10 times treasure - 川嶋あい x ヒナタカコ
掲載日:2014年12月16日
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「10 times treasure」いよいよ最終回。第10回目に登場するのは、独特のダイナミクスを持つ力強くも繊細な歌声で、精力的なコンサート活動を展開する福井県出身のシンガー・ソングライター、ヒナタカコ。2013年作『夢のかなた』に続く最新アルバム『AQUADREAM』を12月17日(水)にリリースする彼女と、『Shutter』を携えてツアー中(取材当時)の川嶋あいが、“歌”が持つ力とその本質、歌い続ける理由について、シンプルが故のディープさで語り合います。
――共演は今回が初めてなんですよね。
川嶋 「そうですね」
ヒナ 「初めてですね。川嶋さんの歌はもちろん存じ上げていました。わたしは歌に芯がある方がすごく好きなんですけど、川嶋さんはすごく言葉を大切に歌われていて、ガシッとした核を持ってすくっと立って歌っている印象があります。わたしもそういう風になりたいな、と思う部分なので、今日はご一緒できて嬉しいです。10回続けてこられたライヴの記念すべき最終回が何故わたしなんだろう……という気持ちもあるんですけど、こういう機会をいただけて、本当にありがたいです」
川嶋 「こちらこそ、ありがとうございます!わたしはヒナさんの歌を今日初めて聴かせていただいたんですよ」
――初めて聴かれたご感想は?
川嶋 「先ほど色々お話させていただいて、お寺でライヴをやられているというお話を伺ったんですよ。そういう神聖な場所にすごくマッチするというか、そういう所で聴いた時にさらに浸透しそうな、すごく荘厳な歌声のように感じました」
ヒナ 「ありがとうございます」
――荘厳に聴こえるように意識して歌っていらっしゃるわけではないんですよね?
ヒナ 「そうですね、特に意識はしていないです。場所にマッチするというのは、実家が寺だからというのが関係あるかもしれません。気付けば本堂とか、田舎に生まれ育ったので川の見える堤防とか、そういう場所で歌の練習をしていた気がします。けっこう独りで歌うのが好きで、色んなところで大声で歌って(笑)。誰に聴かせるでもなく自然に向けて歌っていたのが、そういう風に受け取っていてだけることに繋がってきたのかな?と思いますね」
――歌唱法の幅がすごく広い印象があるのですが、ご実家がお寺ということで読経なんかもやられていたのでしょうか。
ヒナ 「はい。一応“得度”という、僧侶の免許みたいなものを取っていまして、実家に帰るとお経を上げます。それがヴォイス・トレーニングになっているとは思いますね。すっごく辛いので(笑)」
川嶋 「そうなんですね……(笑)」
――お経を読む時って、何か独特の発声法があるんですか?
ヒナ 「そうですねえ……普通に歌っているよりも、喉がキツいかもしれないです。抜けるところが無いので。わたしは勝手に、毎日やっていたら声帯が強くなるだろうな、って思っています。でもそこまでやり込んでいる感じではないので(笑)」
――いやいや、辛いと感じられるまでやっていらっしゃるわけですから(笑)。
川嶋 「うんうん」
――お寺だけでなく、教会などでもコンサートをやられることもあるんですよね。
ヒナ 「教会はまだそんなにないんですけど、お寺だけじゃなくて神社でもやったりしますね」
――そこは宗教関係無く。
ヒナ 「全然関係無いです(笑)。そこは全く気にしていなくて。クリスマス・コンサートとかやりますし(笑)。結局、音楽も宗教も、向かっているところは一緒だという思いがあるので」
――川嶋さんも教会ツアーをやられていましたよね。
川嶋 「はい」
――やっぱり神事を執り行うような施設でコンサートをやると、普段とは違った心境になったりするものなのでしょうか。
川嶋 「結果的にはそうなんだろうと思います。教会によって雰囲気が違うので、ロマンティックな雰囲気だとやっぱりそういう雰囲気になりますし、厳かな感じだと緊張感のある距離感になったりはします。臨む気持ちは全然変わらないんですけど、場所にすごく助けられているということは感じましたね。例えばロマンティックな場所でラブソング中心のセットを歌うと、それまで全然そんなこと無かった曲でも、場所にぴったりの雰囲気が生まれたりする。曲と場所との一体感から新しい発見があるんですよね。それをファンの皆さんが探してくれたり、見つけてくれたりするとまた、すごく嬉しいんですよね」
――場所が曲とお客さんを近づけてくれることもあるわけですね。
川嶋 「そうですね。場所が変わるだけで、そういうことがありますよ」
――これまでお寺でのライヴっていうのはありましたか?
川嶋 「ありましたよ。わたしがやったお寺、すごく寒かったんですよ。1月とか、真冬だったんですけど、お客さんもコートめっちゃ着て聴いてくださっている感じで。たぶん暖房が無かったんだと思うんですけど」
ヒナ 「重要文化財だと、火気厳禁なんですよね」
川嶋 「そうそう、重要文化財だったかもしれないです。もう、“素の建物”で(笑)。でも、その時はいつも以上に真剣に歌と向き合う感じがありましたね。わたし自身もそうですし、お客さんも一対一で聴いてる感覚があるんじゃないかなあ、って思いました」
――お寺って古来から、訪れる人同士や住職さんとの距離がすごく近い場所、という感じがあります。
ヒナ 「わたしは逆に、実家が寺なので……」
――あまり実感が無い(笑)?
ヒナ 「そうですね(笑)。落ち着く感じはありますけど。幼い頃から本堂が遊び場で。バレーボールやってたりしていたので(笑)」
川嶋 「あはは(笑)」
ヒナ 「でも、まあ線香や畳の、イグサの独特の匂いとか、“香り”でリラックスして歌えるのかもしれないです」
――自分がリラックスできる場所だと、お客さんもリラックスしているように感じしますか?
ヒナ 「そうですね。でもお寺でのライヴは、法要の中でやることも多いので」
――そうなんですね。
ヒナ 「そういう時はおじいちゃん、おばあちゃんばかりだから」
――お客さんの年齢層のレンジめちゃくちゃ広そうですね(笑)。
ヒナ 「はい(笑)。そういう時はぐっと広くなりますね。平均80かな?っていう感じで(笑)」
川嶋 「へえ〜(笑)!」
――若い方とお歳を召した方では歌の受け止め方が全く異なると思うのですが、作曲するにあたってそういったことも考慮されるのでしょうか。
ヒナ 「う〜ん……。そもそもわたしの作る曲自体が、そんなにイマドキではないので(笑)。自然のことをはじめ、普遍的なことを歌った曲が多いので。特定の人に向けて作るわけではなく、“自分のそのまま”が合っているのかな、って思います」
――イマドキではないとおっしゃいましたが、曲自体はアレンジがすごく緻密で、モダンな印象があります。
ヒナ 「そうなんですか?あんまり自分は意識していないです……」
――ポップスのフォーマットなんだけどプログレッシヴというか。クラシックの勉強をされていたことがソングライティングに何か影響しているのでしょうか。
ヒナ 「いや〜、特には無いと思います。良いのか悪いのかわからないですけど(笑)」
――1曲の中でもすごく幅広い個性で歌われていて、ほかの人が歌うのはかなり難しいんじゃないかと思うんですけど。
ヒナ 「たしかに……。譜割りとかは難いかのもしれないです……」
――細部が複雑であるにも関わらず、ポップスとしてスッと入ってくるのは不思議ですよね。歌の力というか。
ヒナ 「ありがとうございます!」
――お2人は、音楽を演奏するだけでなく、音楽を用いた人との繋がり方を大事にして活動していらっしゃる印象があります。音楽にそういった力があるということに、どういうきっかけで気付かれたのでしょう。
川嶋 「う〜ん……どんな時だろう……」
――川嶋さんは様々なボランティア等に携わっていらっしゃいますよね。
川嶋 「はい。ただ、それは音楽とは全く別に捉えているんですよ。自分のライフワークとして、1人の人間としてずっとやりたかったことだったので。歌は歌、それはそれ、という感じで。でも、新しい、初めての土地に行くと、歌うことで繋がり合えるということはやっぱり感じますね。初めての人が多い中で歌って、何か興味を持って立ち止まって聴いてくださる方がいて。そこでひとつの交流が生まれるわけじゃないですか。それはわたしの場合、演説やトークでは実現出来ないことなんですよ。歌うことしか出来ないんだなあ、って実感するんです。そこで少しでも繋がり合えた瞬間はやっぱり嬉しいですし、そこが音楽の力かな、とは思いますね」
ヒナ 「うん、わたしもそこはすごく共感しますね。わたしは昔、音楽の先生になりたかったんです。そうすると大学4年生で教育実習に行くわけです。その時に、最初は行った高校の生徒たちと全然コミュニケーションが取れなかったんですよ。でも、趣味で作っていた曲の弾き語りをやってみたら、コミュニケーションがすごく上手く取れるようになって。これを続けたら、もっと色んな人と繋がれるのかな?というところに魅力を感じて音楽を、プロの道を目指そうと思うようになったんです。今では、音楽があるから色んな場所に行って、色んな人と出会える。ずっと合唱部だったこともあって、合唱曲を書いて子供たちと一緒に歌ったりすることもあるんですけど、そこで音楽の先生になりたかったという夢に戻っていくことも出来たり。それもやっぱり音楽があったから出来たことだと思うんですよ。音楽って、人と人との壁をすぐに取り払ってくれる、すごい力があるとわたしは思います」
――もし、この世に音楽が無かったら、今どうしていると思います?
ヒナ 「まあ音楽が無くても、どうにかこうにか、何かしら生きてはいると思うんですけど(笑)。でも有るのと無いのでは、生き甲斐のようなものが全然違うだろうなあ、と思います」
――音楽って、人間の生物学的生存に必ずしも必要なものではないですよね。それでも、有った方が良く生きられるというのは、どういうことだと思いますか?
ヒナ 「わたしがすごいな、と思ったのは、震災の時、瓦礫の下敷きになって外に出られずに、食べるものも無かった人が、不安で不安で仕方がなくて歌を歌いながら一夜を過ごしたんですって。その後ようやく助けられたそうなんですけど、そのお話を聞いて、危機的な状況の中で最後に自分を励ますことが出来る歌って、すごいと思って。生きるにために必要なものが何も無い状態で出てくるということは、歌も生きるために必要なものなのかもしれないな、って」
川嶋 「そうですね、歌って不思議な存在ですよね。食べることや寝ることのような本能に繋がっている部分がきっとどこかにあるんだろうなあ、と思うんですよ。極限の状態になった時に歌を思い出したり、音楽を口ずさんだり、聴いた瞬間に生き返る気持ちになったり。命をまた吹き込んでくれるような力があるということは、やっぱり食べ物と同じくらいすごいパワーを秘めているんだな、って思うんですよね。人が必要としているからそういうタイミングで歌を思い出すんでしょうし。そういう、思い出せる歌を作り上げてきた先人たちは本当にすごいんだなあって感じますね」
――逆に、歌を聴いて励まされたという感想をいただくことも多いと思うんですけど、そういう時はどんな気持ち?
ヒナ 「よかったなあ……って思いますね、心の底から。ものを作っていて良かったなあとか。ミュージシャンて世の中に本当にたくさんいらっしゃるから、自分なんて別にやらなくても良いんじゃないかな……とか思ってしまうこともあるんです。でも、たった1人でもそうやって“励まされたよ”って言ってくださることが原動力になるんです。また続けていきたいって思えるようになる。そういうことがあるからこそ発信しているんでしょうし、たぶん。これからも、1人でもそう思ってくれたらいいな、という気持ちで歌っていきたいと思っていますね」
進行・文 / 久保田千史 (2014年10月)
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