何なのだ!”と言われたのです。その坊やたちとは、エフゲニー・キーシン、ワディム・レーピン、マキシム・ヴェンゲーロフ。彼らは今や、偉大なキャリアを築き上げる音楽家に成長しました。キーシンとのラフマニノフの協奏曲第2番のレコーディングは、今でも忘れらない思い出です」 コンサートに録音に、快進撃を続けるロンドン響。世界中のオーケストラを振ってきたゲルギエフは、この楽団の魅力についてどのように考えているのでしょうか。
「ロンドン響は常に新鮮さを忘れず、音楽への集中力が何時間でも途切れることのない素晴らしいオーケストラです。私はコンサートの雰囲気をとても大切にします。即興ができるくらいの自由な空気が重要。極端に言えば、お客さまの咳さえもコンサートの一部分です。音楽家は咳ひとつにも反応しますから。でも30年以上指揮をしていると、そういうときのリアクションにも対応できるようになります。ロンドン響では幸いなことに、音楽のことだけに集中できる環境です。お客さんと団員、両方の反応に合わせて、一回一回違う演奏を、大切にしていきたいと思います」 オーケストラの楽団員も多数出席し、マエストロとの信頼関係をうかがい知ることができた和やかな会見になりました。日本ツアーはまだ続きますので、今からでも足を運んでみてはいかがでしょう?
ゲルギエフの右隣は楽団事務局長のキャスリン・マクダウェル、その隣はKAJIMOTO代表取締役社長の梶本眞秀